もし家族が末期がんになってしまったら、どんな場所を最期に選べばいいのでしょうか?
「最期くらいは自宅に帰りたい」と願う方は多く、最近は適切な処置が施せない末期患者や治療を望まない患者は、退院を求められる認める病院も多くあります。
しかし、末期がん患者の在宅介護は難しく、施設への入居を検討する方も多いでしょう。
では、末期がん患者の介護を行う施設にはどのような場所があるのでしょうか。
そこで本記事では、末期がんの方が入居できる療養施設の種類や選び方や、施設ごとの費用、退院勧告から入居までの60日間ロードマップもあわせてご紹介しています。

末期がんの療養施設における3つのタイプ
末期がんの方が入所を検討できる療養施設には、主に「緩和ケア病棟」「ホスピス型住宅」「特別養護老人ホーム」の3つの種類があります。
それぞれの特徴と向いている方の傾向を、以下の比較表にまとめました。
施設によって受けられるサービスや費用は大きく異なります。
本章では施設ごとの特徴について、専門家の意見とともに詳しく解説していきますので、どの施設が良いか選ぶ際の参考になれば幸いです。
緩和ケア病棟
緩和ケア病棟は、末期がんなどの病気からくる「心身の苦痛を和らげる治療などを行う病棟」です。
なお、緩和ケア病棟では全身の痛みや辛さを和らげる治療のみに留まり、治すための手術や治療は行われません。
緩和ケアそのものは入院ではなく通院のみでも受けられます。
・強い痛みや息苦しさなど、症状のコントロールを最優先したい方に向いています
・長期入所を前提とせず、自宅や住み慣れた環境で長く過ごしたい方には不向きな場合があります

ホスピス型住宅
ホスピスは病気を治すためではなく、心身的な苦痛を和らげ最期を穏やかに過ごすための治療を行う施設です。
日本では「緩和ケア病棟=ホスピス」として活用する場合もあります。緩和ケア病棟は、ホスピスと比べて医者や看護師といった医療専門職が多く配置されていることが多く、苦痛をともなう症状の緩和を目指します。
一方、ホスピスは看護師が常駐するほか、基本は介護士が多く配置されています。医師の常駐はなく、かかりつけ医が往診を行いながら緩和医療を実施することもあるほか、入院の期間に明確な決まりはありません。
なお、ホスピスへの入居希望者には特に条件はありません。病気による苦痛をやわらげ、穏やかに最期を過ごしたい方が対象です。
年齢や病気の種類、医療行為の有無で断られるケースはないものの、施設の空室状況や対応可能なスタッフの人数によっては充実した対応が困難と判断され、入居を断られる可能性がある点にご注意ください。
・病気の種類や年齢を問わず、穏やかな環境で最期を過ごしたい方に向いています
・医師の常時対応が必須となる複雑な医療管理が必要な方には、対応が難しい場合があります

特養
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の認定を受けた高齢者を対象とする公的な介護保険施設です。
民間施設と比べて安いことから人気があります。末期がんの方で療養を目的とした入所もできますが、要介護度3以上であることと必要な医療ケアによっては難しいケースがあるため注意してください。
特養では夜間の看護師配置が義務付けられておらず、医療的ケアの対応範囲と質は施設ごとに差があります。持続的な点滴や頻繁な痰の吸引、医療用麻薬を用いた痛みのコントロールなど、専門的な医療ケアが必要になる場合は安全確保の観点から施設側から受け入れを拒否される確率が高いです。人工呼吸器やIVHなど常時医療管理が必要な方にも不向きな場合があります。
特養での終末期医療について、業界のプロである菅原さんにお話を伺いました。

医療ケアが必要になる場合は、終末期医療に手厚いホスピス型の有料老人ホームを検討するのがおすすめです。
特養は待機者が非常に多く、申し込みから入居までに数年を要するケースがもあるため、急な退院勧告には対応できない可能性が高いです。

【状況別】末期がんの方に合う療養施設タイプ
末期がんの方に合う療養施設のタイプは、ご本人の状態や希望によって異なります。以下の表で近い状況を確認すると、候補を絞り込みやすくなります。
要介護3以上の認定を受けている方
要介護3以上の認定を受けている方は、特別養護老人ホーム(特養)が入所対象になります。
特養は要介護3以上の高齢者を対象とする公的な介護保険施設で、民間施設と比べて費用が安く、末期がんの方も療養目的で入所できる場合があります。ただし、夜間の看護師配置は義務付けられておらず、持続的な点滴や医療用麻薬による疼痛管理など、専門的な医療ケアが必要な場合は受け入れが難しいことがあります。要介護度に加えて、必要な医療ケアの内容を事前に施設へ確認しておきましょう。
余命が数週間で症状緩和を優先したい方
余命が数週間程度で、痛みや呼吸苦などの症状緩和を最優先したい方には、緩和ケア病棟が向いています。
緩和ケア病棟は、病気を治すための治療ではなく、心身の苦痛を和らげることを目的とした病棟です。医師や看護師など医療専門職が手厚く配置されており、症状のコントロールに特化したケアを受けられます。入院での利用が中心ですが、通院のみで緩和ケアを受けられる場合もあります。
抗がん剤治療を続けながら療養したい方
通院や入院で抗がん剤治療を続けながら療養したい方には、ホスピス型住宅など医療機関と連携できる施設が選択肢になります。
ホスピス型住宅は看護師が常駐し、かかりつけ医の往診を受けながら過ごせる施設です。医師が常駐しているわけではありませんが、治療方針や通院の頻度によっては外部の病院と連携しながら過ごせる施設もあります。治療の継続が可能かどうかは施設ごとに対応が異なるため、事前に確認してください。
自宅に近い環境で医療ケアを受けたい方
病院ではなく、自宅に近い環境で医療ケアを受けながら過ごしたい方には、ホスピス型住宅が選択肢になります。
ホスピス型住宅は民間運営の施設で、年齢や病気の種類による入居制限が基本的にない点が特徴です。住宅のような環境で、看護師の常駐や往診を受けながら過ごせます。ただし、施設の空室状況や対応可能なスタッフの人数によっては、希望する時期に入居できない場合がある点に注意してください。
認知症があり介護保険サービスを利用中の方
認知症があり、すでに介護保険サービスを利用している方は、特別養護老人ホームなど介護保険施設が候補になります。
特養をはじめとする介護保険施設は要介護認定を受けていることが前提となるため、すでに介護保険サービスを利用している場合は手続きが進めやすい傾向があります。ただし、医療的ケアの内容によっては受け入れが難しいこともあるため、担当のケアマネジャーに相談しながら候補を絞り込むとよいでしょう。
医療費を抑え高額療養費制度を使いたい方
医療費の自己負担を抑えたい方は、高額療養費制度の対象になるかどうかを確認しておくと安心です。
高額療養費制度は、1か月にかかった医療費の自己負担額が、所得に応じた自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される公的制度です。緩和ケア病棟など医療保険が適用される治療が主な対象になります。一方、特養など介護保険施設の利用料には「高額介護サービス費」という別の自己負担軽減制度があります。
詳しくは全国健康保険協会(協会けんぽ)や介護サービス情報公表システム(厚生労働省)もあわせてご確認ください。
【専門家解説】末期がんの方の療養施設を探すときのチェックポイント
元看護師であり、様々な介護施設で高齢者ケアに携わってきた菅原さんによると、末期がんの方の療養施設を探すときのチェックポイントは以下の通りです。
- 事前に詳細な「医療情報」のすり合わせを行う
- 都合の悪い情報も隠さず正直に伝える
- 「人員配置」が適切かを見極める
- 施設見学では必ず「清掃状況」を見る
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
事前に詳細な「医療情報」のすり合わせを行う
末期がんの方は退院までの猶予が短く、焦って施設を決めてしまいがちです。
しかし、入居後に必要な医療ケアへ対応できるかどうかは、入居前の情報共有の精度で大きく変わります。
菅原さんによると、「まずはどのような医療ケアが必要なのか(なりそうなのか)を施設とすり合わせることが重要」としています。

具体的には、現在受けている医療処置(点滴・酸素投与・疼痛管理の方法など)を一覧にまとめ、病院の看護師や訪問看護師に相談しながら準備すると、施設側との面談がスムーズになります。
書面にして共有しておけば、担当者が変わっても情報が引き継がれやすくなるというメリットもあります。
都合の悪い情報も隠さず正直に伝える
入居を急ぐあまり、認知症の症状や医療的な制限を伏せて申し込むケースは少なくありません。
しかし、事実と異なる情報での入居は、後々のトラブルにつながりやすい点に注意が必要です。

特に大声・徘徊・介護拒否などの行動は、施設側の人員体制や部屋の配置に直結するため、事前に共有しておくことで受け入れ後のミスマッチを防ぎやすくなるでしょう。
「人員配置」が適切かを見極める
医療・介護ニーズの高い方を受け入れる施設ほど、実際のスタッフ体制の確認が重要になります。公表されている人員配置基準を満たしていても、実際の勤務体制は施設ごとに差があるため注意してください。

見学や問い合わせの際は、夜間の看護師・介護士の人数や急変時の対応フローまで具体的に確認すると、実態に近い体制を把握しやすくなります。
施設見学では必ず「清掃状況」を見る
パンフレットや説明だけでは分からない情報こそ、施設見学で確認すべきポイントです。清掃の行き届き具合は、日々のケアやスタッフの余裕を映す指標です。

ピッタリの施設を提案します
ピッタリの施設を提案します
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末期がん療養施設を選ぶときの質問リスト
施設を見学・問い合わせる際は、パンフレットだけでは分からない点を直接質問すると、入居後のミスマッチを防ぎやすくなります。以下の4つの観点から質問を準備しておきましょう。
医療体制について聞く質問
・夜間の看護師・介護士の配置人数は?
・点滴や酸素投与など、現在受けている医療処置に対応できるか?
・痛みが強くなった際の疼痛管理はどこまで対応できるか?
・提携している医療機関・訪問診療医はどこか?
末期がんの方の受け入れでは、医療対応の範囲を具体的に確認することが特に重要です。「対応できます」という回答だけでなく、実際の人員体制や連携先の医療機関まで踏み込んで質問すると、入居後のミスマッチを防ぎやすくなります。
費用について聞く質問
・入居一時金と月額費用の内訳は?
・医療処置やおむつ代など、追加でかかる費用はあるか?
・退去時に返金される費用はあるか?
・高額療養費制度や高額介護サービス費は利用できるか?
月額費用だけでなく、追加費用の有無まで確認しておくと、入居後に想定外の出費が発生するのを防げます。公的制度が利用できるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。
看取り・急変時対応について聞く質問
・施設内での看取りに対応しているか?
・容体が急変した場合、どのような連絡・搬送体制があるか?
・家族が付き添える時間や宿泊の可否は?
末期がんの方の療養施設選びでは、看取りへの対応方針を事前に確認しておくことが欠かせません。施設によって方針が大きく異なるため、具体的な体制まで確認しておくと安心です。
生活・契約について聞く質問
・持ち込める私物や生活用品の範囲は?
・面会時間やルールはどうなっているか?
・契約解除・退去時の条件は?
入居後の生活に関わるルールは、契約前に書面で確認することが大切です。口頭での説明だけでなく、重要事項説明書などの書類でも同じ内容が明記されているかを確認しましょう。
末期がんで入れる療養施設の費用
ケアスル 介護で掲載中の「がん・末期がん対応の施設」4,054件(※2026年3月現在)から、初期費用・月額費用の中央値をご紹介します。
がんや末期がんの方を受け入れる場合は専門的なケアが必要となります。そのため、基本的には末期がんの療養に対応していない施設全体と比べると、初期費用はより高くなる傾向にあります。
「ケアスル 介護」の掲載施設における、がん・末期がん対応の施設全体の費用は、初期費用が198,000円、月額210,000円、施設全体では、初期費用が156,000円・月額費用が181,360円となりました。
ただし、施設内での手厚いケアが強みの「介護付き有料老人ホーム」では初期費用が1,000,000円(全体相場100,000円)、月額費用が250,840円(全体相場144,000円)と大幅に高額になっています。
なお、外部の訪問サービスなどを利用することが多い「住宅型有料老人ホーム」では初期費用が135,000円(全体相場1,200,000円)、月額費用が151,760円(全体相場244,380円)と逆に大きく抑えられるなど、施設種別ごとでは料金体系が大きく異なります。
老人ホームの費用について、詳しくは以下の記事もご覧ください。

ピッタリの施設を提案します
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末期がんの方が療養施設に入居するまでのロードマップ
本章では、退院を促されたタイミング(退院勧告)を起点にして、いつまでにどのようなことをしておくと良いかご紹介します。
なお、退院して療養施設を探す場合、通常は90日ほどの猶予があります。
退院勧告〜14日目:条件の整理・相談窓口への連絡
退院勧告から14日以内に希望条件を整理しておくと、療養施設を探すときにスムーズです。
病院から退院を勧められたら、まずは焦らずに現状の把握と希望の整理から始めましょう。すべてをご自身やご家族だけで抱え込む必要はありません。専門家を頼ることが第一歩です。
そして、月々に支払える費用の予算や希望するエリア、痛みの緩和ケアなどどのような医療処置が必要か、そして最期まで看取ってもらえるかといった、譲れない条件をメモなどに書き出してみます。
予算について、弊社のケアアドバイザーである前北に話を聞きました。

施設の種類や違いが分からなくても問題ありません。ある程度条件が固まってきたら、病院にいる医療ソーシャルワーカーや地域の地域包括支援センター、担当のケアマネジャーに相談し、希望や予算を伝えて条件に合った施設の候補をピックアップしてもらいましょう。
また、この段階で高額療養費制度などの公的制度が使えるかどうかも確認しておくと安心です。
退院勧告〜30日目:見学・面談・施設決めを進める
候補となる療養施設がいくつか見つかったら、実際に足を運んで見学を行います。インターネットやパンフレットの情報だけでは分からない実際の空気感を確かめるためにも、2~3施設は見学してみるとよいでしょう。
施設では、スタッフの挨拶や入居者への接し方が丁寧か、清掃は行き届いているか、食事や雰囲気はどうかなどを細かく確認します。特に末期がんなど医療的ケアが必要な場合は、夜間に痛みが強くなった場合の対応や急変時の体制、医師や看護師の訪問頻度を直接質問しておきましょう。
見学で感じた印象や費用、医療体制などを総合的に比較し、ご本人とご家族が最も安心できる「終の棲家」を一つに絞り込んでいきます。
退院勧告〜45日目:申し込み・入居審査・契約手続きをする
入居したい施設が決まったら、手続きのフェーズに入ります。病院や施設とのやり取りが増えるため、スケジュールに余裕を持って進めることが大切です。
まずは施設へ入居の申し込みを行い、同時に現在の病院の主治医へ診療情報提供書(紹介状)や看護サマリーの作成をお願いしておきます。提出した書類をもとに、施設側で安全にケアできる状態かの確認が行われ、必要に応じて施設の担当者が病院を訪れてご本人のお身体の状態を確認する事前面談が実施されることもあります。
確認が終わり、双方が問題なければ契約となります。入居一時金や月額費用の詳細、追加でかかる可能性のある費用(おむつ代など)、退去時の規定など、重要事項をしっかり確認した上でサインをしましょう。
退院勧告〜60日目:退院手続き・療養施設へ入居する
いよいよ病院を退院し、新しい療養施設での生活がスタートします。ご本人のお身体の負担にならないよう、移動の準備を万全に整えるようにしましょう。
病院での退院手続きと医療費の精算を済ませ、施設へ持ち込む衣類や日用品などを準備します。施設によって持ち込めるものが異なるため、事前の確認が不可欠です。また、ご本人の体調に合わせて介護タクシーや民間救急を手配しておけば、ストレッチャーや車椅子のまま安全に施設まで移動できます。
施設に到着後は、施設のスタッフやこれからお世話になる訪問診療医と今後のケアに関する打ち合わせを行います。ご本人が新しい環境でも安心して心穏やかに過ごせるよう、ご家族と施設がしっかりと連携して日々の生活を支えていくことが大切です。
まとめ
末期がんの宣告と退院勧告は、家族にとって大きな精神的負担となります。しかし、適切な手順と専門家のサポートを活用することで、患者本人が穏やかに過ごせる最良の療養施設を見つけることが可能です。
「ケアスル 介護」の相談窓口では、豊富な施設データとプロの知見に基づき、ご家族の施設探しを全面的にサポートします。一人で抱え込まず、まずは無料相談をご利用ください。