年を重ねると尿意が近くなる方が増えてきます。
認知症の方も、何度もトイレに行く方が多く介助者は負担が増える一方です。しかし、オムツを嫌がる方は少なくないので、大変な思いをしているのではないでしょうか。
本記事では、トイレばかり行く認知症の方をお世話している介助者に向けて、負担を減らす方法や、頻尿の改善策をご紹介します。
認知症によりトイレばかり行く方の状態と頻尿の種類
1日の正常な排尿回数は4〜6回、夜間は1回未満です。
しかし、認知症になるとトイレの回数が増え、夜間もトイレに何度も行く方が多くいます。
ここからは頻尿の状態や種類について解説していきます。
頻尿の定義
頻尿(ひんにょう)とは、尿が近く回数の多い状態をいいます。
1日の正常回数は5回前後であり、1日の排尿量は1500ml、1回あたり300ml(コップ1杯半)です。排尿間隔は5時間に1回程度です。正常な排尿を理解したうえで、今度は頻尿の定義をみていきます。
1日のトイレ回数が8回以上、夜間2回以上トイレに行く人は頻尿といわれています。
尿は腎臓から尿管を通って、膀胱へ貯まっていきます。頻尿にはさまざまな症状がありますが、尿量の異常、膀胱に尿が貯められない、尿意が曖昧になるといった問題を抱えています。
(※)参照:Japan community health care Organization 泌尿器科部長|石原 順就 https://takanawa.jcho.go.jp/wp-content/uploads/2021/01/9-1_ishihara_light.pdf
認知症による頻尿の種類
認知症による頻尿の原因は、大きく分けて5つが考えられます。
- 過活動膀胱
- 前立腺肥大
- 膀胱炎
- 夜間頻尿
- 認知症
過活動膀胱は、尿が十分に膀胱に貯まっていなくても強い尿意に襲われ、我慢ができない状態です。我慢ができなくなると失禁することがあります。
前立腺肥大は、その名の通り男性の前立腺が大きくなってしまう病気です。前立腺が大きくなってしまったことで、尿道が圧迫され尿が出にくくなります。トイレに行っても、膀胱内に尿が貯まったままですので、何度もトイレに行きます。
膀胱炎は尿道が短い女性に起こりやすい病気で、膀胱内に菌が増殖し炎症を起こした状態です。
夜間頻尿は、睡眠が浅い高齢者に多く、眠れないため夜間にトイレへ行く回数が増える状態をいいます。
認知症の場合、尿意を感じる脳の部分が萎縮することで適切な指令が送られず、抑制が効かない状態になっている。もしくは、物忘れや見当識障害によってトイレに行ったことを覚えていない可能性があります。
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認知症の方がトイレばかり行きたがるその理由
軽度認知症の方が何度もトイレに行くのは、脳の萎縮が関係しているからです
。脳の膀胱抑制的に働く、前頭前野や大脳基低核に異常が起きているからといわれています。
また、その他の症状が重なっている場合もあるので、どのような原因が認知症に多いのかをご紹介します。
頻尿の特徴
まずは、認知症の方によくみられる頻尿の特徴についてです。
認知症による頻尿の特徴は、尿意がなくても行きたがる傾向があります。
なぜなら、トイレに行ったことを忘れてしまうので、同じ行動を繰り返してしまうからです。
認知症の特徴の一つである見当識障害は、いつ、どこへ行ったのか直前の出来事を忘れてしまいます。
記憶がすっぽりと抜けた状態となると、トイレに行ったことを忘れて「漏れるといけないから、トイレに行っておこう。」という思考に変わります。
これが繰り返されると、数分置きにトイレに何度も行くという異常な行動に変わっていきます。
トイレに行った記憶がないという状態と、「漏れるといけない」といった精神的な不安が結びついた結果、頻尿が起きているのです。
過活動膀胱が原因
年齢を重ねるに連れて、血の巡りが悪くなっていきます。過活動膀胱は、加齢により膀胱の神経が鈍感になるため、膀胱が円滑に働かないことによって過剰に反応してしまう症状です。
女性の場合は、女性ホルモンが低下することで子宮などの臓器が萎縮することがあります。膀胱の位置がずれてしまうことによって、過活動膀胱になる方も多くいます。反対に、男性の場合も加齢による原因があり、前立腺肥大や尿道が変形するなどといった症状で過活動膀胱となる場合もあるのです。
それらの症状が交わって、認知症による神経の伝達に異常が起こると、さらに膀胱の機能が過敏となってしまうことも考えられます。
見当識障害が原因
見当識障害とは、認知症の症状の一つで、現在の場所や日時がわからなくなっている状態です。例えるならば、昔の記憶の中で過ごしているような感覚に近いでしょう。昔の記憶は鮮明に覚えていますが、短期記憶は苦手な状態です。
また、時間を判断する力も減退しているため、日中と夜間の区別ができず覚醒し、夜間にトイレへ行く機会が多くなるのです。
認知症の方が頻尿になりやすい原因
頻尿は病気による原因も考えられますが、それだけではありません。もう一つ、生活習慣が原因で頻尿を起こしている場合があります。
- 水分の摂りすぎ
- 体温の低下
- カフェインやアルコール
これらの詳しい解説と対策についても説明していきます。
水分の摂りすぎ
何度もトイレに行くのには、水分を摂りすぎていることが考えられます。
日中に水分を摂りたがらない高齢の方は多くいます。その背景には「水分をとると、トイレに行きたくなってしまうから……」といった訴えが多いです。しかし、その行動はかえって逆効果になっているかもしれません。
静かな夜は、注意が散漫しにくい環境です。そのため、喉の渇きが一段と際立ちます。脱水症状を防ごうとしている体は、夜に水分を補うため、大量に飲水してしまいます。夜に多く飲んだ分、夜間の尿量が増えますから、結果的にトイレへ行く回数が増えてしまうのです。
体温の低下
高齢者は身体機能が低下し、活動量が減るので、汗をかく機会が減ります。汗の量が少ないので、尿として排出されます。尿量が多くなるとトイレの回数が増えるのです。
それだけではなく、汗は体温を調整する役割でもあるので、活動量が少ないと体温はやや下がったままになり、寒さを感じやすくなるのです。寒さによる刺激で尿意を感じることが増えていきます。
高齢者のトイレが近くなるのには、汗をかかないことが原因かもしれないのです。
カフェインやアルコールが原因
利尿作用があるアルコールや、カフェインの影響により頻尿となっている可能性も考えられます。
少量のアルコールは、血行がよくなり睡眠を促す作用を持っています。しかし、アルコールの量や濃度が高いお酒を飲み過ぎてしまうと、利尿作用が過剰に働き、尿が大量に作り出されてしまうのです。
カフェインも同様に利尿作用があります。カフェインは腎臓の血管を広げて、ろ過の働きを促します。お茶やコーヒー、エナジードリンクなどに多く含まれているので夜の摂取は控えましょう。
高齢者は体の水分量が少なく、脱水症状を起こしやすい状態です。これら嗜好品はなるべく控えたいところですが、摂取する時間を考えたり、ノンカフェインに変更することで脱水症状をさけることもできます。
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認知症の頻尿の事例
認知症の方が何度もトイレに行くことにより、介護に困っているのは家庭だけではありません。病院や施設でも同様に、トイレの対応に困っている現場のスタッフも多くいます。ここからは、現場の様子もみていきます。
5分おきにトイレへ行く認知症患者
老人保健施設の嘱託医として働いている方のお話です。
別の施設から移動してきた80代後半の認知症女性は、入所当初から多くの向精神薬を服薬していました。薬によって意欲がなくなっており、食事でむせる様子もあったため薬の量も減らしていったのです。
その後、2か月くらいは状態が安定し良好でした。しかし、そこから不眠が続き、トイレに行く頻度が増えました。ひどいと5分おきにトイレへ行きたいと訴えます。トイレまでは、歩行介助が必要なので1人では行けません。スタッフも手が離せない場合があり、対応が遅れると昼夜問わず「おしっこに行かせて!」と叫ぶようになってしまいました。他の入所者からの苦情も増えてきているので困っています。
(※)引用元:http://184.73.219.23/conf/conf.asp?m=176
膝が悪く転倒のリスクが高い認知症患者の対応
グループホームで働く女性介護士のお話です。
認知症の方は、排尿感覚がわからなくなっている様子です。足腰がしっかりしていれば自由にトイレへ行くことができますが、脚の関節の動きが悪く、転倒する可能性があるため介助が必要です。5〜10分おきにトイレに行きますが、排尿があるのは5回に1回程度です。レクリエーションをしているときは、尿意を訴えることはありません。しかし、つきっきりで相手をするわけにも行きませんので、困っています。介護士としても、本人の意思も尊重してあげたいと思っています。
認知症の頻尿予防や改善策
では、ここからは認知症の頻尿を改善する具体的な方法について解説していきます。実際に、病院や施設で行われている方法であり、自宅でもできるためご紹介していきます。
排尿日誌をつけてパターンや尿量を把握する
排尿日誌とは、排尿の時刻や尿量を測定して1日の排尿を記録していくものになります。排尿日誌をつけることで、排尿のパターンが知れ、水分の調整や病的なものかどうかを判断する材料にもなるのです。排尿日誌は5日ほど記録ができるとパターンが見えてきます。
病院のような採尿カップで毎回測定するのは大変です。そんな時は、便座設置型の計量カップ(ユーリパン)というものを使用すると便利で、1つあたり500円以下で購入ができます。
また、パットやオムツが吸収した尿も計りなどで測定し、パット自体の重さを引くことで尿量がわかります。
2,000ml以上の排尿量や色が濁っていたり、血が混じっていたり、尿の臭いが異常にキツかったりするのであれば、医師に相談することで病気が発見できるかもしれません。また、排尿パターンを知ることで、トイレと上手く付き合うヒントにもなります。
骨盤底筋体操で筋肉を鍛える
骨盤底筋体操で筋肉が鍛えられると、排尿がスムーズになったり、頻尿や尿漏れを予防できる効果が期待できます。
骨盤底筋体操の方法をご紹介します。
- お尻の穴をキュッと絞るようにしてお腹に力を入れます。
- そのまま力が緩まないように5秒我慢します。
- 5秒耐えたら力を抜きリラックスしましょう。
- また1番へ戻り繰り返します。
「肛門を縮めて、緩めて」を8回繰り返し、これを1セットとします。1日に8〜10セットを目安にいろんな時間帯で行いましょう。
効果が得られるには3か月程度かかるので、諦めずに継続することが大切となるのです。やる気がない人や興味がなさそうな人でも、ラジオ体操のような決まった時間に、音楽や動画が流れると、自然と馴染み深いものとなってやってくれる方も多くいます。
認知症でトイレばかり行く方の対策と治療
排尿のことばかり考えている生活は、本人も辛いことではないでしょうか。
「我慢できずに汚してしまうかもしれない……」という不安からストレスを感じています。もし、汚してしまった場合、本人も家族もストレスになってしまいます。
ここからは、どちらも快適に過ごせるように、認知症の頻尿への対策と治療を解説していきます。
対策
まずは、寝る直前にトイレへ誘導して安心させてあげましょう。カフェインやアルコールを控えることも対策になりますし、水分を摂取する時間や量を調整して見直すことがポイントです。
強い尿意に襲われ尿を漏らしてしまう場合は、おむつを利用して対策をします。漏れてしまっても、衣類やベッドまで濡れることを防ぎます。不快感を最小限に抑えることでき、ストレスを緩和させることが可能です。
トイレにいきたいと叫んだり、1人でトイレまで行こうとする危険行為がともなう場合は、福祉用具を検討します。たとえば、歩行は不安定でも1人で立ち上がることが安全にできるのであれば、「手すり」と「ポータブルトイレ」を設置して自由に用を足すことも可能です。立ち上がりはできないけど、座ることが可能であれば「尿器」を用意するのも負担を減らす一つの対策です。
他にも、睡眠薬や夜間の訪問介護サービスを利用することで介護の負担が減らせる場合があります。
治療
治療は、頻尿の種類によって変わってきます。
頻尿の種類 | 治療法 |
過活動膀胱 | ・生活指導や運動や暴行訓練などの行動療法
・神経因性膀胱の治療薬 ・仙骨神経刺激療法やA型ボツリヌス毒素膀胱壁内注入手術 |
前立腺肥大 | ・前立腺に作用する薬物
・レーザーなどによる前立腺の切除術 |
膀胱炎 | ・抗生剤を用いて細菌 |
夜間頻尿 | ・薬で膀胱の筋肉の収縮を抑える
・睡眠を促す薬が処方されます。 |
認知症 | ・生活指導などの行動療法
・認知症の進行を抑える薬や精神安定剤 |
(※)参照:Japan community health care Organization
泌尿器科部長|石原 順就 https://takanawa.jcho.go.jp/wp-content/uploads/2021/01/9-1_ishihara_light.pdf
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まとめ|排尿のパターンを理解して、個々にあった対策で負担を減らす
まずは、頻尿の原因を調べることが大切です。排尿日誌をつけてパターンを掴んで生活習慣を見直したり、頻尿の種類がわかるので、病的なものかどうかを判断する材料にもなります。
歩行は困難でも、何かにつかまったりして立ち動作が保持できるのであれば、簡易トイレなどを利用したり、場合によってはオムツを使用すると負担が軽減する可能性があります。
それでも、改善しないようであれば、サービスなどを利用して専門家の意見や協力を依頼するとよいでしょう。
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