老健(介護老人保健施設)とは、要介護1以上で在宅復帰が困難な方々に対して介護・医療、リハビリテーションを提供する施設です。
自治体や社会福祉法人からの補助によって、手厚いサポート体制ながら比較的安価な料金で利用できることが魅力だと言えます。
しかし入居後に状態が改善し、要介護1を下回る要支援に認定されてしまったらどうなるのでしょうか?
本記事では、老健の入所後に要支援になったらどうなるのか、要支援になって退所にならないための対処法などについて詳しく解説して行きます。

【この記事のまとめ】
- 老健の入所後に要支援になった場合には、基本的に退所をしなければならない
- 要支援の認定後は、数週間から数か月の猶予期間を経て退所となる
- 要介護度が下がったことが原因となり退所を促された場合は、要介護認定に異議申し立てをすることによって、退所を免れる可能性がある。
老健の入所後に要支援になったら原則として退所になる
老健の入所後に要支援になった場合には、基本的に退所をしなければなりません。
というのも、老健の入所条件は要介護1以上の高齢者と定めれられているためです。
加えて老健の本来の目的は、高齢者の身体状況を改善し在宅復帰を支援することであるため、症状が回復したのであれば原則として退所を促されると言えるでしょう。
とは言え要支援の認定を受けたら、その日からすぐに退所になるわけではありません。
具体的な日数は施設によって異なりますが、数週間から数か月の猶予期間を経て退所となります。
要支援の認定を受けて、退所の予定日が決まった方はこの猶予期間に今後どこで暮らすかを考えておきましょう。
退所までの猶予が足りない場合は?
やむを負えない事情で退所までの猶予期間が足りない場合は、まずは施設に相談してみましょう。
「退所予定日までに在宅介護の環境を整えることができない」「ほかの施設に転居するはずだったけど、手続きが終わらない」といった理由で、施設側が配慮して猶予期間を伸ばしてくれることがあります。
しかし施設の入居待ちの状況などによって、猶予期間を延ばせないこともあるでしょう。
そんな場合は一度退所扱いになったあと、ショートステイを活用してできる限り施設にとどまるという手段があります。
施設の状況にもよりますが、ショートステイの連続利用可能日数は要支援1の場合は6日、要支援2の場合は11日となっており、日数制限があるため注意しておきましょう。
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老健の入所後に要支援になったときに退所にならないための方法
老健入所後に要支援になった場合には原則として退所となりますが、要介護認定に異議申し立てをすることによって、退所を免れる可能性があります。
要介護認定に異議申し立てをする方法については、以下の2つがあります。
- 要介護認定の結果に不服申し立てを行う
- 区分変更申請を行う
それでは、1つずつ見ていきましょう。
要介護認定の結果に不服申し立てを行う
1つ目の方法は、不服申し立てを行い、要介護認定の結果の取り消しを要求することです。
要介護認定の結果に不満がある場合には、自治体の附属機関として設置され、要介護者等の保健、医療、福祉に関する学識経験者によって構成される介護保険審査会という機関に対して、不服申し立てをすることが可能です。
要介護認定の結果に不当な点がないかを審査したうえで、申し立てが妥当なものだと判断された場合は、要介護認定の結果を取り消し、改めて審査をやり直すことになります。
この再審査で要介護1以上の認定を受けることができれば、要介護1以上という老健の入所条件を満たすため、老健の退所を免れる可能性があります。
認定結果の取り消しの審査に加え、もう一度要介護認定の審査を行うため、時間がかかることを覚悟する必要があります
申請の前には、要介護度が下がったことが退所の要件だったのかを施設に詳しく確認しておきましょう。
区分変更申請を行う
認定結果に納得がいかない場合には、区分変更申請を行うのも1つの手となります。
区分変更申請は、本来は要介護認定後にご本人の状態が変わった場合に再調査を行ってもらうための手続きですが、認定結果に不満がある際にも利用されることがあります。
要支援の認定を受けてしまっても、区分変更申請を行い要介護度が要介護1以上へ変更されれば、退所を免れる可能性があります。
対応の1つとして区分変更申請を検討する際は、まずは入所している施設のケアマネジャーに相談してみるといいでしょう。
老健からの転居先になる施設の候補
老健を退所せざるを得ない場合に、転居の選択肢となる施設種別について紹介します。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サ高住
それぞれの施設について紹介していきます。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、民間企業が運営する介護施設です。
特養や老健、介護医療院と同様に、介護士による24時間の見守り体制のもと、食事や入浴、排せつなどの生活介助を受けることができます。
老健からの退所後も「まだ本人の身体状況が心配」と言う方も安心の環境と言えるでしょう。
また、介護付き有料老人ホームは建物が比較的新しく、夫婦でも暮らせる2人部屋を備えていたり、娯楽設備が充実した施設もあります。
しかし公的施設と比べると費用が高額となり、施設によっては入居一時金として数千万円から数億円、月額費用としては15〜30万円程度費用が掛かるケースも存在します。
内容も千差万別ですので、しっかりと確認することが大切です。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは有料老人ホーム全体の約4割を占めている施設※で、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないので基本的には食事サービスと緊急時の対応、レクリエーションの提供などをしています。
介護サービスの提供はないので、外部の介護事業者と個別に契約しますが、施設によって人員体制が異なるので場合によって介護付き有料老人ホームと同程度の体制を整えている施設もあります。
介護付き有料老人ホームと同じく民間企業が運営しているため、設備が充実していたり自由度の高い環境が備わっていたりと施設によってコンセプトや特徴が大きく異なることがあります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅とは、一般的な賃貸住宅に安否確認と生活相談サービスの併設されている施設です。
そのネーミングから老人ホームのような施設をイメージしがちですが、特定施設の認定をされているところ以外はごく一般的な賃貸住宅だと考えて問題ありません。
介護サービスが必要な場合は外部の介護事業者と個別に契約します。
老健で自立した生活が可能なほどに症状が回復した方であれば、安心の見守り体制のもと自分のペースで生活できるため良い選択肢となるでしょう。
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まとめ
老健の入所後に要支援になった場合には、基本的に退所をしなければなりません。
老健の入所条件は要介護1以上の高齢者と定めれられているほか、老健の本来の目的は、高齢者の身体状況を改善し在宅復帰を支援することであるためです。
症状が回復したのであれば原則として退所を促されると言えるでしょう。
退所を促される場合は、数週間から数か月の猶予期間を経て退所となるため、この期間中に今後どこで暮らすかを考えておきましょう