介護サービスを利用するうえで必要になるのが要介護度についての知識ですが、そもそも要介護度ってなに?という疑問を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、要介護度の取得方法や利用できる介護サービスなどを中心に要介護度について詳しく解説していきます。
要介護認定の結果が不服だった場合の再申請方法や、要介護度が高くなった場合のメリット・デメリットについてもお伝えしていきます。要介護度について疑問のある方はぜひ参考にしてください。

要介護度とは?
要介護度とは、日常生活を送るうえで必要な介護の必要量をあらわす度合いで、以下の8段階に区分されます。
- 要支援1~2
- 要介護1~5
- 自立(非該当)
2000年、厚生労働省によって「介護保険制度」がつくられました。
この制度は、介護保険料を納めている65歳以上の方または40歳〜64歳までの特定疾病のある方が介護を必要とした際、介護サービスや給付金を受け取れるものです。
この制度を利用するには、要介護度認定を受けて要介護度を決定する必要があります。
要介護度は、利用できる介護サービスに直接影響するため、厚生労働省によって定められた「要介護認定基準時間」と認知症症状の程度をあらわす認知症加算の合計を基に決定されます。
要介護認定基準時間とは、以下の5つの行為を介助する際にかかる時間を指し、かかった時間に応じて要介護度区分の決定に影響を与えます。
- 「直接生活介助」排せつ・入浴・食事などの介護
- 「間接生活介助」掃除・洗濯などの家事の援助
- 「問題行動関連行為」徘徊に関する探索・不潔行為の後始末など
- 「機能訓練関連行為」歩行訓練・日常生活訓練などの機能訓練
- 「医療関連行為」輸液の管理・じょくそう(床ずれ)の処置などの診療の補助など
つまり、同じ病気や障がいがあるからと言って、必ずしも同じ区分になるわけではありません。
要支援
要支援とは、「基本的な日常生活は介助なしで送れるものの、部分的には介助してもらう必要がある」状態です。
(参考:厚生労働省 要介護認定に係る法令参照)
要支援の場合、入浴・排せつ・食事など、日常生活を送るうえで必要な動作は可能です。しかし、浴槽をまたげなかったり、掃除ができなかったりなど、動作の一部に介助を要します。
また、適切な介助を受けられれば要介護にはならない、つまり、介助しなければ要介護となってしまう方も要支援となります。
要支援区分は、以下の2段階です。
区分 | 状態 | 要介護認定基準時間 |
要支援1 | 基本的には、1人で日常生活を送ることができる
しかし、一部動作に見守りまたは介助を要する |
25分以上32分未満
または、この時間に想定すると認められた状態 |
要支援2 | 基本的には、1人で日常生活を送ることができる
しかし、要支援1よりも見守りまたは介助を要する場面が多い状態 |
要支援状態で32分以上50分未満
または、この時間に相当すると認められた状態 |
要介護
要介護とは、「基本的な日常生活を送るうえで、一部または全部の動作に介助が必要な状態」です。
(参考:厚生労働省 要介護認定に係る令参照)
要介護の場合、運動機能の低下とともに、思考力・理解力といった認知機能の低下もみられる状態です。
基本的には、認知機能の低下が確認できれば要介護となるのが多いですが、日付を忘れたなどの軽度の認知機能の低下であれば、要支援となる場合もあります。
要介護区分は、以下の5段階です。
区分 | 状態 | 要介護認定基準時間 |
要介護1 | 基本的には、1人で日常生活が送れるが、
立位や歩行などの動作時に支えが必要であったり、 認知機能の低下がみられ始める |
32分以上50分未満
または、この時間に相当すると認められた状態 |
要介護2 | 基本的な動作にも見守りまたは介助が必要となってくる
また、要介護1よりも認知機能の低下がみられる さらに、問題行動がみられることもある |
50分以上70分未満
または、この時間に相当すると認められた状態 |
要介護3 | 日常生活を送るうえで、全面的な介助が必要となってくる
また、認知機能の低下や問題行動もみられる |
70分以上90分未満
または、この時間に相当すると認められた状態 |
要介護4 | 全面的な介助がなければ、基本的動作ができない
また、要介護3と比較して認知機能の低下や問題行動がみられる |
90分以上110分未満
または、この時間に相当すると認められた状態 |
要介護5 | 介助がなければ生活できず、意思疎通も困難
寝たきりであることが多い |
110分以上
または、この時間に相当すると認められた状態 |
自立
自立とは、要介護認定の結果、要支援にも要介護にも当てはまらずに「非該当」となった場合を指します。
自立だからといって、介護サービスがまったく利用できないわけではありません。
ただし、利用できるサービスに制限があったり、給付金が出ないため全額自費になったりします。
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要支援2と要介護1はどう決まる?
要支援と要介護では、利用できる保証内容やもらえる給付金に大きな違いがあります。そのため、要介護認定の結果が出る前に、要支援と要介護のどちらになるのか気になる方もいるでしょう。
とはいえ、要支援2と要介護1の違いに分かりにくさを感じている方もいるのではないでしょうか。
要支援1と要介護2には、以下の2点の違いがあります。
- 認知機能の状態
- 状態の安定性
要支援2は、適切な介助を受けられれば認知機能の低下を予防できる状態です。つまり現状、認知機能の低下はみられません。
一方、軽度の認知機能の低下があり、要支援への回復は困難とされる状態が、要介護1です。これは、「認知症高齢者の日常生活自立度」というスケールを用いて判断されます。
認知機能の状態を7段階で区分し、度合いが高いほど認知機能に低下がみられる、つまり、要介護1になる場合が多いです。
次に、状態の安定性とは「今後6カ月以内の介護量増加の有無」を指します。厚生労働省が定める要介護認定の有効期間は、6カ月です。
そのため、6カ月間の要介護認定有効期間内に、介護量の増加によって、再認定する可能性があれば、認知機能の低下がなくても、要介護1となる場合があります。
ただし最終的には、介護認定審査会で要介護度の決定がされるため、認知機能の状態と状態の安定性は、あくまで目安であると覚えておきましょう。
(参考:状態の維持・改善可能性にかかる審査判定)
要介護度認定までの流れ
要支援・要介護を取得するには、要介度認定を受ける必要があります。
要介護度認定の流れは以下の通りです。
- 申請
- 調査
- 結果の通知
ここからはそれぞれについて詳しく解説していきますので、要介護度認定を検討している方は参考にしてください。
申請
申請の際には、以下の書類が必要になります。
- 認定申請書
- マイナンバーカード
- 写真付き身分証明書
- 介護保険被保険者証
- 医療保険証(40~64歳までの第二号被保険者のみ)
認定申請書は、各市区町村の窓口またはホームページから取り寄せが可能です。
また、必要な書類は市区町村によって異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
要介護度認定の申請は、ご本人やご家族に限らず、ケアマネージャーによる代理申請も可能です。

調査
調査内容は、以下の4つです。
- 訪問調査
- 主治医の意見書
- 一次判定
- 二次判定
訪問調査とは、市区町村のスタッフまたはスタッフから委託されたケアマネージャーが、自宅や入院先の病院などに訪問して行う、聞き取り調査です。
訪問調査では、以下のような内容の質問を約70項目聞き取りするため、約30分~1時間ほどの時間を要します。
- 麻痺の有無
- 寝返りや立位の自立度
- 食事や排せつ、着衣の自立度
- 短期記憶の程度
- 徘徊の有無
- 大声や暴言・暴力の有無
- 物忘れの有無
- 薬・お金の自己管理はできるか
- 人工肛門の処置・点滴管理の方法 など
訪問調査の結果が要介護度認定の結果になるといっても過言ではないため、伝え忘れがないよう、伝えたい項目はメモしておくとよいでしょう。
また、普段はできないことが、訪問調査時に外部の方との接触が刺激となって、急にできるようになる方もいます。普段の状況を伝えないと、ミスジャッジされることもあります。注意が必要です。
要介護度認定の際には、主治医からの意見書も必要になります。
意見書は、市区町村から直接主治医へ送付し、その後市区町村へと返信されるため、ご家族は関わりません。受診の際に、主治医へ要介護度認定を受ける旨を伝えるのみで大丈夫です。また、意見書の作成料はかかりませんので安心してください。
主治医がいない場合には、市区町村が指定する医師の診察を受ける必要がありますので、確認してみるとよいでしょう。
訪問調査の結果や意見書の一部の内容はコンピューターに入力され、自動的に要介護度が判定されます。これが、一次判定です。
最後に行われる二次判定は、一次判定の結果と意見書の結果をもとに、介護認定審査会による最終判定になります。
結果の通知
基本的には、申請してから結果が届くまでは30日以内に完了し、結果は郵送で届きます。
初めて要介護度認定を受けた方の場合の有効期限は、原則6カ月間です。ただし、状態が不安定であれば最短3カ月間に短縮、状態が安定していれば最長12カ月間に延長できます。
介護サービスを引き続き利用していく場合には、有効期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。要介護度認定を更新した際の有効期限は、原則として12カ月です。
ただしこちらも、状態が安定しているかどうかによって、最短3カ月に短縮、最長24カ月に延長できます。
要介護度決定後、ケアマネージャーにケアプランを作成してもらうことで、介護サービスの利用が可能になります。
作成するケアプランと、ケアプランの作成を依頼する場所は、要介護度によって異なるため、間違いのないよう注意しましょう。
要介護度 | 作成するケアプラン | 依頼場所 |
要支援1~2 | 介護予防サービス計画書 | 地域包括支援センター(居宅介護支援事業所が代行する場合もある) |
要介護1~5 | 介護サービス計画書 | ケアマネージャーのいる市区町村指定の居宅介護支援事業者 |
不服の場合の再申請は可能?
結論から述べると、結果に不服がある場合の再申請は可能です。
要介護度区分は、利用できる介護サービスに直接関わるため、思っていたよりも要介護度が低いと焦ってしまう方もいると思います。
しかし、焦りは禁物です。順を追って再申請をしていきましょう。
再申請をするうえで、まず初めにすべきなのは、市区町村の介護保険課で認定結果が出るまでの経緯の確認です。
情報開示請求で、以下の情報を得ましょう。
- 認定調査表
- 主治医の意見書
- 一次判定の結果
この中で最も確認すべきなのが「主治医の意見書」です。主治医の意見書は、二次判定の結果にもっとも大きな影響を与えます。
ご家族が伝えたかった内容がしっかりと主治医に伝わっていたのかを確認しておくとよいでしょう。
再申請には、以下の2つの方法があります。
- 不服申し立て
- 区分変更申請
不服申し立ては、都道府県が設置する介護保険審査会へ、結果に納得がいかないことを申し立てる方法です。
不服申し立てが通れば、認定の再調査が行われますが、申し立てが妥当かどうかの調査後に、認定のための再調査が行われるため、数カ月単位の長い期間を要します。
不服申し立ては、結果の通知を受け取った翌日から60日以内に行う必要があります。区分変更申請は、本来状態の変化があった場合に行われるものです。
しかし、区分変更申請はいつでも申請可能で、約1カ月の短期間で結果がでるため、不服申し立ての代わりとして行う方も少なくありません。
区分別に受給できる給付金要介護度別の支給限度額
区分によってもらえる給付金も異なりますので、確認が必要です。
区分 | 支給限度基準額 |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
要介護度認定を受けた方は、支給限度基準額の1~3割を負担します。負担額は、所得によって異なりますが、基本的には1割です。
支給額の限度を超えた分は、全額支払う必要があるため、注意しましょう。また、給付金は隔月支給のため、翌月に繰り越しはできません。
さらに、福祉用具であればすべて介護保険でまかなえるわけではなく、サービスの適応外になるものもありますので、注意しましょう。
サービス適応外になる福祉用具には、以下のようなものがあります。
- おむつ
- 介護専用の寝具・衣類
- 配食サービスなどの食費
- T字型杖
- 補聴器
要介護認定を受けている方でも受けていない方でも、ケアスル介護の入居相談員ならあなたに合った介護施設を紹介することが可能です。
予算や立地、施設の雰囲気など、あなたに合わせた施設をお伝えすることができますので、介護施設を探し始めている方は是非一度、ケアスル介護で相談してみてはいかがでしょうか。
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要介護度区分が上がるとどうなる?
要介護度区分は、高ければ高い方がお得だと思っている方もいるかもしれませんが、実はそうとは限りません。
区分が上がると利用できる介護サービスや支給限度基準額も上がるため、一見、区分は高ければ高い方がよいだろうと思われがちです。
しかし、ほとんどの介護サービスによっては区分が上がると同時に、基本料金も増えるため、思っていたよりも介護サービスが利用できない場合があります。
一方で、区分に関係なく、一律の基本料金が設定されている介護サービスもあります。
- 訪問介護・看護
- 福祉用具の貸与・購入
- 住宅の改修 など
思っていたよりも区分が低いからと言って悲観せず、利用したいサービスや月に何回利用したいかなどから、再申請をするべきかどうかを検討していくとよいでしょう。
要介護度をうまく活用しよう
今回は、要介護度について詳しく解説してきました。要介護度区分や要支援2と要介護1の違い、要介護度認定の流れ、区分別サービス内容など、要介護度について網羅的に理解できたのではないでしょうか。
要介護度は、高ければ高い方がよいわけではなく、利用される方に適しているかどうかが重要です。
利用者、介護者の負担が減り毎日を笑顔で過ごせるよう、要介護度をうまく活用してください。
Q.要介護度認定は65歳以上の方のみですか?65歳以下では受けられませんか?
基本的には、65歳以上の方のみとなりますが、老化が原因の16の特定疾病に罹患している40歳以上の方であれば、要介護度認定ができます。
65歳以上の方を「第一号被保険者」と呼ぶのに対し、40歳以上65歳未満かつ医療保険に加入している方を「第二号被保険者」と呼びます。
Q. 入所待ちの状態で複数の特別養護老人ホームへの申し込みは問題ありませんか?
問題ありません。多くの方が複数の施設への同時申し込みを行っています。
複数の施設で入所許可が出た場合には、入所を取りやめる場合の連絡を必ず入れましょう。