高齢者が寝てばかりいるのは老衰が原因?老衰の前兆や家族がすべきことについて解説

高齢者が寝てばかりいるのは老衰が原因?老衰の前兆や家族がすべきことについて解説

「最近寝てばかりで元気がない。これは老衰だろうか?」高齢者とともに暮らす方で、寝てばかりいる家族の体調や今後が気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では老衰の前兆経過について説明します。家族の方が関わるポイント最期のときを迎える準備についてもお伝えしますので、今後の家族の時間を穏やかなものにするための参考にしてください。

国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科 医長
所有資格:日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医、日本救急医学会認定ICLSコースディレクターなど
専門分野:心臓血管外科、急患科、 脳神経外科、総合内科,、総合内科、整形外科など

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、2012年より国立病院機構大阪医療センターで心臓血管外科医員として従事する。 現在は国家公務員共済組合連合会大手前病院で救急科医長を務める。 専門分野は心臓血管外科をはじめ、急患科、 脳神経外科、総合内科,、総合内科、整形外科など多岐にわたる。 主な研究内容・論文として「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」(執筆者)などがある。詳しくはこちら

所有資格:一般社団法人 薬機法医療法規格協会 薬機法医療法遵守広告代理店認証
専門分野:化粧品や健康食品における広告表現
職業: 薬機法管理者

2003年からヘルスケア情報サービス事業・治験支援事業を行っている企業にて、主にDTC広告の企画営業に携わる。 4年ほど企画営業を担当後、自社のヘルスケアサイトの運営、製薬会社・健康食品メーカーの記事広告の制作を行うが、この時に薬機法(薬事法)についての知識を学び、広告記事の精査を経験。 2017年退社。現在は臨床研究の支援を行う企業にて研究事務局支援に携わる。東京在住。 現在は本業の傍ら化粧品や健康食品の企業の広告等の薬機法チェックを行う。詳しくはこちら

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寝てばかり(傾眠傾向)なのは老衰によるもの?

高齢者が寝てばかりいるのは老衰によるものでしょうか。老衰による影響の場合、ほかに影響がある場合のそれぞれの特徴を解説します。まずはどのような原因があるか考えましょう。

老衰の前兆の1つ

高齢者が寝てばかりいる(傾眠傾向)のは老衰の前兆の1つといえます。

老衰により脳機能低下や体力低下が起こると、覚醒している(起きている)時間が短くなってしまいます。日中ウトウトすることが増え、周囲が話しかけたり肩を叩いたりして覚醒するよう促しても、すぐまたぼんやりしてしまうでしょう。

初期段階では刺激により覚醒します。しかし、徐々に四六時中眠そうな様子が増え、次第に肩を叩いたくらいでは目を覚まさないほど深い眠りに落ちるようになります。最終的には一日のほとんどを寝てばかりで過ごすようになるのが一般的です。

また、脳機能低下により幻覚が現れる場合もあります。

このように、段階的な機能低下により意識を正常に保てなくなり、徐々に活動性や活動時間が短縮するのが老衰の特徴の1つです。

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老衰以外に原因がある場合も

高齢者が寝てばかりいるのは老衰以外に起因する可能性もあります。傾眠傾向の主な要因を知り、気になる点があればかかりつけ医など適切な機関に相談するとよいでしょう。

認知症

認知症になると夜に目が冴えて活動し、日中に眠る「昼夜逆転」が起こります。生活リズムの乱れが生じるためです。また、夜間に攻撃的になる方もいます。夜間にうまく眠れないため疲労がたまり、本来覚醒するべき日中にウトウトして起きていられなくなるのです。

また、認知症の初期症状の1つに「無気力状態(アパシー)」があります。ぼんやりとする、ウトウトするなどの症状があればアパシーかもしれません。

薬の副作用

抗てんかん薬や、認知症の薬、抗アレルギー薬など、神経の興奮を抑える一部の薬剤には「眠気」の副作用を引き起こす特徴があります。

本人が内服している薬で該当するものがないか確認しましょう。どの薬か分かりづらい場合は、お薬手帳の副作用についての記述を確認するか、薬剤師に確認してみるのも手です。薬剤によって眠気が起こっている場合は、ほかの薬に替えたり、薬の量を減らしたりできないかかかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。

脱水

脱水になると初期の段階ではだるさを感じてぼんやりします。症状が進行すると意識レベルの低下を招き、ぐったりしたり眠り込んだりしてしまいます。

どの年代でも、暑いところに長時間いて汗をかくことは脱水のリスク因子です。しかし、もともと体内の水分量が少ない高齢者では「いつもより食事の量が少なかった」「トイレを気にして水分を控えた」など、何気ない行動でも重大な脱水を引き起こす可能性があります。

急に傾眠状態になった場合は脱水の可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

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慢性硬膜下血種

「慢性硬膜下血腫」とは脳疾患の一種で、頭を強く打ったときに脳と脳をつつむ膜(硬膜)の間に血種(血の塊)ができた状態です。血腫が大きくなり脳を圧迫すると、ウトウトしたり眠り込んでしまったりする症状がみられます。

慢性硬膜下血腫による症状の改善には外科手術が必要になる場合があり、受診が遅れるほどに症状は悪化します。「頭を打ったあとからウトウトするようになった」など思い当たるエピソードがあれば、慢性硬膜下血腫を視野に入れ脳外科を受診しましょう。

その他の原因

内臓に疾患があり代謝機能が低下している場合、肺炎などの感染症にかかっている場合なども、うまく体力が保てず傾眠を引き起こします。内臓疾患や感染症の場合、体温・血圧・脈拍・呼吸などのバイタルサインが変動しているか、ほかに自覚症状が現れる場合も少なくありません。

「寝てばかり」の状態以外にも体調に変化や気になる点がある場合は、かかりつけ医に相談してみましょう。

寝てばかり(傾眠傾向)以外にもある老衰の前兆

老衰の前兆は寝てばかりいることだけではありません。その他の前兆となる症状も併せて解説しますので、高齢者日々の状況と照らし合わせてみてください。

食事の量が減る

老衰では胃や腸、膵臓など消化管の機能低下がみられます。また、活動の低下に伴い1日に消費できるエネルギー量も減少するため、結果として食欲の低下が起こります。それに加え、噛む力や嚥下機能(飲み込む力)の低下によりスムーズに食事ができない苛立ちも、食欲不振につながるでしょう。老衰による傾眠傾向がみられる方では、食事の時間に起きていられず食事の機会を逃すエピソードも少なくありません。

風邪や胃腸炎などの疾患による食欲減退・食事量低下であれば、数日から数週間程度で改善する場合が多いでしょう。一方、老衰による食事量低下は、長い目でみても改善が見られないのが特徴といえます。

家族などの周囲からみて「食事量が減った」「前は好きだったものを全く欲さなくなった」などの兆候があれば注意が必要です。

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体重が減っていく

老衰になるとさまざまな要因が重なり、体重減少を招きます

1つめの要因は、食事量の低下および消化吸収機能の低下が原因です。必要な栄養がとれず痩せを引き起こします。2つめの要因は、活動量や運動量が低下して起こる筋肉の減少です。そのほかにも、内臓の萎縮や骨密度の低下、体内水分量の低下などの諸条件が重なり、体重減少を加速させてしまいます。

また、「死期の半年前よりやせが顕著になっている」とする研究結果があります。

急激に体重が減った、体格がひとまわり小さくなった、以前着ていた服が緩くなって着られない、などの兆候があれば老衰を念頭にいれてもよいでしょう。

参照元:BMIの推移を根拠とした高齢者の看取りの時期および死期の推定

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老衰が起こるタイミングは?

「老衰」ときくと高齢者を想像すると思います。では実際に何歳から老衰と判断するのでしょうか?老衰のタイミングをあらかじめ知ることはできるのでしょうか?ここから解説していきます。

80代から老衰死が増えてくる

老衰による死亡(老衰死)は80代以上から割合が増加し、一般的には「85歳以上で特段の原因がない方は老衰死」と判断する医師が多いようです

厚生労働省が発表した2022年人口統計資料集によると、老衰が初めて死因の5位以内に登場するのが「80~84歳」です。続いて「85~89歳」では死因第3位、「90~94歳」は死因第2位、「95~99歳」「100歳以上」ではいずれも死因第1位になっています。

以上より、80代から老衰が始まりいずれ死因につながるケースが多いといえるでしょう。

参照元:人口統計資料集(2022)

老衰は個人差がある

先にお伝えしたように一般的には老衰は80~90代以上を指しますが、はっきりとした年齢の基準はありません。もともとの体力や生活習慣、内臓の状態によって老衰が起こるタイミングは人それぞれです。

老衰の始まるタイミングは測れませんが、何らかの理由で「全く食べられなくなった」「ほとんど寝ていて起きない」といった状態になると、死期までは1週間程度といわれています。

老衰の起こる時期や余命が分からないため家族は不安になるかもしれませんが、残りの時間を安心してより良く過ごすため、今からできることを確認しておきましょう。

老衰で寝てばかりの方との関わり方のポイント

老衰で寝てばかりになってしまった方に対して、家族や周囲がしてあげられるのはどのようなことでしょうか。本人も家族も安心して穏やかに過ごせるよう、関わり方のポイントや注意点を確認しましょう。

会話の時間をもつ

最期のときまで悔いなく過ごせるよう、家族での会話を大切にしましょう。手や体をさすりながら、今までの感謝の気持ちを伝えたり思い出を語ったりするのもよいですね。本人の覚醒しているタイミングを見計らい、伝えておきたいことを話すようにしましょう。

実は、死期が近く身体機能が衰えていたとしても、聴力だけは最後まで残るといわれています。本人との会話で優しい言葉かけをするのはもちろん、たとえ本人の意識レベルが低下しているときでも、穏やかでポジティブな言葉を使うよう心がけましょう。

過ごしやすい環境に

本人も家族も穏やかに過ごせるよう、快適な室内環境を保ちましょう。老衰の進行とともに、徐々に自分の意思をスムーズに伝えるのが難しくなります。次の点に注意して環境を整えましょう。

  • うるさくないか
  • 温度や湿度は適切か
  • 寝具は適切か(温度調整、寝具の重さ)
  • マットレスや椅子の座面の硬さは適当か
  • 直射日光や空調の風が本人に当たっていないか

本人になった気持ちで周囲の環境を確認しましょう。

好きな音楽を流したり、家族がなるべく同じ部屋で過ごしたりなど、明るい雰囲気を作るのもよいですね。

身体を清潔に保つ

活動量や意識レベルの低下とともに、自分で清潔を保つのが難しくなります。本人の身体の状態や体調に合わせ、清潔を保つ手伝いをしましょう

体の保清は、本人がしっかり覚醒しているときに入浴を手伝う、覚醒度が低いときは清拭を行うなど、体調に合わせて無理のない方法を選択してください。

特に口腔内の保清※は毎日欠かさず行いましょう。なぜなら、口腔内が不潔になると誤嚥性肺炎になるリスクが上昇するためです。実は食事を摂っていなくても口腔内に細菌が繁殖します。むしろ咀嚼(噛むこと)が減ると唾液量が減少し、細菌が増えやすいのです。うがいが不要な口腔ケアティッシュを利用する、口の中を保湿するジェルを使用するなど、誤嚥の危険性が少ない方法で口の中の保清を行いましょう。

身体が清潔だと誰しも心地いいものです。とはいえ毎日すべてを行うのは本人・家族ともに負担が大きい場合もあります。「毎日行う保清」「曜日によって行う保清」など、ルーティンを決めて家族で協力しましょう。

※保清:体の清潔を保つこと

転倒・転落に注意する

身体能力の低下と意識レベルの低下に伴い、ベッドや椅子からの転倒・転落のリスクが高まります

次の点を参考にし、生活範囲を見直しましょう。

  • ベッド柵を設置する
  • すべり止め付の靴下を履く
  • ベッド周囲はスペースを確保する
  • 移動の際につまずきやすいものを撤去する

本人の目線になって、危ないところがないか確認してください。

老衰の進行により身体機能が急に低下する場合もあるため、本人の状態や意向に合わせつつ周囲が先回りしてサポートすることが重要です。

食事は飲み込みやすいものを無理のない程度で

老衰により食事摂取量が低下します。しかし「たくさん食べてもらって回復させよう」と焦っていけません。咀嚼や嚥下機能が低下しているため、誤嚥するリスクがあるためです。

調理に関しては次の点に注意しましょう。

  • 柔らかく煮る
  • 食べやすい大きさに刻む
  • 汁物でむせるときはとろみをつける

本人の身体状況と好みに応じて、食べやすいものを無理のない量だけ食べてもらいます。

食事が全く摂れなくなった方への点滴や経管栄養には賛否ありますが、現在は特別な処置はせず自然のまま見送るケースが多いです。

老衰を迎えるための準備

老衰を迎えるために今からどのような準備をしておくべきでしょうか。いざというときに慌てないよう、ポイントや流れを知っておきましょう。

相談先を確保しておく

サービスや今後の見通しについての相談先を確保しましょう。本人の状態やこれまでのサービス利用状況にもよりますが、最初の相談先はお住い地域の保健センター(保健所)・地域包括支援センター・福祉課、かかりつけ医などです。訪問看護や介護サービス等を利用している場合は、利用先に相談してもよいでしょう。前もって介護施設の利用や介護サービスを調整しておくと、いざというときに慌てません。

また、ここで注意したいのが往診できる医師の確保です。看取りの際や死後の確認で医師の往診が必要になる場合があるため、かかりつけ医には本人の状態について早めに相談してください。訪問診療の可否についても併せて確認しましょう。

自宅での介護や看取りが難しいという方は、ケアスル介護がおすすめです。介護ケアの必要性、本人の希望、家族の状況などケアアドバイザーにお話しいただくことで、その方にピッタリの施設をその場でご紹介します。最期まで自分らしく穏やかに過ごしてもらうため、まずはプロに相談してみませんか。

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本人の望む最期の迎え方を確認しておく

看取りにおいては、本人の意思を確認しておくことが最も重要です。どこで最期の時間を過ごしたいか、どのような対応を希望しているのか、葬儀や埋葬に関してこだわりがあるのかなど、事前に確認しておきましょう。

ただ、心身の状態が悪化してゆく中で本人には直接聞きづらいものです。可能な限り、元気なときから家族間で話し合えるとよいでしょう。

一方、老衰が進行して本人が寝てばかりの状態では、意思を確認するのは困難です。エンディングノートや日記、遺言書など、本人の意思が記されたものがないか確認しましょう。

延命治療についてあらかじめ決めておく

延命治療について事前に本人や家族間で意見を統一させておきましょう。なぜなら、いざ延命治療を受ける際には、本人は意識不明の状態で、家族がその場で意思決定することになるためです。自宅で自然に最期を迎えるのか、あるいは点滴や経管栄養、酸素投与など積極的な処置を行うのか、具体的に想像して決めておいたほうがよいでしょう。

以前は食事が摂れなくなると点滴をする場合もありました。現在は医療処置が逆に苦痛を強めるとの見方もあり、老衰と判断される場合には積極的な対応を行わず見送るのが一般的です。

老衰の前兆を知り、その方らしい最期を迎えられるよう準備しよう

本記事では老衰の前兆や本人の変化、家族が行うべき対応についてお伝えしました。

たとえ老衰により寝てばかりになっても最期のときまで「その方らしい」生活が送れると、残された家族にも後悔が残らず別れを受け入れやすくなります。そのためには事前の準備や相談が欠かせません。家族や関係機関と協力し、旅立ちまでの大切な時間を家族で穏やかに過ごしましょう。

老衰死は本人にとって苦痛があるのでしょうか?

病気での死亡に比べて苦痛は少ないと考えられます。意識レベルが低下してぼんやりした状態のまま眠るように息を引き取るのが一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。

かかりつけ医は往診ができません。大丈夫でしょうか?

自宅で看取る場合は、終末期の状態を相談する、死亡確認をしてもらう、などの理由から医師の往診があるのが望ましいです。かかりつけ医から在宅診療医を紹介してもらえないか相談しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

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