東京電機大学 工学部 機械工学科
日本機械学会、日本生活支援工学会、ライフサポート学会、看護理工学会
早稲田大学先進理工学研究科にて博士号取得後、東京電機大学 未来科学部 ロボット・メカトロニクス学科助教、東京電機大学 工学部 機械工学科准教授を経て現職。
専門は人間支援工学。福祉機器や福祉用具の開発・評価について、モーションキャプチャや筋活動計測等の手法を用いて行っており、病院や企業からの委託・共同研究も多く実施している。
一般に普及し始めた医療福祉機器
日本は高齢社会と言われるようになって久しいですが、高齢者支援をする上では人の手だけではカバーしきれない部分も多くあります。会話による体調の聞き取りが必要な場合もありますが、最近はスマートフォンや腕時計型端末などを活用した健康管理アプリケーションが増えています。これを用いて、高齢者が自宅で健康情報を追跡し、専門家と簡単に情報共有できるものが増えています。これにより、医療へのアクセスが向上し、自己管理能力も促進されます。
また、夜間の見守りシステムなどは人間による巡回よりも素早く異常を検知できる場合もあり、そこから人が駆けつけて対応を行うという、人間と支援機器の両輪によるサポートが必要となってきます。最近では高齢者支援を行うロボットも、介護側が着用するものや立ち上がりを支援するもの、体力維持を目的とするリハビリをサポートするものなど、多くが開発されており、それらが導入される高齢者施設も増えてきています。
ユーザー視点の支援機器の開発
支援機器の開発は現在でも盛んに行われていますが、その開発において重要なのは、ユーザーのニーズを正しく理解することです。そのためには、高齢者が開発プロセスに参加することが不可欠です。大学における研究でも、シルバー人材センター等を通して高齢者にニーズに関するインタビューを行ったり、高齢者向け施設で実際に使用してもらって感想を聞くなどして、多くの人が共通して持っているニーズや要望を理解し、協力して機器を設計することで、より効果的な支援機器の開発を目指しています。
新しい技術がどんどん現れる一方で、新しい技術だけを取り入れることが良いわけではなく、高齢者が利用する機器のデザインには配慮する必要があります。ユーザーインターフェースの部分の使いやすさや直感的な操作性を重視することで、高齢者が自信を持って機器を利用できるようになります。そのために、開発段階から高齢者の意見を取り入れ、その生活に適した機器を提供することが求められます。
持続可能な高齢者支援の実現
支援機器の費用は高額であることが多く、高齢者やその家族にとって負担となる場合もあります。より安価で手軽に利用できる機器の開発や、保険制度の改善など、アクセシビリティを向上させる取り組みも求められています。支援機器を使ってでも日ごろから運動を行うことで、自力で動けなくなる状況や寝たきりになる事を防ぐことができれば、高齢者のQOLを向上させるのはもちろん、将来の日本全体の医療費抑制にもつながります。高齢者が日本の人口に占める割合は増加し続けていく中で、こういった分野への支援政策は今後の日本のためにも必要なことです。
まとめ
本稿では、高齢者支援技術の普及と、その社会的重要性について解説しました。
一般的に普及し始めた医療福祉機器は、高齢者の健康管理や安全確保に寄与しています。また、高齢者支援ロボットの開発も進み、介護やリハビリの分野で大きな助けとなっています。一方で、これらの機器の開発には高齢者のニーズを正確に把握することが欠かせず、そのためにも高齢者自身が開発プロセスに参加し、その意見や要望が取り入れられることが重要です。
さらに、高齢者支援機器の費用負担やアクセシビリティの向上も重要な課題です。より手軽に利用できる機器の開発や保険制度の改善などが求められています。このような取り組みが実現すれば、日本全体の医療費抑制にも貢献することが期待されます。今後も、高齢者支援機器とその利用に関する社会的な重要性は高まっていくと考えられます。