医師から「ホスピスを検討してはどうか」とすすめられた。
けれどホスピスがどのような場所なのかイメージできない、という方は少なくありません。
ホスピスケアを受けられる場所は、住宅型ホスピス・緩和ケア病棟・在宅の3つです。
本記事では、ホスピスで受けられるケアの内容と3つの場所の違いを整理したうえで、住宅型ホスピスの入居条件・費用・探し方を解説します。
ホスピスとは

ホスピスとはケア・場所を指す
ホスピスという言葉は、「ケアの内容」と「ケアを行う場所」の2つを指します。
この2つが混ざるため、医師と家族のあいだで話が噛み合わないことがあります。
ホスピスケアは、病院の緩和ケア病棟でも住宅型ホスピスでも受けられます。
そのため医師が「ホスピス」と言うときは、緩和ケア病棟を指している場合と、退院後に暮らす場所を指している場合の両方があります。
どちらの意味で使われているかを確認すると、次に調べるべきことがはっきりします。
ホスピスの目的
ホスピスの目的は、病気を治すことではなく、苦痛を取り除いて残された時間の過ごし方を本人が選べるようにすることです。
厚生労働省は緩和ケア病棟の役割を、緩和ケアを行うとともに「外来や在宅への円滑な移行も支援する」病棟と定めています。
入院したら最期までそこで過ごす場所、と決まっているわけではありません。
治療を続けるか、苦痛の緩和に切り替えるかは本人と家族が決めます。
判断に迷う段階でも、主治医や緩和ケアチームに相談できます。
ホスピスの対象となる疾患
ホスピスケアそのものに、病名の制限はありません。
制限がかかるのは「どこで受けるか」を決めた段階です。
病院の緩和ケア病棟に入院する場合は、診療報酬で対象疾患が定められています。
悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群及び終末期の末期腎不全の3つです。
一方、住宅型ホスピスは介護施設なので、診療報酬のような一律の病名要件はありません。
受け入れられるかどうかは、施設が対応できる医療的ケアの範囲で決まります。
緩和ケア病棟の3つ目にある終末期の末期腎不全は、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定で加わりました。
透析の差し控えや中断を選んだ終末期の患者が対象で、それまでは悪性腫瘍と後天性免疫不全症候群の2つでした。
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
ホスピスと緩和ケアの違い
ホスピスと緩和ケアは、ともに「患者の苦痛を緩和するためのケア」を行うものです。
違いは、治療をどう位置づけるかにあります。
緩和ケアは、病気の治療と並行して行います。
がんと診断された直後から、心身や生活のつらさに対して早期から患者の苦痛や不安を和らげるケアを行います。
一方、ホスピスケアは治すための治療を行わない段階のケアです。
苦痛を最小限にすることに絞って提供されます。
つまり緩和ケアは治療と両立するもの、ホスピスは治療を終えたあとの過ごし方を支えるものという違いです。
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ホスピスで受けられるケア内容
ホスピスで受けられるケアは次の5つです。
- 身体的ケア:痛みや息苦しさ、吐き気などの症状を薬や処置で和らげる
- 社会的ケア:医療費や各種手続きなど、生活面の問題をソーシャルワーカーが支える
- 精神的ケア:死への恐怖や不安、孤独感に寄り添う
- スピリチュアルケア:存在意義を見失うつらさ(スピリチュアルペイン)を和らげる
- 家族ケア:付き添う家族の負担や不安を支える

身体面での苦痛を和らげる「身体的ケア」
身体面の苦痛を取り除くケアを行うのが「身体的ケア」です。主な内容は次の通りです。
- 投薬による鎮痛
- 食べ物の飲み込みが難しい場合は、食事形態の工夫や胃ろう、経管栄養の実施
- マッサージ
例えば、がんに侵されると細胞の破壊や低栄養が起こります。これらにより、食べ物を飲み込む筋力が落ちたり、筋肉に痛みが生じたりする身体的苦痛を引き起こす可能性があります。
病による苦痛を減らすために「食事形態を工夫し飲み込みやすくする」「経管栄養」「マッサージ」などのケアを行うのが身体的ケアです。
入院する家族にとっては、ご家族が身体をさするだけでも楽になる可能性があります。その場合、がんによる細胞の破壊や低栄養により皮膚が弱くなっているため、医師に確認したうえで十分配慮して行うよう注意してください。
経済面や相続問題をフォローする「社会的ケア」
社会的な問題解決を援助するため、主にソーシャルワーカーや家族が行うケアを「社会的ケア」と呼びます。
- 経済的な問題
- 遺品整理
- 遺産相続
経済的な問題によっては、ご家族が精神的に苦しむケースも少なくありません。ソーシャルワーカーなどによって行われる社会的ケアは、経済的問題によるご家族の負担を軽減するための大切なケアの一つといえるでしょう。
また社会的ケアでは、国の制度などの社会資源も用いる場合もあり、個人の状況に合わせた援助を行いながら社会的な問題の解決を目指します。
なお、遺品整理や遺産相続のケアについては、ホスピスのスタッフが行うものではありません。各種手続きや申請をご家族の代理で行うに留まるため、遺品整理や遺品相続が必要な場合は注意が必要です。
死への恐怖や不安感に寄りそう「精神的ケア」
「精神的ケア」は、死に対する恐怖や不安感を緩和するケアです。具体的には、本人の住み慣れた住宅の空間に近づけるといった視覚的なものから、信頼する方との会話による心理的方法があります。
ケアのポイントは、できるだけ今まで生活してきた環境に寄せ、不安感を取り除く点が挙げられます。思い出の品を本人の近くに置いておくだけでも安心感につながり、苦痛の緩和になるでしょう。
また、無理に声かけをする必要はありません。普段行っているようなコミュニケーションや、話題がなければ一緒にいるだけでもよいです。苦痛を感じている際は特に孤独感を抱きやすくなっています。孤独感が強くならないよう配慮しましょう。
スピリチュアルペインを取り除く「スピリチュアルケア」
「スピリチュアルケア」は、自身に価値や存在意義が見出せなくなったり、疎外感を抱いたりする「スピリチュアルペイン」を和らげる方法です。精神的苦痛との違いは「表面上に現れる苦痛」か「根幹にある苦痛か」の違いです。
具体的には、精神的苦痛は表面上に現れる「不安」や「悲しみ」の感情ですが、スピリチュアルケアは、心の奥深くに根付く価値観や考え方になります。
例えば、ホスピスに入院している家族が「死にたい」と発した場合です。それは、心の底からの発言ではなく、何かの意図がある表面上の言葉かもしれません。表面的な要素からは見えない「根底にある価値観」に対してケアを行うのがスピリチュアルケアの目的です。
家族の負担や不安を支える「家族ケア」
「家族ケア」は、付き添う家族の疲労・不安・迷いを支えるケアです。
ホスピスでは患者本人だけでなく、家族もケアの対象になります。
家族ケアが制度として組み込まれていることは、緩和ケア病棟の施設基準から確認できます。
厚生労働省の通知では、緩和ケア病棟に次の設備を備えることが求められています。
出典:厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」
家族の控え室や台所が基準に入っているのは、家族が長く滞在し、食事を用意して一緒に過ごすことを前提としているためです。
看取りの時期が近づくと、家族は睡眠や仕事の調整が難しくなります。
看護師やソーシャルワーカーに状況を伝えると、面会の組み立てや休息の取り方を一緒に考えてもらえます。
ホスピスケアが受けられる場所は3つ
ホスピスケアを受けられる場所は次の3つです。
- 住宅型ホスピス:ホスピスケアに対応した介護施設で暮らしながらケアを受ける
- 緩和ケア病棟:病院の専門病棟に入院してケアを受ける
- 在宅ホスピス:自宅で訪問診療・訪問看護を受けながら過ごす
いずれも受けられるケアの中身は共通しています。
違うのは暮らす場所・使う保険・かかる費用の3点です。
費用の目安はケアスル 介護調べ(住宅型ホスピス)と診療報酬の入院料をもとにした概算です。
住宅型ホスピス
住宅型ホスピスは、末期がんや難病の方を受け入れ、ホスピスケアに対応している住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅です。
「ホスピス型住宅」とも呼ばれます。
がん末期や神経難病など医療依存度の高い患者を対象に、訪問看護・訪問介護を組み合わせて療養と看取りを支える施設です。
基盤となる施設類型は住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の2つです。
そこに訪問看護・訪問介護を外付けして医療ケアを提供します。
出典:一般社団法人日本医療・病院管理学会「ホスピス型住宅」
緩和ケア病棟
緩和ケア病棟は、病院のなかにある緩和ケア専門の病棟です。
医師と看護師が常時対応し、症状が不安定な時期でも対応できます。
日本ホスピス緩和ケア協会の集計では、2025年12月1日時点の届出受理施設は476施設・9,860床です。
全国どこにでもあるわけではなく、地域によって差があります。
費用は医療保険が適用され、入院料は日数に応じて下がる仕組みです。
2026年度改定後の入院料は次のとおりです。
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について」/日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケア病棟入院料届出受理施設一覧」
表は全額の金額です。
実際の負担は加入している医療保険の負担割合分で、1〜3割になります。
入院料に食費と差額ベッド代が加わり、1割負担の場合で月20万円前後が目安です。
負担が上限を超えた分は高額療養費制度で払い戻されます。
在宅ホスピス
在宅ホスピスは、自宅で訪問診療と訪問看護を受けながら過ごす形です。
住み慣れた家で最期まで過ごしたい場合に選ばれます。
末期の悪性腫瘍など別表第七に該当する場合、訪問看護は医療保険の給付になります。
週4日以上の訪問や1日複数回の訪問も可能です。
一方で、日常の介護は同居家族が担う場面が多くなります。
夜間の対応や急変時の判断が家族に集中するため、3つの選択肢のなかでは家族の負担が最も大きくなります。
家族の安心感を左右するのは、訪問看護ステーションが24時間対応かどうかです。
導入前に対応体制を確認してください。

住宅型ホスピスの入居条件
住宅型ホスピスに入居できるかは、次の4点で決まります。
- 疾患と病期:末期の悪性腫瘍や難病など、医療保険の訪問看護の対象にあたるか
- 医療的ケアの内容:医療用麻薬の管理、酸素療法、点滴などに施設が対応できるか
- 年齢と要介護度:多くは60歳以上または要介護認定を受けていること
- 費用の支払い:家賃・食費・生活支援費を継続して支払えるか
住宅型ホスピスは介護施設なので、入院と違って「余命◯か月以内」という一律の条件はありません。
受け入れ基準は施設ごとに決まっています。
年齢・要介護度の要件は、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅としての基準に沿っています。
ただし末期がんの方は、40歳以上であれば介護保険の特定疾病として要介護認定を受けられます。
・看護師が24時間常駐しているか、夜間は誰が対応するか
・医療用麻薬の管理、酸素療法、点滴、たん吸引に対応できるか
・協力医療機関はどこか、訪問診療の頻度はどれくらいか
・看取りの実績が年間何件あるか
・症状が変化したときに退去を求められる条件はあるか
最後の「退去を求められる条件」は契約書に書かれています。
入居前に必ず確認してください。

住宅型ホスピスの費用と利用期間
住宅型ホスピスの費用は、月15万〜30万円程度が目安です。
入居一時金は0円の施設から数百万円の施設まで幅があります。
緩和ケア病棟のように医療保険で入院料が決まる仕組みではなく、住まいの費用と介護・医療サービスの費用を別々に支払います。
住宅型ホスピスの費用相場
月額費用の内訳は次のとおりです。
医療費と介護サービス費は、月額費用とは別に保険の負担割合分がかかります。
出典:ケアスル 介護調べ
ここに医療費と介護サービス費が加わります。
訪問看護が医療保険の給付になる場合、自己負担は医療保険の負担割合分です。
医療費の負担が重くなったときは、高額療養費制度と高額介護サービス費が使えます。
家賃・食費は制度の対象外なので、そこは自費のまま残ります。

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住宅型ホスピスの利用期間
住宅型ホスピスは介護施設なので、入居期間に上限はありません。
体調が安定していれば長く暮らせます。
一方、ホスピス・緩和ケア病棟の平均滞在期間は30日程度です。
緩和ケア病棟の入院料も30日・60日を境に下がる設計で、長期の入院を前提にしていません。
そのため、緩和ケア病棟で症状が落ち着いたあとの暮らしの場として、住宅型ホスピスや在宅が選ばれます。
実際の期間は病状で変わります。
見学の際に、その施設の入居者がどれくらいの期間過ごしているかを聞いておくと判断材料になります。

住宅型ホスピスの探し方
住宅型ホスピスの相談先は、いま療養している場所によって変わります。
入院中であれば、病院のソーシャルワーカーに相談するのが近道です。
いずれの窓口も専門職が対応し、相談は無料です。
・いま必要な医療的ケア(医療用麻薬・酸素療法・点滴・たん吸引など)
・通える範囲のエリアと、家族が面会に行ける頻度
・毎月出せる金額の上限(家賃・食費・医療費を合わせた総額)
この3点が決まっていると、どの窓口に相談しても候補を絞る作業が早く進みます。
ホスピスとはどんな施設かを理解して選ぼう|まとめ
ホスピスとは、治すための治療が難しくなった方の苦痛を和らげるケアと、そのケアを提供する場所を指す言葉です。
ケアを受けられる場所は住宅型ホスピス・緩和ケア病棟・在宅の3つで、ケアの中身は共通し、違うのは暮らす場所・使う保険・費用です。
住宅型ホスピスは月15万〜30万円程度が目安で、入居期間に上限はありません。
どの選択肢が合うかは病状と家族の状況で変わるため、主治医やソーシャルワーカーに現在の状態を伝えて確認してください。
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