「親の要介護3の在宅介護が、もう無理かもしれない」と悩んでいる方は少なくありません。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)では、要介護3の方と同居する主な介護者の31.9%が「ほとんど終日」介護をしています。
要介護3は、特別養護老人ホーム(特養)の入所対象になる段階でもあります。
限界を迎えたときの対処法から順に、在宅介護が無理だと言える5つの理由と、続けた場合のリスクを解説します。
施設入居を親や兄弟に納得してもらう方法もあわせて紹介するので、今の介護を見直す材料にしてください。
要介護3の在宅介護で限界を迎えたときの対処法
要介護3の在宅介護で限界を迎えたときは、以下の4つの対処法を上から順に検討します。
- ショートステイで一度介護から離れる(レスパイトケア)
- 状態が悪化しているなら区分変更申請をする
- 使いきれていないサービス・助成制度を見直す
- 在宅サービスを使いきっても厳しいなら施設入居を検討する
ショートステイで一度介護から離れる(レスパイトケア)
限界を感じたら、まずショートステイで数日でも介護から離れ、心身を休めることを優先します。
レスパイトケアとは、介護する家族が一時的に介護から離れて休息をとるための支援のことです。
ショートステイは、要介護者が施設に短期間泊まり、入浴・排せつ・食事などの介護を受ける介護保険サービスです。
出典:介護保険法 第8条第9項・第10項
人気のある施設は予約が埋まりやすいため、限界を迎える前にケアマネジャーへ空き状況を確認してもらいます。
医療的なケアが必要な場合は、病院に短期間入院するレスパイト入院という選択肢もあります。

状態が悪化しているなら区分変更申請をする
介護の手間が明らかに増えているなら、認定の有効期間を待たずに区分変更申請ができます。
介護保険法第29条では、介護の必要の程度が変わったと認めるときに、市町村へ要介護状態区分の変更を申請できると定めています。
区分変更で負担が楽になるのは、介護保険で使えるサービスの上限が要介護度で決まっているためです。
状態が重くなっても認定が要介護3のままだと、上限が今の介護の量に合わず、足りない分を家族が補うことになります。
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」
要介護4に上がると、1か月に使える介護サービスが38,900円分増えます。
訪問介護の身体介護(30分以上1時間未満・387単位)に換算すると、1か月に約10回分です。
自己負担1割の方であれば、増えた分をすべて使っても負担の増加は1か月約3,900円です。
ヘルパーの訪問を週2回ほど増やせるため、家族が担っていた排泄や入浴の介助の一部を任せられます。
申請は市区町村の窓口で行うほか、ケアマネジャーのいる居宅介護支援事業者や地域包括支援センターに手続きを代わってもらえます。
使いきれていないサービス・助成制度を見直す
区分支給限度基準額に余裕がある場合は、サービスを追加すれば家族が介護する時間を減らせます。
今使っているサービスの量は、ケアマネジャーが作るケアプラン(居宅サービス計画)で確認できます。
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」、育児・介護休業法 第11条
介護休業は、休んでいる間に介護の体制を整えるための制度です。
家族が介護を担い続けるための休みではない点を押さえておくと、施設探しや手続きに時間を使えます。
それでも厳しいなら施設入居を検討する
在宅サービスを使いきっても限界なら、施設入居は本人と家族の両方を守るための現実的な選択肢です。
出典:介護保険法 第8条、介護保険法施行規則 第17条の9
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要介護3の在宅介護が無理な理由5つ
要介護3の在宅介護が無理だと感じるのは、介助が時間を選ばず何度も発生し、家族1人で担える量を超えやすいためです。
主な理由と、それぞれの大変さは以下の5つです。
- 排泄が全介助になり、昼夜問わず呼ばれる:予測できない介助が1日に何度も起き、毎回後始末まで続く
- 移乗介助で家族の体が壊れる:自力で立てない人の体重を、トイレのたびに家族が支える
- 夜間も目が離せず眠れない:夜中のトイレや昼夜逆転で、介護者がまとまった睡眠をとれない
- 限度額いっぱい使っても家族の負担が減らない:サービスが入るのは1日の一部で、残りの時間は家族が担う
- 要介護3は国も施設入居を認める段階:特養の入所対象になるほど、在宅での介護が重い状態
ケアスル 介護の独自調査でも、在宅介護で大変なこととして「精神的な負担」70.4%、「身体的な負担」66.1%が上位に挙がりました。

排泄が全介助になり、昼夜問わず呼ばれる
排泄介助の大変さは、時間を選ばずに1日に何度も発生し、毎回後始末まで家族が担うことです。
厚生労働省の集計では、要介護3の人の8割以上で、排尿・排便やズボンの着脱に何らかの低下が見られます。
出典:厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」(要介護状態区分別の状態像・平成26年度の認定データの集計)
排泄は本人も予測できず、介護者の都合に合わせて待ってもらうことができません。
トイレへの移動、ズボンの上げ下げ、拭き取りまでを、呼ばれるたびに手伝います。
間に合わずに汚れた場合は、着替えやシーツの交換、洗濯まで続きます。
夜中も同じように呼ばれるため、介護者は休む時間を確保しにくくなります。
本人が恥ずかしさから介助を嫌がることもあり、身体だけでなく気持ちの負担も重なります。
移乗介助で家族の体が壊れる
移乗介助とは、ベッドから車いす、車いすからトイレなどへ乗り移る動作を手伝うことです。
移乗介助が大変なのは、自分の足で体重を支えられない人の体を、家族が抱えて動かすためです。
厚生労働省の集計では、要介護3の人の8割以上で、起き上がり・立ち上がり・片足での立位に何らかの低下が見られます。
出典:厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」(要介護状態区分別の状態像・平成26年度の認定データの集計)
移乗は、起床・トイレ・食事・入浴・就寝と、生活の場面が変わるたびに発生します。
中腰で体をひねりながら相手の体重を支えるため、腰や膝に負担が集中します。
支えきれずに転倒させてしまうおそれもあり、毎回気を張った状態で介助することになります。
ケアスル 介護の独自調査でも、介護経験者の66.1%が「身体的な負担」を大変なこととして挙げています。
夜間も目が離せず眠れない
要介護3の在宅介護では、同居の主な介護者の31.9%が「ほとんど終日」介護をしています。
要介護2の17.0%と比べると、約2倍です。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
夜間のトイレ介助や、認知症による昼夜逆転が重なると、介護者はまとまった睡眠がとれなくなります。
睡眠不足が続くと、日中の仕事や家事にも影響が出ます。
限度額いっぱい使っても家族の負担が減らない
介護サービスを上限まで使っても家族の負担が減らないのは、サービスが入るのは1日のうちの限られた時間だけだからです。
残りの時間に起きる排泄や移乗の介助は、すべて家族が担います。
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」、厚生労働省「介護報酬の算定構造」
ヘルパーの訪問は時間を決めて入るため、予定外に起きる排泄や夜中の呼び出しには対応できません。
上限を超えたサービスは全額自己負担になるので、費用の面でもサービスを増やし続けることは難しくなります。
上限まで使っても介護の大部分が家族に残り、負担が軽くなった実感を持ちにくいのが現実です。
要介護3は国も施設入居を認める段階
特養の入所対象は、原則として要介護3以上と定められています。
出典:介護保険法施行規則 第17条の9・第17条の10
要介護3で施設入居を考えることは、家族の努力不足ではありません。
国の制度上も、要介護3は施設での介護が必要になりうる段階と位置づけられています。

要介護3の在宅介護を続けることのリスク
要介護3は、立ち上がりや歩行、排泄、着替えなどで介助が必要な人が8割を超える段階です。
この状態で在宅介護を無理に続けると、本人と家族の両方に以下の5つのリスクが生じます。
- 転倒や誤嚥で入院・寝たきりにつながる
- 身体介護と認知症対応で介護者が追い詰められる
- 介護離職で家計が立ち行かなくなる
- 介護負担の偏りで兄弟・家族関係が悪化する
- 特養の申し込みが遅れ、いざという時に入れない
出典:厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」(要介護状態区分別の状態像・平成26年度の認定データの集計)
転倒や誤嚥で入院・寝たきりにつながる
要介護3の人の8割以上は、立ち上がりや片足での立位、歩行に何らかの低下が見られます。
体を支える力が落ちているため、少しの段差やふらつきで転倒しやすい状態です。
在宅では、介護者が家事や仕事で目を離す時間を避けられません。
夜中に1人でトイレへ向かい、介護者が気づかないうちに転ぶこともあります。
高齢者が転倒して骨折すると、入院中に筋力が落ち、退院後に歩けなくなることがあります。
転倒が寝たきりのきっかけになり、要介護度がさらに上がるおそれがあるのがリスクです。
要介護3では、口の中を清潔に保つことにも8割以上の人に低下が見られます。
食べ物や唾液が誤って気管に入る誤嚥は、肺炎の原因になります。
身体介護と認知症対応で介護者が追い詰められる
要介護3の人の8割以上は、日常の意思決定や薬の内服、金銭の管理にも何らかの低下が見られます。
介護者は排泄や移乗といった身体の介助に加えて、本人に代わって判断し、管理する役割まで担います。
認知症の症状がある場合は、物忘れや昼夜逆転、介護への拒否への対応も重なります。
体を休める時間がないまま気を張り続けるため、身体と心の両方に負担がたまっていきます。
ケアスル 介護の独自調査では、介護経験者の70.4%が在宅介護で「精神的な負担」を感じていました。
介護者が体調を崩すと、その日から介護を担う人がいなくなり、要介護者の生活も立ち行かなくなります。
介護離職で家計が立ち行かなくなる
要介護3の在宅介護では介護の量が多く、仕事との両立が難しくなった末に退職を選ぶ人もいます。
辞めた後も介護は続くため、再び働く時間を確保できず、収入が途絶えたままになりやすいのがリスクです。
収入がなくなると、親の介護費用だけでなく、介護者自身の生活費や老後資金にも影響します。
親の年金や預貯金に頼る生活になり、介護が長引くほど家計の余裕がなくなっていきます。

介護負担の偏りで兄弟・家族関係が悪化する
在宅介護では、介護の中心を担う「主な介護者」が1人に決まりやすく、同居している家族に負担が集中します。
厚生労働省の調査では、主な介護者の45.9%が要介護者と同居している家族です。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」(要介護者等からみた主な介護者の続柄)
同居の家族は夜中の排泄や移乗まで毎日担う一方、離れて暮らす兄弟には介護の実態が見えにくくなります。
「たまに会うと元気そう」と受け止められ、大変さが伝わらないまま温度差が広がっていきます。
介護の時間だけでなく、介護費用の立て替えや、仕事を減らしたことによる収入の差も生まれます。
負担の差を埋められないまま介護が長引くと、不公平感が積み重なり、兄弟の関係が悪化するリスクがあります。
特養の申し込みが遅れ、いざという時に入れない
特養には、要介護3以上で入所を申し込んでいる方が全国に20.6万人います(2025年4月1日時点)。
そのうち8.6万人は、在宅で入所を待っている方です。
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和7年度)」
特養の入所は申込順ではありません。
介護の必要の程度や家族の状況をもとに、必要性が高い方から優先されます(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第7条)。
限界を迎えてから申し込むと、入所の順番が回ってくるまでの間も在宅介護を続けることになります。

要介護3の在宅介護で共倒れする前に施設入居を検討しよう
要介護3の在宅介護で限界を感じているなら、介護者が倒れる前に施設入居を検討することが大切です。
介護者が倒れると、要介護者の生活もその日から立ち行かなくなります。
ケアスル 介護の独自調査では、在宅介護をしている160名のうち36.9%が3年以内の施設入居を見込んでいます。
「半年以内」「1年以内」「3年以内には入居するだろう」と答えた人の合計です。
在宅介護をしている人の3人に1人以上が、数年のうちの施設入居を見込んでいることになります。
以下のような状態が続いている場合は、施設入居を考えるタイミングです。
- 介護者が夜間にまとまった睡眠をとれない日が続いている
- 介護者自身が体調を崩している、または通院している
- 仕事を辞めるかどうかを考え始めている
- 区分支給限度基準額まで介護サービスを使っても負担が減らない
同じ調査では、在宅介護を選んだ理由として「経済的に施設入居は難しいから」を13.1%が挙げていました。
特養などの介護保険施設には、特定入所者介護サービス費という制度があります(介護保険法第51条の3)。
所得に応じて、食費と居住費の負担が軽くなる仕組みです。
費用が理由で施設をあきらめる前に、使える制度と入居できる施設を確認してください。
ケアスル 介護では、全国約5万の施設から、入居相談員がご本人に合う施設を無料で提案しています。
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要介護3の親を施設入居させるための周囲の説得方法
施設入居に親や兄弟が納得しないときは、以下の3つの方法で説得します。
- 親本人には見学やショートステイから慣れてもらう
- 兄弟・親族には介護の負担と費用を見える化して共有する
- ケアマネジャーや医師など第三者から伝えてもらう
説得の相手によって、伝える内容と伝える人を変えるのがポイントです。
親本人には見学やショートステイから慣れてもらう
施設に入ることを嫌がる親には、いきなり入居の話をせず、見学やショートステイで施設の生活を体験してもらいます。
施設の雰囲気や職員の対応を実際に見ると、漠然とした不安が和らぎやすくなるからです。
入居を考えている施設でショートステイを利用しておくと、職員や生活の流れに慣れた状態で入居できます。
さらに、顔なじみの職員がいると環境の変化が小さくなり、入居をすんなり受け入れてもらいやすくなります。
出典:介護保険法 第8条第9項(短期入所生活介護)
ショートステイや体験入居の有無、費用は施設によって異なります。
見学の段階で、入居を考えている施設でショートステイや体験入居ができるかを確認しておきます。
兄弟・親族には介護の負担と費用を見える化して共有する
介護に関わっていない兄弟や親族には、介護の負担と費用を数字で共有すると、施設入居の必要性が伝わりやすくなります。
「大変だ」と言葉で伝えるだけでは、実際の負担の重さが伝わりません。
出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」
費用の記録は、レシートや領収書をまとめて月ごとに集計すると共有しやすくなります。
費用の分担を決めるときは、親の年金と預貯金で足りない分をどう分けるかから話し合います。
ケアマネジャーや医師など第三者から伝えてもらう
家族の言葉だけでは受け入れてもらえないときは、ケアマネジャーや主治医など第三者から施設入居をすすめてもらう方法があります。
専門職の立場から伝えてもらうと、親も兄弟も「家族のわがまま」ではないと受け止めやすくなります。
出典:介護保険法 第115条の46(地域包括支援センター)
第三者に伝えてもらう前に、家族が困っていることと施設に望むことを整理して共有しておきます。
要介護3の在宅介護をこれ以上無理せず続けるためにできる4つのこと
施設入居はまだ考えられないという方は、要介護3の在宅介護をこれ以上無理せず続けるために、以下の4つを試してください。
- 同じく介護で悩む人に相談する
- 主治医やケアマネジャーに相談する
- ケアプランを見直してみる
- ショートステイを利用する
いずれも、介護者が1人で抱え込まずに負担を分けるための方法です。
①同じく介護で悩む人に相談する
何よりも大切なのは、日々の介護のストレスを1人で抱え込まないことです。
「自分の親なのだから」と真面目で思いやりのある人ほど、一生懸命になりすぎて気づかないうちに気分が沈んでしまったり、悪くすると鬱の症状が出てしまう場合があります。
したがって、まずは同じく介護で悩む方々同士で悩み打ち明けてみることがおすすめです。
地域にある「介護者の会」など、介護に関する日ごろの悩みやストレスについて聞いたり話したりができる場があります。
同じく介護で悩む方との話から味方を得たような気持ちになれたり、ストレスとの向き合い方の参考になる場合も多いです。
対面で人と会うことが苦手な方は、インターネットのコミュニティサイトを利用するなどして悩みを話すことも重要だと言えるでしょう。
②主治医やケアマネジャーに相談する
主治医やケアマネジャーに相談することも、在宅介護へのストレス対処としておすすめです。
主治医は認知症の症状を抑える薬の量を増やしてもらったり、(増やすデメリットもあるため、よく相談しましょう)、ケアマネジャーは、よりご本人や介助者の状況に合ったサービスを紹介してくれたりと、相談することによって状況が改善することもあります。
介護の専門家である彼らは、技術的な相談や本人の症状に関する相談において、心強い味方となるでしょう。
③ケアプランを見直してみる
介護保険で利用できるサービスを活用し、ケアプランの見直しを行うことで、家族の負担を減らせます。
介護はあなた一人でやらないといけないものではありません。「要介護3以上の状態では在宅介護はもう無理…」と感じ始めたタイミングで、ケアプランを見直し、介護サービスの利用を検討してみてください。
- デイサービス
- デイケア
- 訪問サービス

④ショートステイを利用する
介護サービスの種類は様々です。
「在宅での介護は続けたいと思っているけど、自分の負担も減らしていきたい」という方は、ショートステイの利用を検討してみてください。
ショートステイは、介護施設に1泊から最大30日まで短期入所をすることができるサービスのことです。
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まとめ
要介護3の在宅介護は、同居の主な介護者の31.9%が「ほとんど終日」介護するほど負担が重い段階です。
「もう無理」と感じたら、限界を迎える前に以下の対処法を検討してください。
・ショートステイで一度介護から離れる
・状態が悪化しているなら区分変更申請をする
・使いきれていないサービス・助成制度を見直す
・在宅サービスを使いきっても厳しいなら施設入居を検討する
要介護3は特養の入所対象になる段階で、施設入居を考えることは家族の努力不足ではありません。
親や兄弟の説得に迷ったときは、介護の負担と費用を数字で共有し、ケアマネジャーなど第三者の力も借りてください。