穏やかな看取りを目指すには
~介護をする人・される人も、知っておきたいアドバンス・ケア・プランニング

穏やかな看取りを目指すには<br>~介護をする人・される人も、知っておきたいアドバンス・ケア・プランニング

もしもの時のためにあなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療ケアチームと繰り返し話し合い共有する仕組みをアドバンス・ケア・プランニングと言います。 近年、厚生労働省が「人生会議」(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)と名付け、普及・啓発を始めています。

国民向け普及・啓発事業 ~人生会議について考えるきっかけをつくるためにVol.1 (https://www.youtube.com/watch?v=b7rziMgFdTU)

森木 友紀 講師・助教
千里金蘭大学 看護学部 看護学科(講師)・千里金蘭大学 大学院 看護学研究科(助教)
修士・博士(看護学)、看護師、中学校・高等学校教諭
日本看護科学学会、日本老年医学会、日本森田療法学会
家族介護者として臨床で勤務しながら在宅看取りを行い、現在も家族介護をしている。千里金蘭大学では、看護師を目指す学生や大学院生のサポートをしている。兼任で 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の博士課程を修了(博士号:看護学)後、招へい研究員としてアドバンス・ケア・プランニングを用いた穏やかな看取りを目指す研究をしている。
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具体的な事例

A氏は、80代女性である。夫、長男夫妻と孫2人の6人家族であった。既往歴に乳がんや長年の喘息があった。家族やかかりつけ医とのアドバンス・ケア・プランニングにより「息苦しさやがんで痛いのが怖い。もし私が死ぬなら、最期は家で家族に手を握ってもらい、畳の上で穏やかに死にたい」と語り、共有していた。

年末に、お腹や背中の痛み、息苦しさがひどくなり、気にしていた。10日目に、ケアマネージャー、家族の勧めで、かかりつけ医を受診後、市民病院へ精査目的で受診した。翌日より検査入院となり、「膵臓癌ステージⅢ」の告知を、夫、長男夫妻と共に受けた。今後の治療を決めてほしいと医師から言われ、家族と相談するため、32日目に退院した。ケアマネージャーにも伝えられ、介護申請を行い要介護1となった。退院後自宅では、突然の宣告に混乱し、嘔気により食べられないことにパニックになり、夫に対して怒りをぶつけ混乱する様子であった。

何もせず、家にいることに焦りを感じ、抗がん剤、放射線治療など模索したが、約1か月で4kg体重減少した。医師、看護師、家族同席でのアドバンス・ケア・プランニングを実施した結果、今後は積極的な治療よりも苦痛緩和をしたいと本人が希望し、共有した。75日目に市民病院に入院し、薬剤調整を受け、呼吸・栄養状態改善等を行った。

80日目に「もう限界、家に帰りたい」「家では家事ができないと思う。不安だ」と訴え、83日目に退院した。退院後、嘔気、お腹の張りにより食事を摂取することはできず、スポーツドリンクなどの水分摂取をしたが、苦痛が増していた。「痛いのは嫌」と脱水予防の点滴は、1日のみで中止となった。ケアマネージャーが来訪、再度の介護保険の区分変更により、要介護4となった。苦痛から夜に床を這いまわっており「夜眠れない。しんどい、楽にしてほしい」と依頼があり、家族が医師に報告した。

91日目に次男一家が来訪、内孫2人には「(世話をしてくれて)ありがとう。」外孫には「アイスをひとさじ食べさせて。最期になるかもしれないから。」と頼む様子であった。本人、夫、医師、看護師、長男夫婦、次男夫婦、孫3人でアドバンス・ケア・プランニングを実施した。本格的な苦痛除去のため、92日目より終末期の鎮静を開始することを確認した。

93日目にケアマネージャー、訪問看護師、家族、友人のいる前で「私の人生幸せだった、皆さんありがとう。」と涙を流しながら遺言していた。ケアマネージャーの差配により、同日エアマットの導入時には、意識が朦朧とする様子がみられた。以後は昏睡状態となり、苦痛を訴える様子はなかった。

98日目はA氏の誕生日であり、昏睡状態の中わずかにほほ笑む様子であった。この日からアドバンス・ケア・プランニングで確認した本人の意向により、畳の部屋でA氏のベッドを囲むようにして、家族が夜間は睡眠を見守った。

102日目の早朝、家族がA氏の呼吸停止を発見し、訪問看護師、医師に連絡、死亡が確認された(本事例は、様々な事例を集約した仮のものです)。

まとめ

事例では、アドバンス・ケア・プランニングを活用したことで、事前に家族、多職種が連携でき、本人の望む穏やかな看取りができました。家族・医療介護者との良好な人間関係を持つ高齢者であったことが成功の秘訣であったと考えます。今後は介護する人もされる人もアドバンス・ケア・プランニングを知り、事前に話し合いをして本人の意向を共有し、穏やかな看取りに備えておくことが必要となるのではないでしょうか。

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