介護タクシーは、介護が必要な高齢者の方が外出する際にとても便利なサービスです。
利用者を目的地まで送ってくれるだけではなく、介護職員初任者研修以上の資格を保有する運転手により、乗降の介助や外出前後の着替えの介助などを受けることができます。
しかし、インターネット上では「介護タクシーは料金が高い」という意見もよく目にします。
「介護タクシーは高いって言われてるけど、実際のところどうなの?」
「自分がサービスを利用するとしたら、どれくらいの費用が掛かるの?」
そんな疑問をお持ちの方々のため、今回は介護タクシーの料金はなぜ高いと言われているのか、料金の仕組みやサービス内容、実際にかかる料金のシミュレーションまで、詳しく解説して行きます。

介護タクシーは料金が高いと言われるのはなぜ?
介護タクシーの料金は高いと言われる理由は、大きく分けて3つあります。
- 介護保険が適用されない場合があるから
- 料金の仕組みが複雑だから
- サービスの範囲が広いから
次項ではそれぞれについて解説して行きます。
介護保険が適用されない場合があるから
介護タクシーの中には、介護保険の適用が可能な「介護タクシー」と、介護保険が適用されない「福祉タクシー」と呼ばれるものが存在します。
介護保険が適用される「介護タクシー」は自己負担額を軽減することができますが、介護保険が適用されない「福祉タクシー」の利用は全額自己負担となります。
したがって「福祉タクシー」は費用面の負担が大きくなることが多く、「介護タクシーの料金は高い」と言われる要因のひとつになっているのです。
また「介護タクシー」「福祉タクシー」という名称はあくまでも通称であり、正式に言えば訪問介護に含まれるサービスの一種です。
地域や行政によっては呼ばれている名前が異なる場合があるため、利用を検討する際にはケアマネージャーに尋ねてみましょう。
介護タクシーと福祉タクシーの違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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介護タクシーと福祉タクシーの違いとは?目的から対象者、料金の違いを解説!カテゴリ:在宅介護更新日:2023-02-24
料金の仕組みが複雑だから
介護タクシーの利用には介護保険が適用できますが、全体の料金が1割の負担で済むわけではありません。
介護タクシーの料金は、以下の3つの要素で構成されています。
- 運賃
- 介助サービス費用
- 車いすなどのレンタル費用
このうち介護保険の適用対象となるのは、介助サービス費用のみです。
したがって、運賃とレンタル費用に関しては介護保険の適用されず、全額自己負担となります。
しかし利用を検討している方の中には、運賃・レンタル費用が全額自己負担となることを知らず、1割の負担で済むと思っている方も多くいます。
このように、料金の仕組みが複雑だからこそ認識のすれ違いが生じ、「思っていたよりも料金が高い」と感じてしまうのです。
以上のような認識のすれ違いについても、「介護タクシーは料金が高い」と言われる要因のひとつと言えるでしょう。

サービスの範囲が広いから
介護タクシーは利用者を移送するだけのサービスではありません。
運転手は介護職員初任者研修以上の資格を保持しており、乗降時の介助や外出前後の着替えの介助、必要があれば室内の付き添いなどを受けることが可能です。
介護のプロが準備から外出をサポートしてくれるため、家族にとって大きな負担の軽減となるでしょう。
しかし、利用を検討する方の中には詳しいサービス内容を知らず「移動だけのサービスなのに、ここまで料金が必要なの?」と感じてしまう方もいます。
以上のように、「介護タクシーは移動のほかにもサービス内容が充実しており、それを利用者が認知していないこと」についても、「介護タクシーは料金が高い」と言われる要因のひとつと言えます。
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介護タクシーの利用料金
ここまでは「介護タクシーは料金が高い」と言われる理由を解説してきました。
それでは、実際の介護タクシーの利用料金の仕組みはどうなっているのでしょうか?
前述のとおり、介護タクシーの利用料金は以下の3つの要素で構成されています。
- 運賃
- 介助サービス費用
- 車いすなどのレンタル費用
本項では、3つの料金についてそれぞれ詳しく解説して行きます。
運賃
運賃は、一般のタクシーと同じようなメーター料金で計算されていることが多いです。
例としては「初乗り料金2キロ750円+以降1キロごとに400円」といった計算になります。
そのほか30分ごとに1000円といった「時間制運賃」を導入している事業者もあるため、よく確認してみましょう。
また前述のとおり運賃は自費となりますが、通常の相場の半額程度で済む場合もあるため、比較的負担は少ないと言えます。
介助サービス費用
介助サービス費用には介護保険を適用することができ、「通院等乗降介助」の自己負担額は1割・1回あたり約100円での利用が可能です。
往復の場合は2回とカウントされるので、約200円ほどかかることを覚えておきましょう。
そのほか介護保険が適用されない場合は全額が自己負担となり、乗降時や外出の準備以外の介助では、以下のように費用が発生します。
- 室内介助:1,000円
- 外出付き添い:1,200円
- 病院内介助 :900円(30分)
車いすなどのレンタル費用
車いすやストレッチャーなどをレンタルする場合は、レンタルの費用がかかります。
料金は業者によって異なりますが、おおよその目安としては以下のようになっています。
- 車いす:無料~1,000円
- リクライニング車いす:1500円~2000円
- ストレッチャー:4,000円~6,000円
そのほか酸素吸入器などの医療機器のレンタルを実施しているケースもあるため、利用前によく確認してみましょう。
介護タクシーのサービス内容
続いて、介護タクシーの詳しいサービス内容や、利用条件について解説して行きます。
介護タクシーは介護保険が適用されることにより、利用にあたっては対象者や条件が厳密に定められています。
利用上のルールを正しく理解すれば、費用の自己負担を抑えながらサービスを受けることができるため、大きなメリットとなるでしょう。
受けられるサービスの内容
介護タクシーは、目的地までの往復の移送のほかにも、乗降時の介助や着替えの介助といった外出準備まで幅広いサービスを提供しています。
具体的なサービスの内容を解説すると、以下のようなものが挙げられます。
出発時
- 介護タクシーが利用者の自宅まで迎車
- 着替えをはじめとする外出準備の介助
- タクシーまでの移動や乗車の介助
目的地に到着
- 降車の介助、目的地までの移動介助
- 通院の場合、受付または受診科までの移動介助・病院スタッフへの声かけ (病院内の介助は病院スタッフが対応)
- 受診後の支払い、薬の受取
帰宅時
- 降車時の介助、自室までの移動介助
- 必要な場合は着替え・おむつ交換など
以上のように介護タクシーは乗降時の介助に限らず、外出前の身支度や、帰宅から自室までの移動もサービスに含まれています。
一般的に歩行が困難な方が車まで移動する場合はたくさんの懸念があり、安全性に配慮したりとサポートする家族の負担が重くなるケースも多いです。
その点、介護タクシーの運転手は介護職員初任者研修以上の資格を保有するプロのため、利用者の移動や外出を安心して任せることができます。
乗降時には車イスやストレッチャーを使用することもでき、利用者の身体的負担も最小限に抑えられると言えるでしょう。
また車椅子やストレッチャーはレンタルも可能となっており、普段外出することが少ない方にとっても便利です。
介護タクシーの利用対象となる人
介護タクシーの利用対象となるのは、以下の条件を満たした方です。
- 要介護1~5の認定を受けている
- ひとりで公共交通機関に乗ることが困難
- 自宅・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に住んでいる
介護タクシーの利用対象となるのは、要介護1~5の認定を受けており、ひとりで公共交通機関に乗ることが困難な方です。
「要支援」の方は利用対象とならないため、注意しておきましょう。
また、介護タクシーは一般的に「自宅」で生活している方のためのサービスとなっています。
そのため、介護施設である特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設に入居している方も利用対象外となっているため、理解しておきましょう。
介護タクシーの利用目的
介護保険タクシーの利用目的は、「日常生活・社会生活に必要な行為に伴う外出」に限られています。
たとえば介護保険が適用される目的としては、以下のようなものが挙げられます。
- 通院(受診やリハビリなど)
- 預金の引き下ろし
- 役場での申請などの手続き
- 選挙での投票
- 補聴器やメガネの作成・調整など本人が出向かなければできない買い物
以上のように介護タクシーを利用して外出する場合は行き先が定められており、仕事や趣味、旅行など目的では利用できないことを理解しておきましょう。
サービスを利用する際の注意点
介護タクシーを利用する際には、いくつか注意しなければならないことがあります。
考えていた用途と違ったということのないように、よく確認しておきましょう。
家族の同乗が認められていない
介護タクシーには原則として、家族が同乗することができません。
保険適用ができる介護タクシーは正式には「通院等乗車介助」という、介助を受けることが前提のサービスとなっています。
そのため介助をしてくれる家族が同乗できるのであれば、サービスを利用する必要はないとみなされてしまうのです。
したがって、介護タクシーには介助を必要とする利用者本人のみ乗車することになるため、よく注意しておきましょう。
しかし、認知症や精神疾患といった特別な事情がある場合は家族同乗が認められることがあるため、事前にケアマネージャーに相談しておくことが大切です。
そのほか介護タクシーに家族が同乗するケースについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

乗車介助以外のサービス扱いになる場合がある
実際に必要となった介助の度合いによっては、乗降介助以外のサービス扱いになることがあります。
以下のような状況では「身体介護」「生活援助」であると判断される場合があるため、注意しておきましょう。
- 要介護4・5の方で、外出前後の介助に20分~30分以上の時間を必要とするとき
- 外出の前後で食事や入浴、排泄の介助などで30分以上の身体介護が必要となるとき
- 外出中に日常生活品の買い物などの生活援助を行うとき
例外として、介護タクシーに運転手の以外のヘルパーがに同乗している場合は、介助内容によって「通院等の乗降介助」となるのか「身体介護」となるのかの判断が変化します。
判断の基準は介護タクシーの業者によって異なり、どのサービスとして判断されるかでサービスの単位数が変化するため、事前に細かくケアマネージャーと相談することをおすすめします。
運転手は病院内の付き添いができない
病院の中での介助は、原則として病院のスタッフが対応することになるため、運転手は病院内まで付き添いをすることはありません。
ただし、次のようなケースでは例外として運転手の付き添いが認められることがあります。
- 病院内の移動に介助が必要になる場合
- 認知症や精神疾患といった症状のために見守る必要がある場合
- 排泄介助を必要とする場合
- 院内付き添いのオプションサービス(別途費用)を利用した場合
そのほか要介護度が高く、そもそも1人では移動や手続きをすることができない状態でも、運転手の付き添いが認められます。
付き添いが認められる基準は地域の方針によって異なるため、自治体の担当窓口まで確認してみましょう。
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介護タクシーの料金のシミュレーション
介護タクシーを利用した場合、実際どれくらいの料金がかかるのでしょうか?
ここでは実際の料金相場を例に、介護保険適用で介護タクシーを利用した場合のシミュレーションを行います。
相場は東京都・大阪府の地域を想定していますので、ぜひ参考にしてみてください。
前述の通り、介護タクシーの利用料金は「運賃+介助サービス費用+車いすなどのレンタル費用」で求めることができます。
それぞれの料金表は以下のようになっています。
【運賃】
初乗運賃(1,7kmまで) | 680円 |
5Kmまで | 1,800円 |
10Kmまで | 3,600円 |
【介助サービス費】
基本介助料(乗降時の介助・外出前後の着替えなど) | 118円(介護保険1割負担) |
院内・外出付き添い(オプションサービス) | 500円/15分 |
階段介助(オプションサービス) | 1,000円/1フロアごと |
【レンタル費用】
普通車いす | 無料 |
リクライニング車いす | 1,000円 |
ストレッチャー | 3,000円 |
特別な介助や器材を使用せずに、3km先の目的地に向かった場合
1,800(5kmまでの運賃)+118(基本介助料)+0(レンタル費用)=1,918
片道の料金は1,918円、往復の料金は3,866円で介護タクシーを利用できることになります。
階段介助と院内の付き添いをお願いし、5km先の目的地に向かった場合
1,800(5kmまでの運賃)+118(基本介助料)+500(院内付き添い)+1,000(階段介助)+0(レンタル費用)=3,418
片道の料金は、3,418円で介護タクシーを利用できることになります。
往復の料金は、院内の付き添いや階段介助の費用が発生しなければ、5,336円ほどで利用することができます。
ストレッチャーのレンタルと院内の付き添いをお願いし、9キロ先の目的地に向かった場合
3,600(10kmまでの運賃)+118(基本介助料)+500(院内付き添い)+3000(レンタル費用)=6,718
片道の料金は、6,718円で介護タクシーを利用できることになります。
ストレッチャーは乗降時に利用するため、往復で1回ずつ料金がかかります。
したがって往復の料金は、12,936円ほどとなります。
料金が高くなりやすい人の特徴
前項では、介護タクシー料金のシュミレーションを行いました。
シュミレーションの結果を踏まえて、料金が高くなりやすい人の特徴としては以下のような点が挙げられます。
- 院内の付き添いや階段介助を必要とする方
- ストレッチャーなどの機材をレンタルする方
- 目的地までの距離が長い方
介護タクシーは乗降時や外出前後の介助は提供してくれますが、院内や外出の付き添いなどは別途料金が発生するため注意が必要です。
ストレッチャーなどの機材をレンタルする場合も同じで、オプションとなっているサービスを必要とするほど料金は高くなる傾向にあると言えます。
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介護タクシーを探す際のポイント
介護タクシーの業者を探す際には、「どう選べばよいか分からない…」「なるべく料金を抑えたい…」とお悩みの人も多くいます。
本人も家族も安心して介護タクシーを利用できるよう、本項では介護タクシーを探す際のポイントについて解説します。
ケアマネージャーに相談する
何よりもおすすめしたいのはケアマネージャーに相談することです。
介護のプロフェッショナルであるケアマネージャーは、信頼のおける介護タクシー業者を紹介してくれたり、見積もりの値段が適正かなどのアドバイスをしてくれます。
自分で全てを調べるよりも、困ったときは気軽に相談してみると良いでしょう。
そのほか利用する業者を探す際には、以下のようなポイントを確認することが大切です。
- 車いすやストレッチャーなどの乗車時のスタイル
- 付き添いは運転手のみか、別に介護士は同乗するか
- どのような介助に対応しているか
- 医療機器のレンタルに対応しているか
- リストやスロープなどの車両設備
料金の見積もりをもらう
実際にどれくらいの料金がかかるのか確認するため、事前に見積もりをもらうようにしましょう。
介護タクシーでは、事業者によって運賃の計算方法が異なったり、介助の度合いによって追加料金が発生することがあります。
契約してみてから思わぬ料金が発生してしまうことのないように、必ず見積もりをお願いするようにしましょう。
費用項目の確認や追加料金となる項目の確認をしたうえで、さらに適正な価格どうかをケアマネジャーと相談してみることもおすすめです。
本人が利用したいかどうか
最後は、本人が利用したいと思うかです。
事業者を選ぶときは料金やサービス内容を気にしてしまいますが、利用する本人の意思も尊重しなければなりません。
介護保険が適用できる介護タクシーは、原則家族の同乗が認められていないため、通院の際などは基本的に本人と運転手は2人になることが多いです。
本人と運転手との関係性は、これから本人に心理的な影響を与えることもあるでしょう。
また利用者のなかには、運転手との会話が生活の楽しみになっているという方もいます。
長期間の付き合いになる可能性もあるため、本人と運転手の相性を考えることはもちろん、本人自身の気持ち大切にすることは忘れてはなりません。
まとめ
介護タクシーが高いと言われている理由は大きく分けて3つあります。
- 介護保険が適用されない場合があるから
- 料金の仕組みが複雑だから
- サービスの範囲が広いから
介護タクシーのサービス内容や料金について正しい知識を身に着ければ、料金が適正であるか分かり、安心してサービスを利用することができるでしょう。
利用にあたって悩んだり業者がうまく探せない場合は、気軽にケアマネージャーに相談してみることが大切です。
介護のプロフェッショナルであるケアマネージャーは、信頼のおける業者の紹介や利用の際の注意点など、さまざまなアドバイスをしてくれます。
不安や悩みを解消し、安心して介護タクシーを利用しましょう。
介護タクシーの料金は高いと言われる理由は、大きく分けて3つあります。①介護保険が適用されない場合があるから ②料金の仕組みが複雑だから ③サービスの範囲が広いから詳しくはこちらをご覧ください。
介護タクシーの利用料金は以下の3つの要素で構成されています。①運賃 ②介助サービス費用 ③車いすなどのレンタル費用詳しくはこちらをご覧ください。