タクティール(触れる)の意味と効果

タクティール(触れる)の意味と効果

今回は、私が学んだタクティールタッチ®の方法や効果、そして手で触れることの意味についてお話しいたします。

荒木 実代 教授
神戸医療未来大学 人間社会学部 未来社会学科
教員/介護福祉士、タクティールタッチセラピスト
日本臨床教育学会、武庫川臨床教育学会、日本看護福祉学会、日本介護福祉学会
武庫川女子大学大学院 臨床教育学研究科 修士課程修了(臨床教育学修士)後、近畿医療福祉大学 社会福祉学部 生活医療福祉学科(現:神戸医療未来大学 人間社会学部 未来社会学科)講師、准教授を経て現職。
専門は高齢者福祉、地域福祉、子ども福祉。オレンジ(認知症)カフェを通じて高齢者の方の発達支援と持続可能な地域づくりを研究。
また、教護院(現:児童自立支援施設)を対象に、福祉的支援を必要とする子どもの発達保障についても研究している。
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タクティールタッチ®とは

「タクティール」はラテン語で「触れる」を意味した言葉です。私が学んだタクティールタッチ®の創始者であるグニラさんは、当時働いていた障害者施設で落ち着きがない方をなでていると落ち着きがみられるようになったことから、その方法を確立しました。

タクティールタッチ®は、全身の皮膚を一定のリズムでなでたり、つぼや関節を軽く刺激したりして、心地よい刺激を脳に送りながら自律神経を整える感覚療法です。皮膚をなでることによって、その刺激が脳に届き、しあわせホルモンとも言われるオキシトシンが分泌されて心身の緊張をほぐしていきます。

私もグニラさんと同じように、障害者施設で身体が丸く固まって仰向けになることができない状態の方にタクティールタッチ®を行ったところ、少しずつ筋肉の緊張が解けて身体が少し伸びたり、手や足の指が柔らかくなったり、途中で眠られたりして、薬や器具を使わなくても手だけで人を癒すことができることを実感しました。

日本では、日本タクティールタッチセラピスト認定講習会を受講し、認定資格を得て初めて施術ができますが、現在は講習会の情報がありませんので、私がここから学んだこととして、手で触れることの意味や方法、効果についてお話したいと思います。

手で触れることの意味について

皮膚(肌)が何かと触れ合う感覚にはとても重要な意味が隠されています。日頃、何かに触れた時に熱い、冷たい、痛い、心地よい/悪いなど、私たちはあまり意識していないかもしれませんが、実は瞬時に判断しています。

触れることによって、身体の外側にある皮膚が触れたものの情報を身体の内側の神経に伝え、その情報は脳へと伝わります。その結果、心地よい/悪いなどの感覚が生まれていきます。特に、手のひらの皮膚は触れたものの質感や形を細かく読み取ることに優れていて、指先が最も敏感であると言われています。

私には介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で高齢者の方の介護をさせていただいた経験がありますが、手で触れることにどのような意味があるのか、当時はあまり考えたことがありませんでした。しかし、タクティールタッチ®を学んだ今思い返せば、介護をしながら温かい気持ちになったり高齢者の方が私の顔に手を差し伸べられて癒されたり、反対にもう少しうまく身体を抱えられなかったのかと反省したり、様々な感情が私の中に生まれていたことに気付きました。

相手の身体に触れるということは、同時に私の手からも脳へ刺激が届き、私も様々な感情を生んでいたのです。手で触れることでお互いに感情が生まれ、そこから信頼関係や安心感、反対に不信感などにつながっていたことが分かりました。

手で触れる方法や効果

手で触れる方法といっても、介護の場面やハンドマッサージ、私が学んだタクティールタッチ®など様々です。それらに共通していることは手の触れ方です。例えば、相手の身体に触れる際には、自分の手を浮かせたりせずにしっかりと相手の皮膚に密着して触れることが大切です。これだけでも、「大切にしています」というメッセージを送ることができます。

そして、手で触れる時は弱い圧で触れてください。そうすると、副交感神経というリラックスした時に働く神経の効果が高まります。また、そっと背中をさすったり、マッサージをしたりする際にはゆっくりとなでてください。そうすれば、脳にはゆっくりと刺激が届き、リラックスした気持ちになることができます。私自身もタクティールタッチ®を受けたことがありますが、早くなでられると大切にされた気持ちになれず、落ち着きませんでした。

このような手で触れる効果には個人差がありますが、心理面では安心感、不安の緩和、孤独からの解放などが、身体面ではリラクゼーション、筋肉の緊張緩和、排泄の促進、質の良い睡眠が得られるなどがあると言われています。

まとめ

手で触れる際には、どのように触れるかが大切です。触れる際には、相手の皮膚に自分の手をしっかりと密着しながら優しい圧で触れましょう。マッサージのように身体をなでる際には、ゆっくりとなでてください。そうすれば、相手の方はとてもリラックスをすることができます。

それと同時に、この効果は触れた側にもあります。触れる-触れられるというのは一方的な関係ではなく、双方向の関係です。手で触れることの意味を知ることで、介護をする際の手の触れ方を意識していただければ、きっと相手との間に良好な関係が生まれると思います。

【参考・引用文献】

  • 傳田光洋(2013).皮膚感覚と人間のこころ 新潮選書
  • 山口創(2018).皮膚感覚から生まれる幸福 心身が目覚めるタッチの力 春秋社
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