認知症の方の介護では、お風呂に入らないといった悩みが出てくるかもしれません。
「今まで好きだったのにどうして?」と感じる方も多くいるでしょう。
認知症には「お風呂の入り方がわからなくなる」といった症状があります。
お風呂に入りたがらないのは認知症だから当然と思わずに、その真意を探ってみてください。
本記事を最後までご覧になれば、認知症の方がお風呂を嫌がる理由とその対応策がわかります。ぜひ参考にしてみてください。
認知症の方がお風呂に入らない10個の原因
認知症にはさまざまな症状があり、お風呂に入らない行動も症状の一つです。
お風呂に入らない理由としては、主に以下のようなものが挙げられます。
- お風呂に入ること以外に関心がむきやすい
- お風呂に入ったと思い込みやすい
- お風呂に入る体力がない
- お風呂に入ることを理解できない
- お風呂に入ること自体が混乱になる
- お風呂に入ることへの不安を感じやすい
- お風呂に入ることへの恐怖を感じやすい
- お風呂に入ることへの羞恥心を抱く
- お風呂に入ることに不快感や面倒くささを感じる
- お風呂に入るための介助が嫌だと思っている
一つずつみていきましょう。
認知症だとお風呂に入ること以外に関心がむきやすい
認知症になるとお風呂に入る以外に関心がむきやすくなります。
なぜなら、今はお風呂に入るタイミングではないと思っているからです。
今は見たいテレビがある、横になっていたい、動くのは疲れるなど、他に興味がむいています。
家族の都合でお風呂に入る時間帯が変わってはいませんか。
もともとの入浴の時間帯から変わったのであれば、変更の事情を丁寧に説明する必要があります。
また本人に通じる言葉掛けがあれば、あっさり入ってくれるかもしれません。
たとえば「明日は病院に行く日だからきれいにしようね」や「明日はお友達の〇〇さんと会うからきれいにしましょう」などです。
お風呂に入る楽しみが薄れ、お風呂以外に関心があるのかもしれません。
認知症だとお風呂に入ったと思い込みやすい
認知症だとお風呂に入ったものと思い込みやすくなる傾向があります。
と言うのも、記憶力が低下し記憶違いをしているためです。
本当に入浴したのに忘れているケースもあれば、入っていないのに入ったと思い違いをしている場合もあります。
思考や判断力も低下してくるので「自分はまだきれいだからお風呂に入る必要はない」や「今週入ったからまだ汚れていない」などの思い込みで入浴の拒否もあり得るのです。
記憶力の低下で、お風呂に入ったと思い込んでいる可能性があります。
認知症だとお風呂に入る体力がない
認知症ではなくても高齢になるほど体力が落ちてきます。
入浴をする行動は体力が必要です。
お風呂好きだったとしても、楽しみだった毎日の入浴も次第に間隔があき、入浴を面倒と感じるようになります。
お風呂に入るために洋服を脱ぎ、入浴をするためには段差のある浴槽をまたぐ、洗髪、洗顔、全身を洗うなどの動作、入浴後にも全身をふいてパジャマを着るといった行動には体力
が必要です。
高齢者でもある認知症の方は体力が衰えてお風呂に入れなくなっているかもしれません。
認知症だとお風呂に入ることを理解できない
認知症になると、当たり前だった入浴行為が理解できなくなってきます。
今までの記憶や日常生活があいまいになってしまうのです。
家族に脱衣場に連れていかれても、知らない場所で服を脱げと強制されているように感じ、恐怖や不安を覚えます。
「風呂」の言葉自体がわからなくなっていたら、入浴をしている写真を見せたり、バスタオルやシャンプーを見せると思い出す可能性が高いです。
お風呂場で湯船を見せると湯気がたっていて気持ちよく入っていたシーンを思い出す場合もあります。
入浴する行動自体がわからなくなるのも認知症の方にはよくみられる症状です。
認知症だとお風呂に入ること自体が混乱になる
認知症だとお風呂に入るという行為自体に混乱します。
お風呂の存在や意味はわかっていても、入浴のやり方がわからないのです。
どのように入るのかが理解できず、脱衣所に連れていかれてもお風呂に入らなかったり、入れないときもあります。
一つ一つの動作を確認し、次は何をするのか、なぜそれをするのかを説明しましょう。
洋服を脱ぐところから、お風呂に入ってあがるまでの順番を一通り教えます。
一気に話さずに、その都度、次に何をするべきかを伝えてみてください。
お風呂に入らない理由は、認知症になると入浴自体が混乱するからです。
認知症だとお風呂に入ることへの不安を感じやすい
認知症だと入浴への不安を感じやすくなります。
過去に水のトラブルにあった場合は、水が怖いと思うのです。
浴槽にいきなり入ったり、全身にシャワーのお湯をかけたりすると、実際の温度よりも熱く感じます。
声をかけながらゆっくりと浴槽への誘導、シャワーは足下からかけましょう。
身体が温まる、気持ちよい、清潔でさっぱりするなどと感じると、お風呂への不安が少し取り除けます。
入浴をしないのは、お風呂に不安を感じるからでしょう。
認知症だとお風呂に入ることへの恐怖を感じやすい
認知症だと入浴への恐怖を感じやすくなります。
浴室は滑りやすくて転ぶ、シャワーが適温にできなくてやけどをするといった、高齢者には危険が多い場所です。
顔にお湯がかかり、前が見えない、息ができないなど、目や耳、口に水が入る恐怖を感じてしまいます。
本人の入浴状況をよく観察し、滑りやすくないか、怖がっていないか、手すりの位置は大丈夫かなどの確認が重要です。
浴室の環境を配慮しましょう。
浴室の環境がお風呂に入らない理由になっているかもしれません。
認知症でもお風呂に入ることへの羞恥心を抱く
認知症でも、羞恥心のため人前で裸になるのは恥ずかしくなります。
羞恥心とプライドは認知症になってもなくなりません。
人前で裸になるのは抵抗があり、異性であればなおさらです。
認知症の方の立場で考えても、人の視線が気になると衣服は脱ぎにくいと感じるでしょう。
まわりの家族が洋服を着ていて自分だけが裸であるのもおかしな状況に感じます。
恥ずかしくて洋服を脱げないのは、入浴しない理由になるでしょう。
認知症だとお風呂に入ることに不快感や面倒くささを感じる
認知症になっていなくても普段からお風呂を面倒と感じる方もいます。
高齢者ならなおさら入浴の一連の過程を面倒くさいと感じている場合もあります。
加齢のため体力が低下している高齢者にとっては、脱衣所へ行くことさえも大変な作業です。
水が顔にかかって不快と思う方もいます。
日頃は洋服を着ているので、服を脱ぎ直接全身に水がかかるのが不快と感じる方もいるでしょう。
認知症に限らず、入浴を面倒くさいと感じる方は一定数います。
認知症だとお風呂に入るための介助が嫌だと思っている
認知症だと入浴での介助が嫌だと感じている可能性があります。
ご本人が「自分でできる」と思っている場合、介助をされるのが不快なのです。
入浴中になぜ手を出してくるのか、指示してくるのかと怒りを感じているのでしょう。なるべく自分で入浴できる環境を整えてください。
本人にとって便利で安全な環境で、なるべく自分で入浴できるようにします。床と浴槽内に滑り止めマットを用意する、手すりを設置するなどです。
介助者が子ども扱いをしたり、雑に扱っている可能性もあります。
お風呂に入らないのは、介助が嫌だと思っている理由の一つです。
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認知症の方がお風呂に入るように導く方法
理由や心理をわかっていても、家族にとっては衛生面で入浴はしてもらいたいものです。
本人がお風呂に入りたいと思わなければ行動にはつながりません。
認知症の方へのお風呂に誘導する方法を紹介します。
- 本人の好きなグッズをお風呂に入れる
- 興味を誘うように「温泉」といってみる
- 水が怖い可能性もあるため「足湯だけ」と誘ってみる
詳しくみていきましょう。
本人の好きなグッズをお風呂に入れる
本人の好きなグッズや興味を引くものがあれば、お風呂のなかに入れてみるといいでしょう。
お風呂自体には興味がないのかもしれませんが、好きなグッズに心を引き寄せられてお風呂に入ってくれるかもしれません。
温泉好きなら温泉に持っていっていた洗面器やタオル、シャンプーやリンスを本人の好みの香りに変えても大丈夫です。
グッズは防水のものや機械以外のものにしましょう。
好きなグッズでお風呂をいっぱいにすると、楽しんでお風呂に入ってくれる可能性があります。
興味を誘うように「温泉」といってみる
興味を誘うように「お風呂に入る」とはいわず「温泉に行く」といってみるのも一つの手です。
もともと温泉好きだった方には効果が大きい可能性があります。
特別感の演出のために「一番風呂だよ」「温泉のあとの牛乳は最高」などの声かけをしましょう。
入浴剤を使っておうちのお風呂を本当の温泉にしてしまうのがおすすめです。
「今日は箱根の湯だよ」「明日はどこの温泉に行く?」と話しながら興味を引き、入浴してもらえる誘い方ができます。
水が怖い可能性もあるため「足湯だけ」と誘ってみる
「足湯だけ」と言って誘ってみましょう。水が怖い可能性があるからです。
お風呂の気持ち良さを思い出させるには、足浴や手浴といった部分浴から始めます。気持ちよさを実感してもらい、タイミングを見計らい「お風呂にも入る?」などの声かけをしてみてください。
全身浴ではなくお湯を少なめにはり、温かいバスタオルで上半身を包むやり方もあります。「足湯だけ」といって誘っているうちに、全身浴につながる可能性もあるのです。
他にもある?認知症の方が嫌がる日常生活での行為
認知症になるとお風呂に入らない以外にも、日常生活での嫌がる行動が増えてきます。
認知症の症状はさまざまで、個々の心理状態、性格、環境、病状で差があるのです。
周囲の方々が認知症の症状を理解できていれば、本人もご家族も生活が楽になったり、介護の負担が減らせたりもします。
- 薬を飲みたくない
- デイサービスなどの施設に行きたくない
- 食事をしたくない
拒否のふるまいを具体的に確認してみましょう。
薬を飲みたくない
認知症になると薬を嫌がる方もいます。
認知症が進んだらどうしようと家族は心配です。
- 薬の必要性がわからない
- タイミングが悪い
- どこか痛いなどの副作用がある
- 病人扱いされたくない
- 飲み込めない
認知症の薬には、症状の進みを遅らせる、精神を安定させる役目があります。
副作用がある上、薬を飲むストレスを感じるのです。
上記の理由から薬を拒否しているのかもしれないので、飲みやすい薬にするなどの対応策が必要でしょう。
デイサービスなどの施設に行きたくない
デイサービスに行きたくない理由はさまざまです。
性格的にコミュニケーションが苦手だったのかもしれません。
- 新しい環境に馴染めない
- 職員や他の利用者と話したくない
- 外出が面倒である
- 家にいる方が楽である
- 認知症や介護状態を認めたくない
以上のような心理で、デイサービスに行きたくない可能性があります。嫌がるのに無理強いしなくてもと思うかもしれませんが、デイサービスにはメリットがあります。
心身の健康維持や安全な入浴、家族の負担が減らせるのです。
ご本人と家族の心の健康のためにもぜひデイサービスを利用してください。
なかなかデイサービスに行きたがらない場合はケアマネージャーに相談してみましょう。
食事をしたくない
認知症のなかには食事を拒否する方も多いです。
食べなければ体力的にも衰えてきます。
- 嚥下機能が衰え飲み込みにくい
- 歯が痛いなどの口の中にトラブルがある
- 食べ物かどうかの判断ができない
- 食べ方がわからない
- 落ち着いて食事をする環境が整っていない
食事をしたくないのには前記の理由が考えられます。
認知症や高齢者の方は、液体や固体などが混ざっている食事は飲み込みにくいので、味噌汁などの汁物にはとろみをつけましょう。家族の楽しい食事風景が、食欲を誘う一番のごちそうです。
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認知症の方がお風呂に入らないのには原因があると理解する
認知症の方がお風呂に入りたがらないのにはさまざまな原因があります。
理由を探り、入浴をしてもらえるような言葉がけをしてみてください。
どんなに嫌がっても生活する上では、健康や清潔の維持のためには入浴が欠かせません。
拒否を受け入れるだけではなく、その気にさせる言葉やお手伝いが必要です。
認知症になっても意思やプライドがあり、拒否には理由があります。
なぜお風呂に入りたくないのか、嫌がっている理由を本人の気持ちになって考えてみましょう。
本人が「楽しい」と感じるようなものを入浴と関連づけると良いでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
服薬、外出、食事などが挙げられます。詳しくは、こちらをご覧ください。