「老健は強制退所がある」と聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
施設の規則に反すると退所を促される場合はありますが、それは老健だけに限りません。
この記事では、なぜ老健は強制退所があるといわれているのか、どういった場合に退所を促されるのかについて説明していきます。
老健退所後に入所できる施設についても紹介していますので、参考にしてください。

老健(介護老人保健施設)で強制退所になることはある?
結論から述べると、老健で強制退所になる可能性はあります。
強制退所とは、施設側が入所者に対して退所を求める行為で「退去勧告」とも呼ばれます。
退去勧告を受けるのは、施設の入所契約書などに記載された退去要件に当てはまる行為が頻回に行われた場合などです。
ほかにも、老健は平均入所期間が3~6カ月間と短いのが理由で、強制退所になる可能性があるといわれています。
そもそも老健とは、身体機能の維持と改善を目標に一定期間リハビリを行うための施設で、在宅復帰を目的としています。
他施設と比較して、リハビリに関するケアが手厚い点が特徴です。老健の入所対象者は、要介護1以上かつ65歳以上の方です。
また、公的施設であるため、費用が比較的安価な点も特徴になります。
2017年に改正された介護保険法では「居宅における生活を営むための支援を必要とする者」と定義付けられました。
つまり、在宅で自立した生活が送れるようにするための中間施設としての役割を果たしています。
そのため老健は、特別養護老人ホームなどのように終の棲家としての役割は担っていません。
老健の平均入所期間は、以下の厚生労働省による「リハビリの標準算定日数」をもとにしています。
疾患 | 標準算定日数 |
---|---|
心大血管疾患 | 150日 |
脳血管疾患等 | 180日 |
廃用症候群 | 120日 |
運動器 | 150日 |
呼吸器 | 90日 |
(参考:標準的算定日数を超える疾患別リハ、新型コロナ対応でのリハ中断でも、状態改善が見込める場合に限定—厚労省)
リハビリは長期間受けたからといって必ずしも効果が出るわけではないため、一定の期間が設けられているのです。
そのため平均3カ月ごとに、以下の2点についての審査を行い、リハビリが必要ないと判断された場合には、老健を退所しなければなりません。
- リハビリでの改善や回復があったかどうか
- 入所の継続の必要性があるかどうか
これが、老健は強制退所になる可能性があるといわれる理由です。
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老健(介護老人保健施設)を強制退所になる要因4点
老健を強制退所になる要因には、以下の4点があります。
- ほかの入所者とのトラブル
- 入所時以上の医療的ケアを要する
- 3カ月以上の入院の必要性
- 費用トラブル
ここからは、老健を強制退所になりうる4つの理由について、詳しく説明していきます。
入所した老健とのトラブルにならないよう、しっかりと確認しておきましょう。
ほかの入所者とのトラブル
暴言・暴力など、ほかの入所者とのトラブルが生じる場合には、強制退所の原因となります。これは、入所者のみに限らず、スタッフへの暴言・暴力なども同じです。
以下のような行為が頻繁にあると、施設側から「通常の介護が行えない」と判断されるため、強制退所を伝えられる場合があります。
- 暴言・暴力
- 大声などの奇声を発する
- 器物を破損する
- 他利用者の部屋に部屋に勝手に入る
- 他利用者の物を盗む
認知症患者の中には脳の一部に障害が起こり、感情のコントロールができなくなる症状が出る方がいます。
したがって、認知症が原因による人格の変化によって暴言・暴力など、他利用者とのトラブルにつながる行動をとってしまう方もいるでしょう。
一方で、ご本人のもともとの気質や、環境の変化によるストレスが原因の場合もあります。
ご本人の気質によるものであれば、事前に施設に伝えておくと、他利用者との接触を控えるなどの対策が行えるため、気になる点はしっかりと伝えておきましょう。
入所時以上の医療的ケアを要する
老健は、あくまでリハビリが主体の施設です。
そのため、入所時以上の医療的ケアを要するようになると、強制退所の対象となる場合があります。
老健では、日中の看護師の配置は義務付けられていますが、夜間帯に関しては特に決まりがありません。
そのため、夜間は介護士のみの常駐となるため、日中は行える医療的ケアも夜間に関しては行えない場合もあります。
例えば介護士による痰吸引は、看護師が行う痰吸引よりも浅い部分までしか吸引カテーテルを挿入できないため、痰が取り切れない可能性があります。
そもそも、介護士が痰吸引を行う場合には、研修を行う必要があり、研修を受けていない介護士は痰吸引が行えません。
このように、常駐している介護士によって行える医療的ケアに差が出る場合があります。
ただし、最近では夜間も看護師が常駐している老健も増えてきています。
強制退所を避けるためにも、入所前に医療的ケアがどこまで実施できるのかを確認しておくとよいでしょう。
3カ月以上の入院の必要性
持病の悪化や病気などが理由で長期の入院が必要になった場合、強制退所の対象となります。
一般的には、復帰が困難になるとされる3カ月以上の入院を「長期入院」と呼ぶ場合が多いです。
しかし、短いところでは90日、長いところでは6カ月で長期入院とするなど、施設によって期間は異なります。
トラブルを避けるためにも、強制退所となる入院期間については入所前に確認しておきましょう。
また、長期入院で退所となった場合、再度入所できるのかどうかも確認しておく必要があります。
再入所が不可な場合には入院中に、退院後の入所先を探しておかなければなりません。

費用トラブル
利用料が払えなくなった場合には、強制退所となる可能性があります。
老健の経営は、入所者からの利用料と国から支払われる介護報酬で成り立っています。
つまり、利用料の支払いが滞ると経営困難になるリスクがあるため、強制退所の対象となる場合があるのです。
ただし、利用料の支払いに滞りがあるからといって、すぐに強制退所となるわけではありません。
利用料の支払いに滞りが発生すると、まずは連帯保証人や身元引受人に請求が行われます。
それでも利用料の滞納が続いた場合に、強制退所となります。
強制退所はあくまで最終手段です。
老健(介護老人保健施設)を強制退所になっても約3カ月の猶予あり
退去勧告を受けた際に心配になるのが、「すぐに退所しなければならないのか」という点だと思います。
すぐに退所しなければならないとなると、次に住む場所に不安が生じるでしょう。
しかし、心配はいりません。
一般的には退去勧告後、実際に退所するまでには約3カ月間の猶予を設けている施設が多いです。
強制退所を求められた場合には、この期間に次の施設を探しましょう。
施設を探す際には、現在入所している老健に協力を依頼すると、スムーズです。
強制退所を求められたからといって、施設側と対立する必要はありません。
協力してもらえれば、同じ法人のデイケアやショートステイを紹介してもらえる場合もあります。
ただし、どうしても次が決まらない場合には、一時的な在宅復帰を検討する必要があるのを覚えておきましょう。
老健(介護老人保健施設)強制退所後の行先
老健は、在宅復帰を目的とした施設ですが、退所後の行先は自宅以外となる場合もあります。
さらに、強制退所となると、自宅に戻るのが困難な場合もあるでしょう。
老健退所後の行先としては、自宅のほかにも、新たな施設という選択肢があります。
ここからは、老健退所後の行先について詳しく説明していきますので、参考にしてください。
自宅へ戻る
老健は、在宅復帰を目的としているため、基本的には自宅へ帰ります。
ただし、絶対に在宅復帰しなければならない決まりはありません。
実際に、平成29年に厚生労働省が公表した老健入所者の主な退所先に関するアンケートでは、上位3つは以下のような結果でした。
- 医療機関︰40.6%
- 自宅︰31.7%
- 特別養護老人ホーム︰9.3%
参考︰老健参考資料
アンケートからもわかるように、入所者の中には、症状の悪化や帰る場所がないなどの理由で、病院や施設へ入所する方もいます。
在宅復帰する場合には、ケアマネージャーに相談し、デイサービスや訪問看護の利用計画を立ててもらうと安心です。
新たな施設へ入所
先程も述べたように、老健退所後、身体状態の悪化などが理由で、新たな施設へ入所する方も一定数います。
老健退所後に入所する施設として人気があるのが、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどの長期入所ができる施設です。
また、どの施設も比較的要介護度の重い方が入所できるため、医療的ケアや介護ケアの体制が整っているといった特徴があります。
老健からほかの施設へ移動する場合、平均1~2カ月の準備期間を要します。
さらに人気のある施設では、数カ月間の待機期間が生じる可能性もあります。
そのため、老健退所後、新たな施設へ入所する場合には、早い段階で準備を進めるとよいでしょう。
また、一度老健を退所後、新たな老健に入所する方もいます。
実際に厚生労働省が行った調査では、老健から自宅に退所した方の約12%が、退所後1~3カ月で老健へ再入所しています。
(参考:老健の在宅復帰支援に関する調査研究事業(厚生労働省))
老健へ再入所する理由は、以下の通りです。
- 在宅介護による家族の疲労蓄積
- 病院での病状の改善や治癒
ただし、老健間の移動はグレーゾーンです。
法律で禁止されているわけではありませんが、推奨はされていないため注意しましょう。
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老健(介護老人保健施設)の退去勧告に納得できない場合は第三者へ相談しよう
老健の退所勧告に納得がいかない場合や不服がある場合には、第三者に相談しましょう。
相談先としては、以下の機関があります。
- 自治体の介護保険課や高齢福祉課
- 都道府県に設置された国民健康保険団体連合会
- 全国老人ホーム協会
第三者からの立場で、両者の意見から公平に判断してもらえるでしょう。
退所勧告の申し出に納得いかない場合、裁判や苦情申し立てなどを行えます。
しかし、裁判や苦情申し立てには時間とお金を要します。
そのため、まずは第三者に相談をし、一度冷静になった方がよいでしょう。
また、施設から強制退所を求められた際には、まず施設側の意見が正当であるかどうか、重要事項説明書・入所契約書の確認をするとよいです。
退所後にトラブルにならないためにも、確認しておきましょう。
老健(介護老人保健施設)には利用期限があるのを覚えておこう
老健の利用期限は、3〜6カ月が基本です。
終の棲家となる施設ではない点を覚えておきましょう。
また、退去要件は施設によってさまざまです。
重要事項説明書や入所契約書にはしっかりと目を通し、なにが退去要件となるかを知っておくのが重要です。
さらに、日頃から施設のスタッフとコミュニケーションをとり信頼関係を築いていけば、大きなトラブルにも発展しにくくなります。
老健(介護老人保健施設)に関するよくある質問
Q.老健はなぜ強制退所があるといわれているのですか?
A.老健の入所期間は3~6カ月が平均です。
3カ月ごとを目安にリハビリでの改善や回復が見られたか、施設の継続は必要かといった審査が行われます。
審査の結果、回復したと判断されると退所となるため「強制退所がある」といわれるようになりました。
Q.老健退所後は全員が在宅復帰していますか?
老健の退所後は、必ずしも在宅復帰しなければならないわけではありません。施設や病院に入所する方も多いです。
結論から言うと、強制退去になる可能性はあります。強制退所になるケースとして、契約時の退所要件に当てはまる行為が頻繁に行われるなどの原因がが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
「自宅へ戻る」「他の施設に移る」「第三者に相談する」等の選択肢があります。詳しくはこちらをご覧ください。