老健のショートステイは、「短期入所療養介護」と呼ばれ、介護をする側の疲労軽減ケアや冠婚葬祭などで家を空ける必要が出た際などに看護や医学的管理のもと、介護やリハビリ、その他の必要な医療行為などを受けることができる宿泊型のサービスです。
ショートステイは最短1日から、最長30日まで利用することができます。費用は1日ごとに請求されることが多く、基本的に3,000円~5,000円で宿泊することできます。
この記事では、介護付き有料老人ホームのショートステイを利用する際の費用やサービス内容、申し込み方法などをわかりやすく解説します!

老健(介護老人保健施設)のショートステイの特徴
老健のショートステイでは、医師の配置が義務付けられていることに加え、看護師の配置も多い傾向にあるため、一般的な介護サービスに加え、専門的なリハビリや喀痰吸引、投薬といった医療行為などのサービスが充実しているという特徴があります。
また、認知症患者や重度の要介護者にも対応しているだけでなく、看取りケアの実施も可能になっているため、多くの場面で利用することができます。
利用期間については、1泊から最大30日間の宿泊が可能となっており、何か事情があった際には、利用期間の途中であっても切り上げることが可能です。
ただし、実際に利用できる期間については、施設側の空き状況などによって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
以下では、老健のショートステイの利用対象者や費用などについて、詳しく説明していきます。
サービス内容
老健のショートステイは、看護や医学管理のもと行われていることから医療面が充実しているという特徴を持ったサービスで、介護サービスはもちろん、集中的なリハビリや喀痰吸引、投薬といった医療行為などのサービスを受けることができます。
ショートステイの主なサービス内容は、以下の通りです。
- 病状の確認と服薬管理・インスリン注射・褥瘡処置などの医療ケア管理
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などよる機能回復訓練
- 日常生活上の食事の介助、身体状況に合わせた清潔ケア、排せつ介助などの介護
- ターミナルケア・終末期の対応と看取り
- 家族が葬儀等のの急用や体調不良などで急遽介護ができなくなった場合の受け入れ
これらのサービスについてはあくまでも一例であり、実際のサービス内容は、スタッフの人数や体制によって左右されるため、利用先の老健によって異なります。施設を選ぶ際には、事前に利用者に合ったサービス提供がなされているかチェックしておくと安心です。
利用対象者
老健のショートステイの利用対象者は、要介護1以上の認定を受けた方と定められています。
まだ要介護認定を受けていない方や、要支援の認定を受けた方は利用することができないため注意が必要です。
要介護認定が受けられるのは65歳以上の方、及び40歳~64歳であって特定疾病により介護が必要となった方に限られます。それぞれの介護の必要度に応じて要介護度が認定され、使えるサービスの種類や量が決まります。
介護保険のサービスはケアプランに基づいて提供される仕組みになっているため、老健のショートステイを利用したい場合も該当施設に直接申し込むのではなく、ケアプランを立案する担当ケアマネジャーを通じて手続きを進めるのが通例です。
居室タイプ
老健のショートステイを利用する際の居室タイプは、個室と多床室の2つがあります。
従来型個室は、一般的な個室の部屋であり1つの部屋を1人で利用することができます。多床室に比べると費用が高くなる傾向にありますが、個室ということでプライベートな空間を確保できるため、生活環境によるストレスは感じにくいでしょう。
多床室は、1つの部屋をカーテンなどで区切り、2~4人で共同利用する居室タイプです。病院の病室をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。多床室は、個室と比べ居住費が安く済むというメリットを持ちますが、他の利用者の方との共同利用することになるため、他の利用者の生活音が聞こえやすいなどのデメリットはあります。
快適に生活をしたいという方は個室タイプ、費用を安く抑えたいという方は多床室タイプの利用を検討するといいでしょう。
老健(介護老人保健施設)のショートステイにかかる費用
老健のショートステイの費用は、宿泊する居室タイプや要介護度によって異なりますが、自己負担額が1割の場合は、1日当たり約3,000円~5,000円の費用がかかります。
利用に際して必要な費用項目としては、以下の通りです。
- 短期入所療養介護費(介護保険適用)
- 居住費
- 食費
- 日用品代
- 娯楽費
これらの費用項目のうち、短期入所療養介護費には介護保険が適用されますが、それ以外の居住費や食費については介護保険が適用されず、全額自己負担となるため、注意が必要です。
ショートステイ利用時の費用例として、以下に居室タイプごとの1日当たりの利用費を表にまとめました。
【多床室の場合】※自己負担額1割を想定
要介護度 | 短期入所療養介護費 (1割負担) |
居住費 | 食費 | 日用品代 | 娯楽費 | 日額 |
---|---|---|---|---|---|---|
要介護1 | 875円 | 510円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 3,406円 |
要介護2 | 951円 | 510円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 3,482円 |
要介護3 | 1,014円 | 510円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 3,545円 |
要介護4 | 1,071円 | 510円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 3,602円 |
要介護5 | 1,129円 | 510円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 3,660円 |
出典:医療法人社団 相和会「ご利用料金」
【個室の場合】※自己負担額1割を想定
要介護度 | 短期入所療養介護費 (1割負担) |
居住費 | 食費 | 日用品代 | 娯楽費 | 日額 |
---|---|---|---|---|---|---|
要介護1 | 794円 | 1,885円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 4,700円 |
要介護2 | 867円 | 1,885円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 4,773円 |
要介護3 | 930円 | 1,885円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 4,836円 |
要介護4 | 988円 | 1,885円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 4,894円 |
要介護5 | 1,044円 | 1,885円 | 1,836円 | 62円 | 123円 | 4,950円 |
出典:医療法人社団 相和会「ご利用料金」
例えば、要介護1の方が個室タイプで、1週間のショートステイを利用した場合の費用は、32,900円となり、また利用期間の限度である30日間利用した場合の費用は、141,000円となります。
決して安い費用ではないため、費用を抑えたいという方は、多床室タイプの居室を選択するのも1つの手です。
老健のショートステイの利用を検討している方は、事前に利用日数や居室タイプについて決めておくと、大まかな費用について把握しやすいでしょう。
なお、世帯の収入や貯蓄額によって、食費と居住費の減額制度が適用になる可能性もあります。契約時には、利用料の見積もりを見ながら説明を受けられますので、費用について心配な方は、事前にしっかり確認をしておきましょう。食費や居住費の減額制度が適用になるかどうかも、施設の担当者に聞いてみるとより安心です。
老健(介護老人保健施設)でショートステイを利用する流れ
老健のショートステイを利用したい場合、以下のような流れになります。
- ケアマネジャーに相談
- ケアマネジャーが施設に確認・問い合わせを行う
- 施設を見学
- 必要書類の提出
- 契約
初回の利用開始までには時間がかかるため、特定の利用希望日がある場合は早めに利用手続きに取り掛かりましょう。
以下では、利用までの流れについて詳しく紹介していきます。
①ケアマネジャーに相談
老健のショートステイを利用する決断をしたら、まずは、担当のケアマネジャーに相談しましょう。
相談する際には、利用を希望する理由や利用日数、またサービス内容や居室タイプなどの施設に希望する条件を具体的に伝えることが重要です。
それに加え、認知症の症状が見られるなど、介護をするうえでの留意点なども伝えることで、ショートステイ利用時のトラブルを避けることができます。
②ケアマネジャーが施設に確認・問い合わせ
相談した後は、必要な医療ケアの提供ができる施設か、利用者や家族の要望に合っているかなどを検討し、ケアマネージャーが施設をピックアップします。
ケアマネジャーがピックアップした施設から、利用先の施設を選定しましょう。
③施設を見学する
候補先の施設から気になる施設が見つかった場合には、実際に施設の見学を行いましょう。
施設の見学に行くことで、施設の雰囲気や職員の対応など、インターネット検索や施設パンフレットでは判断が困難なことに関しても、直接確認することができます。
ショートステイの利用開始後に後悔しないためにも、施設の見学に行くことをおすすめします。
④施設に必要書類を提出する
利用先の施設を決定したら、必要書類を提出しましょう。
必要書類の1つである診療情報提供書は、主治医に作成してもらう必要があります。
診療情報提供書の作成後は、申込書などの必要書類とともに提出するようにしましょう。
⑤契約完了後にサービスが利用可能になる
必要書類を提出し、施設側が受け入れを承諾した場合に、利用者と施設で契約を結ぶことになります。
そして、利用開始日を調整した後、サービスの利用が開始されます。
老健(介護老人保健施設)のショートステイを利用する際の注意点
老健のショートステイを利用する際には、以下のような注意点があります。
- 1度の利用では最大で30日まで
- 老健の種類によって費用が異なる
- ショートステイの費用全てに介護保険が適用されるわけではない
- 満床で利用できないことがある
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1度の利用では最大30日まで
老健のショートステイは、1度の利用で最大30日までという制限が設けられています。
それ以上利用したい場合には、改めて申し込みをしなければなりません。
続けてショートステイを利用する場合には、31日目の費用を全額自己負担で利用しショートステイの算定期間(30日)をリセットするか、1度自宅に帰る必要があるため、把握しておきましょう。
老健(介護老人保健施設)の種類によって費用が異なる
老健には、「従来型老健」「在宅強化型老健」「介護療養型老健」の3種類があり、種類によってショートステイの費用が異なります。
従来型老健を一般的な老健とすると、在宅強化型老健と介護療養型老健はともに、より充実した医療行為やリハビリ、機能訓練などの提供をしている施設という位置付けになります。
ショートステイの費用については、従来型老健が1番安く、在宅強化型老健と介護療養型老健の2つには大きな違いは見られません。
老健のショートステイの利用を検討する場合には、利用したいサービス内容や予算などを考慮したうえで、利用先の老健を決定するようにしましょう。
ショートステイの費用全てに介護保険が適用されるわけではない
老健のショートステイ利用時の費用ですが、費用全てに介護保険が適用されるわけではありません。
具体的には、短期入所療養介護費にのみ介護保険が適用され、その他の居住費や食費には介護保険が適用されません。
ショートステイの利用を検討している人は、把握しておきましょう。
満床で利用できないことがある
老健のショートステイですが、施設側に空きがなく利用できないというケースも少なくありません。
ショートステイ先の老健(介護老人保健施設)を選ぶ時のポイント
ショートステイは宿泊をともなうため、長時間過ごす場所であり施設選びは大切です。利用者も家族も安心して利用するためにも、重要となる施設選びのポイントについて解説します。
施設を選ぶ際や施設見学の際に、チェックしておきましょう。
施設の立地はどうか
自宅からの距離や道路状況、緊急時に駆けつけやすいかなどの条件は大切です。よい施設であっても、到着まで時間がかかりすぎれば利用者にも家族にも負担になります。また、家族にとってショートステイは貴重なるリフレッシュの時間でもあるため、時間を有効に使うためにも重要なポイントです。近い場所、渋滞しにくい道路状況などを意識しておくとよいでしょう。
送迎を利用する場合、送迎の範囲に入っているかの確認も必要です。
利用者に合ったサービス内容か
利用する施設に関しては、ケアマネージャーがピックアップします。その際にまかせっきりにするのではなく、利用者に必要なケアが可能かどうかや、利用者や家族の希望に沿った施設かなどを確認してください。選んできてくれた施設だからと遠慮はせずに、生活の場となる施設は慎重に選びましょう。
認知症の進行具合や身体状況などの本人の状態はケアマネジャーを通して施設に伝わります。そのため、ケアマネジャーへの希望の提示や情報共有をしっかり行いましょう。本人に関する情報共有は施設のスタッフも介護をするうえで助かり、利用者の快適な生活にもつながります。
口コミに気になる情報はないか
ショートステイは、何度も利用する可能性が高いサービスです。ケアマネジャーからの情報だけでなく、実際の利用者からの口コミ情報も参考にするとよいでしょう。
口コミは、ネット上や実際の利用者の口コミ、またスタッフの口コミなども参考になります。口コミを鵜呑みにする必要はありませんが、参考にしておくと施設見学の際に見るべきポイントが押さえられます。
実際に見学して施設や職員の雰囲気はよいか
施設見学の際は、施設の設備などの他に、施設やスタッフの雰囲気にも注目しましょう。チェックポイントの例は以下のとおりです。
- スタッフの言葉遣いは適切か
- イライラした態度で利用者に接していないか
- 利用者とのコミュニケーション中、スタッフの表情はにこやかか
- スタッフは気持ちのよいあいさつをしているか
- 施設の清潔感や共用スペースの居心地はよいか
可能であれば、ショートステイの前にデイケアなどを利用するとよいでしょう。見学するよりも、施設の雰囲気やスタッフとの相性などがよくわかります。
ショートステイは、介護者のリフレッシュなどをはじめとしたさまざまな目的で利用されるサービスであるため、利用者からの需要が多く、人気のサービスとなっています。
そのため、施設によっては、ショートステイの予約が一杯で利用できないというケースもあります。
利用を検討している方は、なるべく早くケアマネジャーに相談し、利用申し込みをすることをおすすめします。
納得のいく施設選びで安心してショートステイを活用しよう
ショートステイの活用は、利用者のQOL向上や、家族の介護疲れの軽減などさまざまな面でプラスの役割を持っています。しかし、施設選びを怠った場合、利用者の必要とするサービス内容との不一致や精神的な負担になる可能性もあるため慎重な施設選びが大切です。
施設の立地やサービス内容、施設の雰囲気などを参考に、利用者と家族に合った施設選びをしましょう。また、利用するにあたって費用や利用に関する注意点がありますので、後悔しないようにチェックしてください。
利用者も家族も安心してショートステイを利用するために、本記事でご紹介した内容をぜひ参考にしてはいかがでしょうか。
介護保険を利用している場合、担当のケアマネージャーがいます。ショートステイを利用したい場合、ケアマネジャーへの相談が利用開始の第一歩です。その後、必要なサービス提供が行われる施設をピックアップしてくれるため、見学や面談へと進み利用開始となります。選んでくれた施設に納得できない場合は、再度選び直しをしてくれます。無理はせずに、利用者や家族に合った施設を選択しましょう。詳しくは、こちらをご覧ください。
ショートステイには、介護のみのショートステイ(短期入所生活介護)と、医療面のサポートも行うショートステイ(短期入所療養介護)の2種類があります。老健施設の場合は、医療面のケアも行うショートステイのため、内服管理やインスリン注射を行う方も問題なく利用できます。担当のケアマネジャーやかかりつけ医から情報提供が行われますので安心してご利用ください。詳しくは、こちらをご覧ください。