介護老人保健施設(老健)とは?特養との違いから費用、入所期間までをデータで解説
介護老人保健施設(老健)とは、在宅復帰を目的として医療・看護下における医療ケアやリハビリを受けられる公的介護施設です。
民間施設と比較して比較的安い費用で利用ができる一方で、3~6か月ごとに退所の判断がなされるなど終身に渡って利用できないなどの注意点もあります。
本記事では老健とはどんな施設か、入所条件、費用、メリット・デメリット、よくある質問まで徹底解説します。
介護老人保健施設(老健)とは

介護老人保健施設(老健)とは、要介護1~5の高齢者が「病院から退院することになったが、まだ自宅に戻って自立して生活するのは難しい」「自宅での生活が不安定になり、リハビリをして自宅での生活を立て直したい」といった場合に入居し、在宅復帰・在宅療養支援を目指すための介護施設です。長期入院が明けてから自宅に戻るまでの期間に利用されることが多い施設です。
老健は公的施設のため介護保険が適用されます。民間の介護付き有料老人ホームなどよりも安価に利用できるのが特徴です。
老健では常勤の医師を1名以上配置することが義務付けられています。夜間も急変などの緊急時に備え、呼ばれればいつでも対応できるよう医師が待機する「オンコール体制」が整っているのも特徴の一つです。看護師は夜間の常駐は義務付けられてはいませんが、最近では看護師も24時間常駐している施設も増えています。

【ケアスル 介護 独自調査レポート 2026】によると、老健について「なんとなく内容を知っている」と回答した人は17.8%ほどにとどまっており、全く知らない(43.9%)、名前だけ聞いたことがある(32.7%)を大きく下回っています。
つまり老健についてきちんと知っているという方はほとんどおらず、多くの方がひとつずつ理解をしながら施設を検討していることになります。
介護老人保健施設(老健)には5つの区分がある

平成30年の介護保険法改正によって、介護老人保健施設(老健)には「基本型」「加算型」「在宅強化型」「超強化型」「その他型」の5つの区分が設けられました。
老健をこの5つの区分に分ける際には、以下の10個の評価指標を用います。
- 在宅復帰率:過去6ヶ月の退所者のうち、在宅へ退所した者の割合
- ベッド回転率:過去6ヶ月の退所者数÷ベッド数
- 入所前後訪問指導割合:入所時に入所者・家族へ指導を行った割合
- 退所前後訪問指導割合:退所時に居宅を訪問し、退所後の生活を確認した割合
- 居宅サービスの実施数:訪問リハ、通所リハ、短期入所療養介護などの実施状況
- リハビリ専門職の配置割合:理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の常勤換算数
- 支援相談員の配置割合:社会福祉士などの配置割合
- 要介護4または5の割合:重度者の受け入れ割合
- 喀痰吸引の実施割合:喀痰吸引が必要な入所者への対応割合
- 経管栄養の実施割合:経管栄養が必要な入所者への対応割合
この評価指標に基づき、施設の運営状況などを評価し、総合評価によって、該当する区分が決まります。5つの区分の中でも「加算型」「在宅強化型」「超強化型」に該当するためには、より高い評価を獲得しなければ行けません。そのため、この3つの区分は、厚生労働省が定める高い基準をクリアしており、高い在宅復帰率が認められている施設であることが分かります。
入所条件
介護老人保健施設(老健)の施設サービス(入所)を利用するには、65歳以上の高齢者で要介護1以上の認定を受けている必要があります。中でも病状が比較的安定していて、伝染病などの疾患が無いといった条件を満たしている方が入所の対象です。
また、65歳以上でなくとも若年性認知症などの特定疾病によって要介護認定を受けている方であれば、40~64歳の方でも老健に入所できます。具体的には以下の特定疾病が認められている方は65歳未満でも入居可能です。
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る
- 関節リウマチ※
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(出典;厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」)
老健は認知症の診断を受けている方でも入所できます。中には、認知症ケア専門士の資格を持ったスタッフを配置し、認知症ケアに特化した介護サービスを提供している施設もあります。
老健の入所条件について詳しく知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。
サービス内容

介護老人保健施設(老健)ではリハビリだけではなく、医療や看護、栄養管理から日常生活介護まで幅広いサービスを受けられます。
介護老人保健施設(老健)の提供サービスについて詳しく知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。
費用
介護老人保健施設(老健)の1カ月あたりの費用の目安8~14万円です。老健は入居金などの初期費用はありません。公的制度で定められた、居住費、食費、介護保険サービスの自己負担額分、その他加算費用などがかかります。
老健の費用は、主に次の3つの費用で構成されます。
この3つの費用は本人の介護度、入居する居室タイプ、世帯所得および預貯金額によって異なる仕組みです。
介護サービスの自己負担額は入居者の要介護度に加え、入居する居室タイプ(個室タイプ・相部屋など)によっても異なります。
居住費・食費に関しては、「特定入所者介護サービス費」という費用の減免制度を利用できるます。本人を含む世帯の年収や預貯金の状況によって、第1段階、第2段階、第3段階(1)、第3段階(2)、第4段階(減免無し)の5段階で費用が定められています。
したがって、老健の費用は施設ごとに決まっているものではありません。本人の介護度や入居する居室、本人及び世帯の所得・預貯金によって、入所者ごとの費用が決定します。
費用シミュレーター
- 1ヶ月ご利用料金(30日を基準とした概算)
- 0円
- 1日あたり(①+②+③)
- 0円
- ①介護保険自己負担額
- 0円
- ②食費
- 0円
- ③居住費
- 0円
※ 1単位10円として計算しています。
※ 加算項目は含まれていません。
※ 日数や端数の処理によって誤差が出ることがございます。
※ 出典:厚生労働省「介護報酬の算定構造」「利用者負担の軽減について」
老健の費用について詳しく知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。
これから費用の安い老人ホームを探すという方はケアスル 介護がおすすめです。
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居室・生活設備

介護老人保健施設(老健)の居室は「従来型個室」「従来型多床室」「ユニット型個室」「ユニット型個室的多床室」の4タイプがあります。
老健の居室タイプは上の4タイプ存在しますが、多くの場合は従来型多床室となっているのが現状です。従来型多床室は相部屋ですので個室と比較するとプライバシーの確保が難しいですが、費用を抑えられるのが特徴です。
老健の居室タイプについて詳しく知りたいという方はこちらの記事もご覧ください。
人員体制
介護老人保健施設(老健)の人員体制は、他の介護施設と比較してリハビリ専門スタッフの体制が手厚いことが特徴です。
老健では介護・看護職員と入所者の割合が3:1で設置することが義務付けられています。中でも、同じ介護保険施設である特別養護老人ホーム(特養)と比較すると医師・看護師の割合が多いことが特徴です。
以下の表は、特別養護老人ホームとの人員体制を比較した表です。特別養護老人ホームと比較すると医師や看護師の割合が多いことがわかります。
※ 表内の人数は利用者100名に対する必要人員です
※1 リハビリ専門スタッフとは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれかの資格を持つものを示します
老健では介護士や看護師以外にも「介護士」「介護支援相談員」「支援相談員」「薬剤師」などの職種の配置が義務付けられており、非常に多様な職種のスタッフが配置されています。
老健と特養の違いとは
老健(介護老人保健施設)と特養(特別養護老人ホーム)は、どちらも公的な介護保険施設ですが、目的や役割、入所期間の考え方に大きな違いがあります。
老健は、病院を退院した後などに在宅復帰を目指してリハビリを行う「中間施設」として、生活を送りながら介護を受けるための施設です。
それぞれの施設の主な違いは以下の通りです。
※費用は所得や居室タイプ、介護度によって変動します。
老健・特養ともに公的施設であるため、有料老人ホームなどで必要になることがある入居一時金(初期費用)は不要です。ただし、老健は医療的ケアに必要な費用が利用料に含まれているため、特養よりも費用が高額になりやすい傾向があります。
介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホーム(特養)の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
老健はずっと入所できる?
結論からいうと、原則として老健に入所し続けることはできません。老健は、病院での治療を終えた方が自宅に戻るための「中間施設」としての役割を担っているためです。厚生労働省の調査※によると、実際の老健の平均入所期間は309.7(299.9)日、約9~10カ月となっています。そのため、多くの場合は1年以内に退所すると思っておくのが良いでしょう。(※出典:厚生労働省「介護老人保健施設」)
老健を退所した方が、その後どのような場所へ移動しているのかは以下のようになっています。
(出典:厚生労働省「介護老人保健施設」より独自に作成)
老健の本来の目的である「家庭」への復帰は、36.3%となっており、割合としては最も多いですがそこまで多くありません。症状の悪化などによる医療機関への移動も33.3%と多くなっていることから、最終的にどのような場所へたどり着くかは未知数です。
また、一定数の方が老健で亡くなっていますが、原則として老健は終の棲家にはなりません。例があるからといって、長期的な利用ができるとは限らないことに注意が必要です。
介護老人保健施設(老健)のメリット・デメリット
介護老人保健施設(老健)のメリット・デメリットについて解説します。
メリット
介護老人保健施設(老健)のメリットとしては以下の3つがあります。
- リハビリケアが充実している
- 民間の老人ホームと比較して費用が安い
- 医師・看護師が常駐している
まず最初に挙げられるのは、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士のいずれかが1名以上常駐しているので、リハビリケアが充実していることです。
また、老健は設立時に国が補助金を出して設立されている公的な施設です。そのため、民間企業が営利目的で経営している老人ホームと比較すると、費用が安いのもメリットとして挙げられます。
最後に、老健は医師・看護師が常駐してます。万が一のことがあってもすぐに医療・看護下での対応できる点もメリットの一つです。
デメリット
介護老人保健施設(老健)のデメリットとしては以下の2つが挙げられます。
- 入居期間が短い
- レクリエーションなどは少ない
最初に挙げるデメリットは、入居期間の短さです。在宅復帰可能と判断された場合は退所しなくてはならないため、長期間に渡って入所したいと考えている方には向かない施設と言えるでしょう。
次に、レクリエーションなどが充実しているわけではありません。他の介護施設と比較すると、日々の生活を楽しむことを目的としたイベントは少ない傾向にあります。
【口コミ】介護老人保健施設(老健)に入所した人の声
ここでは、実際に介護老人保健施設(老健)に入所した人の声を紹介します。
80代前半/女性/要介護2
スタッフの皆さん明るくて 当時の代表の方の考え方に感銘を受けた事を覚えています。
90代前半/女性/要介護2
細やかな気遣いがあったり、定期的に検診も受けさせてもらえるので、病気を早く見つけられる。不具合な時に病院へ連れて行ってくれる。
90代後半/女性/要介護2
本人が体調不良を訴えるとすぐに対応してくれたり、診療所と連携して治療をしてくれるので家族としてはありがたい限りです。
100歳以上/女性/要介護
アパート的な個室で生活しやすく、共有スペースは広く、清潔感もあり好感が持てたと思います。
70代前半/女性/要介護4
職員さんたちは親切で、家族にも色々日常生活を報告してくれた。入居者には、自分の親のように接してくれてありがたかった。
口コミの中には、医療体制が整っており、体調不良の際の安心感があったなど、老健ならではの声が多く見られました。さらに、施設職員の気配りや親切を褒める声も豊富で、老健に入所した方は安心して生活できていたことが分かります。
介護老人保健施設(老健)に入所する流れ

介護老人保健施設(老健)に入所するには、まず要介護認定の申請をします。認定を受ける方が住んでいる市区町村の役所窓口や地域包括支援センターで行います。入院などで本人が申請出来ない場合は、家族が代理で申請することも可能です。
次に、老健の入所申し込みを直接施設で行います。病院に入院している場合は、医療ソーシャルワーカーに、すでに在宅介護を受けている場合はケアマネージャーに相談し、申込先の老健を選定しましょう。
施設への申し込みが完了したら、施設の職員が入居者とその家族と面談を行い、現在の要介護度や心身状態、生活状況などを確認します。面談が完了したら必要書類を提出します。書類の内訳は、施設利用申込書、診療情報提供諸または健康診断書、病院や他の施設からの転院であれば看護サマリなどです。
提出された内容を吟味して施設側が入所の判断を下します。老健では、医療・看護下での医療ケアやリハビリが中心です。在宅復帰が難しい重度の医療的ケアが必要な方やリハビリなどの必要が無い方は、入所できないこともあります。
入所判定を受け入居できる場合は、施設側と契約し入居日を決めます。長期間にわたって入所する施設では、入居後に住民票を移すのが一般的です。老健の場合は短期入所が基本となっているため、住民票を移す必要はありません。
老健に入居する時の流れや住民票の扱いについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
介護老人保健施設(老健)のまとめ
介護老人保健施設(老健)は、要介護1以上の高齢者が在宅復帰を目指し、リハビリや医療ケアを受けるための公的施設です。医師や専門職による手厚いリハビリが特徴で、民間施設より費用を抑えられます。
ただし、終身利用はできず、3〜6ヶ月ごとに退所判定が行われる「中間施設」としての役割が強いため、長期間の入居には向きません。病院を退院した後、自宅へ戻るための準備期間として利用することも多いです。介護老人保健施設(老健)の特徴やメリット・デメリットをしっかり把握して、後悔しない施設選び・利用を行いましょう。