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  • 【公開日】2023-01-26
  • 【更新日】2023-06-12

ホスピスで終末期医療を受けるには?他の選択肢との比較についても解説

ホスピスで終末期医療を受けるには?他の選択肢との比較についても解説

超高齢化社会である現在、終末期医療のあり方に大きな注目が集まっています。

そんな中、「ホスピスって何?」「終末期医療を受けるにはどうしたらいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ホスピスとは何か、ホスピスで終末期医療を受ける流れなどを紹介しています。

さらに、ホスピス以外の終末期医療を受けられる場所やその費用についても紹介するため、自分たちにあったケアを模索できます。家族に終末期医療が必要な方はぜひ最後までご覧ください。

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医療ライター
専門分野:医療・介護系全般
職業: 医療ライター

大学卒業後、医療専門新聞社である株式会社薬事日報社に入社。 約13年間、新聞記者として厚生日比谷クラブを始めとする記者クラブに所属し、厚生労働省や日本医師会、日本薬剤師会、医療現場、大学、関連学会などを取材して歩く。 2013年にフリーランスの医療ライターとして独立。独立後は医療・介護現場を幅広く取材しつつ新聞や雑誌、書籍、ウェブサイトなどで執筆。 これまで取材してきた医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は500人を超える。主な執筆媒体は「プレジデント」「ドクターズマガジン」「マイナビメディカルサポネット」「We介護」など。 共著は「在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期」(世界文化社)。現在、自分自身も2人の娘を育てながら認知症の母を介護中。詳しくはこちら

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ホスピスとは

ホスピスとは、最期の時を穏やかに過ごせるよう、病気などによる苦痛を緩和するケアを行う施設です。

元々はケア自体をホスピスと呼んでいましたが、日本では緩和ケア病棟などをホスピスと呼んでいます。

ホスピスの語源は、中世ヨーロッパにあります。旅人たちが病気などにかかると教会で手当てしたことから、看護する場所やケアをホスピスと呼ぶようになりました。

手厚いもてなしや世話をホスピタリティ、病院をホスピタルと呼ぶのも、このホスピスが語源です。

対象者

現在、日本のホスピスで入院が認められているのは、がん(悪性腫瘍)もしくはエイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)罹患者です。

原則、最期が近いと予見される終末期の方のみが入院できますが、一部のホスピスでは終末期ではない方の受け入れも行っています。

病院によって受け入れ体制が異なるため、気になる病院がある方は、一度確認してみましょう。

受けられるケア

ホスピスでは、療ではなく、苦痛症状などの緩和を目的とした全人的ケアを行います。

全人的ケアとは、身体的、精神的、社会的に本人を捉え、本人に合わせたケアです。具体的には以下のようなケアを行います。

身体的ケア 精神的ケア 社会的ケア
  • 症状緩和を目的とした放射線治療
  • 呼吸苦の緩和のための酸素吸入
  • 鎮痛剤の服用
  • 入浴・食事・排泄など日常動作の介助
  • 身だしなみを整える
  • 身体の清潔を保つ
  • 家族とゆっくり過ごす時間を作る
  • カウンセリング
  • 心地よく過ごせる環境を整える
  • レクリエーションやイベントを開催する
  • 僧侶・牧師などの宗教家によるサポート・宗教行事
  • 社会福祉士による生活全般の支援(入退院手続き・各種申請・家族の就労支援など)
  • 介護・看護サービスの手配
  • 遺産・遺品の整理や処理

ホスピスでは、原則、癌そのものに対する治療は行いません。

レントゲンや血液検査、輸血、点滴など、本人の状態を維持するために必要な検査などは可能です。また、必要に応じて、症状緩和を目的とした外科的治療や放射線治療が行われるケースもあります。

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ホスピスで終末期医療を受ける流れ

癌などによって終末期を迎えた方にとって、ホスピスでのケアは、余生を穏やかに過ごす選択肢の一つです。

しかし、ホスピスは、入院したい時にすぐ入院できるわけではありません。入院までの流れをしっかり把握しておきましょう。具体的な流れは以下の通りです。

  1. 入院申し込み
  2. 家族面談
  3. 入院判定
  4. 入院

待機期間は施設やその時の利用状況によって大きく異なりますが、平均で1ヶ月程度といわれています。

気になる施設がある場合は、直接問い合わせるとよいかもしれません。

1. 入院申し込み

まず、近隣の緩和ケア病棟を探しましょう。国立がん研究センターの情報サイト「がん情報サービス」で自分の住む地域の緩和ケア病棟のリストが見られます。

気になる病院が見つかれば、入院申し込みを行います。しかし、入院の申し込みや相談は入院したい病院によってやり方が異なるため注意が必要です。

かかりつけ医を通す場合もあれば、直接電話で相談できる場合もあります。ホームページをチェックするか電話で問い合わせてみましょう。

申し込み時に、家族面談の日程調整を行います。家族面談は、申し込みや相談から数週間から1ヶ月ほどかかる場合もあります。

人気のある病院では3~6カ月待ちの場合もあるため、入院を検討する場合は早めに問い合わせを行いましょう。

2. 家族面談

家族面談では、本人の身体状況、病気自体を治すための治療を希望しないかなど、病院ごとの基準に合っているかが確認されます。

また、入院生活が本人の意向に沿ったものになるよう、希望を聞き取ります。

家族面談の際には、以下のものを用意するよう指示を受ける場合が多いです。

  • 紹介状
  • 検査結果
  • CTやレントゲンなどの画像データ
  • 現在服薬している薬の情報
  • 本人の保険証

また、施設によっては面談に料金がかかる場合もあります。

3. 入院判定

面談後、1週間程度で受け入れの可否が決まります。そのあと、ベッドが空くまで待機する期間があります。

この待機期間は、施設や患者さんの病状、家族面談のタイミングにより異なるため、どれほどの時間がかかるかは一概にはいえません。

家族面談時に、おおよその目安を伝えられる場合もありますが、気になる方はあらかじめ問い合わせを行いましょう。

4. 入院

入院可能の連絡が来たらついに入院です。連絡が来る前に、衣類など必要な物品を確認し、まとめておきましょう。

飲食物の持ち込みや外出などは病院によって対応が異なります。入院後の過ごし方の希望がある場合は、家族面談の際などにあらかじめ確認しておきましょう。

また、ホスピスには、必ずしも長期入院できるわけではありません。本人や家族の状態によっては退院を促される場合もあるため、注意しましょう。

ホスピスで終末期医療を行う平均期間

ホスピスにおける平均滞在期間は、30日程度といわれています。

病院の報酬体系として「すべての患者さんの入院日数の平均が30日未満であり、患者さんの入院意思表示から平均14日未満で入院させている」または「患者さんの15%以上が在宅や診療所に退院する」場合は、高い報酬が設定されています。

つまり、できる限り早く退院してもらうと、病院は安定して収入を得られるのです。

もちろん、本人や家族の状態が整っていない状態で退院を促すようなケースはあまりないかと思います。このようなケースもあると念頭に置いておきましょう。

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ホスピス以外で終末期医療を受けるには

ホスピスは長期利用できない場合があります。そのため、ホスピス退院後や利用する前の準備として、あらかじめ介護を行う体制づくりを行うことが重要です。

ホスピス以外で終末期医療を受けられる場所は老人ホームと自宅の2つがあります。どちらもあらかじめ要介護認定を受ける必要があるため、忘れずに行いましょう。

要介護認定については、地域包括センターや市町村窓口に問い合わせると、手続きのサポートを得られます。

老人ホームに入所する

実はホスピスケアを提供する老人ホームが少しずつ増えて来ています。

老人ホームは、入院期間に制限があるホスピスとは違い、入居期間に定めがない場合が多いです。そのため、最期まで住処の心配をせずに過ごせます。しかし、病院より医療面では弱いため、通院などで対応する場合があります。

また、家族への負担が軽いのもメリットの一つです。介護のプロが対応するため、本人への負担も軽くできます。

自宅でケアを行う

実は自宅でも終末期医療を受けられます。定期的に医師や看護師が訪問し、診察やケアなどを行う方法が主流です。

しかし、ケアを受ける方の中には、医療だけではなく、介護を必要とする方も少なくはありません。医療だけではなく、訪問介護や訪問入浴など、介護サービスも併用するケースも多くあります。

自宅でのケアは想像以上に心身に負担がかかります。そのため、いかに外部サービスをうまく使いながらケアを行うかが、重要といえるでしょう。

終末期医療にかかる費用

ホスピス、老人ホーム、自宅、どの選択肢を選んでも費用はかかります。できるのであれば費用を安くしたいと考える方は多いでしょう。そんな方のために、それぞれの平均月額費用を表でまとめました。

ホスピス(緩和ケア病棟) 老人ホーム 自宅
月額平均費用 14〜19万 20〜55万 4〜7万

選ぶホスピスや老人ホームによって費用は大きく変化します。自宅でケアを行っても、受けるサービス量や処置内容はその方によって異なるため、どれだけ費用がかかるかは一概にはいえません。ここに記載してあるものはあくまで医療と介護の平均額になります。

ホスピス(緩和ケア病棟)に入院した場合

ホスピス(緩和ケア病棟)に入院した場合にかかる費用は、入院料の自己負担分、食事代、差額ベッド料の3つです。この入院料の自己負担は、入院期間や本人の自己負担割合によって費用が変動します。

食事代の自己負担は、基本1食460円です。民税非課税世帯の方は、さらに安い費用が設定されています。

差額ベッド代は、相部屋から部屋をグレードアップした際にかかる費用です。その病院によって金額は大きく異なるため、今回は費用に含んでいません。

参照:『入院したときの食事代

老人ホームに入所した場合

介護施設に入居する場合は、居住費や管理費、食費、日常生活費、医療・介護サービス費などがかかります。

場合によっては入居一時金が取られる場合もありますが、ホスピスプランのある老人ホームは、短期間の利用が多いため一時金を求めない場合が多いです。

市町村などの公的な機関が運営している公的施設は、介護保険が適用される費用が多く、比較的安く入居可能です。

一般企業などが運営している民間施設はサービスに趣向が凝らされている一方で費用が高額になりやすい傾向があります。

公的な施設では施設の種類が同じであれば、提供されるサービスはほとんど同じです。しかし、民間施設は施設によって提供されるサービスが異なるため確認を忘れずに行いましょう。

自宅でケアした場合

自宅でケアした場合は、医師の往診や看護師がケアを行う訪問看護、ヘルパーがケアを行う訪問介護の利用がメインとなります。

受けるサービスやその量によって金額が異なりますが、介護費の平均額は月2万円ほどです。医療費と介護費を合わせて月4万円ほどが平均的ですが、食費やおむつなどの生活用品が別途必要になるため、場合によっては月5万円〜7万円ほどかかる場合もあります。

往診や看護師のケア以外は家族でも対応が可能です。そのため、自分たちでケアを行い、費用を抑えようとする方も少なからずいます。

しかし、この考え方は危険です。負担を重くした結果、今度は自分が倒れてしまうケースも少なくはありません。ケアマネージャーと相談しつつ、適切なサービスを利用しましょう。

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ホスピスなどで終末期医療を受ける場合に利用できる制度

終末期医療にはお金がかかります。費用負担が重く、辛いと感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、ホスピスなどで終末期医療を受ける場合、一定の要件を満たせば、負担が軽減される制度があります。うまく活用すると、自己負担を大幅に軽減することが可能です。

特に、自宅でケアはできないけれど、施設入所は費用負担が重いと感じている方はぜひ活用ください。

医療と介護の自己負担を軽減する高額介護合算療養費制度

高額介護合算療養費制度とは、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)にかかった医療と介護の自己負担が高額になった方の負担を軽減する制度です。

所得や年齢に応じて限度額が設定されており、限度額を超過した金額分が還付されます。

限度額

後期高齢者医療保険+介護保険 被用者保険または国民健康保険+介護保険(70〜74歳のいる世帯) 被用者保険または国民健康保険+介護保険(70未満がいる世帯)
現役並み所得者(上位所得者) 67万円 67万円 126万円
一般 56万円 62万円 67万円
低所得者Ⅰ 31万円 31万円 34万円
低所得者Ⅱ 19万円 19万円 34万円

該当する方は翌年の2月、3月に市役所から申請書が届きます。返送するだけの簡単な手続きです。忘れずに行いましょう。

参照:『介護保険制度の見直しについて

特定のサービスにかかる費用を軽減できる介護保険負担限度額認定証

介護保険負担限度額認定を受けると、収入や貯蓄が一定の基準以下の方は、介護サービスにかかる居住費や食費を軽減できますこの制度も収入や貯蓄額などによって負担限度額が決まっています。

民間施設への入所などでは、この制度の恩恵を得られません。対象となるサービスは以下のサービスに限られるため注意しましょう。

  •  介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  •  介護老人保健施設
  •  介護療養型医療施設
  •  介護医療院
  •  地域密着型介護老人福祉施設
  •  短期入所生活介護
  •  短期入所療養介護(ショートステイ)

負担限度額認定は自分で申請を行う必要があります。要件に当てはまっているかよくわからない方は、貯蓄金額などを確認し、市町村窓口に問い合わせてみましょう。

また、介護保険負担限度額認定証の有効期限は、申請月の1日から7月末までです。継続して利用する場合は更新手続きが必要となります。

参照:『介護保険負担限度額の認定について ~介護保険施設を利用するときの居住費と食費~【高齢者福祉課】

終末期医療はホスピス以外の選択肢もある

終末期医療を受ける場として、ホスピスは代表的な選択肢です。しかし、必ずしも長期利用ができるとは限りません。30日程度で退院を促されるケースも少なからずあります。

そのようなケースに対応するためにも、ホスピス以外の選択肢についてあらかじめ考えることが重要です。老人ホームへの入居や自宅でのケアも視野に入れ、早い段階から自分たちにあった終末期医療の場を模索していきましょう。

まずは、近隣の病院や施設を調べてはいかがでしょうか。いいホスピスや施設が見つかるかもしれません。

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