アルコール性認知症のご家族から、毎日暴言を浴びせられたら、介護をするのが辛くなってしまうのではないでしょうか。できれば、穏やかに介護をしたいと思う方は少なくないでしょう。
なんとか暴言をやめさせたいと考える方は多いはずです。この記事では、アルコール性認知症の治療法や相談先についてご紹介します。
アルコール性認知症とは
アルコール性認知症とは、多量のアルコールを摂取し続けたのが原因とされる認知症です。 飲酒が原因となり、以下の二つの障害が起きた結果といえるでしょう。
- 脳出血・脳梗塞など「脳血管障害」
- ビタミンB1欠乏が要因の「栄養障害」
上記を踏まえ、ここではアルコール性認知症に関する以下の二つについてご紹介します 。
- アルコール性認知症は脳萎縮の可能性大
- アルコール性認知症のチェック方法
アルコール性認知症は早期発見が大切です。ぜひ参考にしてください。
アルコール性認知症は脳萎縮の可能性大
アルコール性認知症の原因は、アルコールの多量摂取と考えられています。また、アルコール依存症になると、脳萎縮が起きる割合が高いです。
アルコールによって脳が萎縮すると、アルコール性認知症になる危険性が高まるでしょう。さらに、アルコール性認知症になった方の中には 、ウェルニッケ・コルサコフ症候群と呼ばれる脳障害が見られるケースが多いです。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、ビタミンB1の不足により発症する脳障害です。特徴として以下のような障害が起こります。
- 眼球運動障害
- 筋肉の動きの随意協調運動障害(運動失調)
- 錯乱
上記の一部、またはすべての急性発症が見られるのが特徴です。
また、認知症の危険性を高める要因としては、以下の4つが考えられます。
- 脳血管障害
- 頭部外傷
- 肝硬変
- 糖尿病
認知症を発症したうえに、アルコールの多量摂取が加わると、アルコール性認知症のリスクはさらに高まるでしょう。
アルコール性認知症のチェック方法
アルコール性認知症は、自分で発症しているかどうかの判断は難しいでしょう。アルコール性認知症の診断としては、まずは認知症なのかを診断する必要があります。
病院や脳神経外科にて、MRI・CTなどの画像による検査や、一般的な身体検査を行い、これらの検査結果から認知症であるのかがわかります。さらに、アルコールの大量摂取が原因と認められればアルコール性認知症と診断されます。
認知症かと不安になったら早期に診断を受け、治療を開始するのが重要です。アルコール依存症は、時間が経つほどに重症化するため、早期発見が大切でしょう。
早期発見のためのチェックシートとして、現在世界中でWHO(世界保健機関)作成のチェックシートが使われています。自分やご家族のアルコール依存度の可能性を知るために、チェックシートを活用しましょう。
またアルコール性認知症の方でも入れる老人ホーム・介護施設をお探しの場合は、ケアスル介護への相談がおすすめです。
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アルコール性認知症はなぜ暴言が出る?
アルコール性認知症とわかっていても、暴言を浴びせられるのは精神的に辛く介護を続けるのが難しくなってしまいます。アルコール性認知症によって暴言が出るのはなぜでしょうか。
原因としては以下の三つが挙げられるでしょう。
- 感情をコントロールできないため
- 不安を感じて混乱したため
- 自尊心が傷ついたため
一つずつ解説していきます 。
感情をコントロールできないため
アルコール性認知症になると、脳の感情を司る部分がうまく働かず、感情のコントロールが難しくなり暴言や暴力に繋がります。人間には喜怒哀楽などの感情があり、通常は自分でコントロールできるでしょう。
普段なら怒りの感情があっても、そのまま表に出さず自分で抑えるものです。しかし、アルコール性認知症になると脳に障害が起きるため、抑制ができません。
暴力的な言動が出ても、本人の性格や意思とは無関係に起こっています。理解力の低下から不安・苛立ちなどを感じやすくなり、興奮状態の時に大声で注意されると、恐怖心からパニックになる場合があるでしょう。
感情が暴走してしまうと落ち着かせるのは困難となります。介護している方は、イライラしてしまうかも知れませんが、声を荒げると逆効果になってしまうため注意しましょう 。
不安を感じて混乱したため
暴言は、不安を感じ、混乱している時に出てくる場合があります。脳の機能低下によって、自分が自分ではなくなっていくような感覚に襲われ、不安を感じやすくなるからです。
例えば、認知症になり理解力が低下した状態になると、自分がいる場所がわからなくなり不安に繋がります。自分がどこに行くのかを忘れてしまい、強い不安に襲われて暴言や暴力に発展する可能性もあるでしょう。
認知症になると、現状やそのあとの行動を理解できたとしても、すぐに忘れてしまいます。アルコール性認知症の方は、常に不安な状態であるといえるでしょう。
自尊心が傷ついたため
アルコール性認知症の方は、自尊心が傷つけられるような場面で敏感に反応します。いくら本人を思って言った言葉であっても、自尊心が傷つけられたと感じれば暴言につながる場合があるでしょう。
自分が認知症であると分かっていなくても、自分の能力の低下を自覚している場合は多いです。そのため、試されるような言動や、のけ者・はれ物扱いをされると過敏に反応するでしょう。
心配して「大丈夫?」と声をかけただけで、自尊心を傷つけられたと捉える場合があります。感情が抑えられないために、暴言に繋がってしまうのです。
認知症の代表的な症状である「物取られ妄想」が見られたときには、否定しないようにしましょう。本人の中では現実なので、怒りの感情が湧き暴言に繋がってしまいます。
アルコール性認知症による暴言への対応策とは
アルコール性認知症による暴言へは、どのように対応したらよいのでしょうか。長い介護生活の中で、暴言が続けば介護者は精神的に参ってしまいます。
介護者を守るための具体的な対応は、以下の三つが挙げられるでしょう。
- 相手との距離をとる
- 心の距離をとる
- 周囲に相談する
一つずつ解説していきます。
相手との距離をとる
暴言が始まったら、無理に対処しようとせず相手との距離を取りましょう。興奮状態の時には、何を言っても相手の感情は収まりません。
暴言を吐かれ、イライラしたからといって強く言い返すのは厳禁です。自分が感情的になり、力で押さえつけようとしたり責めたりしても、状況は改善されないので少し離れてみるのが得策でしょう。
可能であれば、ほかの方に介護を代わってもらったり、介護サービスのショートステイなどをうまく利用したりしてください。お互いに傷つけ合わないために、まずは距離をとるのが効果的です。
心の距離をとる
相手から離れられたら、自分の感情を落ち着かせてください。離れていても感情が収まらないようなら、気分転換をしましょう。
暴言が認知症の症状であるとわかっていても、自分に向けた暴言が続けば深く傷ついてしまいます。無理して我慢し過ぎると、介護者自身の心身に不調をきたすケースもあるでしょう。
自分自身を守るためにも、意識的に息抜きの時間を取り入れるのが大切です。趣味を楽しんだり出かけたりするなど、一人でゆっくりする時間を取るようにしましょう。
介護は長期にわたるため、自分自身で上手に気分転換をできるようにしておくのが大切です。
周囲に相談する
暴言を言われて悩んでいるときは、一人で抱え込まず家族や親族、医師やケアマネジャーなど、周囲の方に相談しましょう。悩みや辛さを吐き出すだけでも、気持ちが楽になります。
ケアマネージャーや介護福祉士など、介護の専門家に相談をすれば暴言の原因が何なのか気付けるかも知れません。第三者に相談するのに抵抗がある・話し相手がいないなどの場合は、ノートに書き出すだけでもよいでしょう。
自分の感情をすべて書き出すと、頭の中が整理できるのでスッキリします。その時にあった事柄を書いておけば、記録にもなりあとで相談するときの資料ともなるでしょう。
そのほかアルコール性認知症へのケアを行っている介護施設に入居するのもひとつの手段です。
ケアスル介護では入居相談員が予算感や施設ごとに実施するサービス、立地情報などをしっかりと把握した上で、ご本人様に最適な施設をご紹介しています。
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アルコール性認知症を回復させる治療法とは
アルコール性認知症は、正しく治療すれば回復できる可能性があります。具体的な治療法には、以下のような方法があるでしょう。
- 断酒をする
- 薬を使って治療する
- 食事を工夫する
それぞれの治療法の内容について、詳しく解説します 。家族と協力しながら、治療を進めるようにしましょう。
断酒をする
アルコール性認知症を回復させる方法としては、断酒が最も有効でしょう。アルコールが原因となっているため、お酒を完全に断てるかが重要となります。
アルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症の合併がなければ、断酒によって症状を回復できる可能性があるでしょう。アルコールによって萎縮した脳は、お酒をやめて栄養を十分に摂れば戻る場合があるのです。
ただ、認知症はほかにも種類があり、アルコール性認知症以外の認知症を併発している場合は、症状の改善が難しくなるかも知れません。
薬を使って治療する
薬を使った治療は、アルコール依存症と同じような治療薬が処方されます。具体的に挙げられる薬は以下の二つです 。
- 抗酒薬
- 飲酒欲を抑える薬
抗酒薬は、お酒を飲むと気持ち悪くなります。飲酒欲を抑える薬は、アルコール分解を阻害し、 体内からなかなかアルコールが抜けません。
そのため、酔いやすくなり体がお酒を受け付けなくなる効果が期待できます。断酒が最も効果的ですが、アルコールは中毒性があるため本人の意思だけでの断酒は難しいでしょう。
そこで、薬を使用したコントロールが重要となります。
食事を工夫する
アルコール性認知症は、大量のアルコールにより脳の栄養不足が引き起こされ、発症します。そのため、アルコールによって失われてしまった脳に、必要な栄養を補うのが重要です。
具体的には、以下の栄養素が多く含まれる食材を摂るようにしましょう。
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンB12
- 葉酸
アルコールを断ったうえで、これらの栄養素をしっかり摂れば回復する可能性があります。うえに挙げた栄養素が多く含まれる食材は以下のようなものです。
- 豚肉
- レバー
- ほうれん草
- うなぎ
上記のような食材を、積極的に摂るようにしましょう 。
アルコール性認知症の相談先は?
アルコール性認知症になってしまった時の相談先にはどのようなところがあるのでしょうか。厚生労働省のホームページで紹介されているのは、以下の相談先です。
- 保健所
- 精神保健福祉センター
- 依存症対策全国センター
- 自助グループ
それぞれの相談先について解説していきます。
保健所
保健所は地域住民の健康を支えるための施設です。保健所には、地域住民へのサービス提供の仕組みづくりや健康危機管理の拠点となる役割があります。
保健所では多岐にわたって専門性の高い業務が行われており、具体的には以下のものが挙げられます。
- 難病や精神保健に関する相談
- 結核・感染症対策
- 薬事・食品衛生・環境衛生に関する監視指導
近年では、医療・教育・介護・福祉・警察など、さまざまな関係機関との連携も進みつつあります。精神疾患やこころの健康相談を、電話や窓口で受け付けていますので活用しましょう。
相談内容によって、関係機関や医療機関などを紹介してくれます。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、精神保健福祉法に基づき、各都道府県や政令指定都市に1ヵ所ずつ設置されている機関です。
各センターによりますが、医師や精神保健福祉士・臨床心理士など専門家が在籍しており、以下のような相談ができます 。
- 心の健康についての相談
- 精神科医療についての相談
- 社会復帰についての相談
- アルコール・薬物・ギャンブル依存症の家族の相談
- 思春期・青年期問題の相談
- 認知症高齢者についての相談
このほか、デイケア・家族会の運営など各種事業を行っているところもありますが、センターによって事業内容は異なるので注意が必要です。直接問い合わせをするか、ホームページなどで確認しましょう。
参照元:『全国精神保健福祉センター長会』
依存症対策全国センター
依存症対策全国センターは、ギャンブル・薬物・アルコールなどの依存症に特化して支援しています。ホームページでは、全国の相談窓口や医療機関を探せるほか、自助グループの紹介が可能です。
依存症はまわりにまで影響を与え、多くの家族は辛い思いをしています。依存症は、すべての精神疾患の中で最も治療ギャップが大きいのが特徴です。
治療の必要な方が、治療を受けていない割合が最も大きい事実があります。 横浜にある久里浜医療センターは、依存症全国拠点機関に指定されており、主な役割は以下のとおりです。
- 依存に関する医療機関や民間団体の連携の促進
- マンパワーの育成
- 情報発信
- 調査研究事業
上記のように、依存症における医療・研究・教育を提供しています。
参照元:『依存症対策全国センター』
自助グループ
自助グループとは、依存症患者本人、もしくは家族がお互いに悩みを語りあい支えあう会です。支えあいを通して、依存症患者、また家族関係はよい方向への変化が期待できます。
アルコール依存症の代表的な自助グループは、以下の二つです。
- アルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous)
- 断酒会
アルコホーリクス・アノニマスは、 通称AAと呼ばれ世界中に多数のグループと会員が存在します。日本には600以上のグループが存在し、メンバーの数は5700人以上と言われており、本名を名乗らずに参加できるのが特徴です。
断酒会は、AAの取り組みを参考にしつつ日本文化に合わせながら、独自の発展を遂げました。断酒会の取り組みもAAと似ていますが、大きな違いとしては自身の氏名を名乗る必要があるところです。
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アルコール性認知症の暴言は改善できる可能性がある
アルコール性認知症の暴言は、アルコール依存症と認知症の治療によって改善する可能性があります。 ただし、ほかの認知症を併発していると改善が見込めない場合もあるでしょう。
アルコール性認知症の暴言でお悩みの方は、まずは相談してみましょう。改善されれば穏やかな気持ちで介護ができるようになります。
まずは、お酒を買わない・家に置かないなどして、お酒と関わらないようにするのが大切です。そのうえで薬物治療や食事療法を取り入れてみましょう。家族だけでは対処できないと思ったら、早めに相談するようにしてください。詳しくはこちらをご覧ください。
アルコール性認知症は、アルコール依存症と認知症の治療を受けると改善が見込めます。ただし、ほかの認知症を併発していると改善が難しい場合もあるでしょう。まずは専門機関に相談し、診断してもらう必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。