• ホスピス
  • 【公開日】2023-01-20
  • 【更新日】2023-06-12

認知症でもホスピスに入れる?入院条件や受け入れ施設・在宅ケアも解説

認知症でもホスピスに入れる?入院条件や受け入れ施設・在宅ケアも解説

近年、ホスピスを始めとする終末期医療が注目されています。

末期がんやエイズなどの治療が困難な病気の終末期を、心穏やかに過ごしたい方が増えています。それに伴い、ホスピス機能を持つ施設が増えているのはご存じのとおりです。

しかしホスピスケアを必要としながら、同時に認知症を発症しているケースも珍しくないのが実情。その場合は、医療的ケアと認知症介護の両方を実現しなければなりません。「認知症だからホスピスに入れないのではないか」と心配な方も多いでしょう。

本記事では、認知症でホスピスに入れるのかホスピスケア・緩和ケアを受けられる施設や、在宅療養のポイントを解説します。

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在宅介護エキスパート協会 代表
所有資格:AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士,社会福祉士,宅地建物取引士
専門分野:在宅介護,老後資金,介護施設全般
職業: 社会福祉士,宅地建物取引士,ファイナンシャルプランナー

NEC 関連会社(現職)でフルタイム勤務の中、10 年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。両親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど福祉に直接的・間接的に関係する資格を取得。その経験や知識を多くの方に役立てていただけるよう「在宅介護エキスパート協会」を設立、代表を務める。詳しくはこちら

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ホスピスとは?由来と概要を説明

ホスピスとは、もともと人生の終末期を迎えた方の身体的・精神的苦痛を軽減させるケア方法自体を指す言葉でした。しかし、現在はケアを行う施設・病院を表わすようになっています

ホスピスでの医療的ケアは、治療よりもQOL(生活の質)の維持が目的です。

「ホスピス」の名称は1960年代にイギリスで誕生し、日本では1980年代に普及し始めました。2007年には「がん対策基本法」が施行され、医療の現場で緩和ケアが専門的ケアとして行われるようになっています。

近年では自宅や暮らし慣れた地域で最期の時を過ごす「在宅ホスピス」の考え方も広まり、現在ホスピスケアは在宅療養でも受けられるようになりました

ホスピスとほぼ同義で使われている言葉に「緩和ケア」があります。緩和ケアが痛みや身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を取り除くケアであるのに対し、ホスピスケアは通常、最期の時を穏やかに迎えるためのさまざまなケアを含めて呼ばれます。

ホスピス・緩和ケア病棟の平均滞在期間はおおむね1ヵ月前後で、退院し在宅療養へと移行するケースがほとんどです。

ホスピスへの入居を検討しているという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護なら、入居相談員にその場で条件に合った施設を教えてもらうことができるためご希望に沿った施設探しが可能です。

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認知症でもホスピスに入れる?入院基準とケアを紹介

認知症があるとホスピスに入れないのかどうかを知るためには、ホスピスの入院基準、ホスピスで行う治療と行わない治療について知っておく必要があります。

一つずつ解説しましょう。

ホスピスの入院基準

ホスピスの入院対象は、苦痛を取り除き、最期の時を穏やかに過ごしたい終末期の患者すべてです。病気の種別により制限はないものの、日本ではおおむねがん・エイズの終末期の患者とされています。

「認知症だから入れない」といった基準はありませんが、後述のように症状によっては断られる可能性もあります。また、認知症を病名にした入院はできません。しかし末期がんなどに羅患していれば、認知症でも入院できるケースはあります。

ただし施設によっては入院基準を「根治が難しい患者」に限定しているところもあるため、入院できるかどうかは個別に確認が必要です。

ホスピスで行うケア・行わないケア

次に、ホスピスで実際に行われるケアと、行われないケアを見ていきます。

ホスピスで行われるのは、本人の苦痛を和らげる3つの基本ケアです。

①身体的ケア

痛みのコントロールのための投薬や放射線治療といった対症療法や、食事・入浴・排泄などの動作介助、整容などの身体や身辺の介助を行います。

②精神的ケア

主に死の恐怖を取り除くケアで、家族との時間共有、レクリエーション、心理療法士のカウンセリングなどを行います。

③社会的ケア

本人と家族の実生活のサポートで、スタッフの手配、ソーシャルワーカーによる経済問題の相談と対処、亡くなったあとの遺品整理などを行います。

一方で、ホスピスでは抗がん剤投与や手術などの積極的な延命治療は行いません。

ホスピスで行われる医療的ケアは、本人の意思を尊重し、本人が十分に理解・承諾したうえで行われるのが原則です。

認知症でホスピスへの入院が困難なケース

ホスピスの概要を踏まえたうえで、認知症によりホスピスへの入院が難しいケースについて確認しましょう。

  • 本人の安全確保が難しい
  • 徘徊や暴力でほかの患者に迷惑が掛かる
  • 本人が苦痛を訴えられない
  • 本人による治療の意思決定が行えない

それぞれ詳しく見ていきます。

本人の安全確保が難しい

認知症の症状により本人の安全確保が難しい場合には、ホスピスへの入院が困難と判断される可能性があります

具体的には、転倒のリスクが高まっているにもかかわらず自覚がなく動き回る、服薬などの医療行為を拒否する、点滴を抜いてしまうなどの行為が考えられるケースです。

受け入れ態勢にもよりますが、緩和ケア病棟やホスピスでは身体拘束が必要な方や、危険を認識できない方の入院生活は困難と考えてよいでしょう。

徘徊や暴力でほかの患者に迷惑が掛かる

認知症の症状による徘徊や暴力で他者の療養の妨げになるケースも、ホスピスの入院を断られる可能性があります。

ホスピスは希望して個室に入院するなどプライバシーを重視している方もいるため、徘徊で他者のプライバシーを侵害するとなると、入院患者の皆が穏やかに過ごせなくなります。このため認知症による迷惑行為の恐れがある場合には、ホスピスへの入院は難しいかもしれません。

本人が苦痛を訴えられない

認知症により本人が苦痛を訴えられないケースも、ホスピスへの入院が困難とされています。

ホスピスのケアとして終末期の苦痛緩和がありますが、認知症で本人が苦痛を訴えられなければ、傷みを取り除くための適切な治療が行えません。

意思の疎通が不十分では、本人の苦痛を知る手立てがありませんので、ケアが成り立たず入院の対象ではないと判断される可能性があります。

本人による治療の意思決定が行えない

本人による治療の意思決定ができない場合も、ホスピスへの入院が困難とされています。

ホスピスに入院するためには、自身で病気を知ったうえでケアを意思決定するのが原則です。そのため、必須ではありませんが本人が病状を告知されていること、判断力があることが前提となります。

根治のための治療を行わないと本人が理解していなければ、ケアに対する不信感が生まれてしまうため、ホスピスでの生活は困難と判断されるでしょう。

ホスピスケア・認知症ケア両方が必要なときにするべきこと

終末期のホスピスケアと認知症ケアの両方が必要となったときに、家族がはじめに行うべきことを紹介します。

  • 終末期の方向性を考える
  • 相談窓口を当たる

一つずつ解説しましょう。

終末期の方向性を考える

残された時間を誰と、どこで、どう過ごすのか、本人と家族で今後の方向性を話し合いましょう。このとき、本人の意向を最優先するのが大前提です。

たとえ認知症であっても、最期の時の方向性は本人の意思を尊重して決めないと、本人の死後に遺族が後悔する事態にもなりかねません。

認知症と終末期の症状が進行すると、本人の意思確認はますます難しくなります。できるだけ早く療養方針を話し合い、決めておきましょう。

終末期と認知症ケアには、ホスピス以外の選択肢も考えられます。施設・病院・在宅など、どの過ごし方が本人と家族にとってベストなのか、本人の意向に沿って検討しましょう。

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相談窓口を当たる

本人と家族でケアの方向性を決めたら、ケアの依頼先を見つけるために、医療と介護両方の相談窓口を当たりましょう

終末期の病気と認知症とを併発している場合には、医療と介護両方の手続きが必要です。もし具体的な手続きがわからない場合には、介護相談は地域包括支援センターへ、医療相談は各自治体の在宅医療相談などの窓口へ相談するとよいでしょう。

公的な窓口では、本人の状態に応じたケアを受けるために、必要な手続きを教えてくれます。

ホスピスケア・認知症ケアを受けられる施設

ここから、ホスピスケアと認知症ケアの両方を受けられる施設を紹介します。

公的な施設と民間の施設のいずれも、ホスピスケアを行うところが増えていますが、施設ごとに対応できるケアが異なる点に注意が必要です。

施設を選ぶ際には、本人に必要なケアが可能かどうかを個別に確認しましょう。

公的施設

①特養(特別養護老人ホーム)

社会福祉法人や地方公共団体が運営する施設です。入所基準は65歳以上、要介護3以上の方で、終の棲家として利用できます。

近年は緩和ケアを提供できる施設が増えていますが、待機者が多く、申請後すぐには入所できないかもしれません。面会時間に制限があり、好きなときに面会がしづらい点が、デメリットといえるでしょう。

②老健(介護老人保健施設)

基本的には病院を退院した方が、在宅復帰のためにリハビリをする中間施設の位置づけです。近年はターミナルケア、看取りを行う施設が増えており、医師・看護師が常駐し、看護師は24時間います。

入所期間は原則3ヵ月ごとの判定で、延長の可否が決まります。特養(特別養護老人ホーム)と同様、面会時間に制限がある点がデメリットといえるでしょう。

民間施設

①サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)

安否確認付きバリアフリー賃貸借住宅です。「介護型」であれば、介護施設としての人員基準を満たし、重度の介護が必要な方や認知症の方への介護サービスも提供しています。

近年では、ホスピスケアや看取りを行うところが増えていますが、個別に可能な対応が異なるため、確認が必要です。

②有料老人ホーム

高齢者が安定して生活できる民間運営施設です。「介護付」の場合には生活支援や介護が受けられ、「住宅型」は医療が必要な方や認知症の方の受け入れが増えています。

近年は看取り介護の提供も増えていますが、施設ごとに医療・介護の対応範囲が異なるため確認しましょう。

③グループホーム

認知症で日常生活に支障をきたした方が、共同生活をする施設で、もともと生活動作が自立している方向けの施設です。

入居対象は施設の所在地に住民票がある要介護認定で要支援2以上の認定を受けた要介護1~2の方です。家事を行うなど在宅に近い生活ができる一方、要介護度が高いと入居できなかったり、退去となる場合があります。

ただし近年は、医療機関と連携して看取りを行う施設も増えています。本人がまだ身の回りの動作を行えるならば、退去条件を確認のうえ入居を検討してもよいでしょう。

④ホームホスピス

民家を改装したホスピス機能を持つ住宅で、ケアを必要とする複数人が家族のように暮らす住宅です。

施設に入居するよりも家庭に近い環境で暮らせるため、施設入居に抵抗がある方には安心かもしれません。

数は多くありませんが、もし近隣にあれば検討するとよいでしょう。

施設選びのポイント

施設を選ぶ際のポイントは、ホスピスケアと認知症のケアの両方が適切に行われるかどうかの判断です。特に見極めるべきポイントは4つあります。

  • 本人の症状に対応する医療が受けられるか
  • 認知症の介護実績が豊富か
  • スタッフ構成は十分な人員がいるか
  • 医療・介護チームの連携がきちんとなされているか

認知症の周辺症状は、スタッフの対応次第で改善するケースもあるため、施設を選ぶ際にはスタッフ体制を確認できるよう、見学をして決めるとよいでしょう。

そのほか、入居先や受けるサービスによって医療保険と介護保険のどちらの対象となるか異なる場合もあるため、制度面についての相談先を持っておきましょう。

参考:「福祉・介護 地域包括ケアシステム」(厚生労働省)

施設への入居を検討しているという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護なら、入居相談員にその場で条件に合った施設を教えてもらうことができるためご希望に沿った施設探しが可能です。

「プロに相談したい」という方は、ご気軽に無料相談を活用ください。

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ホスピスケア・認知症ケアを在宅で行うポイント

ホスピスケアは在宅においても可能です。

ある調査結果では、施設や病院でなく自宅で最期を迎えたいと考える方が58.8%におよんでいます。(出典:日本財団「人生の最期の迎え方に関する全国調査結果」)特に本人が認知症である場合には、過大なストレスを与えず、自分のペースで生活できる在宅療養も考慮すべきかもしれません。

在宅でホスピスケアと認知症ケアを受ける際のポイントは以下のとおりです。

  • 医療機関との連携を密にする
  • 家族の負担を軽減する
  • 本人に寄り添う
  • 苦痛を取り除くケアの方法を知る

一つずつ解説します。

医療機関との連絡を密にする

在宅でホスピスケアを受ける場合は、医療機関との連絡を密に行いましょう

在宅療養では24時間365日の医療的ケアは望めず、本人の急変時にすぐに処置を受けられるとは限りません。そのため日頃から医療スタッフと連絡を取ると同時に、スタッフ不在の緊急時に家族がやるべきこと・できることを確認しておきましょう。

また、本人の容体が悪化した時にいつでも再入院できるよう、往診の医療機関と緩和ケア病棟スタッフとの連携も確認しておくと安心です。

家族の負担を軽減する

在宅でホスピスケアと認知症ケアを行う場合は、家族の負担をどこまで軽減できるかが重要になります

ホスピスケアと認知症対応の両方を在宅で行うとなると、どうしても家族にかかる負担が大きくなってしまいます。訪問看護や介護を活用するなど、少しでも家族が休まる工夫をしましょう。

もし療養費用が負担に感じる場合には、「高額療養費制度」「高額介護サービス費制度」などの公的な負担軽減制度を利用できる場合もあるので、ケアマネージャーに相談するとよいでしょう。

参考:「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(厚生労働省)

参考:「高額介護サービス費の負担限度額‐厚生労働省」(厚生労働省)

本人に寄り添う

在宅でホスピスケアと認知症ケアを行う際には、家族が本人の死への恐怖と不安に寄り添わなければなりません

認知症であればなおさら、自分の感じている不安感をうまく表現できないかもしれません。その分根気強く本人の意を察し、共感を伝える必要があります。

ただし、すべてを家族だけで抱え込む必要はありません。ホスピスケアの専門スタッフと連携し精神的なサポートを受け、心穏やかにケアに向かいましょう。

苦痛を取り除くケアの方法を知る

ここで、終末期と認知症の苦痛を和らげ、気持ちを穏やかにする手法を紹介します。医療の現場で実践されており、家庭でも応用できる手法です。

①タクティールケア

タクティールケアとは、背中や手足に優しく触れることで、本人の気持を和らげ、痛みを緩和するスウェーデン発祥のケアの手法です。医療や介護の現場では、認知症ケアと終末期ケアの両方に採用されています。

「触れる」動作が心地よいコミュニケーションとなり、本人のストレスが軽減され、認知症の周辺症状が和らぐといわれます。ストレスが軽減されると、痛みも感じにくくなるとされています。

②ユマニチュード

ユマニチュードとは、動作や言葉を特定の方法でコントロールし、「あなたを尊重している」と態度で伝え、心を開いてもらうフランス発祥のケアの手法です。

「見る」「話す」「触れる」動作でお互い対等だと感じてもらい、よい関係を築きます。「広い面積」を「ゆっくり」と触れるのがポイントです。

このほかにもアロマテラピーなど、本人の嗜好に合わせて、苦痛と気持ちが和らぐケアを行うとよいでしょう。

認知症があっても終末期のホスピスケアを受けるさまざまな方法がある

本記事では、ホスピスケアと認知症ケアの両方を必要とする場合の入院条件、受け入れ先の施設、在宅で療養するポイントについて紹介しました。

認知症でホスピスに入院できるかどうかは、本人の症状やホスピスの受け入れ態勢にもよります。

現在では、認知症があってもホスピスケアを受けられる施設が増え、在宅でもケアを受けられる仕組みができつつあります。本人の症状や希望に合わせて、終末期の過ごし方を選択できるようになってきました。

末期がんなどの治る見込みのない病気と認知症とを併せ持つ場合には、両方のケアを専門とする医療・介護のスタッフと連携すると安心です。

認知症のある方のホスピスケアは、家族とスタッフとの共同作業です。信頼できるスタッフと連携を取り、本人らしく生活の質の高い最期の時をサポートしましょう。

認知症があるとホスピスに入れないのでしょうか?

認知症だからといってホスピスに入れないわけではありません。しかし認知症の症状により、治療への同意の意思表示ができなかったり、ほかの患者の療養に支障をきたしたりすると考えられるケースでは、入院を断られる可能性もあります。詳しくはこちらをご覧ください。

がんと認知症とを併発している場合は、どの窓口へ相談すればよいでしょうか?

がんと認知症を併発している場合には、医療保険と介護保険の両方を利用する必要があります。医療相談は在宅医療相談、介護相談は地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。もしわかりにくければ、ケアマネージャーや病院のケースワーカーに相談しても構いません。詳しくはこちらをご覧ください。

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