私たちにとって食事は単なる栄養補給ではありません。味の美味しさ、見た目の美しさ、献立の取り合わせなど料理としての質も大切です。
そしてそれ以上に、その食事を楽しく食べられているか、誰と食べているか、どこで食べているかも大きな意味を持ちます。
それだけではありません。例えば、今までの人生で心に残っている食事は何でしょうか?例えば、自分の死期が迫ったとき、最期に何を食べたいでしょうか?食事は私たちの生き方や文化、価値観に深く根差しています。
このように食事は私たちの心や体に深く関わるものですから、施設選びの際に食事を気にされるのはもっともなことです。
では、グループホームで出される食事はどうでしょうか。
この記事では、グループホームにおける食事の意味や役割を含め、食事のケアからわかるグループホームの失敗しない選び方もご紹介します。
グループホームの食事はどんな感じなのか、疑問や不安な気持ちを一緒に解決していきましょう。
グループホーム内での食事とは?
グループホームの食事は、ほかの施設とは異なりその日の食事を介護者と入居者が協力し合って作るのが特徴です。
食材に何を選び、どのように調理し、どんな料理に仕上げるか。その過程にご自身の意思や力がどれだけ活かされるか。
食事ひとつをとっても、自分の生活の主人公が自分であるという意識は感じられるものです。その意識や誇りが認知症にも良い影響を与えます。
また、その食事を選ぶ、作る過程では私たちの脳は相当に働き、刺激を受けます。そのことも脳の機能をすこやかに保つためにも、重要なことです。
したがって、グループホーム内で食事作りができる環境を整えることや、参加を促す声掛け、作業のわかりやすさへの工夫は、入居者にとって利点になるでしょう。
また共同生活を大切にするグループホームにおいて、食事作りや配膳などは、共同作業がしやすくコミュニケーションの機会が増えるため、人間関係の構築に繋がる大切な場面です。
グループホームでの食事例について
グループホームで具体的にどんな献立が提供されているのでしょうか?
本章では一週間のグループホームの食事例をご紹介します。
私たちの食事でも、メニュー決めが苦手な方もいると思いますが、グループホームでは介護者や入居者がメニューを決めている施設も存在します。
食べたい物や作れるものを考えて意見を出し合えるアットホームな環境も、グループホームの魅力といえるでしょう。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
朝 | ご飯
味噌汁 冷やっこ 魚の煮付け 漬物 |
パン
ポテトサラダ 茹で卵 ヨーグルト |
ご飯
味噌汁 大根のそぼろあんかけ煮 漬物 |
パン
野菜サラダ スクランブルエッグ 牛乳 |
ご飯
味噌汁 焼き魚 漬物 |
パン
ハムエッグ ツナサラダ 牛乳 |
ご飯
味噌汁 納豆 胡麻和え |
昼 | ご飯
味噌汁 アスパラベーコン巻き フルーツ |
トマトパスタ
野菜サラダ コンソメスープ プリン |
ご飯
チキンソテー マカロニサラダ フルーツ |
ラーメン
中華スープ 野菜サラダ |
焼うどん
茶碗蒸し ゼリー |
ご飯
唐揚げ サラダ フルーツ |
中華丼
玉子スープ サラダ |
夜 | ご飯
味噌汁 野菜サラダ 生姜焼き 漬物 |
雑炊
味噌汁 茹で卵 野菜の煮物 漬物 |
ご飯
味噌汁 肉じゃが 漬物 |
ご飯
味噌汁 煮魚 フルーツ |
ご飯
麻婆豆腐 わかめスープ |
ご飯
味噌汁 鯖のみそ煮 フルーツ |
炊き込みご飯
豚汁 お浸し |
献立は、栄養バランスと手軽に作れるメニューを意識しています。
上記の献立では、エネルギー源になる炭水化物をご飯やパンで、筋肉維持に必要なたんぱく質は肉や魚を中心にとり、サラダやフルーツでビタミンやミネラルを摂取できるように考えられています。
入居者にとって、食事作りで作業分担しやすい食事であるのは、達成感を感じやすく、入居者が食事の時間を楽しむ要因になるでしょう。
グループホーム食事が持つ大切な3つの目的
グループホームでの食事において大切にしている目的は次にあげる3つです。
- おひとりおひとりへの適切な食事と栄養サポート
- 食生活の主役となること
- こころやからだの機能を活かす
おひとりおひとりへの適切な食事と栄養サポート
まず大切なのが、栄養バランスが整った食事です。認知症の人の中には、食事量が減ったり、同じものしか食べなくなったり、食べ物以外を口にしてしまう場合もあるかもしれません。
その結果、低栄養状態で体力が低下していることはもちろん、中には脳にも大きな悪影響を受けている場合もあります。
グループホームでは入居者が食事を作っている場合でも、足りない栄養素をスタッフが一品作って付け加えたり、温野菜を付け合わせにしてもらったりと様々な工夫を凝らしています。
また、お一人では食べすぎたり、逆に食べなかったりした方が、共に食卓を囲むことで適切な量を食べられるようにもなります。
一回の食事ではしっかりと召し上がれなかったとしても、栄養価の高い間食や飲み物を召し上がっていただくなどして、1日トータルとして適切な栄養摂取をしていただくこともできます。
ご本人の意思を大切にしながらも、お一人お一人に合わせた栄養サポートを行えるのがグループホームの食生活の利点と言えます。
食生活の主役となること
グループホームでは生活の中での自立支援として、なるべく食生活に自立的に、主体的にかかわっていただくように工夫をしている施設が多くあります。
献立を決め、買いに行くこともそうですし、スタッフや他の入居者の力を借りながら調理をすることもあります。
盛り付け一つにしても、どれだけの量をバランスよく盛り付けるか、長年の人生で培ったお力や姿が引き出されることもあります。
食生活の主人公であるというのは、私たちはあまりにも当然のことで意識していないかもしれません。
しかし、どれだけ素晴らしい料理でも毎食毎食、選ぶこともできずにただ食べることだけを行うよりも、派手さのない一品でもご自身が選び、準備に関わった料理が出されるというのは張り合いがあることで、食欲も湧くことでしょう。
その食生活を通して、グループホームが自分の居場所であり、認知症の症状に悩まされることがあっても、大切にされる場所、大切にしたい場所として、穏やかな生活が送られることを実感できるのです。
こころやからだの機能を活かす
認知症の症状や高齢によって、さまざまな心身の機能が低下していくのは不安で悲しいことです。
だからこそ、今ある自分や機能を活かして一日一日を送ることが大切なことなのです。
例えば、言葉や理屈で覚えたことは認知症で失いやすいものですが、体で覚えたことは失いづらいとされています。
また、食材や調理は五感を刺激します。言葉では得られなかった刺激が、そうした過程で脳を活性化するのもよくあることです。
料理づくりはそうした機能を最大限に活かします。手元がおぼつかない人でも、キャベツの千切りを見事に行ったり、食材を目にすると過去の体験から調理法や手順がよみがえったり。
識状態が低くなりがちの方が故郷の郷土料理ではつらつとされることもあります。こうした食生活の支援のありかたが、グループホームでの生活をより一層、彩るのです。
ピッタリの施設を提案します
グループホームの食事がもたらす影響とは
グループホームでの少人数での共同生活は、食生活にどのような影響があるのでしょうか。
それは協力し合って共同生活をしているグループホームだからこそ、サポートだといえます。それでは、グループホームの特徴ともいえる共同生活が果たす食生活への役割を解説していきますので見ていきましょう。
同じ食卓を囲むことがはりあいをもたらす
食卓を囲む仲間がいることで様々な利点があります。古来より、同じ釜の飯を食うという言葉もあります。グループホームのひとつのユニットの定員である、5~9人という人数は、ちょうど世代的にも生まれ育った家族のサイズに近いものです。
食欲がないと思っていた時でも、他の入居者が食べている様子でつられて食べることもあります。なかなか手が進まなければ、大丈夫?と声をかけてくれることもあります。もちろん、お一人がお好きな方もいらっしゃいますが、誰しも家族という共同生活で産まれて育った以上、何かしら良い刺激を受けることが多いようです。どうしても一人でというときには、居室で召し上がることもできます。そうした自由もグループホームでは得られるのです。
共同で食事の用意を行うことが心身を活性化する
調理や配膳など食事の用意を共同で行うことが、心身の機能の維持・向上、特に認知機能の改善に良い影響をもたらすと言われています。
まずは役割を持つことが大切です。調理場面でも、私がこれをするから、あなたはこれを切ってというように自然に役割分担がなされます。認知症だから包丁が危ない、火は使わせないと役割を失ってきた人にとっては、誰かに役割を任されるというのは何事にも代えがたい喜びでしょう。配膳を任された人が「18個を6人分だから、3つずつね」と、普段はできなかったような計算を瞬時に行うことだってあります。それだけ頼られる、役割があることが心身を活性化するということでしょう。
もちろん、そこで難しいことや危険なことがあれば、ご本人の尊厳を傷つけないように、スタッフもサポートに入ります。そうしたサポートを受けながらの共同作業もグループホームならではでしょう。
グループホームの食事作りって大変じゃないの?
グループホームでの食事作りに苦痛を感じることはほとんどないと言えるでしょう。
というのもあくまでグループホームでの食事作りは入居者が主体的に活動し、認知機能の維持・向上を目的とするものです。
したがって、本格的な料理を実践するというわけではなく調理には経験や高度な技術が必要のないよう、簡単な内容に収まっています。
したがって調理経験がない男性なども楽しみながら行えるように工夫が図られており、施設のスタッフも入居者の様子を見ながら適宜サポートしてくれるため安心です。
グループホームの食事づくりは強制ではない
何らかの事情があってどうしても食事づくりをしたくない場合は、そもそも参加しないことも可能です。
グループホームでは本人の意思を尊重しながら共同生活を営むことになるため、やりたくないことで無理をすることはありません。
食事作りを含めて共同生活に不安なことがあれば入居前に施設に伝えておくことをおすすめします。
また、施設によっては食事作り自体を外部に委託しているケースも存在します。
グループホームでは必ずしも食事作りに取り組まなければならないわけではないため、理解しておきましょう。
グループホームの食事支援でわかる失敗しないグループホームの選び方
グループホームは年々数を増やしていますが、どんなグループホームがよいのでしょうか。これから生活をするグループホームで、入居後に失敗したくないですよね。
そこで、グループホームの食事のありかたに注目してみると注意するポイントがあるのがわかりました。どんなグループホームがよいのかわからず悩まれている方には、参考になるでしょう。
食事中と入居者の雰囲気
食事の雰囲気やグループホーム内の雰囲気は、よいグループホームを見分けるのに最も大切なことです。
入居者の表情や伺って見てみると、グループホームの雰囲気を感じられるでしょう。認知症の方は、環境や雰囲気の影響に敏感な傾向があります。
固い表情で食べているのか、他の入居者と会話しているのか、何かもわからないように恐る恐る口をつけているのか、安心して口に運んでいるのか。大まかな表情や雰囲気だけでもつかめることがあります。そうした入居者の表情や、入居者同士の関わり方など、グループホームの雰囲気に注目してみるとよいでしょう。
必要に応じた介護など、スタッフのかかわりかた
誤嚥や窒息など、実はリスクの高い瞬間です。スタッフはしっかりと見守る必要がある一方で、まるで監視するかのような態度では食事も楽しい物にはなりません。スタッフが目を離しているのはもちろん問題ですが、食卓の近くで立って腕組みをして、難しい顔で見ていないでしょうか?
また、食事のサポートも注目です。入居者が食べこぼしている場合、それをあからさまに汚いといった表情で処置していないでしょうか?食事が進まないからといって「これ食べてください」と指示のような口調をしていないでしょうか?
入居者のケアのありかたを判断するには、食事場面は絶好の機会です。
食事や食生活をどのようにとらえているのか
グループホームによっては、買い物はスタッフがしていたり、あらかじめ献立が決められていたり、料理を入居者に開放していなかったりと、事業所の方針により、食生活のありかたが変わってきます。
料理が生きがいだと人生を送ってきた方が、料理ができると思っていたのに、そのホームでは料理をさせてもらえないというミスマッチもあり得ます。
何ができて、何をさせていないのかを知るためにも、そのありかたを尋ねてみると良いでしょう。
また、認知症の症状や老化によって、噛む、飲み込むが難しくなる咀嚼嚥下障害という状態にもなることも多いです。
その場合には食事の形態を刻んだものや柔らかいものに替えるなど、支援が必要になりますが、そうした特別なニーズにどれだけ応えてもらえるかはそのホーム次第です。
また、そうした特別なニーズにはスタッフの経験も必要です。対応の可否だけではなく、これまでの実績を尋ねてみると良いでしょう。
こうしたポイントはもちろん、入居を検討するときに尋ねることも可能ですが、グループホームは「地域密着型サービス」に位置づけられ、定期的に、おおよそ2か月に1回、運営や生活の様子を家族や近隣に知らせるために、「運営推進会議」を開催する義務があります。
近い将来、グループホーム探しを検討している場合には、近隣のグループホームの「運営推進会議」に参加してみるのもいいかもしれません。
施設探しで失敗したくないという方は、ケアスル介護がおすすめです。ケアスル介護は、約5万件の施設情報を掲載しているため幅広い選択肢から検討することが可能です。
「納得いく施設を探したい」という方は、ご気軽に活用ください。
ピッタリの施設を提案します
まとめ| グループホームでの食事で楽しみながら認知症予防
グループホームの食事は、食べるだけではなく認知症を抱えた方が、認知症と共に生きていくために必要な「術」を教えてくれるものでした。
食材がもつ栄養素で身体を作るのも重要ですが、それ以上に認知症を抱えている方の尊厳、心身の機能維持に対するケアには、グループホームの食事作りの取り組みが大切です。
入居者は、食事作りから「楽しさ」や「達成感」を得る事で、生きがいにつながるきっかけを見出せるでしょう。人は食べてきたものでできているという言葉があります。単純に体を作るだけではなく、心を、人生の歴史を作ってきたのが食事です。
その食事をどれだけ大切な喪と考えているのか。そのグループホームの食事を通して、認知症ケアへの体制やコミュニケーションの取り方など、さまざまな面でグループホームの特色が垣間見えるはずです。
どんなグループホームなのか知りたいと思った際には、食事の時間に見学にいくのもいいかもしれません。
本当です。グループホームの食事はスタッフと入居者が協力し合って作るのが特徴です。というのもグループホームでは生活の中での自立支援として食事作りを実施しており、買い物や盛り付け・配膳などといった一人ひとりの役割をこなしていくことによって認知症の進行緩和につなげているのです。詳しくはこちらをご覧ください。
グループホームでの食事作りに苦痛を感じることはほぼないと言えるでしょう。というのも調理には経験や高度な技術が必要のないよう、簡単な内容に収まっています。したがって調理経験がない男性なども楽しみながら行えるように工夫が図られているのです。詳しくはこちらをご覧ください。