「親を施設に入れたいが、お金がない」と悩む方は少なくありません。
在宅介護の限界を感じながらも、費用が分からず動けない方が多くいます。
生命保険文化センターの2024年度調査では、施設介護の費用は月平均13.8万円です。
一方で、所得に応じて食費・居住費や自己負担を軽減できる公的制度があります。
本記事では、介護施設の費用総額のめやすと、お金がない場合に使える制度を解説します。
施設以外で介護負担を減らす方法や、費用の安い施設タイプも紹介します。
読み終えたあとに、地域包括支援センターへの相談や施設探しへ進めるよう構成しています。
※本記事の制度・費用の数値は執筆時点(2026年8月)の情報です。

介護施設に入れた場合、費用は総額でいくらかかるのか
介護施設の費用は「入居時の費用」と「月々の費用」の2つに分かれます。
施設介護の月々の費用は平均13.8万円で、平均介護期間の4年7か月で計算すると総額のめやすは800万円前後になります(生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」より)。

入居時にかかる費用(入居一時金など)
入居時にかかる費用は、公的施設なら原則0円、民間施設なら0円〜数百万円と大きな幅があります。
入居一時金(入居時にまとめて支払う家賃の前払い金)は、公的施設にはありません。
お金がない場合は、公的施設か入居一時金0円の民間施設に絞ると入居時の負担を抑えられます。
民間施設の入居一時金は、同じ種類の施設でも金額が大きく異なります。
月々の費用とのバランスで決まるため、パンフレットの金額だけで判断しないようにしましょう。
月々にかかる費用(居住費・食費・介護保険自己負担など。総額目安を含む)
施設介護の月々の費用は平均13.8万円です(生命保険文化センター2024年度調査)。
在宅介護の平均5.3万円と比べると、月々の負担は大きくなります。
居住費・食費の国の基準額は、厚生労働省の補足給付リーフレットと介護保険最新情報Vol.1397に基づく金額です。
総額のめやすは平均値からの計算であり、要介護度・施設の種類・入居期間で変わります。
金額を見て「払えない」と感じても、あきらめる必要はありません。
所得が低い場合は、次の章以降で解説する公的制度で月々の負担を大きく軽減できます。

下のシミュレーターで、条件に近い施設の費用のめやすを確認できます。
費用シミュレーター
- 入居金
- ???万円
- 月額費用
- ???万円
施設費用は誰が・どこまで負担するものなのか
施設費用は親本人の年金と貯蓄から支払うのが基本です。
理由は、介護費用の負担が子どもの生活や老後資金を圧迫すると、共倒れになりやすいためです。施設介護は月平均13.8万円かかるため、まず親のお金で払える範囲を確認します。
民法上、子どもには親を扶養する義務があります。
ただし、扶養義務は自分の生活を犠牲にしてまで援助を求めるものではありません。
「子どもが全額払うもの」という思い込みで無理をする必要はないと言えます。
援助する場合も、毎月いくらまでなら出せるかを先に決めておくと家計を守れます。
最初にやることは、親のお金の状況を書き出して「毎月払える額」を把握することです。
把握した金額と施設費用の差額が、制度や工夫で埋めるべき金額になります。
・年金額(年金振込通知書・ねんきん定期便で確認)
・預貯金(通帳・ネット銀行の残高)
・保険(民間の介護保険・生命保険の給付条件)
・不動産(自宅・土地の有無と名義)
・毎月の支出(医療費・ローン・生活費)
介護費用を誰がどう分担するかは、きょうだい間のトラブルにもつながりやすいテーマです。
負担割合の決め方は、以下の記事で詳しく解説しています。

お金がない場合に使える公的制度・支援
お金がない場合でも、公的制度を使えば施設費用の負担を大きく軽減できます。介護保険には所得の低い方向けの軽減制度が複数用意されているためです。
例えば負担限度額認定を受けると、特養多床室の居住費は月約2.8万円から約1.3万円に下がります。
※各制度の金額は執筆時点(2026年8月)の情報です。
負担限度額認定制度(食費・居住費の軽減)
負担限度額認定制度は、施設の食費と居住費を所得に応じた上限額まで軽減する制度です。
市区町村に申請して認定を受けると、上限を超えた分は介護保険から給付されます。
出典は厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」です。
食費と居住費を合わせると、対象になる方は月4万円以上下がるケースもあります。
申請しなければ軽減は受けられません。
「うちは対象にならない」と決めつけず、まず市区町村の窓口で確認してみましょう。
高額介護サービス費制度
高額介護サービス費制度は、1か月の介護保険自己負担が上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。
一般的な所得の世帯では、自己負担の上限は月44,400円になります。
出典は厚生労働省「介護保険最新情報Vol.997」です。
対象になると市区町村へ申請することで払い戻しを受けられます。
対象は介護保険の自己負担分のみで、食費・居住費・日常生活費は含まれません。
食費・居住費は前の項目の負担限度額認定制度で軽減する、という組み合わせになります。
生活保護(介護扶助)
親の年金・貯蓄では足りず、家族の援助も難しい場合は、生活保護を受けながら施設に入る方法があります。
生活保護には介護扶助という仕組みがあり、介護サービスの費用が支給されます。
介護扶助の費用は福祉事務所から介護事業者へ直接支払われ、本人負担はありません(厚生労働省「生活保護制度」より)。
生活保護受給者は、負担限度額認定でも最も軽減が大きい段階に区分されます。
受給には資産・収入・扶養の状況などの調査があり、要件を満たす必要があります。
親本人の住所地を担当する福祉事務所の生活保護担当が相談・申請の窓口です。
生活保護を受けて特養に入居した実例は、以下の記事で紹介しています。

自治体独自の助成・減免制度
国の制度とは別に、市区町村が独自の助成・減免制度を設けている場合があります。
社会福祉法人による利用者負担の軽減制度など、自治体経由で使える仕組みも存在します。
制度の名称・内容・対象条件は自治体ごとに大きく異なります。
お住まいの市区町村の介護保険窓口で「使える軽減制度」をまとめて聞くのが近道です。

問い合わせの際は、本記事で紹介した制度名をメモして持参すると話が進みやすくなります。
「負担限度額認定」「高額介護サービス費」の2つを聞くだけでも状況は変わります。
施設以外で介護負担を減らす方法
介護負担を減らす方法は施設入居だけではありません。在宅のまま介護サービスを組み合わせることで、家族の負担と費用の両方を抑えられます。
在宅介護の費用は月平均5.3万円と、施設介護の13.8万円より低い水準です。
デイサービス・ショートステイの活用
デイサービスとショートステイは、在宅介護の負担を日中・数日単位で減らせるサービスです。
どちらも介護保険の対象で、自己負担は原則1〜3割で利用できます。
利用回数・日数は、要介護度ごとの介護保険の支給限度額の範囲で決まります。
組み合わせ方はケアマネジャーがケアプランとして設計するため、希望を具体的に伝えましょう。
「毎週2日は仕事に集中したい」「月に1回は休みたい」といった伝え方で構いません。
家族の生活を守ることも、介護を続けるための条件になります。

レスパイトケアで一時的に休む
レスパイトケア(介護者の休息を目的としたケア)は、介護する家族が倒れないための仕組みです。
ショートステイなどを「家族が休むため」に計画的に使うことを指します。
介護疲れが限界に近い場合、施設入居の前にまずレスパイトケアで休息を取る選択があります。
休息を挟むことで、施設探しを焦らず冷静に進められるようになります。
「介護者が休むためにサービスを使ってよいのか」とためらう方は少なくありません。
介護者の休息は正当な利用目的であり、ケアマネジャーにそのまま相談できます。
特養のショートステイを利用しながら、同じ施設の入居申し込みを続ける使い方も存在します。
在宅の負担を減らしつつ、施設入居の準備を並行して進められる方法です。
世帯分離などで公的負担を見直す
世帯分離とは、同居のまま住民票の世帯を親と子で分ける手続きです。
親の世帯が住民税非課税になると、負担限度額認定などの軽減対象になる場合があります。
介護保険の軽減制度の多くは「世帯の所得」で判定されます。
親自身の収入が少なくても、同居する子の所得で対象外になっているケースがあるためです。
手続きはお住まいの市区町村の住民票窓口で行います。
ただし、国民健康保険料など他の負担が変わる場合があり、必ず得になるとは限りません。
それでも施設を探すなら、費用の安い施設タイプ
費用を抑えて施設を探すなら、公的施設の特養・老健が有力な選択肢になります。どちらも入居一時金がなく、負担限度額認定などの軽減制度を最大限使えるためです。
特養の多床室なら、居住費は国の基準額で月約2.8万円に収まります。
特別養護老人ホーム(特養)の費用感
特養は入居一時金がなく、月々の費用も抑えやすい公的施設です。
原則として要介護3以上の方が入居の対象になります。
費用を抑えやすい一方で、特養は入居希望者が多く、待機が発生しやすい施設です。
申し込みから入居まで時間がかかる前提で、早めに動く必要があります。

特養の費用をさらに安くする制度・方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

介護老人保健施設(老健)の費用感
老健も入居一時金がなく、費用を抑えやすい公的施設です。
食費・居住費には特養と同じ負担限度額認定の仕組みを使えます。
老健は在宅復帰を目的とした施設で、リハビリを受けながら入所します。
原則として長期入所はできず、数か月ごとに入所を続けるかの判定があります。
「特養の待機中に老健へ入所し、リハビリしながら待つ」という使われ方も見られます。
終身で暮らす場所ではない点を理解したうえで、選択肢に加えてみてください。
入所の相談は施設の支援相談員またはケアマネジャーが窓口になります。
本人の状態がリハビリの対象になるかどうかを、事前に確認しておくと進めやすくなります。

費用を抑えた施設の探し方
費用を抑えた施設探しのコツは、予算の上限を先に決めてから候補を絞ることです。
月々に払える額が決まれば、見るべき施設のタイプと数が自然に絞られます。
・月々の予算上限を先に決める(親の年金+出せる持ち出し額)
・特養は複数施設に同時に申し込む
・民間施設は入居一時金0円・多床室ありの施設を候補に入れる
・見学時に費用の内訳と追加費用を必ず質問する
・候補は3〜5施設に絞って比較する
ケアスル 介護では、エリア・予算・施設タイプから条件に合う施設を検索できます。
入居相談員に「月◯万円まで」と伝えれば、予算内の施設だけを紹介してもらえます。
まとめ・相談窓口への案内
親を施設に入れたいがお金がない場合でも、制度と施設選びの工夫で道はつくれます。費用の全体像を把握し、使える制度を確認すれば、必要な行動が明確になるためです。
施設介護の平均は月13.8万円ですが、軽減制度で負担は大きく変わります。
まず何をすべきか(地域包括支援センター・ケアマネジャーへの相談)
最初の一歩は、地域包括支援センターに「お金が足りない」と正直に伝えて相談することです。
地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口で、無料で利用できます。
・親の年金・預貯金を書き出し、毎月払える額を計算する
・地域包括支援センター(担当ケアマネジャーがいる場合はケアマネジャー)に予算を伝えて相談する
・候補になりそうな施設を実際に見学する
相談して情報を集めるだけで終わってしまう方が多くいます。
相談の次のステップである施設見学まで早く進むことが、状況を変える近道になります。
親の老後資金全般の考え方は、以下の記事でも解説しています。

ケアスル 介護の施設検索・相談窓口
ケアスル 介護では、全国の施設を費用・エリア・施設タイプの条件で検索できます。
入居相談員への相談は無料で、予算に合わせた施設の提案を受けられます。
「月々いくらまでなら払えるか」だけ決めてから相談すると、話が具体的に進みます。
お金の不安を抱えたまま一人で探し続けず、専門の窓口を活用してみてください。
出典:生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」/厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額の変更(令和6年8月)」/厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1397(令和7年8月からの室料相当額控除)」/厚生労働省「介護保険最新情報Vol.997(高額介護サービス費)」/厚生労働省「生活保護制度」