「最近、家族の性格が変わった?」と日常生活における言動から、そのように感じている方はいないでしょうか。もしかしたら「認知症の徴候」かもしれません。実際に、認知症による性格の変化は科学的に証明されています。
本記事では、認知症によって性格が変わったような言動が見られた場合の原因や対処法などを中心に解説します。対処法は症状ごとに解説しているので、ぜひ参考にしてください。
認知症を発症した方は、認知症が原因で性格が変わったように感じる場合があります。中には「認知症で本性が出たのでは?」と思うのも無理はないほどガラッと変わる方もいるほどです。具体的な言動の変化として、穏やかな方が暴力を振るうようになった、朗らかな方が突然無口になった、厳しい方が妄想を話すようになったなどの変化が見られます。
認知症は脳の障害により生じると言われていますが、なぜ脳の障害が性格を大きく変えてしまうのでしょうか。ここでは、認知症の症状と性格に及ぼす影響について解説します。
認知症の原因
認知症は、さまざまな原因で脳に障害が生じ、日常生活に支障が出ている状態の総称です。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの種類があります。
[アルツハイマー型認知症] | 老人斑が脳の広範囲に出現し、主に前頭葉の脳神経が死滅し、脳が萎縮する。
前頭葉にある海馬が主に損傷するので記憶力障害や高次機能障害(失行、失語、失認など)が症状として現れる。 |
[レビー小体型認知症] | レビー小体病というレビー小体(構造体)が脳に出現することで神経細胞が死滅し、認知機能障害やパーキンソン病などを発症する。
鮮明な幻視や妄想などの精神症状が現れる。 |
[脳血管性型認知症] | 脳梗塞や脳出血などによる脳血管の損傷で脳細胞が壊死する。壊死した場所により症状も異なる。
認知機能障害や妄想、感情のコントロールができなくなるなどさまざまな症状が現れる。 |
上記のように、認知症の種類によって障害の生じ方が異なり、それぞれ特徴的な症状があります。
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認知症の中核症状
中核症状とは、脳細胞が損傷や壊死したことで起こる症状です。損傷した場所により現れる症状も異なります。
記憶障害 | ほんの数分前の出来事を思い出せない、新しいことが覚えられないなどの症状。
子どもの頃の記憶などは残っている方も。 |
見当識障害 | 季節や時間の感覚がわからなくなる症状。
迷子になったり、家族がわからなくなってしまう場合も。 |
失語 | 言葉がうまくでてこない症状。
運動性失語と感覚性失語に大きくわけられる。 |
失行 | 着替えができなくなったり、お箸の使い方が分からなくなっているなど身体的に異常がないのに行動できない症状。 |
失認 | 視覚に異常がないのに目の前のことが認識できない症状。
味覚や感覚などはあるが理解はできない状態。空間の半分を把握できないことも。 |
実行機能障害 | 計画をたてて物事を実行できなくなる症状。
複数のことを同時にできないなど、予想外の出来事に対処できないなどがあげられる。 |
これらの症状は本人にとっても非常にストレスとなり、次項でご紹介する「行動・心理症状」の攻撃行動などにもつながりやすいです。
行動・心理症状(BPSD)
行動・心理症状(BPSD)とは、認知症の中核症状に伴って現れる行動や心理的な症状です。
徘徊 | もともと運動好きな方が散歩に出かけたつもりが帰れなくなった、
時間間隔が分からず歩き続けたといった見当識障害などによる徘徊の場合もあるが、 環境にストレスや不安を感じて徘徊しているケースも。 |
攻撃行動 | 見当識障害や記憶力障害によるコミュニケーションがうまくとれなくなったために、不安や不満を大声で叫ぶ、罵るなどの言語的攻撃行動や叩く蹴るなどの身体的攻撃行動。どちらも感情のコントロールがつかなくなっている状態。 |
妄想 | もの盗られ妄想や被害妄想など。記憶力障害や見当識障害と、うつや不安などにより引き起こされる。 |
幻覚 | 幻視や幻聴など「ないものが見えている・聞こえている」状態。幻覚はレビー小体型認知症に多い。空間把握ができないことによる幻視などがある。 |
ほかにも「帰宅願望」といった症状もあります。環境へのストレスや夕暮れ症候群(夕方になると不穏な行動が多くなること)によって「帰りたい」と落ち着きがなくなってしまいます。

性格が変わったように見えるのはなぜ?
「穏やかだった人が攻撃的になった」「活動的だった人が消極的になった」などが認知症の方にはよくみられます。本性なのではないかと言われる場合もありますが、実際は脳の障害によるものがほとんどです。
脳の障害で生じた中核症状で、不安やストレスをうまくコントロールできず、脳で処理ができずうつになったり攻撃的になってしまったりします。もともとの性格も認知症発症後の言動に影響しますが、認知症による影響が大きく、本性が出たわけではないためご安心ください。
性格が変わってしまい、驚かれる方や不安になる家族も多いと思います。不安な時は病院やケアマネージャーなどに相談しましょう。
性格が変わったように見えるのは不安の表れ
認知症を発症していない方でも、不安な気持ちになると「みんな自分を悪く言っているかもしれない」といった妄想に襲われたり、自分が何もできないのではないかと憂鬱になったりする方も多いでしょう。そうした不安から八つ当たりしてしまう方や被害妄想をしてふさぎ込んでしまう方もいるはずです。そうした行動は、ストレスから自分を守るための防衛本能です。
私たちはそうした本能的な部分を理性で抑えられるため、人と衝突せずに生活していますが、認知症の方は理性のコントロール機能が低下しています。そのため、暴力などを行ってしまうのです。
認知症の症状と対応方法
認知症による性格の変化が、どうして起こってしまうのか解説しました。では、実際にはどのような性格変化(症状)が見られるのでしょうか。ここからは症状別の解説に加え、対応方法をご紹介します。
暴言・暴力
不安な気持ちが怒りに変わったり、自尊心を傷つけられて怒ったりしてしまうのは認知症でなくとも起こりえます。
前頭葉が損傷を受けると感情の制御ができなくなり、暴言や暴力に至ってしまいます。暴言や暴力は介護者にとってもつらい行動・心理症状(BPSD)の一つ。対応方法としては怒りの原因を取り除いてあげるのがよいでしょう。
例えば、立っているだけで怒る方がいます。それは自分の進行を邪魔されたと勘違いしているケースです。対処法として、進行先に立たない、否定も極力せず言い回しを変えてみるなどが挙げられます。しかし、それでも解決しないケースも多いため、一度その場所を離れて落ち着くのを待つのも手段の一つです。
自傷や手の付けられないほど暴れる場合は、心療内科などを受診し投薬治療を行いましょう。
妄想・幻視
ホラー映画を見たあとに背後が怖く感じ、何かいるような気配がした経験はありませんか?現実に存在しないのに、存在するかのように怖くなってしまうのは、恐怖心のストレスから引き起こされるものとされています。認知症で見られる「妄想」や「幻視」も同じで、不安な気持ちから悪口が聞こえたような気がしたり、亡くなったはずの親がいるような気になったりするのです。
一方で妄想ではなく「本当に見えている」ケースもあります。レビー小体型認知症の症状の一つとしてあげられ、レビー小体により後頭葉の神経細胞が損傷を受けて空間把握ができなくなり、ものの認識ができなくなります。どちらにせよ認知症の方にとっては深刻な問題なので否定せず話を聞き、一緒に確認して安心できるようにしましょう。家具を減らして見通しを良くするなど、環境を変えてみるのもよいでしょう。
多動
認知症の方では、「徘徊」や「多動」の症状が多々見られます。認知機能の低下により道が分からなくなる場合や、動作を忘れてしまっているケースがありますが、心理症状としても多動があげられます。不安な気持ちから家に帰りたくなったり、落ち着きがなくなって動き回ったり、幻覚から逃げているパターンも。認知症は危機管理も低下するので、多動や徘徊の結果、思わぬ事故につながる可能性もあり、家族としては不安な症状です。
対応方法として、危険なものと本人の距離を空けましょう。玄関に鍵を掛ける、キッチンに入れないようにする、誤嚥しそうなものは隠すなどです。本人に対しては話を聞いて安心させてあげましょう。時には薬を用いて不安を取り除いてあげてもよいでしょう。
そのほか介護で本人に接する際に気を付けるべきことについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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認知症になりやすい性格がある?
認知症による性格の変化は本性が出ているわけでないと説明しました。逆に性格や習慣によって認知症になりやすくなる場合はあるのでしょうか。認知症になるとははっきりわかってはいませんが、リスクが高くなる性格や習慣の共通点はあるとされています。ここからは認知症予防の観点から、なりやすい方となりにくい方の特徴を解説していきます。
認知症になりやすい人の特徴
認知症のリスクを上げる性格は、次のような特徴があるとされています。
- 協調性がなく孤立しがちである方
- 神経質でストレスを感じやすい性格
- 傷つきやすい性格
脳に刺激のない状況が続くと、脳の萎縮を促してしまいます。協調性がなく孤立してしまうとあまり人と話さず、外出も少なくなるため脳を萎縮させやすいのです。また、ストレスを強く感じると、記憶力や認知力を低下させる可能性のある「コルチゾール」が分泌され、脳の萎縮につながりかねません。さらに、テレビやネットへの依存も脳機能低下のリスクを上げる行動です。
認知症になりにくい人の特徴
認知症になりにくい方は、適度な刺激を脳に与えながらも、脳にあまり負荷をかけていない状態です。ストレスを上手く発散し、脳に刺激を与える生活をしているとリスクを下げられるとされています。また、コミュニケーションを日頃から取る方や、責任感のある方は認知症になりにくいようです。
すぐにでもできる認知症予防としては、適度な運動や睡眠は脳を休ませ、血流を良くすることを心掛けることです。しかし、まだまだ解明されていないのが認知症です。100%予防ができるわけではないため、認知症になりにくい人や認知症の予防方法に関して、あくまで参考程度にしておきましょう。
受けられるサービス
認知症による性格の変化は、対応方法を知っていても家族の立場だと、精神的にも肉体的にも辛くなります。負担を減らすために、積極的にサービスの利用をしましょう。ここでは、認知症による性格の変化への負担軽減に受けられるサービスを紹介いたします。
生活介助・支援
認知症と診断され、要支援か要介護の認定を受けた際に利用できる「介護保険サービス」があります。認定を受けると介護保険を利用できるので、家族の負担を減らせるでしょう。
また、福祉用具をレンタルして住宅環境を整えられるので、認知症の症状によるリスクも下げられます。必要な福祉用具がわからない場合は、「地域包括支援センター」や「居宅介護支援事業所」への連絡で契約できる「ケアマネージャー」に相談してみるとよいです。専門的な知識を持っているため、的確なアドバイスやサポートを受けられるでしょう。
経済支援
認知症の症状によっては特別障害者手当も受けられます。要介護4以上の認定を受けた方が対象になります。身体面だけでなく精神面での障害も対象になっているので、重度の認知症で意思疎通ができない、日常生活に支障をきたしている場合も該当する可能性があります。重度の認知症により仕事を辞めざるを得なくなった介護者の負担軽減にもなります。
医療・介護
医療費が所得に応じて1割から2割になる高齢者医療費制度はもちろん、高額介護サービス費制度では所得により変わりますが、課税所得380万未満では上限44,400円を超えた介護サービス費用は返還されるので高額な介護費用の負担を軽減に。心療内科への診察も負担が減るので、向精神薬などで不安な気持ちを解消する、不眠を解消するなどが家族の負担の軽減になります。
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認知症で現れるのは本性ではなく不安
突然まわりが知らない人間だらけだとしたら、突然生活の仕方がわからなくなったとしたら、不安でたまらないでしょう。その不安の伝え先も伝え方もわからず、感情のコントロールも難しいのが認知症です。
認知症による心理的症状を理解し、心療内科などの医療機関と連携すれば、認知症の方も周囲の方も負担をぐっと減らせます。上手くサービスや医療機関を利用しながら、認知症の家族と関わっていきましょう。
「認知症で本性が出る」に関するよくある質問
Q.夕方になると落ち着かなくなるのはどうして?
A.暗くなるにつれて不安な気持ちが強くなったり、忙しかった記憶から何かしなければならないと焦ったりする気持ちから多動や妄想が起こります。「夕暮れ症候群」と言いアルツハイマー型認知症の方にはよく見られる行動です。音楽をかけるなど気分を紛らわせることが対処方法になります。
Q.認知症で変わってしまった性格は戻せる?
A.元通りになるのは難しいです。しかし、向精神薬などで暴力や妄想を落ち着かせたり、気分転換や落ち着いた接し方で症状を緩和させたりすることは可能です。向精神薬は副作用の強いものもあるので、医師と相談のうえで服用を決めましょう。
そのほか認知症の方の入居に対応している介護施設について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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