老人ホームを探していると、「特定施設」という言葉を目にすることがあります。
ただし、「特定施設」という名前の老人ホームがあるわけではありません。
特定施設とは、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた老人ホームのことです。
有料老人ホームの場合は、指定を受けると「介護付き有料老人ホーム」と名乗れます。
特定施設では、施設のスタッフが24時間体制で介護を担います。
介護費用は要介護度ごとの定額制で、要介護3の自己負担(1割)は月約2万円が目安です。
住宅型有料老人ホームでは、介護は外部の事業所と個別に契約して受け、使った分だけ費用がかかります。
特定施設かどうかで、介護を受ける仕組みと費用の払い方が変わります。
本記事では、特定施設の意味や種類、指定の基準、費用の違いを解説します。
特定施設を選んだ方がいい人も紹介するので、施設選びの判断材料にしてください。
特定施設とは?
特定施設とは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた老人ホームのことです。
指定を受けた施設では、施設のスタッフが入居者に介護保険サービスを提供します。
介護施設の中での特定施設の位置づけは、以下の図のとおりです。

図の円に入る養護老人ホーム・ケアハウス・サ高住・有料老人ホームが、特定施設の指定を受けられる施設です。
行政の指定を受けて介護を提供する施設のこと
特定施設は、都道府県知事などの指定を受けて介護保険サービスを提供する施設です。
指定のしくみは、以下のとおりです。
特定施設の定義は、介護保険法第8条で定められています。
指定は施設が申請して受けるもので、すべての老人ホームが指定を受けているわけではありません。
基準を満たしていても、自治体が計画で定めた定員の上限に達している地域では、指定を受けられない場合があります。
定員の上限による指定の制限は、介護保険法第70条に定められています。
「特定施設」という名前の老人ホームがあるわけではない
「特定施設」は施設の種類の名前ではなく、老人ホームが指定を受けて得る制度上の位置づけです。
指定の有無で、施設の呼び方は次のように変わります。
有料老人ホームが「介護付き」と表示できるのは、特定施設の指定を受けた場合に限られます。
施設のパンフレットや検索サイトでは、「介護付き」「特定施設入居者生活介護」の表記で指定の有無を確認できます。
介護付き有料老人ホームの特徴は、以下の記事で解説しています。

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特定施設のサービス内容
特定施設では、施設のスタッフが介護・生活支援・機能訓練をまとめて提供します。
主なサービスは以下の3つです。
- 24時間体制の介護(入浴・排せつ・食事など)
- 生活支援(洗濯・掃除などの家事、生活の相談)
- リハビリや機能訓練
一般的な住宅型有料老人ホームでは、介護は入居者が外部の訪問介護事業所などと個別に契約して受けます。
24時間体制の介護
特定施設では、夜間も含めて常に1人以上の介護職員を置くことが義務づけられています。
住宅型有料老人ホームとの違いは、以下のとおりです。
配置の基準は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第175条で定められています。
住宅型有料老人ホームで受けられる介護は、外部の事業所と契約したサービスの範囲に限られます。
特定施設では、ケアプランにない急な介助も施設のスタッフが対応します。
生活支援
特定施設では、洗濯・掃除などの家事や生活の相談も、特定施設入居者生活介護のサービスに含まれます。
生活支援の内容は、以下のとおりです。
住宅型有料老人ホームでも、食事の提供などの生活支援は施設が行います。
違いは、特定施設では家事の援助も介護保険の定額サービスとして受けられる点です。
リハビリや機能訓練
特定施設には、機能訓練指導員を1人以上置くことが義務づけられています。
機能訓練に関する基準は、以下のとおりです。
機能訓練指導員は兼務が認められているため、専任のリハビリ職がいるかどうかは施設によって違います。
リハビリを重視する場合は、見学時に機能訓練の頻度と担当者の職種を確認してください。
特定施設になるための基準
特定施設の指定を受けるには、国が定めた3つの基準をすべて満たす必要があります。
- 人員基準:看護・介護職員などの配置人数
- 設備基準:居室・浴室・トイレなどの構造
- 運営基準:介護の提供方法や契約のルール
3つの基準は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(厚生省令第37号)で定められています。
基準を満たしていても指定を受けられない施設があるため、特定施設でないからといってサービスが手薄とは限りません。
人員基準
人員基準の中心は、看護・介護職員を要介護者3人に1人以上置く「3対1」の配置です。
「3対1」は看護職員と介護職員の合計なので、看護師の人数は施設によって大きく違います。
医療的なケアが必要な場合は、看護職員の人数と勤務時間帯を施設に確認してください。
夜間に義務づけられているのは介護職員の配置で、看護職員の夜間配置は義務ではありません。
設備基準
設備基準では、建物を耐火建築物または準耐火建築物とし、介護居室を原則個室にすることなどが定められています。
介護居室が2人部屋になるのは、夫婦での入居など処遇上必要と認められる場合に限られます。
地階に居室を設けないのは、火災などの災害時に避難しやすくするためです。
運営基準
運営基準では、入居者ごとの介護計画の作成や、身体拘束の原則禁止などが定められています。
身体拘束を行う施設は、拘束の記録に加えて、3か月に1回以上の委員会の開催や職員研修も義務づけられています。
入居前に、重要事項説明書で介護の方針と退去の条件を確認してください。
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特定施設の種類
特定施設は、入居できる人と指定するところの違いで4種類に分かれます。
- 介護専用型
- 混合型
- 地域密着型
- 介護予防型
指定を受けられる施設は、有料老人ホーム・サ高住・ケアハウス・養護老人ホームの4つです。
特定施設における4種類
4種類のうち、自立や要支援の人も入居できるのは混合型です。
※都道府県が指定する種類も、指定都市・中核市では市が指定します。
混合型は、夫婦の片方だけが要介護でも一緒に入居できます。
介護予防型は、混合型などの施設が要支援の入居者向けに受ける指定です。
・利用できる人数は1人または入居定員の10%以下
・利用期間はあらかじめ30日以内で決める
・空いている個室を使う
・事業者に介護保険事業の運営経験が3年以上ある
短期利用の条件は、厚生労働大臣が定める施設基準(告示第96号)で定められています。
なお、4種類とは別に、介護の提供方法による2つの区分もあります。
特定施設になれる施設
特定施設の指定を受けられるのは、住宅型有料老人ホーム・サ高住・ケアハウス・養護老人ホームの4つです。
- 住宅型有料老人ホーム
- サ高住
- ケアハウス
- 養護老人ホーム
特定施設の対象は、介護保険法第8条と介護保険法施行規則で定められています。
施設ごとの指定あり・なしの違いを解説します。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、特定施設の指定を受けると「介護付き有料老人ホーム」として運営できます。
指定を受けていない住宅型有料老人ホームでは、外部の訪問介護事業者と契約して介護サービスを受けます。
介護サービスの利用が少ない人は、住宅型の方が介護費用を抑えられる場合があります。
特定施設の指定を受けた施設は定額制のため、介護の量が増えても月額の介護費用は変わりません。
住宅型有料老人ホームについては、以下の記事で解説しています。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サ高住は、食事の提供や介護などを行い、有料老人ホームに当たるものであれば特定施設の指定を受けられます。
サ高住は本来、安否確認と生活相談が付いた高齢者向けの賃貸住宅です。
特定施設の指定を受けたサ高住は少数で、多くは外部の訪問介護事業者を自分で手配します。
特定施設のサ高住であれば、介護付き有料老人ホームと同じように施設スタッフから直接介護を受けられます。
施設探しの際は、指定の有無を必ず確認してください。
サ高住と特定施設の関係は、以下の記事で解説しています。


ケアハウス(軽費老人ホーム)
ケアハウスは、生活支援が中心の施設ですが、特定施設の指定を受けると施設のスタッフが介護を提供します。
ケアハウスは、所得に応じて利用料の一部が軽減されるため、有料老人ホームより月額費用を抑えやすい施設です。
ただし、特定施設の指定を受けたケアハウスの数は多くありません。
ケアハウスの特定施設については、以下の記事で解説しています。


養護老人ホーム
養護老人ホームは、2015年4月から「一般型」の特定施設の指定も受けられるようになりました。
2015年3月までは、外部サービス利用型の指定しか受けられませんでした。
養護老人ホームへの入居は市区町村の措置によるため、施設に直接申し込むことはできません。
養護老人ホームは、環境上・経済的な理由で自宅での生活が難しい高齢者が、市区町村の措置で入居する施設です。
外部サービス利用型の場合、介護は委託先の事業所が担い、施設のスタッフは安否確認や生活相談を担当します。
特定施設のメリット・デメリット
特定施設のメリットは定額で24時間の介護を受けられる点、デメリットは介護が少ない人には割高になりやすい点です。
- メリット:介護費用が要介護度ごとの定額になる
- メリット:施設のスタッフによる24時間の介護体制で、介護の手配が要らない
- デメリット:訪問介護などを介護保険で併用できない
- デメリット:介護が少ない人は割高になる場合がある
特定施設のメリット
特定施設のメリットは、要介護度が上がっても、介護費用と介護体制が大きく変わらないことです。
介護費用の定額制とは、要介護度に応じて毎月一定の自己負担額(1〜3割)を支払う仕組みです。
介護サービスを何回利用しても月額の介護費用は変わりません。
住宅型有料老人ホームでは、利用した介護サービスの量に応じて費用が増えます。
特定施設のデメリット
特定施設のデメリットは、介護保険の訪問介護などと併用できず、介護が少ない人には割高になる場合があることです。
外部の事業所の介護サービスを使う場合は、全額自己負担になります。
入居前に、必要な医療・介護サービスが施設内で受けられるかを確認してください。
将来の介護度の見通しは、担当のケアマネジャーに相談したうえで施設を選んでください。
特定施設と特定施設でない施設との費用の違い
特定施設の介護費用は要介護度ごとの定額制で、住宅型有料老人ホームなどは使った分だけ払う出来高制です。
介護サービスを多く使う人ほど、定額制の特定施設の方が介護費用を抑えやすくなります。

特定施設では、施設のスタッフによる介護をどれだけ多く利用しても、要介護度が変わらない限り月額の介護費用は変わりません。
住宅型有料老人ホームなどでは、契約・利用した介護サービスの分だけ介護保険を使います。
サービスの利用が増えて支給限度額を超えると、超えた分は全額自己負担になります。
要介護度ごとの介護費用の自己負担(1割)を比べると、以下のとおりです。
※1単位10円・30日で計算。地域区分・加算は含みません。
※特定施設は令和6年度介護報酬改定の告示、支給限度額は区分支給限度基準額の告示をもとに算出しています。
※執筆時点(2026年10月)の情報です。
要介護3では、支給限度額まで使った場合と比べて、特定施設の方が月6,678円低くなります。
要介護5では、差が月11,827円に広がります。
一方、要支援1では特定施設の方が月458円高くなります。
介護の量が少ない人ほど、定額制の割高さが出やすくなります。
上乗せ介護費の金額は施設ごとに異なるため、重要事項説明書で確認してください。
上乗せ介護費の条件は、厚生労働省の通知(老企第52号)で定められています。
介護付き有料老人ホームの費用の目安は、以下のシミュレーターで確認できます。
費用シミュレーター
- 入居金
- ???万円
- 月額費用
- ???万円
老人ホーム全体の費用相場
- 入居金
- ???万円
- 月額費用
- ???万円
各介護施設の費用については、以下の記事もご覧ください。



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特定施設を選んだ方がいい人
特定施設が向いているのは、介護の量が多く、施設の中で介護を完結させたい人です。
具体的には、以下の4つに当てはまる人です。
- 要介護度が高く、介護サービスを多く使う人
- 夜間や急な体調変化にも施設内で対応してほしい人
- 介護度が上がっても住み替えずに暮らしたい人
- 特養の入居待ちが長い、または要介護1〜2で特養に入れない人
要介護度が高く、介護サービスを多く使う人
要介護3以上で介護サービスを多く使う人は、定額制の特定施設の方が介護費用を抑えやすくなります。
支給限度額まで使った場合と比べると、特定施設の自己負担(1割)は要介護3で月6,678円、要介護4で月8,618円低くなります。
要介護5では、差が月11,827円です。
住宅型有料老人ホームで支給限度額を超えると、超えた分は全額自己負担です。
介護の量が多い人ほど、特定施設との費用の差は広がります。
夜間や急な体調変化にも施設内で対応してほしい人
特定施設は、夜間も介護職員を常に1人以上置くことが義務になっています。
夜中のトイレ介助や急な体調変化にも、施設のスタッフが対応します。
夜間にたんの吸引などの医療的ケアが必要な人は、看護職員の夜間体制を施設に確認してください。
介護度が上がっても住み替えずに暮らしたい人
介護専用型・混合型の特定施設は、要介護5まで入居の対象です。
要介護度が上がっても、介護の担い手と費用の仕組みは変わりません。
ただし、医療的ケアの内容によっては退去を求められる場合があります。
入居前に、重要事項説明書で退去の条件を確認してください。
特養の入居待ちが長い、または要介護1〜2で特養に入れない人
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護3以上の人しか入居できません。
介護専用型・混合型の特定施設は、要介護1〜2の人も入居できます。
特養の入居対象は、介護保険法第8条で定められています。
特養の入居待ちの間に、特定施設へ入居する選択肢もあります。
特養の費用については、以下の記事で解説しています。

まとめ
特定施設とは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、施設のスタッフが介護を提供する老人ホームです。
・「特定施設」という名前の施設はなく、有料老人ホームなどが受ける指定のこと
・人員・設備・運営の3つの基準を満たした施設が指定を受ける
・種類は介護専用型・混合型・地域密着型・介護予防型の4つ
・介護費用は要介護度ごとの定額制
・要介護3以上で介護を多く使う人は、特定施設の方が介護費用を抑えやすい
要介護度が高く、毎月の介護費用を一定にしたい人は、特定施設を選ぶ方法があります。
要介護度が低く、必要なサービスだけを使いたい人は、住宅型有料老人ホームなども比べてください。
希望条件に合う施設を探す際は、全国の老人ホーム情報を掲載するケアスル 介護をご活用ください。
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