「サービス付き高齢者向け住宅は認知症でも入れる?」
「住んでから認知症になった場合はどうなる?」
老人ホームは施設の種類によって、認知症の方を受け入れているかどうかは異なります。サービス付き高齢者向け住宅は、一体どうなのか気になっている方もいるでしょう。
日本における65歳以上の認知症の方は、2020年現在で約600万人おり、今後も増えると予想されています。「認知症になるかもしれない」と考えながら、入居前の対策を行うことが重要です。
入居後に認知症になったとしても、適切な老人ホームに移動できれば本人に必要なサービスは受けられます。
そこで本記事では、サービス付き高齢者向け住宅における認知症の方の受け入れの実態や、認知症になる前の対策・なったあとの対処について解説します。

サービス付き高齢者向け住宅は認知症でも入居できる?
サービス付き高齢者向け住宅は、認知症の方が入居できる施設もあります。ただし、受け入れている施設は多くないため、サービス付き高齢者向け住宅は、認知症の方に向いている老人ホームとは言い難いでしょう。
ここでは、対応している施設の種類や受け入れ基準について解説します。
介護型なら対応している場合がある
サービス付き高齢者向け住宅には、主に自立〜要支援の方を対象としている一般型と、要介護の方を対象としている介護型があります。介護型であれば、認知症の方を受け入れている場合があり、寝たきりの認知症重度の方でも対応している施設もあります。
介護型は特定施設入居生活介護の対象施設のため、24時間体制で職員がいる状態です。特定施設入居者生活介護の対象施設では、介護付き有料老人ホームと同じサービスを提供しています。そのため、食事・入浴・排せつの介助を受けられます。
住居によって受け入れ基準が異なる
サービス付き高齢者向け住宅では、それぞれの施設で独自の入居基準を取り入れています。基本的には、60歳以上の単身者の方または60歳以上の方とその配偶者を対象としていますが、そのほかの基準は三者三様です。
認知症の方を受け入れているかどうか見分けるためには、民間の紹介センターのWebサイトで条件をしぼって検索するとわかりやすいでしょう。検索条件に「認知症」を入力すれば、認知症の方を受け入れているサービス付き高齢者向け住宅が見つかるはずです。

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介護型サービス付き高齢者向け住宅の特徴
介護型サービス付き高齢者向け住宅では、主に要介護の方を受け入れています。そのため介護サービスを提供しており、介護付き有料老人ホームと同じ特定施設入居者生活介護に該当します。
特定施設入居者生活介護とは、要介護の方を対象にした日常生活上の世話・機能訓練・療養上の世話をさし、介護保険の対象です。介護付き有料老人ホームと同じ基準のもと運営されるため、職員体制やサービス内容の基準も介護付き有料老人ホームと同じになります。
職員体制
介護型サービス付き高齢者向け住宅の職員体制は、下記のように定められています。
職員 | 人数 |
---|---|
管理者 | 1人(兼任可) |
生活相談員 | 要介護者等100:生活相談員1 |
介護・介護職員 | 要支援者10:看護・介護職員1
要介護者3:看護・介護職員1 ※ただし看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人 ※夜間帯は1人以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上(兼任可) |
計画作成担当者 | 介護支援専門員1人以上(兼任可)
※ただし、要介護者等100:計画作成担当1を標準 |
介護型に限らず、人員基準・設備基準・運営基準の条件を満たしている場合は特定施設入居者生活介護に該当します。特定施設として認められるためには、職員体制や設備面の基準をクリアしなければなりません。

サービス内容
介護型サービス付き高齢者向け住宅では、主に以下のサービスを受けられます。
- 食事・入浴・排せつなどの日常生活における介護
- リハビリテーションをはじめとする機能訓練
- 療養上の世話
サービス付き高齢者向け住宅の目的は住まいの提供ですが、特定施設入居者生活介護に該当する施設では、上記のように他の介護施設と同様のサービスが提供されています。

サービス付き高齢者向け住宅での認知症対応の実態
下記の表は、サービス付き高齢者向け住宅における重度認知症の方への対応の実態をまとめたものです。
応相談:50.7% | 実績あり | 実績なし |
---|---|---|
38.0% | 12.8% | |
対応なし | 11.3% | |
表示なし | 38.0% |
※調査対象戸数:2503戸※令和2年8月末時点のデータ
約半数のサービス付き高齢者向け住宅では、認知症重度の方を受け入れるかについて「応相談」と回答しています。そのうち実績がある住居は38%です。認知症重度の方を受け入れている住居はありますが、それほど多いとは言えない結果となりました。
また「表示なし」と回答している住居は4割近くにのぼり、認知症の方を受け入れるかどうかについて曖昧な住居が多いと読みとれます。
サービス付き高齢者向け住宅の認知症対応における問題点
サービス付き高齢者向け住宅における、認知症の対応に関する問題点は下記のとおりです。
- 認知症に対応していない住居だと追い出される
- 認知症になると住民とのトラブルが起きやすくなる
- 認知症に対する十分なケアが受けられない
サービス付き高齢者向け住宅は、そもそも認知症対応の老人ホームとして設立されたわけではありません。そのため、認知症の対応に関する問題点がいくつかあります。
認知症に対応していない住居だと追い出される
サービス付き高齢者向け住宅に入居してから認知症になった場合、住居側が対応しきれず、退去を迫られる可能性があります。そもそも入居できない住居もあるため、健康状態が悪化した場合の対応を施設側と話し合っておくべきです。
また認知症の方を受け入れている住居であっても、認知症が進行していくうちにトラブルが発生し、退去を迫られるケースもあります。
認知症になると住民とのトラブルが起きやすくなる
認知症の症状の中には、暴言や暴力があります。そのため突然大きな声で怒ったり、殴ったりして問題になるケースがあります。そのようなトラブルが続くと、ほかの入居者への影響も踏まえ、退去せざるを得ない状況になるでしょう。
認知症に対する十分なケアが受けられない
特に一般型のサービス付き高齢者向け住宅には、認知症に対応できる専門スタッフや人員がいません。サービス付き高齢者向け住宅の目的は、高齢者が安心して暮らせる住まいの提供です。そのため、認知症に必要なサービスを受けるのは厳しいでしょう。
介護型であれば認知症ケアに対応している住居もありますが、グループホームのように認知症の方限定の場所ではありません。
サービス付き高齢者向け住宅での看取り対応の実態
下記の表は、サービス付き高齢者向け住宅が看取りに対応しているかどうかの実態をまとめたものです。
応相談:52.3% | 実績あり | 実績なし |
---|---|---|
38.2% | 14.1% | |
対応なし | 11.6% | |
表示なし | 36.1% |
※調査対象戸数:2581戸※令和2年8月末時点のデータ
看取りの方に対応するかどうかは「応相談」と回答した住居が半数以上でした。その中でも「実績あり」と回答した住居は約4割にとどまっています。「対応なし」と回答している住居は1割程度です。この結果から、サービス付き高齢者向け住宅では看取りの方に対する対応実績が少なく、住居によって対応が分かれると読みとれます。

サービス付き高齢者向け住宅に入る前に事前にできること
サービス付き高齢者向け住宅に入居してから、本人が認知症になったらどうしようと心配している方に向けて、事前にできる対策を解説します。対策は以下のとおりです。
- 改めて本人の健康状態をチェック
- グループホームへの入居を検討
- 介護付き有料老人ホームを検討
- 特養(特別養護老人ホーム)を検討
認知症になったときを考えて老人ホーム選びをしておくと、入居してから予想外の状況を防げます。ぜひ参考にしてください。
1.改めて本人の健康状態をチェック
サービス付き高齢者向け住宅を決める前に、改めて本人の健康状態を整理しましょう。介護度・持病・必要なサービスを洗い出し、本当にサービス付き高齢者向け住宅が適しているかどうかの見直しも重要です。
「自由度の高い暮らし」を理由にサービス付き高齢者向け住宅にこだわっている場合、本当に必要なサービスを見極められていない可能性があります。また、少しでも認知症の疑いがあるのならば、契約する前に病院で診察してもらいましょう。
2.グループホームへの入居を検討
本人が認知症の場合、サービス付き高齢者向け住宅ではなくグループホームに入居する選択肢もあります。グループホームとは、認知症の高齢者を対象とする少人数制で共同生活する施設です。グループホームでは認知症に特化したケアを提供しており、認知症の進行を穏やかにすることが期待できます。
また認知症になったときを心配する方は、グループホームへの移動も選択肢に入れておきましょう。サービス付き高齢者向け住宅の周辺や、家族の自宅近くにグループホームがあるかどうかチェックしておけば、必要なときに役立ちます。
3.介護付き有料老人ホームを検討
本人が認知症の場合、介護付き有料老人ホームに入居する選択肢もあります。介護付き有料老人ホームとは、24時間職員が駐在し、食事・入浴・排せつの介助をはじめとする介護を受けられる施設です。介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、介護付き有料老人ホームと同じ職員体制・サービス内容に該当します。
そのため認知症の方が民間の老人ホームに入居する場合、介護付き有料老人ホームと介護型サービス付き高齢者向け住宅が選択肢になります。認知症になったときが心配な方は、入居するサービス付き高齢者向け住宅や家族の自宅近くに介護付き有料老人ホームがあるかどうかチェックしておきましょう。
4.特養(特別養護老人ホーム)を検討
本人が認知症の場合、特養に入居する選択肢もあります。特養とは、在宅が困難になった要介護の高齢者が入所できる介護施設の一つです。公的機関であるため利用料の安さが魅力ですが、介護度や健康状態に関する入所条件が厳しく定められています。
認知症の方においては、進行していても身体は元気な方もいます。特養は、介護度が高い方の選択肢として考えてください。事前準備として、自宅近くの特養を探しておくとよいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅に「住んでから認知症になった」方の対処法
サービス付き高齢者向け住宅に住んでから認知症になった方ができる対処法は、下記のとおりです。
- ほかの老人ホームへの移動を検討する
- 認知症でも住める住居を探す
なるべく慣れ親しんだ場所で住み続けたいと思う方も多いと思いますが、認知症になった場合はサービス付き高齢者向け住宅にこだわりすぎないことが重要です。退去を迫られる可能性もあるため、上記の対処法を検討してください。
ほかの老人ホームへの移動を検討する
サービス付き高齢者向け住宅に入居してから認知症になった場合は、ほかの老人ホームへの移動を検討しましょう。住居によっては、認知症の方の対応ができない可能性があります。
本人が穏やかに過ごすためにも、認知症に特化したケアやサービスを受けられる老人ホームを検討すべきです。認知症に対応している老人ホームは、下記のとおりです。
- 特養(特別養護老人ホーム)
- グループホーム
- 介護付き有料老人ホーム
認知症に特化したグループホームは、共同生活になるため人と接するのが好きな方に向いています。介護付き有料老人ホームは民間の施設になるため、さまざまな特徴の施設から選べます。特養は基本的に要介護3以上の方が対象になるため、介護度が高い方で費用を抑えたい方に向いているでしょう。
認知症でも住める住居を探す
本人がサービス付き高齢者向け住宅にこだわる場合は、介護型で受け入れてくれる住居を探しましょう。ただし、サービス付き高齢者向け住宅は、介護型よりも一般型のほうが多い傾向にあります。
ケアスルでは7352件(※2022年12月時点)のサービス付き高齢者向け住宅を取り扱っていますが、その中でもアルツハイマー型認知症の受け入れを可としている住居は2269件です。
「サービス付き高齢者向け住宅」と「有料老人ホーム」の違い
介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、ほとんどの施設が有料老人ホームに該当し、介護付き有料老人ホーム相当の特定入居者生活介護に当てはまります。そのため、介護型のサービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホームが混同し、違いがわからない方も多くいます。違いは下記のとおりです。
サービス付き高齢者向け住宅(介護型) | 介護付き有料老人ホーム |
---|---|
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大きな違いは、契約方式です。介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、施設や居住者ニーズの違いにより契約形態・支払い方式が異なります。賃貸方式は、一般的な賃貸マンションの契約同様、建物に住むために賃料を支払う契約となります。有料老人ホームは利用権方式を採用しており、終身にわたる利用権を手にする意味をもつ契約です。
介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、ほとんどが特定入居者生活介護に該当します。この場合、サービス内容の基準は変わりませんが、契約方式が異なる場合もあると認識しておきましょう。

認知症が心配なら他の老人ホームも視野に入れよう
本記事では、認知症の方がサービス付き高齢者向け住宅に住めるのかどうかや、対応の実態を解説しました。認知症に対応している施設は、実績ありの場合だと4割程度です。そのため、サービス付き高齢者向け住宅にこだわらず、ほかの老人ホームも視野に入れて検討するとよいでしょう。
また認知症に対応しているサービス付き高齢者向け住宅が住みたい地域にあるケースは、少ないです。住居探しが困難になると考えられるため、民間の紹介センターに依頼し、希望のサービス付き高齢者向け住宅を探してもらう方法も試してみましょう。
介護型のサービス付き高齢者向け住宅であれば、入居できる可能性があります。一般型のサービス付き高齢者向け住宅は、認知症の方に対応できるサービスや人員が揃っていません。詳しくはこちらをご覧ください。
一般型のサービス付き高齢者向け住宅に住んでいる場合、退去を迫られる可能性があります。退去せざるを得ない場合は、介護型のサービス付き高齢者向け住宅やグループホームなどを検討するとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。