• 認知症
  • 【公開日】2022-10-17
  • 【更新日】2023-09-12

認知症で入院が可能な施設とは?その治療内容や費用、注意点を解説

認知症で入院が可能な施設とは?その治療内容や費用、注意点を解説

家族の誰かが認知症になっても、家族間で協力しながらの介護は可能です。しかし、認知症の進行で本人に異常行動が目立つようになったり、家族が介護疲れで健康を害したりするおそれもあります。

そのような場合、認知症に関する専門家の支援や、認知症に対応できる施設で適切な治療を施し、認知症の改善を図りたいものです。その際の1つの選択肢が「認知症入院」です。

認知症入院で生活機能の回復訓練をはじめとしたさまざまな治療を行い、 認知症の軽減・改善を目指します。認知症入院の特徴について学び、利用の是非を慎重に検討してみましょう。


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東京都健康長寿医療センター 脳神経内科 部長
監修岩田 淳
所有資格:総合内科専門医,日本内科学会認定医,日本神経学会認定神経内科専門医・指導医.日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・指導医,日本認知症学会専門医・指導医
専門分野:脳神経内科
職業: 医師
出身組織: 東京大学大学院医学系研究科

東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に従事。早期段階のAD、レビー小体型認知症の診療が専門。2020年4年より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。詳しくはこちら

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認知症の入院基準

認知症の方が病院へ入院する際には、認知症の診断を受けているだけでは入院を認められないケースもあり、入院が必要か否か、次の3点を基準に判断しています。

  • 精神保健福祉法による判断
  • 介護者の生活を阻害する行動が見られるか
  • 専門医による判断

それぞれの入院基準について詳しく見ていきます。

精神保健福祉法による判断

病院の精神科で認知症の入院をするには、まず「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」の判断基準で入院させるか否かを判断します。

本人に精神障害の症状があるものの、自分自身や周囲の状況を適切に判断でき、本人が入院治療の必要性を理解して同意できる状態ならば、本人と医師との間で合意を得たうえで、任意入院の手続きがとられます。

しかし、本人が次のような状態の場合は、本人の同意なしに入院が可能です。

  • 自分自身や周囲の状況が把握できず、入院治療の必要性を理解できない場合:家族等の同意による医療保護入院
  • 本人が精神障害により自身を傷つけたり、他人に暴力等を振るったりするおそれがある場合:都道府県知事の権限により手続きを踏んで措置入院(急速を要するなら即座に入院させる緊急措置入院)

以上のように家族とは関係のない都道府県知事も、万一の場合には、必要な対応がとれる体制が整備されています。

介護者の生活を阻害する行動が見られるか

認知症で精神科に入院させる場合、精神保健福祉法の基準だけでは判断しません介護者の生活(睡眠・食事・就労等)に支障が出ているケースも考慮する必要があります。

具体的には、次のような症状が認められた場合です。

(1)妄想・幻覚等が認められる

「物を盗まれた」「悪人に狙われている」と発言するような被害妄想、「亡くなった親族がいる」「得体の知れない人物の声が聞こえる」、といった症状が該当。

(2)興奮行動が認められる

些細な出来事で周囲に怒り、物を壊す・投げつける等の症状が該当。

(3)気分の落ち込み・苛立ちが認められる

数分前まではにこやかに家族と会話していたが、いきなり苛立ったり、ふさぎこむなど感情の急激な変化が該当。

専門医の判断で決定

既に認知症の治療を受けていたが、非薬物療法では症状の改善があまりみられず、本人が薬による治療に抵抗する等、このままでは認知症が悪化すると懸念されるケースもあります。

このような場合、認知症を専門とする医師が入院治療の必要性を感じた場合に、精神科への入院が可能です。

もちろん、専門医の一存で認知症入院が決められるわけではなく、本人の症状、介護者の意見等を踏まえて最終的に判断されます。

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認知症の入院治療ができる病院

認知症入院治療の可能な施設としては、認知症疾患医療センター」「認知症治療病棟のある病院の2つが挙げられます。

それぞれの施設について詳しく触れていきます。

認知症疾患医療センター

認知症疾患医療センターは、もの忘れ相談、認知症か否かの診断、認知症の治療、介護保険申請の相談等を、1ヵ所でまとめて支援してもらえる医療機関です。都道府県または政令指定都市が指定する病院に設置されています。

認知症疾患医療センターで入院設備が整っているのは、「基幹型」と呼ばれる総合病院です。そのほか、当センターの指定をうけた単科精神科病院(地域型)、クリニック・医院(診療所型)は入院設備の確保が難しく、ほかの病院との連携体制を整え、対応しています。

認知症疾患医療センター(総合病院)で対応できる診断・治療等は次の通りです。

診断・治療等 内容
認知症に関する医療相談 認知症の専門知識を持つスタッフに電話・面接で相談
認知症の鑑別診断 心理検査や血液検査等で認知症の有無、原因となった疾患、重症度を診断
治療方針を決定し、治療 認知症の症状に合わせ、通院または入院治療が行われ、薬物療法・非薬物療法のいずれか、または併用で治療をすすめる
認知症の行動・心理症状と身体合併症への対応 認知症症状のほか、身体に合併症があれば必要な治療を実施
関係機関との連携 患者本人の状態に応じて、医院やクリニック等の紹介を行う

認知症治療病棟のある病院

認知症治療病棟は、精神症状・行動異常が特に著しい重度の認知症患者を対象とし、発症してから2か月までの急性期に集中的な入院治療を行うための病棟です。

認知症疾患医療センターのようなトータル的な認知症治療の支援よりも、専門的な入院治療と手厚いケアに特化した施設といえるでしょう。

認知症疾患医療センターで相談すれば、認知症の方や家族の自宅から近い、認知症治療病棟を紹介してもらえる場合があります。

認知症治療病棟では、患者の状態に応じて薬物療法のほか、非薬物療法の実施が可能です。医師の診察に基づき移動・座位・食事・排泄・入浴などの日常生活に必要な機能回復訓練を、看護師や作業療法士、精神保健福祉士をはじめとした医療従事者が連携して行います。

なお、長期の療養を前提とした入院治療ではないので、退院後の日常生活の相談にも対応しています。

認知症の入院治療の費用

厚生労働省と慶應義塾大学が2014年に行った調査によると、認知症患者の入院治療にかかる費用は1か月あたり343,000円となっています。

ただ、この費用は医療保険が適用される医療費のみの金額であり、保険適用外である差額ベッド代や食費は含まれていないため、注意が必要です。

出典:慶応義塾大学ストレス研究センター「認知症の社会的費用を推計

入院治療にかかる費用の内訳

認知症の入院治療にかかる費用の内訳は以下の通りです。

  • 医療費(検査や投薬、リハビリなどの治療費や入院基本料)
  • 食費
  • 差額ベッド代
  • 消耗品

これらの費用のうち、医療費のみ医療保険が適用され、その他の食費や差額ベッド代などの費用には保険が適用されないため、全額自己負担となります。

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認知症の入院治療はどのような方法がある?

認知症の入院治療は本人の症状に合わせ、さまざまな治療法を試していきます。治療法には大きく分けて薬物療法非薬物療法があり、これらの治療法を組み合わせ、認知症の改善を図っていきます。

薬物療法は薬の服用

薬物療法は認知機能(記憶力・見当識・計算力・理解判断力等)の低下を抑え、興奮状態の緩和を目的に導入されます。日本国内では次の薬剤が抗認知症薬として承認を受けています。

  • コリンエステラーゼ阻害薬:認知機能の低下の抑制に役立つお薬です。脳内のアセチルコリン濃度を上昇させ、神経細胞内の情報伝達を活発にする作用があります。
  • NMDA受容体拮抗薬:神経細胞の過剰な興奮を防ぐお薬です。グルタミン酸の過剰な放出を抑制し、精神を安定させる作用があります。

ただし、認知症患者全員に処方されるわけではなく、現在の症状等を考慮し、どの薬剤を処方するのか、内服回数はどれくらいにするか等は、担当医師と相談が必要です。

それ以外にも、認知症患者の行動や心理症状によって、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、漢方薬、睡眠薬、便秘薬(一部の薬は保険適応外)など、さまざまな種類の薬剤が使用される場合もあります。

非薬物療法は楽しんでできる

非薬物療法とは、薬を使わずに脳を活性化させ、残っている認知機能・生活能力の維持・向上を目指す治療法です。苦痛をともなうような治療は避け、本人が楽しみながら機能改善を図れるのが特徴です。

主に次のような治療が行われます。

  • 認知リハビリテーション:音読・書き取り・計算問題等で脳を活性化します。
  • 回想法:認知症の方は昔の事を思い出せるので、昔の苦労話や自慢話をさせ、認知機能の維持・改善が目的です。
  • 音楽療法・園芸療法:音楽鑑賞や演奏、植物を育て、感情の安定や自発性の改善が図れます。
  • レクリエーション療法:集団でゲームやスポーツ等を行い、身体機能・認知能力の向上が目的です。
  • ペットセラピー・アロマセラピー:ペットと触れ合ったり、アロマの香りを楽しんだりして感情の平静を取り戻します。

ただし、人によっては例えば動物が苦手、計算問題が苦手など、非薬物療法が合わない場合もあります。本人の好みを考慮して医師や作業療法士等とよく話し合い、最適な治療法の選択が必要です。

認知症の入院で起こり得る問題

認知症の方が入院する際には、以下のような問題が起こる可能性を考慮しましょう。

  • 入院拒否
  • 症状の悪化
  • 問題行動による退院の催促

それぞれの問題について詳しく触れていきます。

入院拒否

認知症の方の入院の際には、本人による入院拒否の可能性を考慮しましょう。

本人による入院拒否について、自宅やご家族から離れたくないという思いや病院が嫌いといった感情から、入院を拒否するケースも見られます。また、認知症患者の方は、認知機能の低下から物事を正常に判断できない場合もあるため、入院の必要性なども判断できないケースもあるでしょう。

このように、本人による入院拒否が見られる場合には、認知症の専門家や医師などの第三者の助言を参考に、入院を進めるのが良いでしょう。

症状の悪化

認知症の入院治療をする際には、症状が悪化してしまう可能性も考慮しておきましょう。

なぜ入院したのに症状が悪化するのかと感じる方もいるかと思いますが、入院後の症状の悪化の原因としては、以下の2つが挙げられます。

  • 環境の変化によるストレス
  • 活動量の低下

認知症の方は、認知機能の低下から新たな情報を覚えるのが苦手になっているため、新しい環境に適応するのが困難であり、大きなストレスを感じてしまうケースもあります。

認知症はストレスにより症状が急激に悪化する場合もあり、人によっては病院という環境に適応できないストレスから症状が悪化する可能性もあるのです。

また、入院するとなると一日の多くをベッドの上で過ごすことになるため、入院依然と比較して一日の活動量が低下してしまいます。活動量が低下すると、脳や身体を活用する機会が少なくなり、それに伴い認知機能や身体機能も低下してしまいます

これらの要因から、認知症の症状が悪化してしまう可能性も考えられるため、しっかりと把握しておく必要があるでしょう。

問題行動による退院の催促

認知症患者の入院は一般的な病院でも可能ですが、一般病棟では他の入院患者や医療従事者に暴言や暴力を振るうなどの問題行動があれば、早期退院を要求されるかもしれません。

このようなときは、入院していた病院から認知症治療病棟のある病院に転院する方法があります。また、いったん自宅へ連れて帰り認知症疾患医療センターに相談、認知症入院に対応できる総合病院や、認知症治療病棟のある病院を紹介してもらうことも可能です。

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入院に前向きでも注意すべきポイントはここ!

家族や本人が認知症入院治療に前向きならば、安心して手続きが進められます。しかし、入院する前に確認するべき点があるので注意しましょう。具体的には以下3点の確認を怠ると、入院治療がスムーズに進まないおそれも出てきます。

  • 入院手続きのとき必要な書類
  • 服用薬や持病の有無
  • 加入中の民間保険の有無

それぞれの内容について詳しくみていきましょう。

入院手続きのとき必要な書類

入院予約が済んで入院する場合は、概ね次の書類を入院先の病院窓口へ提出する必要があります。

  • 入院申込書・情報提供同意書等:入院先の窓口で取得
  • 本人の健康保険証(70歳未満)・高齢受給者証(70歳~74歳)・後期高齢者医療被保険者証(75歳以上)
  • 医療受給者票(受給者証):重度心身障がい者等で公費負担のある方
  • 退院証明書:ほかの病院に入院されたいた方
  • 印鑑

医療受給者票(受給者証)は、一定の要件を満たした方へ障害者医療費・精神障害者医療費・後期高齢者福祉医療費等の助成を行う証明書(カード)です。

退院証明書は前の病院を退院した際に、入院費請求書等と一緒に渡される書類です。 退院証明書には、患者の氏名・生年月日のほかに、保険医療機関名・入院日数・傷病名等が記載されています。転院先の病院がその内容を参考に治療を行います。

入院先の病院によっては、追加の書類を請求される場合もあるかもしれません。病院担当者の指示に従い、速やかに追加の書類を収集しましょう。

本人の服用薬や持病を確認

入院する方が現在服用しているお薬がある場合、服用中の薬とお薬手帳、お薬説明書などがどこにあるかチェックしておきましょう。

お薬手帳とは、服用中の薬の名前や使い方などに関する情報、患者の過去のアレルギーや副作用の経験の有無と併せて、経時的に記録した手帳です。

持病がある場合は、入院先の病院からお薬手帳等の提出を求められる場合があります。入院の相談を行う際に、事前に相談スタッフへ服用中の薬を報告しておけば、重複投与やアレルギー等のトラブルも回避できるはずです。

入院する本人の認知症が進んでいると、どんな薬を飲んでいるのか聞いてもよくわからない場合もあります。家族が服用中の薬とお薬手帳等を大切に保管し、失くさないようにしましょう。

加入中の民間保険の有無

認知症となった方が公的医療保険だけではなく、生命保険会社の医療保険または介護保険へ加入している場合もあります。保険の適用範囲と認められれば、認知症治療の費用負担を軽減できるでしょう。

この2つの民間保険の特徴は次の通りです。

  • 医療保険:入院日数に応じた給付金、手術をした場合の給付金が受け取れる保険商品。認知症になった場合、まとまった一時金がもらえる保険商品もある。
  • 介護保険:保険会社が決めた要介護度と認定されると、保障が分割(介護年金)または一時金(介護一時金)で給付される保険商品。

いずれの保険でも給付金・年金・一時金の使途は自由です。つまり、保険診療の自己負担額を賄うほか、保険診療外のサービスである有料病室の料金(差額ベッド代)や家族の交通費に使用しても問題ありません。

実際にかかった医療費・介護費用にかかわらず、契約の際に決めた給付金額が受け取れるため、本人、家族には頼もしい金銭的な支えとなるでしょう。

しかし、契約した本人が認知症になり、民間保険への加入自体を家族へ伝えていない場合もあります。そのため、入院前後に家族の方々が保険証券等を探し、本人が保険加入していたかどうかを確認してみましょう。

認知症の状態も考慮しつつ認知症入院治療するべきか判断しよう

認知症入院の治療方法として薬物療法だけでなく、レクリエーションやゲーム等、楽しんで認知症を改善する非薬物療法が取り入れられています。

専門の医療従事者がサポートしてくれるので、認知症が大きく改善される可能性もあります。しかし、本人が入院を嫌がれば逆効果になるおそれも想定されます。

まずは、本人、医療関係者、家族内の意見を踏まえて、認知症の入院治療を行うべきか冷静に判断しましょう。

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