「老人ホームを退去したいけど、どうすればいいの?」「退去する場合にトラブルにならないか不安」このように老人ホームを退去したいと思っても不安に思う方も多いのではないでしょうか?
今回はそのような不安を解消するために、老人ホームを退去する場合の行動や、退去理由に合わせた対応の仕方、トラブル回避の方法を紹介します。入居される方やご家族がスムーズに退去をして安心した生活を過ごせるよう、参考にしてみましょう。

老人ホームを退去したいと思ったとき最初にやるとよい行動3つ
老人ホームを退去したいと思ったときに、いきなり手続きをするのではなく、以下の3つを実践してみましょう。
- 退去理由を解決できないか相談する
- 次に住む場所を決める
- 退去手続きの流れを確認
後で後悔しないためにも大事な内容ですので、それぞれの理由を詳しく解説します。
1.退去の理由が解決できないか相談する
住み替えは入居している方はもちろん家族にとっても負担がかかります。もし、退去したいと思う理由が解消されて、今いる施設で生活が続けられれば転居の負担はありません。そのため、退去理由が解決できないかをよく考えるのが大切です。
退去を進める前に相談員やケアマネジャーなど相談しやすいスタッフや施設長といった管理する立場のスタッフに退去理由を伝えて解決策を考えましょう。施設によっては法人や運営会社が相談窓口や苦情担当者を設けている場合がほとんどです。
身近な職員に相談しにくい場合は、このような外部の窓口を頼るのもよいでしょう。

2.次に住む場所を決める
退去の手続きを進めてしまうと、退去の具体的な日取りが決まってしまいます。そうなると限られた時間内に退所先を決める必要が生じます。退去の理由を解決できる新たな施設を選ぶためには、じっくり時間をかけたいところです。
そのため、退所の手続きを始める前に、しっかりと時間をかけて次に住む場所を決めましょう。よい退去先を選ぶための注意点はあとで紹介します。
3.必要な手続きの流れを確認
退去の手続きの前に手続きの流れを施設に確認するのが大切です。理想は入居時に説明される重要事項説明書や契約書に退去時の流れが書かれているケースがあるので、入居前にしっかり確認しましょう。確認事項は次のようなものがあります。
- 退去申し出の時期
- 入居時一時金の返還について
- 原状回復の範囲
入居期間が長くなるほど書かれている内容を忘れてしまいます。トラブル回避のために再度詳細を確認して、手続きに必要な内容を頭に入れておくようにしましょう。
特に金銭面に関わる手続きはトラブルになりやすいので、回避の具体的な方法は後ほど紹介します。次の入居先を探しているという方はケアスル介護で相談するのがおすすめです。
入居相談員にその場で条件に合った施設を提案してもらえるので、何から始めればよいかわからない方でもスムーズに施設探しができます。
ピッタリの施設を提案します

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老人ホームを退去したい理由は何?よくある理由6つを紹介
次の老人ホームを決める場合に、老人ホームを退去したい理由を解決できるかが基準の1つになります。転居先の施設に入居される方や家族の希望を明確にするために、理由をはっきりさせるようにしましょう。
ここでは、よくある理由を6つ紹介します。当てはまる理由がないか確認してみましょう。
1.医療行為が必要となり対応が困難
医師や看護師の人員配置がなかったり、医療機関との連携がなかったりする施設では、病気や怪我の影響で医療による治療が必要になると施設での対応は難しくなります。
例えば退院後に胃ろうや腸ろうの増設で経管栄養が必要になったり、喀痰吸引を行なったりといった医療行為が必要になる場合があります。そうなると、日中は看護師がいても夜間介護職員しかいない老人ホームでは、医療行為の対応が困難になり退去が必要です。
施設によって具体的な対応が異なるため、しっかり確認しましょう。
2.介護度が変化して対応が困難
入居する方の介護度が変化した結果、施設での対応が難しくなる場合があります。介護度が高くなったケースでは、住宅型有料老人ホームのような比較的介護度が低い方が入る施設で継続した入居が難しいです。
もう一方のケースは介護度が低くなって退去する場合です。例えば特別養護老人ホームで入居を継続するには要介護度3以上でなければなりません。
そのため、状態が改善して要介護度が2以下になった場合は、別の施設への転居が必要です。
3.認知症の進行により対応が困難
認知症が進行してしまい、集団での生活が困難になったり、介護の必要性が高まったりして退去が必要になる場合があります。例えば、暴力行為やほかに入居者されている方の部屋に何度も入るといった行為を繰り返して入居が続けられなくなる場合などです。
自由度の高い老人ホームでは認知症の方の行動に対応できないため、グループホームのような認知症の方に専門的な対応ができる施設への転居が必要です。
4.経済的に支払いが難しい
家族の経済状況が変わったり、介護度が上がりサービス利用が多くなったりした結果、施設の入居費用が払えなくなり、退去が必要になるケースがあります。
例えば有料老人ホームは費用が高額な場合が多く、特別養護老人ホームなど費用が安い施設へ転居するケースがあります。施設によっては支払いに猶予期間を設けている場合もありますが、経済的な理由がすぐに改善できない場合は、どちらにせよ退去が必要です。
5.サービス内容に不満がある
スタッフの対応や施設の設備、食事、行事やレクリエーションなどサービス内容への不満で退去するケースもあります。事前にサービス内容を確認していても、実際に入居して初めて気づくケースもあるでしょう。
サービス内容に関しては施設側としっかり話し合いをすれば、改善できるケースもあります。そのため、不満があるからといってすぐに退去をするのではなく、まずは施設の職員に相談するようにしましょう。
6.家族が通いにくい立地にある
入居している場所が家族の居住地から離れていて、家族が訪問しにくい場合も退去する理由の1つです。入居期間が長くなると家族も高齢になり、より訪問しやすい施設への住み替えを希望する場合があります。
例えば家族が遠方に住んでいる場合、入居される方の住み慣れた地域ではなく、家族の住んでいる場所に近い施設へ転居するケースです。
また、車での訪問が難しい場合、公共交通機関の利用がしやすい施設にするなど、家族が訪問する交通手段を検討して施設を選ぶ場合もあります。
老人ホームを退去後に住み替え先を決める際の注意点
同じ轍を踏まないためにも、退去したあとに入居する老人ホームは慎重に選ぶ必要があります。そこで、転居先の老人ホームを選ぶために知っておきたい注意点を3つ紹介します。
- 退去理由をはっきりさせて解決できる施設を探す
- 入居先の相談員に相談する
- 事前に老人ホームに見学する
これらの注意点を踏まえて、1つの施設を検討するのではなく、複数の施設を比較して、失敗のリスクを減らしましょう。
1.退去理由をはっきりさせて解決できる施設を選ぶ
退去する理由が何かをはっきりとさせて、それを解決できる施設を選ぶのが重要です。理由に優先順位をつけて、優先順位の高いものは、確実に条件に当てはまるようにしましょう。
そうしなければ、また退去を繰り返す可能性が生じます。もし、不満を完璧に満たす施設が見つからない場合も、優先順位をつけておけば、満足度の高い施設を選ぶ手がかりになります。
例えば、医療依存度が高くなってしまい、今いる施設では対応ができなくなった場合は、医療体制の充実した施設が必要です。介護医療院を選んだり、医療機関や訪問看護ステーションと連携が密な施設を選ぶようにしましょう。
介護度が悪化した場合は介護付き有料老人ホームや看護小規模多機能型居宅介護が併設してある老人ホームなどに転居が必要です。入居費用を考慮した場合は、特別養護老人ホームなど比較的料金の安い施設が選択肢に挙がります。
2.必ず住み替える先へ見学に行く
ある程度候補の施設が決まった場合、必ず施設の見学をするようにしましょう。実際に目で確かめながら、ニーズを満たすかどうかの確認が大切です。
見学に行く場合は以下のようなポイントを確認して、施設選びの参考にしましょう。
- 部屋の広さや明るさ、間取り
- 施設の設備の充実度
- スタッフや入居されている方の雰囲気
- 立地や周辺の環境
- レクリエーションやイベントの様子
- 食事内容
- プライバシーを確保しているか
部屋の明るさやレクリエーションなどの様子、食事内容などは時間が限定されるため、事前に施設に確認して見学に行く時間を調整するようにしましょう。また、上記のポイントをすべて一度の見学で確認するのは大変です。
スタッフや入居されている方の雰囲気も短時間の見学だけでは十分確認できないでしょう。そのため、できるだけ複数回見学して、さまざまな状況や場面を確認するようにしましょう。
食事は事前に連絡していれば試食させてもらえる場合もあります。リハビリマシンの使用やレクリエーションの体験などもできる場合もあるので、お試し体験ができるかどうか確認をしてみるのもよいでしょう。
また、これから見学する施設を探すという方はケアスル介護で探すのがおすすめです。入居相談員が見学予約から日程調整まで完全無料で代行しているので、スムーズに施設探しができます。
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3.住み替え先の職員にしっかり相談する
住み替え先の相談員や窓口係の職員に、退去した理由を含めてしっかりと相談しましょう。そして、優先順位の高いニーズを満たすか確認する必要があります。
見学だけではわからないサービスや、見学したあとに気づいた疑問などを直接聞いて解決して、施設選びの失敗を防ぎましょう。
具体的には、見学時にタイミングが合わず見れなかった行事やレクリエーション、リハビリ内容、食事などについて聞きましょう。また、金銭に関する疑問はあとでトラブルにならないように、丁寧に聞くのが大切です。
希望するスタイルを明確にして、見学と質問をうまく使い、よりよい施設選びをしましょう。
老人ホームの退去時によくあるトラブルと回避する方法2つ
退去時によくあるトラブルとして金銭に関わる次の2つがあります。
- 入居時一時金に関するトラブル
- 原状回復の範囲についてのトラブル
それぞれのトラブルになりやすい原因を具体例を挙げながら解説します。解決する方法も紹介しますので、確認してトラブルを回避しましょう。
1.入居時一時金の返還の決まりを確認しよう
入居時一時金の返還に関するやりとりは入居されている方と施設側の認識の違いからトラブルに発展してしまうため、事前に詳しく確認しましょう。
入居時一時金は契約後90日以内であれば、クリーングオフが適応されるため全額返還されます。老人福祉法により定められている制度なので、施設側の取り決めにかかわらず適応されるのを知っておきましょう。
入居時一時金には、「家賃の前払い」と「亡くなるまで利用できる権利の購入」の2つの意味があります。そのため、90日以上経過している場合は、入居時一時金のうち、施設によって返金されない償却金が定められている場合があるので確認が必要です。実際に償却金がいくらになり、どれくらい返金されるのかは、「初期償却金」と「償却期間」により計算できます。具体例を以下に示します。
以下は仮の施設の条件です。
入居時一時金:1000万円 初期償却金:10%(100万円) 償却期間:10年 入居期間:18カ実際の計算
これを元に返還される額を計算すると次のような式になります。
(1000万円ー100万円)/120カ月×(120カ月ー18カ月)=765万円(初期償却金を引いた返金額)
返還の決まりは重要事項説明書に記載されている場合が多いため、入居前にしっかり確認するのが重要です。もし確認できていないときは、退去前にしっかり見直し、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。
2.原状回復の範囲で揉めるケースもある
原状回復の範囲がどの程度適応されるかによって、入居される方や家族が納得できずにトラブルになるケースもあります。契約書などに記載してある場合が多いですが、基本的に経年劣化などは施設負担で、入居していた方の過失や故意による傷などは利用者側の負担になります。
例えば壁に絵画やポスターを貼っていた場合に、壁紙が変色していたとします。この場合は、経年劣化による変色ですので、施設負担による原状回復になります。
また、入居時から杖を使用しており、杖による傷が床についていた場合も、通常使用による消耗になるため施設負担です。認知症のために車椅子や杖を乱暴に使用してしまい床を傷つけたり、家具の移動で壁に穴を開けたりといった入居される方の故意や不注意によるものは費用の負担が必要になります。
その場合でも全額負担が必要かどうかは状況によるため、施設側にしっかり確認しましょう。
これらの基準は国土交通省が定めている、「原状回復をめぐ るトラブルとガイドライン」に定められています。そのため施設側が身勝手に入居者負担のルールを定めてはいけません。
納得いかない理由で原状回復の費用を負担させられる場合は、市区町村や国民健康保険団体連合会などの苦情窓口に相談しましょう。
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老人ホームを退去したいときは理由をはっきりさせ金銭的なトラブルを避けよう
老人ホームを退去したいと思ったら退去理由を明確にして、老人ホームの職員に相談しましょう。それでも解決できなかったら、今回の記事を参考に退去理由を解決できる施設を丁寧に選びましょう。
退去時には金銭的なトラブルが多いので、十分に対策を立てて手続きを進める必要があります。
入居している方やご家族がより質の高い生活が送れるように、今回の記事を参考にしてスムーズな退去ができるようにしましょう。
老人ホームの退去にまつわるよくある質問
Q1.老人ホームを退去するときにトラブルはどのように回避したらいいの?
A1.トラブルを回避するために、契約書や契約時にもらった重要事項説明書をしっかり確認しましょう。そこに書かれている内容と合わない理不尽な請求をされた場合は、支払う義務はありません。請求を求められた場合は、役所や国民健康保険団体連合会といった公的な苦情窓口に相談しましょう。
Q2.退去の手続きはすぐに始めた方がいいの?
A2.まずは退去前に老人ホームの相談員やケアマネジャーに相談しましょう。それでも退去したい場合は、次の施設の目処を立てたあとで手続きを始めます。何度も転居しないよう、じっくり施設を選んだ方が良いので、早急に退去しなければならない場合以外は焦らず手続きを進めましょう。