• 在宅介護
  • 【公開日】2024-02-16
  • 【更新日】2024-02-16

家族介護者が福祉機器を使用するポイント ー上手に使用して介護負担を軽くし安心介護生活を達成するー

家族介護者が福祉機器を使用するポイント ー上手に使用して介護負担を軽くし安心介護生活を達成するー
宮﨑 貴朗 准教授
東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
理学療法士、介護支援専門員
日本理学療法士協会、日本体力医学会、医療情報学会、情報社会学会
横浜市総合リハビリテーションセンター、東京都リハビリテーション病院を経て、介護保険施設は介護老人保健施設、介護福祉施設、通所、在宅サービスにも勤務。熊本地震後に、熊本県の母の遠距離介護、水害と地震後の復興を継続中。
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1. はじめに

在宅における家族介護者は、在宅生活を安心して継続するために非常に重要な役割を持っています。家族介護者が福祉機器を有効に使用することは、介護負担の軽減に有効なものであり、ここでは福祉機器の適切な選択方法、情報入手方法、使用方法についてまとめて紹介します。

具体的には、要介護者と同居(近居)の家族介護者が福祉機器を検討する際の重要なポイントについてです。専門家による研究も多くなっておりますが、在宅介護者の介護負担を軽減するための戦略として福祉機器の利用は有効であり、あわせて支援を確実なものとするために家族内や地域社会との協調、情報収集などが有効であることを解説します。

読者の設定は、在宅において要介護高齢者と同居ないしは近居の介護者として、高齢の要介護者と同居(近居)している40から60歳代の介護者として話を進めます。

最初に、解決すべき介護負担の原因と対策、次に福祉機器利用が介護の有効政略であることについて順に解説します。

2. 介護負担への対応は福祉機器使用が有効である

在宅ケアにおける介護負担が過重になってくると、在宅介護者への心身の問題が引き起こされることも心配ですが、なんといっても在宅介護の継続が困難になることはぜひとも避けたいことです。以下に介護負担について、ぜひとも避けるべき課題であること、家族介護者の重要性、対策して福祉機器の使用の有効性について説明します。

2.1. 介護負担対策の重要性

在宅の要介護者が在宅生活を継続できるように訪問、通所、レスパイトケアとしての短期入所などの公的介護保険制度をはじめとした介護サービスが提供されるようになっています。365日24時間のケアの提供は困難であり、在宅介護者の介護負担は、ある程度は解消できるにしても、依然として介護負担はこれから解消すべき課題であることにかわりはありません。介護負担により、心身のストレス、不調などを起こすことが報告されています。これらは、在宅ケアの存続が危うくなることを意味します。適宜、介護負担の解消を戦略的に考えておくことが必須であるということです。

2.2. 介護負担の原因と福祉機器使用による対策

①原因

介護負担が過剰となる原因は、介護力(介護パワー)と要介護の度合い(介護ニーズ)のアンバランス、つまり、「介護ニーズ」に対して「介護パワー」が不足していることや疲弊してきていることです。「介護ニーズ」が大きさに対し「介護パワー」が小さくなっていることにより介護負担が問題となってきます。

「介護ニーズ」は、新たな病気や障害を持つ以外に、要介護者は加齢とともに、「介護ニーズ」は大きくなります。もちろん、ケアやリハビリテーションなどにより改善はあったとしても、それは本来、要介護者ご本人が潜在的に持っていた機能を取り戻しているのでしょう。加齢の影響を少なくし、新たな病気や障害を引き起こさないような予防が重要であります。

「介護パワー」が影響されるのは、介護者やその協力者に問題が起きた場合です。介護者自身も加齢とともに高齢化し、新たな病気や障害を引き起こす可能性もあります。この場合では介護者の健康管理の心配があげられます。在宅ケアは、要介護者中心(パーソンセンタードケア)であることは大原則ですが、介護負担により介護者の健康、精神的負担が大きく、介護者の心身の健康管理が重要であることは、昨今の多くの研究でも指摘されています。

これらにおり、ひいては、家族介護者の介護力の低下をもたらすことになります。あわせて、家族介護者の協力者であるその他の家族、近隣の方々などのご都合によっても、在宅介護における総計でとしての「介護パワー」は影響を受けます。家族介護者と介護保険制度によるフォーマルサービスと合わせた、要介護者に対する在宅での「介護パワー」が低下しないように心がけることが重要です。

➁福祉機器使用による対策

「介護ニーズ」に対応できる「介護パワー」の適正化、最適とするには、福祉機器の利用を加えてみることも非常に有効であります。「介護パワー」適正化としての福祉機器の利用は、特効薬ともいえるものですが、機器の選択と使用を適切にすることも重要です。福祉機器利用の効果についての研究では、介護者の負担の軽減、心身機能の改善に有効であり、関係者との連携、情報の収集が必要であると報告されています。福祉機器の使用にあたって重要なのは、家族介護者がフォーマルサービスを十分に有効に利用するということです。

3. 福祉機器の利用は、有効な在宅ケア戦略である

福祉機器導入のポイントとなるキーワードは、「目的」、「使用」、「コスト」の三つです。すなわち、何を「目的」として、誰がどのように「使用」するのか、使用にあったっての導入「コスト」について明確なイメージを持って要介護者にとってベストな選択をしていくことです。以下に順に解説します。

3.1. 福祉機器使用を始める前に

まずは目的をはっきりとすることです。目的として要介護者の生活におけるどの場面で、何に使うかを具体的にすることです。例えば、入浴と言っても、浴室までの移動、着替え、洗体、洗髪、浴槽の使用、シャワーなどに大まかに分かれ、これらの中での優先順位について考えておくことも重要です。車いすも使用されている方も多いと思いますが、屋内あるいは屋外で使用するのか、自動車での受診の付き添いの場合は、車に車いすはうまく収納できていますかなどなど、使用目的にマッチングすることで使いやすい安全な機器の選択ができるようになると思います。

福祉機器の入手経路については、購入だけではなくリースもあります。導入や試用の費用について心配となるでしょうが、介護保険制度にもレンタルがあり、かなり安価です。意外に使用が少なめでお尋ねすることをお勧めするのは、居住地域の公的機関、社会福祉協議会、福祉関係の団体です。(専門機関にはレンタル用の福祉機器も準備されいることが多いのですが、割と使用は少ないように筆者は感じています。)

3.2. 使用する際のポイント

福祉機器の利用は、入手し納品された時に、専門業者や専門職により説明もあるでしょうし、わりと簡単に使用方法はわかりやすいでしょう。しかし便利で誰でも使えるものであるという感じはしますが、要介護者や介護者が安全に使用できるように、説明があればしっかりと聞くのは当然ですが、納品時に実際に試用してみることを忘れないでください。試用することで、改めて使用方法のコツなどの細かい点やメンテナンス、注意点などの確認にもなります。

使用時に忘れてはならないことは、安心、安全に使用することは、気に留めておくべきです。日常の福祉機器使用における使用には、事故も多く、深刻なものとなることもたびたびあります。公益財団法人テクノエイド協会のホームページの福祉用具ヒヤリハット情報に様々な事例が紹介されており閲覧を推奨します。要介護者本人や介護者といった専門職ではない人たちが操作して使用する場合だけではなく、専門職が使用した際の事例も紹介されており、これは気を付けなければと参考となる事例が多く紹介されています。

あわせて機器の管理とメンテナンスも忘れてはならないことです。保管場所、保管方法、固定のネジやストッパーなどが緩んでいないか、老朽化による破損の危険性はないかなど機器のメンテナンスです。機器の専門家でもないのにメンテナンスは難しそうです。日常のケア生活において、通所サービス、訪問サービスなどを受けている際に、専門職も使用することも多いと思います。そうした際に、使用上に不都合なことがあれば相談するようにし、メンテナンスも適切な対応ができていけると思います。もちろんのこと、不調や故障などに気づきました場合は、すぐにケアマネージャーや納品業者へ連絡するようにしてください。

3.3. コスト

コストといっても経済的負担だけではなく、使用時やメンテナンスの時間や手間も含まれます。

介護保険制度などを用いて購入費用やレンタル費用といった金銭面だけではなく、人的なコスト、つまり、時間、身体的な負担度などを合わせて考えるべきです。経済的負担については、先ほど述べたように、購入だけではなく、介護保険制度ではレンタル制度が導入されており、それほど問題にはならないと思います。

福祉機器利用の効果は、介護に伴う身体的負担や介護に要する時間、精神的負担の軽減などが期待できます。効果が大きなものであっても、導入費用、機器使用の手間、機器の準備やメンテナンスの時間などが大きなものであれば、かえって新しい負担が生まれてしまいます。介護ケアにおいて以上の複数の因子に影響されるものですが、要介護者と介護者全体においてのバランスという家族全体の生活の質というものを大事にするべきでしょう。

3.4. 福祉機器の使用を始めたあと

介護の見通しについては、ケアマネージャーを中心としたケアチームで、ケアプランに準じ、適切な福祉機器の導入を検討し決定していくこととなっております。専門職チームが大きくかかわっているケアプランにあげられていないからと言って、福祉機器検討の余地がなくなるわけではありません。ケアを続けながら、ケアについて、こうしたら良いかもとか疑問点などが出てきた場合は、ケアマネージャーやケアにあたっている専門職などをとおしてケアチームへ改めて相談してください。専門職といえでも、ケアチームの中での情報共有以外に身近な家族介護者の意見により、ケアプランを調整していくことはたびたびあることです。

様々なチャンネルからの情報入手により、これもどうだろうかということは、積極的に検討すべきことであり、また、一旦、ケアプランがスタートしても、ケアプランの見直しは可能であり、福祉機器の導入は安価なレンタルが介護保険制度にも取り入れられており、いつでも導入や変更は可能であることが多いです。

4.おわりに

最後に家族介護者であることの強みについて述べたいと思います。家族介護者は、要介護者ご本人にとっても、ケアチームの中でもキーパーソンであるということです。

この解説文で想定している家族介護者は、同居(近居)していますので、要介護者の生活歴、ライフスタイル、どのように過ごしてきたか、どのように過ごしているかなどを、誰よりもよくご存じであります。「親だし家族だから当たり前でしょう」という感じはします。しかし、これらは、専門職ケアチームにとって、とても貴重な情報であります。専門家がどれだけ検討しても、あくまでも要介護者ご本人や同居されている介護者をはじめとした家族みんなの生活とのマッチングができないと、全てのケアプランは無益なものとなります。家族介護者であることが、ケアチームの中で、専門職でもおよばないキーパーソンであるということです。

福祉機器使用のバリアとして、使用方法が難しいのではないかということを報告した研究もあります。キーパーソンであり、要介護者ご本人のことを最も知っておられる家族介護者だからこそ不安になることはありません。要介護者ご本人、介護者、その他のご家族や知人などすべての方々の生活の質をあげるように福祉機器の使用が進んでいくことを望んでいます。

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