もの忘れがひどいと感じた時や家族に認知症の疑いがある時、どうしたらいいのか分からず、不安を感じる方も少なくはありません。どういった検査なのか不透明な点も不安になる要因の一つかと思います。
この記事では、認知症の診断は何科で行えるのか、どのように検査を行うのか解説します。受診したがらない方を病院に誘う方法も紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。
認知症は何科?もの忘れとの違いを解説!
もの忘れと認知症の違いは、「内容を忘れる」か「行為そのものを忘れる」かです。
加齢による物忘れでは、朝食に何を食べたかなど、内容を忘れます。しかし、認知症の場合は、朝食を食べた事実自体を忘れてしまいます。
また、もの忘れは生活に大きな支障はありませんが、認知症の場合は、頻度、程度ともに日常生活に支障をきたす場合が多いです。
例えば、本人が自分で財布をいつもとは違う場所にしまったとします。別の場所にしまった記憶はあるが、どこにしまったのか分からないといった状態はもの忘れです。しかし、認知症の場合は、別の場所にしまった事実を忘れてしまいます。そのため、「誰かが盗んだ!」と思い込むケースも少なくはありません。
認知症の初期症状とは
「物忘れとの違いはわかったけど、ほかにどんな症状があるの?」と疑問に思う方も多いかと思います。実際、ただのもの忘れだと思っていたら、実は認知症の初期症状だったケースも少なからずあります。
次のような症状が出てきたら認知症の可能性があるため、注意しましょう。
- 今までできていた当たり前ができなくなる
- 性格に変化が出ている
- 記憶障害により数分前の出来事ですら忘れてしまい思い出せない
- 時間が把握できない
- 場所がわからなくなる
- 理解力や判断力が低下しミスが増える
- 日常生活へ支障が出る
認知症の早期発見ができると適切な治療を受けられます。また、早期発見を行うと、さまざまな支援を受ける準備がスムーズにできます。認知症を疑ったら、できる限り早く、受診しましょう。
認知症を発症?進行の予防方法はある?
認知症は、治療を行っても完全に治ることはありません。そのため、認知症の予防が非常に重要です。
具体的に、以下のような予防方法があります。
- 生活習慣病にならないようにする
- 積極的にコミュニケーションを取る
- 適度に運動をする
- バランスのよい食生活を心がける
近年、高血圧や糖尿病、歯周病などの生活習慣病は認知症を発症しやすくなると、分かりつつあります。そのため、運動や食事を整えることは認知症を予防するうえで非常に重要です。
また、脳への刺激が少ないと認知症の発症率が高まります。積極的にコミュニケーションを取ると、脳が活性化し、認知症になりにくくなります。これらの方法は、認知症の進行緩和にも効果的です。
もの忘れと認知症の違いは何がある?
もの忘れと認知症は、症状が似ていますが、もの忘れの範囲や判断力の有無などによって区別ができます。
もの忘れ | 体験した内容の一部を忘れてしまうけれど思い出せる
学習能力は維持できている もの忘れをしている自覚がある 自分で探し物を見つけられる 日常生活への支障がない |
認知症 | 体験した内容のすべてを忘れる
新しい物事を学習する能力がなく覚えられない もの忘れの自覚がなくなっていく 探し物は自分で見つけられず、物盗られ妄想などが起こる 日常生活への支障があり、症状は進行する |
生活に支障が出始めた場合は、注意が必要です。普段よりも、もの忘れが多いと感じ始めたら、検査を受けに行きましょう。
参照:『厚生労働省|認知症ケア法-認知症の理解』
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認知症を疑った時に相談するのは何科?
まずは、かかりつけ医、認知症を専門として扱っている病院、もの忘れ外来などを受診します。かかりつけ医に受診した場合、本人に適した診療科の病院を紹介してもらえます。また、受診するときは、本人がどういった状況なのかをメモして、事細かに説明しましょう。
かかりつけ医がない場合で、認知症の疑いがある時は、次の科に相談してください。
- 脳神経外科
- 精神科
- 脳神経内科
- 老年病科
それぞれについて解説していきます。
脳神経外科
脳神経外科は、脳や脊髄、神経などを専門とした診療科です。手術を必要とする脳血管障害や頭部外傷、脊髄疾患などの治療、手術を行っています。
脳出血など脳の障害によって症状が起きていると疑われた際に、合わせて治療が可能なためこちらに受診を勧める場合も少なくはありません。
脳神経外科では、まずMRIやCTなどで脳内がどのような状態になっているかを検査します。何か問題があった場合は、そこで手術をするかどうかを決め、手術が不要な場合は神経内科もしくは精神科に行く流れが一般的です。
精神科
精神科は、心の病気を専門とした診療科です。高齢者のうつ症状は、うつ病によるものなのか認知症によるものなのか診断が難しく、医師でも誤診するケースがあります。誤診してしまった場合、薬が合わず、かえって状態が悪くなる可能性もあります。誤診を防ぐためにも別の診療科で、予め知能検査を行ってから受診するとよいでしょう。
また、精神科と心療内科のどちらかを薦められる場合があるかもしれませんが、心療内科は、ストレスが原因で起こる症状を扱う科です。どちらを受診するか迷った場合、認知症の方を安心させる目的なら精神科、ストレスからくる症状の緩和が目的なら心療内科を受診しましょう。
脳神経内科
脳神経内科は、脳・脊髄・神経・筋肉の病気を専門として扱っている診療科です。脳神経外科とは違い、手術を行いません。その代わり、頭痛やめまいなどの内科症状に加え、軽度の精神的不調など、幅広く請け負っています。
認知症を疑い、脳神経内科を受診した場合、まず全身のどこに病気があるのかを検査します。脳神経内科で対応できないような症状の場合、手術が必要であれば脳神経外科、精神的な要因であれば精神科へ勧められることも多いです。
脳神経内科の強みは対応できる症状の幅広さです。一般的な内科とは異なり、脳や神経に対してより専門的に治療を行えます。
老年病科
老年病科は65歳以上の方を対象としている診療科です。認知症などの加齢にともなう病気やどこの診療科へ行けばよいか分からない方、臓器別の診療では診療先が決定しない方などを診療の対象としています。
治療のみ支援するのではなく、本人が抱える健康問題に対する指導に重きをおく特徴があります。高齢者が患いやすい病気などの専門的な知識を有しているため、さまざまな角度から治療や検査をしてくれる点も非常に大きなメリットです。
認知症の検査方法とは?
まず最初に問診を行います。内容は、既往歴や現病歴、服薬歴、家族歴などを聞かれる場合が多いです。
そのあと、必要に応じて次のような検査を行います。
- MMSE(ミニメンタルステート)検査:精神状態短時間検査
- 改訂 長谷川式スケール(HDS-R):認知機能障害検査
- 血液検査・尿検査
- MRI・CT:脳画像検査
認知機能の検査は「スクリーニング検査」と呼ばれ、代表的なものが、MMSE(ミニメンタルステート)検査と長谷川式スケールです。
MMSEは幅広く認知機能を評価でき、長谷川式スケールは記憶力に重きを置いているといった違いがあります。どちらの検査も、簡単な質問を含んでおり、検査を受けた方を傷つけてしまう可能性が少なくはありません。そのため、高齢者のプライドを傷つけぬよう、配慮しながら実施されます。
認知症と診断されたら?
実際に認知症と診断を受けた事実を受け入れられない方も多くいます。あまりのショックに精神的にふさぎこんでしまう方もいるかもしれません。まずは心のケアが必要です。
気持ちが落ち着いたら、本人に「これからどういう風に過ごしたいか」「将来に備えてやっておくことはあるか」「最後はどこで迎えたいか」などを確認しましょう。認知症末期になると、本人に意思を聞き取れない状態になってしまいます。そうなってしまう前に、本人の気持ちや意思を確認し、将来に備えることが大切です。
本人の意思を聞き取ったあと、家族間でこれからどのように介護を進めていくかを話し合います。その際、疑問点や悩みごとがあれば地域包括支援センターにも相談してみましょう。受けられる介護サービスや制度、利用できる施設など、具体的なアドバイスやサポートを受けられます。
必要時応じた専門施設
認知症介護は、介護者に大きな負担がかかります。限界を迎え共倒れしてしまう前に、外部のサポートを受けることが大切です。
代表的な施設の一つに、認知症専門疾患医療センターがあります。
認知症専門疾患医療センターは、認知症に関する詳細な診断や症状への対応、相談などを行う認知症専門の医療機関です。かかりつけ医や介護施設、行政などと連携し、認知症の治療や介護者へのケアを行います。
幻覚や徘徊、睡眠障害などが強い場合、通院または入院での治療も可能です。気になる方は、かかりつけ医に相談を受けるか、地域包括支援センターに相談、もしくは直接問い合わせると、受診できます。ぜひ利用してください。
投薬を開始
認知症と診断されたあとは、本人の状態や意思に基づき、これからの治療方法や介護プランなどの検討を行います。
認知症そのものは治せませんが、投薬により症状の進行緩和が可能です。症状によっては、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、便秘薬、漢方薬など、さまざまな種類の薬剤が使用されます。認知症の中核症状に効果が期待できる「抗認知症薬」もありますが、軽度認知症の場合は、必ずしも抗認知症薬を飲む必要はありません。身体的活動、知的活動、社会的活動の充実など非薬物的な治療が大切です。
薬剤種類や量が多いとおくすりの副作用によって認知機能がかえって低下してしまうケースもまれにあります。正しい診察を受けたうえで、正しく服用できるよう心構えも重要です。
介護サービスの提案
認知症を発症した場合、ほとんどの方が介護を必要とする状態になります。家族だけで介護を行うと、負担が大きく、共倒れになりかねません。そのため、要介護認定を受け、適宜介護サービスを利用することが大切です。地域包括支援センターまたは市役所で申請ができます。
要介護認定を受けたあと、利用できる代表的な介護サービスは次の通りです。
訪問介護(ホームヘルパー) | 認知症の方の自宅を訪問し、身体介護と生活支援をしてくれるサービス |
通所介護(デイサービス) | 介護施設などを日替わり利用できるサービス
日常生活の支援や食事・入浴などのサービスを受けられる |
短期入所(ショートステイ) | 介護施設などに短期間宿泊できるサービス
入浴や食事の支援、機能訓練のサービスを受けられる 心身機能の回復や介護家族の負担を軽減が期待できる |
要介護認定によって認定された「介護を必要とする度合い」によって、利用できるサービスとその限度は異なるため注意しましょう。
認知症は投薬以外の方法でも向き合える!
認知症は、投薬以外の方法でも治療が可能です。
具体的には、手術療法やリハビリテーションなどがあります。手術療法は特発性正常圧水頭症によって生じる認知症に効果的です。リハビリテーションは、どなたでも取り組め、運動療法や認知機能訓練、音楽療法など種類もさまざまです。実際に体を動かし、楽しみながら活動できる点から脳の活性化が期待できます。
症状によっては、薬の治療ではなく上記のような治療が効果的な場合があります。また、不安や寂しさを解消できるような環境づくりをするのも大切です。認知症の方に寄り添った行動を取れるよう勉強をしましょう。
認知症の受診を勧める方法!
受診を早めに行った方がよい状態でも、実際に連れ出すのは難しい場合もあります。認知症の方が受診を拒んでしまうケースも少なくありません。無理に連れ出したり、ストレートに「認知症の検査をしよう」と伝えたりする方もいますが、余計に抵抗感を抱き、逆効果になってしまう可能性があるため注意しましょう。
受診を勧める際は、次のような対応が効果的です。
- 「市区町村から検診のお知らせが来た」と病院へ誘う
- 「健康診断を受けよう」と誘う
- 信頼している方のお名前を出して勧める
認知症の方の心に寄り添うことが大切です。騙して受診させるような真似を行なってしまうと、そのあとの信頼関係に傷がついてしまうため、絶対にしないよう注意しましょう。どうしても、受診しない場合は、家族だけで受診し、医師に相談してみる方法もあります。
認知症かな?と思ったら早めの受診をして正しい治療を受けよう
もの忘れと認知症の違いは、「内容を忘れる」か「行為そのものを忘れる」かです。認知症を疑ったら、かかりつけの医師に診てもらいましょう。かかりつけ医がいない場合は、もの忘れ外来や脳神経外科、精神科、脳神経内科、老年病科など専門の診療科を受診してください。
認知症と診断された場合、本人にどう過ごしたいかなどを確認しましょう。認知症が進行すると、いつかは本人の意思を聞き取れない状態になってしまいます。そうなってしまう前に、本人の気持ちや意思を確認し、将来に備えることが大切です。
認知症の方の意思を尊重したうえで、ありのままの人生を歩んでいけるよう向き合っていきましょう。
もの忘れと認知症の違いは、「内容を忘れる」か「行為そのものを忘れる」かです。加齢による物忘れでは、朝食に何を食べたかなど、内容を忘れます。しかし、認知症の場合は、朝食を食べた事実自体を忘れてしまいます。詳しくはこちらをご覧ください。
まずは、かかりつけ医に相談しましょう。健康状態を把握し、普段との状態がどのように違うのかを判断できます。そのほか、精神科、脳神経内科、脳神経外科、老年病科が適切です。詳しくはこちらをご覧ください。