親の介護を理由に、仕事を続けられなくなり退職を考える方は少なくありません。
そのとき気になるのが、「失業保険はきちんと受け取れるのか」という点です。
親の介護のようにやむを得ない事情で退職した場合、「特定理由離職者」として失業保険の優遇を受けられる可能性があります。ただし、対象となるには一定の条件を満たさなければなりません。
本記事では、失業保険を受け取るための基本条件や、自分が特定理由離職者に該当するかどうかの判断ポイントを解説します。あわせて、退職した場合・仕事を休んだ場合それぞれでもらえるお金や使える制度、退職するかどうか迷ったときに考えたいことまで紹介します。
金銭的な不安をできるだけ減らし、後悔のない選択をするための判断材料としてお役立てください。
※本記事に記載の各種制度・給付額は2026年8月時点の情報です。最新の内容は厚生労働省やハローワークの公式情報でご確認ください。

親の介護で退職したら失業保険は受け取れる?
親の介護を理由に退職した場合も、失業保険(失業給付)は受け取れます。失業保険は退職理由を考慮したうえで支給が決まるため、「親の介護」も給付の対象です。
ただし、誰でも無条件に受け取れるわけではありません。雇用保険に一定期間加入していることが前提条件になります。
・雇用保険に加入していること(自営業・フリーランスは対象外)
・退職日を含む過去2年間で加入期間が通算12ヶ月以上(特定理由離職者は過去1年間で6ヶ月以上)
・再就職の意思があり、積極的に求職活動を行っていること
受け取り開始日には2パターンあり、自己都合退職は資格取得から7日+3ヶ月後、会社都合退職や特定理由離職者は7日後から支給が始まります。給付期間も退職理由や加入期間によって異なり、90日から最長330日の範囲で決まります。
親の介護を理由とする退職では、この「特定理由離職者」に該当するかどうかで、受給開始のタイミングや条件が大きく変わります。自分が該当するかは、次の章で詳しく確認しましょう。
親の介護で退職すると特定理由離職者になる?
『ケアスル 介護 独自調査レポート 2026』によれば、介護で「仕事を休まざるを得ない」となった理由としては「親の急病・入院」が24.2%で最多という結果が出ています。

このように急な事情で退職を検討する場合、実は「特定理由離職者」として失業保険の優遇を受けられる可能性があります。自分のケースが当てはまるかどうかを確認しましょう。
特定理由離職者になるのか
親の介護を理由に退職する場合、「家庭事情の急変」による正当な理由として、特定理由離職者に認められる可能性があります。ただし自動的に認定されるわけではなく、次のような点を満たしている必要があります。
・親が常時介護を必要とする状態であること
・介護を担える他の家族がおらず、自分が退職せざるを得なかったこと
・離職の日以前1年間に、雇用保険の加入期間が通算6ヶ月以上あること
・医師の診断書や要介護認定通知書など、介護が必要な状態を証明できる書類があること
これらに当てはまる場合は、離職票の退職理由コードが実際の退職理由と一致しているかをハローワークで確認しましょう。コードが一致していないと、特定理由離職者として認定されないことがあります。
そもそも特定理由離職者とは
特定理由離職者とは、自己都合退職でありながら、正当な理由により退職せざるを得なかったと認められた人のことです。通常の自己都合退職者と比べて、次のような優遇があります。
・通常設けられている2ヶ月間の給付制限がつかない
・雇用保険の加入期間が、離職前1年間で6ヶ月以上あればよい(通常は2年間で12ヶ月以上)
・給付期間終了後も30日以上就労できない場合、最長3年まで受給期間を延長できる
特定理由離職者として認められる正当な理由は、親の介護のほかにも複数あります。
必要な証明書類は理由によって異なりますが、親の介護の場合は医師の診断書や要介護認定通知書など、介護が必要な状態を客観的に示せる書類を用意しておくとスムーズです。
親の介護で退職・休む場合にもらえるお金・使える制度の一覧

親の介護で退職する場合にもらえるお金・使える制度
親の介護を理由に退職した場合、公的にもらえるお金は基本的に失業保険のみです。退職そのものに対する見舞金や補償制度は、原則として用意されていません。
前の章で解説したとおり、特定理由離職者に該当すれば給付制限なしで、雇用保険の加入期間が6ヶ月以上あれば受給できます。給付期間は加入期間や年齢に応じて90日〜330日です。
退職後の生活を金銭面だけで判断すると、想定より早く貯蓄が減ってしまうこともあります。退職する前に、仕事を続けながら使える制度がないかも確認しておくことが大切です。
仕事を休む場合にもらえるお金・使える制度
介護休業給付とは、親の介護のため一時的に休業した方に対して支給される給付金です。失業保険と同じく雇用保険に加入している方が対象となっています。
給料の67%が支給され、最大93日間受け取りが可能です。3回に分割しての受け取りもできます。仕事をしながら親を介護するための体制を整えるための期間として有効です。
介護休業給付を受けられる会社員の条件
介護休業給付の対象となるには以下の条件に当てはまる必要があります。
- 雇用保険に加入しており、家族を介護するために介護休業を利用している
- 介護休業を開始した日から過去2年間のあいだに、11日以上給料が支払われた月が12ヶ月以上ある
契約社員など雇用期間が決められている方は、上記の条件に加えて以下の条件も必要です。
- 同じ会社で1年以上勤務している
- 介護休業の開始予定日から93日+6ヶ月後まで雇用契約が結ばれている
どちらの場合においても、介護休業を取得する際に退職が決まっている場合は支給の対象になりません。
対象となるための正当な理由
介護休業給付を受け取るには、以下の理由により休業する必要があります。
- 介護休業をする理由が、疾病や負傷などの身体的・精神的な理由により、家族が常に介護が必要な状態になったため
- 会社に休業期間を提示し、実際休業を取得していること
「常に介護が必要な状態=要介護認定」ではありません。介護が必要な状態と認められれば受給は可能です。
対象となる家族の範囲
介護休業給付の対象となる家族の範囲は以下をご参照ください。
- 配偶者
- 両親
- 子
- 配偶者の両親
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
配偶者には事実婚の方も含まれます。また「子」の定義は「法律上で親子関係のある子」とされているため、養子縁組した子どもも介護休業給付の対象です。
対象外となってしまう条件
介護休業給付は、以下の条件に当てはまった場合、給付の対象から外れてしまうため注意しましょう。
- 介護休業給付中に退職した
- 介護休業給付中に11日以上出勤した
また、同じ家族を介護するといった理由で配偶者や兄弟が介護休業を取得するのも可能です。家族同士で協力しあって介護が行えます。
ただし、介護休業給付中であっても健康保険料、厚生年金保険料、住民税の支払いは継続しなければならないため、この点は注意が必要です。
介護休業給付の給付額
介護休業給付の給付額は平均賃金の67%です。支給額には上限が決められているため、平均賃金が高くても478,500円より多くは支給されません。反対に下限は79,710円となっています。
介護休業のあいだも会社から給料が支払われている場合は、金額に応じて給付額が変動します。もしも「休業を開始する前の給料×80%」が支払われている場合、介護休業給付は支給されません。
参照:厚生労働省・ハローワーク
介護休業給付を受給している間の給料
介護休業中の給料に法的な決まりはありません。そのため、給料を支払うかは会社の判断となっています。なかには有給休暇を休業取得日にあてて給料とする会社も少なくありません。
介護休業中も健康保険料や住民税の支払いは継続されるため、取得時には会社や家族としっかり話し合いを行いましょう。
手続きの方法
介護休業給付を利用する際には、以下の手続きが必要です。
<休業前>
- 休業開始予定日と終了予定日を決める
- 休業開始予定日の2週間前までに「介護休業申請書」会社に提出
<休業後>
介護休業が終了してから2ヶ月の間に以下の書類を用意して提出する
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 介護休業給付金支給申請書
- 本人・対象家族のマイナンバー
- 介護を要する家族との関係が証明できるもの(住民票など)
介護休業の申請書は会社によってフォーマットが異なります。担当部署に確認して書類をもらいましょう。休業後の手続きは基本的に会社で行われるため、休業取得者は書類を用意し提出するだけで問題はありません。
親の介護で退職するか迷った時に考えたいこと

まずは使える制度があるか考える
退職を決める前に、仕事を続けながら親を介護する体制を整えられる制度がないか確認しておきましょう。在職中でも、以下のような制度を利用できる場合があります。
・介護休業(前の章で解説した給付金つきの休業制度)
・介護休暇(対象家族1人につき年5日、2人以上で年10日。時間単位での取得も可能)
・短時間勤務等の措置
・所定外労働の制限(残業免除)
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
これらは育児・介護休業法で会社に義務付けられている制度です。制度の存在を知らないまま退職を決めてしまうと、あとから「使えたはずの制度」に気づいて後悔することもあります。まずは会社の制度・就業規則を確認してみましょう。
一人で抱え込んでいないか、頼れる先を考える
「自分がやるしかない」と一人で抱え込んでしまうと、判断が視野狭窄になりがちです。退職を決める前に、相談できる窓口や頼れる人がいないかを確認しておきましょう。
・地域包括支援センター(市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口)
・ケアマネジャー(担当がいる場合)
・会社の人事・上司(介護支援制度の利用について)
・兄弟姉妹など、介護を分担できる家族
地域包括支援センターは、市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、全国に5,487か所(令和7年4月末時点)あります。介護保険サービスの利用だけでなく、家族の悩みの相談にも対応しています。まずは最寄りのセンターに連絡してみましょう。
退職した場合の暮らしを具体的にイメージしてみる
退職を決める前に、退職後の生活を具体的にイメージしておくことが大切です。特に次の3点は、実際に退職した人が直面しやすい変化です。
・収入がなくなり、介護費用や生活費の負担で貯蓄が想定より早く減る
・離職期間が長引くほど、復職への意欲が下がりやすくなる
・職場での人間関係が減り、介護中心の生活になることで孤立感を覚えやすくなる
再就職できたとしても、介護を前提とした働き方に限定されてしまうことが多く、離職前より収入が下がるケースも珍しくありません。「辞めればなんとかなる」ではなく、辞めたあとの1年後・3年後の生活を具体的に想像してから判断しましょう。
親を施設に預けるという選択肢も考えてみる
自宅での介護に限界を感じている場合は、老人ホームなどの介護施設に預けるという選択肢も検討してみましょう。施設に入居すれば、仕事を続けながら介護を見守れる可能性があります。
施設の種類や費用は、要介護度や希望するサービス内容によって大きく異なります。まずはどのような施設があるか、費用の目安を知ることから始めることが大切です。

ケアスル 介護では、地域や介護度、予算に応じた老人ホーム探しを無料でサポートしています。退職するかどうかを決める前に、一度施設探しの相談をしてみるのも一つの方法です。
失業保険の受給期間が終わる前にしておくべきこと
失業保険はいつまでも受けられる給付ではありません。そのため、給付が終わるまでにはある程度介護ができる環境を整えておく必要があります。環境を整えるため、以下の項目に取り組んでおきましょう。
- 介護サービスを検討する
- 家族同士の協力体制を整える
介護サービスには、利用者や家族のライフスタイルに合わせてさまざまな形態が用意されています。就労に向けて要介護認定を受けておき、どのようなサービスが必要かを検討しておくとよいでしょう。
失業保険の給付が終了するまでに老人ホームを見つけたい方は、ケアスル 介護を利用してみてはいかがでしょうか。老人ホーム探しから見学までを専門の相談員が無料でサポートいたします。
親の介護で退職する際は失業保険などの制度を活用するのが大切
親の介護で退職しなければならない場合は、失業保険の「特定理由離職者」に該当するため、長期間の給付が可能です。給付開始までの期間も短く退職中の最低限の生活費を心配する必要もありません。
日本には介護をする家族のためにさまざまな制度が用意されています。制度をうまく活用して、なるべく金銭的な心配を無くした状態で介護に向き合いましょう。
要介護認定を受け、介護サービスの利用を検討してみるのがよいでしょう。介護サービスには1日から利用できるデイサービスや、自宅にヘルパーが来てくれる訪問介護などがあります。退職を決意する前に、まずは介護サービスを利用しながら仕事が続けられないかを模索するほうが金銭的な心配は少なくなるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
週に20時間以内であればアルバイトなどの副業も可能です。ただし、待機期間中(資格取得から7日間)にアルバイトをした場合は、受給資格がなくなってしまうため注意しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。