周南公立大学 人間健康科学部福祉学科
社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー/教員
日本社会福祉学会・日本介護福祉学会・日本介護福祉教育学会長崎純心大学大学院博士前期課程 福祉文化研究科修了高齢者施設勤務経験後、介護福祉士教育を主として大学勤務。
研究テーマは、介護福祉。福祉文化。世代間交流。
1.人生100年時代
厚生労働省は、2022年の平均寿命を男性81.05(前年度81.47)歳、女性87.09(前年度87.57)歳と発表しました。前年度(男性81.47歳 女性87.57歳)を下回っている原因は、新型コロナウイルスの流行で高齢者の死者が増えたことが影響していると分析しています。
しかし、100歳まで人生が続くのが当たり前の時代は目前であり、定年退職後は、今より「もっと幸せになる」ための人生設計が必要だと思います。
仮に、100歳まで生きると50歳で人生の折り返し時点、定年が65歳であれば計算上残り35年間です。この35年間の過ごし方を工夫することで「素敵な時間」が生み出され「わたし」への拍手と笑顔が待っています!?
厚生労働省は、「人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題」と挙げています。
2.人生設計
経済産業省が2006年「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を提唱し2017年には、「社会人基礎力」として「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)を再構成しています。
人生100時代は以下の図のように示され、今後の人生設計の参考になると思います。

3.介護を必要する人・必要しない人どちらであっても一人の人
介護を必要する人は、介護保険制度などのサービスを利用して日常生活を自宅・施設で過ごされています。また、介護を必要としない人(日常生活のADL、IADLが自立している)は、自宅で日々を過ごされていると思います。ここで、介護を必要する人は心身の援助が必要であり、介護を必要としない人は援助が不要であるとイメージされると思います。
しかし、介護を必要としない人でも人の援助・介入が必要な人がいます。
例えば、脅迫概念にかられ「夜間、一人で居ることができない。誰か傍にいないと眠れない」、旅行に誘っても「他の場所に行くと夜、眠れない、車に乗っていくのが億劫」、「旅行に出かけても歩くのに時間がかかる」、「歯が悪く、人前で口を開けて食べられないので外食は嫌だ」また、ある人は「病院を受診するにも、連れて行く人がいない。タクシーで行くとお金がかかる」ので家族を頼る。そして、家族は、仕事を休まなくてはならない。等々。一緒にいる家族は、自分の大切な時間を割いているにも関わらず、その言葉でストレスが溜まることも多々でしょう。
人は、「生きざま」、「価値観」などを急に変えることは難しいです。ましてや、重い病気を患った時や認知症などであれば、更に困難になる可能性は高いと言えます。始終、近くにいる家族の心的負担は計り知れません。「わたし」も「人」、感情はあります。
しかし、どのような状況でも「人」は「人」です。少し視点や観る角度を変えると冷静且つ客観視でき、その人の言動、行動を「個性」として捉え余裕がある「わたし」に気づくかもしれません。
4.お互いが「ウェルビーイング」
身体的、精神的に健康な状態であるだけでなく、社会的、経済的に良好で満たされている状態にあることを意味する概念です。
介護を介して「私(介護者)」、「貴方(介護・援助を必要とす人)」双方が、「ウエルビーイング」の状態がbestであることは当然と言えます。それには、まず、「わたし」を大切にし将来の人生設計を立てるのも一案です。
アメリカの心理学者のマーティン・セリグマン氏がウェルビーイングを構成する5つの要素である「PERMA(パーマ)の法則」(P:ポジティブ感情 E:没頭、集中などR:良好な人間関係 M:意味や目的 A:達成感)を提唱しています。また、アメリカの世論調査研究所「ギャラップ社」が示すウェルビーイング5つの要素(1.仕事において幸福であること 2. 人間関係において幸福であること 3.経済的に幸福であること 4.身体的に幸福であること 5.地域社会での幸福を感じていること)を参考にするのも良いかもしれません。
長寿化しても「生きねばならない」と思うよりかは「楽しく、素敵に生きていく」。人生100年時代を心豊かに生きていけることを考えていきましょう。まずは、「わたし」を大切にしながら、「素敵な時間」を過ごすために楽しさシート(表1参照)に記入してみませんか。

1)厚生労働省,2017「人生100年時代構想会議中間報告」
2)経済産業政策局,2017「人生100年時代の社会人基礎力」
3)マーティン・セリグマン(著),宇野カオリ(監修,翻訳),2014『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』ディスカヴァー・トゥエンティワン,p27
4)Gallup Employee Wellbeing Is Key for Workplace Productivity,(2024年4月16日取得 https://www.gallup.com/workplace/215924/well-being.aspx)
5)前野 隆司,2021.2.10,「生きがいがある人は知っている 人生で大切な4つの要素」
6)日経ビジネス,(2024年4月15日取得 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/020300157/)