近年、ホスピスを始めとする終末期医療が注目されています。 末期がんやエイズなどの治療が困難な病気の終末期を、心穏やかに過ごしたい方が増えています。
それに伴い、ホスピス機能を持つ施設が増えているのはご存じの通りです。 しかし、ホスピスケアを必要としながら同時に認知症を発症しているケースもたくさんあります。
その場合は、医療的ケアと認知症介護の両方を実現しなければなりません。「認知症だからホスピスに入れないのではないか」と心配な方も多いでしょう。
本記事では、認知症でもホスピスに入れるのかをはじめ、ホスピスでのケア内容や、ホスピスケアが受けられる主な施設などについて、専門家にインタビューした内容をもとに解説します。
認知症でもホスピスに入れるのか
認知症の方でも、ホスピスや看取り対応を行う介護施設への入居は可能です。
がんと認知症を併発している場合、徘徊や大声などの症状を理由に、一般病院から入院を断られるケースもあります。
医療機関の緩和ケア病棟は、主に末期がんの苦痛を取り除くことを目的としているため、認知症特有の行動への対応が難しいのが実情です。
しかし、認知症の方は絶対にホスピスで終末期ケアを受けられないということではありません。 現在の医療依存度や認知症の進行状況に合わせて、入居条件を満たす施設を探していきましょう。
認知症の方でホスピスに入れないケース
受け入れ条件はホスピスごとに変わりますが、主に以下の3つに当てはまる場合は入居を断られる可能性が高いです。
- 暴力・暴言が多くみられる場合
- 徘徊が多い場合
- 自傷行為が見られる場合
それぞれのケースごとに、専門家の意見を交えて解説します。
暴力・暴言が多くみられる場合
暴力・暴言が多く見られる場合、ホスピス側は入居者やスタッフの安全確保が難しいと判断し入居できない可能性が高いです。
ホスピスは静かな療養環境を提供している場所となります。大声を上げたり他者へ危害を加えたりする攻撃性の高い症状は、入居にあたっての大きな障壁となってしまうでしょう。


そういった症状が激しい方については、認知症の方がメインのグループホームでも対応が難しくなるため、まずは「精神科」や『メンタルクリニック』の受診や入院をして、症状が落ち着くまで待つことになります。
また、ホスピスで介護福祉士をされている須川さん(仮名)によると、暴力行為があると基本的に入居はできないとのことです
・お名前:須川さん(仮名)
・職業:介護福祉士(10年)
・勤務先:ホスピス型の有料老人ホーム
インタビュー情報を見る(タップ・クリックで展開)
・年齢:39歳
・居住地:東京都
・インタビュー時期:2026年4月
他の方に危害を加える恐れがあるほど暴力的な方については、入居されてもすぐに退去していただくことになってしまいます。
しかし、受け入れは施設側のリスクが高すぎるため、そもそも最初から入居をお断りすることの方が多いです。
徘徊が多い方
常に歩き回る「徘徊」が見られる場合、転倒のリスクや他の入居者の居室へ無断で入ってしまうといったトラブルが起こり得ます。
ホスピスは点滴や医療機器を使用している方も多く医療ケアも行われている施設であるため、付きっきりの見守りが必要な方の対応は現実的に難しいです。

そうすると、本来対応すべき医療ニーズの高い方へのケアがおろそかになり、仕事が回らなくなってしまうんですよね。
ですので、徘徊のある方の第一の選択肢としては『認知症対応型グループホーム』になるかなと考えています。
自傷行為が見られる方
自分自身を傷つけてしまう自傷行為や、それに付随して周囲に影響を及ぼす「自傷他害」がみられる場合、施設側は責任を持って本人の安全を担保することができません。
こうしたケースでは、ホスピスで対応できるケースは限られてしまいます。 通常はより専門的な精神科医療が必要とされるため、終末期の場合でもホスピスへの入居を断られてしまう可能性が高いです。

また、どうしても「他の利用者さんにも迷惑がかかるのでは」と思われてしまいます。 終末期の療養施設という点からしても、自傷行為がある方がホスピスに入居するのは難しいでしょう。
【簡単診断】ご本人の状態に合った施設と「受け入れの可能性」がわかる!
現在の身体状況や行動など、5つの質問にお答えいただくだけで、どのような施設が適しているか、今の状態でスムーズに入居できるかが判定できるツールです。
認知症の方がホスピスに入所した後の流れ
ホスピスや看取り対応施設に入所した後は、身体的な苦痛の緩和と精神的な安定を優先したケアが提供されます。
ホスピスへの入居に向けた準備を始めるタイミングは、病院や在宅介護において「安全確保が困難になった時」が一つの目安です。
認知症の終末期は、身体状況が急激に変化する可能性があるため、余命に関わらず早めに情報収集を行うことが重要です。 施設での生活では、家族が面会を通じてご本人と過ごす時間をとれるよう、スタッフによる様々なサポートが受けられます。
医療行為の有無だけでなく、家族の付き添い頻度や宿泊の可否など、個別の希望に応じた柔軟な対応をしてもらうことも可能です。
ホスピスで受けられる認知症向けケア内容
本章では、ホスピスで受けられるケア内容について詳しく解説します。
身体的ケア
認知症の進行により自ら不調を言葉で伝えることが難しくなるため、表情やわずかなサインから苦痛を察知し、安楽な状態を維持します。
認知症が末期に至ると、食事量の減少や自力での歩行が困難になるなどの症状が現れます。
ホスピスでは無理な延命治療を避け、ご本人が自然な形で穏やかに、そして尊厳を保って過ごせる環境づくりを徹底します。

ご飯を食べたい時に出してもらえたり、オムツを替えたい時に替えてもらえるといった『当たり前の生活』が担保されることで、自宅介護の時にあったような不快感やマイナスの感情が減るのだと思います。
精神的ケア
認知症の方は、自分が置かれている状況が分からなくなることで、常に強い孤独や恐怖の中にいます。
ホスピスでは、症状を単なる「問題行動」として捉えず、その背景にある「不安」を専門的に解消するケアを行います。
ホスピスのスタッフは、ご本人の言葉をありのままに受け入れ、安心感を与えるコミュニケーションに努めます。
認知症特有の周辺症状(BPSD)による徘徊や大声などは、言葉にできない不安やストレスが原因で引き起こされます。
スタッフはご本人の世界観を否定せず、「受容」の姿勢で尊厳を守るケアを提供します。 ご家族に対しても、面会時にご本人が安心できる適切な接し方のアドバイスを行います。

適切な距離感と専門知識を持った「プロによる受容」によって精神が安定するのではないかと考えています。
ご家族を支える包括的ケア・サポート
ホスピスでは、ご本人だけでなくご家族の心理的・肉体的な介護負担も減らせるように多職種と連携した包括的な支援を行います。
ご家族に対するグリーフケアや、各種手続きのサポートなど、ご家族が孤立しないための支援も重要な社会的ケアの役割です。
特に、認知症の長期間の在宅介護は、終わりの見えない不安からご家族を深く疲弊させることも少なくありません。
ホスピスなどの施設へ入居し、日々の身体介護や見守りの責任を専門家に委ねることで、ご家族は「介護者」から「家族」として純粋にご本人との心穏やかな時間を過ごせるようになります。
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認知症でも入れるホスピス施設
認知症でも入れるホスピス施設は、主に以下の5つです。
- 民間のホスピス型住宅
- 特養
- 病院(緩和ケア病棟)
各施設について、専門家へのインタビュー内容も交えながら詳しくご紹介します。
民間のホスピス型住宅
ホスピス型住宅は主に民間が運営し、手厚い終末期ケアを提供する施設です。
民間のホスピス型住宅には、主に以下の2つがあります。
- 住宅型有料老人ホーム
- サ高住
一般的な介護施設と比べて、手厚い緩和ケアがある、看護師の配置が多いといった点が大きな特徴です。
なお、一般にホスピス型の施設というと、住宅型有料老人ホームを指すことが多くなります。サ高住はもともと自立した生活ができる方を対象とした施設のため、ホスピス型のサ高住は多くはありません。
ホスピス型住宅では、点滴や経管栄養、痛みのコントロールといった医療処置も行います。がん併発の認知症患者に対しても、緩和ケアをしながら生活の場としての穏やかな環境を提供しているのが大きな強みです。


また、住宅型有料老人ホームについて、その名前から「介護付きよりもサポートが限られるのでは?」という印象をお持ちの方も多いと思います。
この点について、介護士であり現在は高齢者施設紹介業を経営されている和田さんにお話を伺いました。

「住宅型」という名前から「ただの家で、箱だけ貸して介護がついていないのでは?」と誤解して不安に思う方も多いですが、実際には外部サービス等を使ってちゃんと手厚い介護は受けられるんですよ。

なお、ホスピス型住宅も、通常の有料老人ホームなどと同じく医療保険や介護保険の適用範囲内でのサービス提供が基本となります。施設ごとの料金体系を事前に比較検討することが重要です。 ケアスル 介護に掲載中の有料老人ホームの月額費用の相場は、住宅型有料老人ホームが13万円、介護付き有料老人ホームが21.6万円となります。 
病院(緩和ケア病棟)
病院の緩和ケア病棟は、主に末期がん患者の身体的・精神的苦痛を和らげることを目的とした医療機関です。主にがんや後天性免疫不全症候群(AIDS)の末期患者を対象とした、専門病棟となります。
緩和ケア病棟は延命治療を目的とせず、患者のQOL(生活の質)向上と苦痛緩和に特化した医療を提供しています。
医師、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなどがチームを組み、多角的なアプローチで症状を管理している点が特徴です。
ただし、緩和ケア病棟の入退院基準は施設ごとに定められており、基本的に認知症の症状のみでの入院はできません。 末期がんの診断を受けている場合でも、徘徊や興奮といった認知症の周辺症状が顕著なケースでは病院側から受け入れを拒否されることもあります。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の高齢者を対象とした公的な介護施設です。
特養は地方自治体や社会福祉法人が運営し、終身利用を前提としている施設が多く、看取り介護加算を取得している特養であれば施設内での穏やかな最期を迎える対応が可能です。
民間施設と比較して月額利用料が安価に設定されており、長期的な費用負担を抑えながら終末期ケアを受けられる点が最大のメリットです。
ただし、特養は医療機関ではないため、看護師の夜間配置義務はありません。日常的な医療処置が必要な状態になると、退去勧告を受ける可能性があるのでご注意ください。

あと、認知症で徘徊する方がいっぱいいるようなところだと見守りにものすごい人手が必要になるんですが、会社も経営なので必要以上に配置はできないんですよね。
なので、難しい認知症の方もたくさんいらっしゃってケアに追われていて、実際にはなかなか手が行き届かないのが現状としてあります。
また、特養は人気が高いためすぐに入れないケースが多い点にも留意しておきましょう。

特養は複数施設に同時に申し込んでおくのがデフォルトで、見学して気に入ったところを選ぶというよりは、『空いたところに運良く入る』という空室の取り合い合戦のような状態です。
ホスピス型のサービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー構造と安否確認サービスを備えた賃貸住宅です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者が安全に暮らせるよう配慮されたバリアフリー構造の賃貸住宅です。
自立から要介護度が軽度の方まで入居でき、安否確認や生活相談サービスが受けられます。 介護が必要になった場合は、住宅型有料老人ホームと同様に外部の介護サービスを自由に選択・契約して利用します。
近年では、訪問看護事業所や医療機関と密接に連携し、看取りやホスピスケアに特化した重度者向けのサ高住も登場しています。
医療特化型のサ高住であれば、認知症とがんを併発している医療依存度の高い方でも、最期まで生活を継続することが可能です。 ケアスル 介護に掲載中のサ高住の月額費用の相場は、16.6万円となります。
まとめ
認知症の方でも、適切な施設を選ぶことでホスピスや看取り対応施設での穏やかな終末期ケアを受けることが可能です。
本記事の重要なポイントは以下の通りです。
【本記事の重要なポイント】
- 医療機関の緩和ケア病棟は、認知症のみを理由とした入院は原則不可です。
- がん併発の有無や現在の医療依存度に合わせて「ホスピス型住宅」「特別養護老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」などの看取り対応施設を選択しましょう。
- 認知症の進行による急な状態変化に備え、余命に関わらず早めの施設探しを開始することが大切です。
ご本人とご家族にとって最適な最期の住まいを見つけるためには、希望条件に合致する施設の正確な情報を集めることが不可欠です。
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ホスピスへの入居を考えられている場合は、ぜひケアスル 介護で施設を比較検討してみましょう。