レクリエーションについて

レクリエーションについて

「レクリエーション」と聞いてどんなことが浮かぶでしょうか。日本語訳として使われる「余暇活動」として学生に聞くと「余暇」がわからなくて混乱してしまいます。中高年の方に尋ねると「ソング、ダンス、ゲーム」という方が多くいます。これらを小、中学校時代に体験した方は多いからではないでしょうか。

三好 明夫 特任教授 AKIO MIYOSHI
京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 生活環境学科
博士(社会福祉学)/社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・介護支援専門員/教員
日本人間関係学会、日本保育SW学会、日本福祉図書文献学会
特別養護老人ホームの生活指導員などを歴任し、その後介護福祉士養成教育に携わる。
現在の研究領域は、介護職員が必要とするスーパービジョンについての研究、介護サービスの質を向上させるために必要な外部評価の展開方法やリスクマネジメント、苦情処理システムの方法についてフィールドワークを中心とした研究 である。

さて、余暇という言葉があまり語られないこの時代に要介護高齢者(以下利用者に略)が終の住処とし生活している特別養護老人ホーム(以下特養に略)ではどのようなレクリエーションが提供されているのでしょうか。

私は介護保険制度が2000年4月にスタートする前ですが、特養の職員として働いていました。非日常的な活動を用意することでの満足、充実、安定、安心、楽しみ、そして笑顔が生み出す生きる意欲を求めるための支援として展開していました。

そのために行ったのは特養の中で完結してしまうレクリエーションではなく、外出としてのレクリエーションを利用者の希望を取り入れて実施していったのです。

春には城山の公園に出かけての花見、夏になるとビアガーデンに出かけて一杯、さらに暑くなると海水浴に出かけてスイカ割り、居酒屋での鍋パーティ。温泉に出かけての入浴、デパートショッピングと大食堂での昼食。利用者がテレビや新聞のチラシで見つけた新店舗に出かける飲食ツアー、希望が高まって県外に出かけて温泉宿に宿泊観光する一泊旅行。

どれもが普通の生活場面では活動というより日常生活の一部分なのかもしれません。

もっともこれだと特養では普通の生活が送れないのかということになってしまいますが。介護保険制度になって自己負担増や利用者の心身状態の重度化、介護職員の人材不足なども重なり、心身機能が低下した利用者の介護に懸命に汗する毎日では、レクリエーションどころではない状況なのかもしれません。

しかし、そう考えると介護とレクリエーションは別物として考えなければなりませんが、そうすると食事、排せつ、入浴、移動の繰り返しで淡々とした生活の提供に終始して「レクリエーションどころではないんです。とても忙しくて、ごめんなさいね。」これを職員優先の論理とするのは厳しいでしょうか。

利用者の楽しみや願いが実現しない終の住処に哀愁を感じるのは私だけでしょうか。例えどのような心身状態の低下があろうとも利用者の満足、利用者の主体性の尊重、自己決定、自己実現への努力は必要不可欠ではなかったのでしょうか。利用者の利益最優先、学生たちに伝えている言葉です。

介護保険制度は国民協働連帯の理念を具現化するもので福祉だけでなく医療サービスも受けられ、最大の魅力は利用者(家族)が必要な介護サービスを自由に利用できるというものです。

指定介護老人福祉施設※の人員、設備及び運営に関する基準について(厚生省令第三十九号)第四・運営に関する基準、14社会生活上の便宜の提供等(4)では「指定介護老人福祉施設は入所者の生活を当該施設内で完結させてしまうことのないよう、入所者の希望や心身の状況を踏まえながら、買い物や外食、図書館や公民館等の公共施設の利用、地域の行事への参加、友人宅の訪問、散歩など、入所者に多様な外出の機会を確保するよう努めなければならない」とされています。

レクリエーションは「生活の快」とされることもあります。参加することで明るく元気に楽しく、そして仲間との絆も生まれるとなれば、形骸化したものを日課メニューにあるからとする程度で済ましてはならないと思います。

その昔、特養では「風船バレーボール」が大流行しました。柔らかい大きいゴム風船を使い、車椅子でも片麻痺でも楽しめるレクリエーションでした。

ブームは肥大化して笑顔のない利用者は嫌がる利用者もどんどんコートに入れられて発破をかけられて「さあ、皆さん楽しみましょう」と利用者全員が楽しまなければならないのがレクリエーションだとされました。レクリエーションが活発化することはよいことですが、職員の発想と主体だけでは違った方向に捻じれてしまう可能性もあるのではないでしょうか。

ある特養を訪ねたときに利用者の一人が「どれもこれも子どもだましのお遊びだ」としかめっ面で部屋に戻っていた様子が忘れられません。

すべての利用者の満足を実現することは難しいでしょう。ですが、難しいからこそ職員の創意工夫、専門性と英知を駆使してたえずレクリエーションのあり方を点検していくことが必要ではないかと思います。

特別養護老人ホームを訪問して見学や説明を聞くときに「こちらのレクリエーションレパートリーや内容を教えてください」と尋ねてみることがあってもよいのではないでしょうか。

※指定介護老人福祉施設は介護保険法上の施設名で、老人福祉法上の特別養護老人ホームと同じ施設です。今回は特別養護老人ホームの名称を使っています。

参考

「介護人への12章・8レクリエーション」『愛媛新聞』2003/8/12 朝刊

 

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