• 認知症
  • 【公開日】2024-04-16
  • 【更新日】2024-04-16

認知症ケアを支える人材育成に向けて必要なこと

認知症ケアを支える人材育成に向けて必要なこと

認知症の人を支える「人」の育成に向けて必要なことについて、お話させていただきます。

新井 恵子 教授
静岡福祉大学 社会福祉学部 健康福祉学科
介護福祉士/教員
日本介護福祉教育学会 日本認知症ケア学会
介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士。介護福祉士養成施設を卒業後、介護老人保健施設の介護職(9年間)や訪問介護のサービス提供責任者を経験し、多くの認知症の人とかかわった。
現在は介護福祉士養成に従事する。

現在、福祉や医療を担う専門職を対象とした認知症の人に対する研修は多くありますが、ここでは、専門職ではない地域住民を対象とした、認知症ケアを支える人の育成についてお話したいと思います。

一昨年から、認知症サポーター養成講座で学んだ認知症の人への声かけの方法を実践し、ポイントを押さえた声かけの方法を習得することを目的とした模擬訓練を開催しています。

認知症サポーター養成講座において、認知症の原因や症状について学ぶことにより、認知症や認知症の人の理解が深まり、認知症の人を支える意識が高まります。そこで、模擬訓練を開催し、認知症サポーター養成講座で学んだ認知症の人へのポイントを押さえた声かけの方法を実践し、習得します。また、模擬訓練を開催することにより、地域で見守り・声かけを行うことの重要性を理解し、地域で支え合う仕組みを考えることにつなげます。

認知症の人の行方が分からなくなったと想定し、認知症役の人が市内(商店街)を歩き回る間に、みまもりあいアプリを用いて情報伝達を行い、情報を得た市民(参加者)が認知症役の人を探し、声をかけ、ご家族役に電話を掛けます。電話を掛け終わったところで、認知症役の人からサンクスカードを受け取ります。

参加者は、模擬訓練の振り返りとして、模擬訓練の内容を検討し認知症の人を地域でどのように見守り、支え合っていくのか、地域における仕組みを考えます。

これまで3回実施しましたが、声かけのポイントは理解していても、街中で声をかける難しさを経験したことにより、認知症に関する理解の深まりや、認知症の人を支える意識の高まりを感じることができ、また、地域で見守り・声かけを行うことの重要性など、地域で支え合う仕組みを考えることが必要といった意見が聞かれました。

1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」では、第1条目的において

「この法律は、我が国における急速な高齢化の進展に伴い認知症である者(以下「認知症の人」という。)が増加している現状等に鑑み、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症に関する施策(以下「認知症施策」という。)に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにし、及び認知症施策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、認知症施策の基本となる事項を定めること等により、認知症施策を総合的かつ計画的に推進し、もって認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(以下「共生社会」という。)の実現を推進することを目的とする。」

認知症の人の講演会を聴講した際に、後方に座られている人が「認知症になると何も分からなくなるんだよね」と話している言葉が聞こえました。

第14条と16条には次のようなことも挙げられています。

第14条 認知症の人に関する国民の理解の増進等

国及び地方公共団体は、国民が、共生社会の実現を推進するために必要な認知症の関する正しい知識および認知症の人に関する正しい理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における認知症に関する教育の推進、認知症の人に関する正しい理解を深めるための運動の展開その他の必要な施策を講ずるものとする。」

第16条 認知症の人の社会参加の機会の確保等

国及び地方公共団体は、認知症の人が生きがいや希望を持って暮らすことができるように、認知症の人が自らの認知症に係る経験等を共有することができる機会の確保、認知症の人の社会参加の機会の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。」

認知症の知識と認知症の人に関する正しい理解を深めるために、学校教育はもちろんのこと社会教育の推進等が求められています。第16条の1では、認知症の人が自身の認知症にかかわる経験を語ることなど、社会参加の機会の確保するよう求められています。

これまでも認知症施策はありましたが、この基本法により、認知症にかかわる人だけでなくすべての人が認知症を知るきっかけとなり、正しい知識を身につける場に足を運んでいただく機会になるのではないかと思います。

認知症ケアを支える人材育成に向けて必要なこと

・知ること:正しい知識を得る

・聞くこと:認知症の人から経験を聞く

地域で開催される講演会や公開講座、認知症サポーター養成講座、Dカフェ等へ参加することで、誤解や偏見なく正しい知識を得たり認知症の人の経験を聞くことができます。

認知症は誰もがなりうるものです。認知症の人やその家族が住みやすい地域のために、認知症の人を支える人として地域住民の理解が必要となります。認知症があってもなくても、誰もが安心して生活できる地域をともに作ることが、人材育成に向けて必要なことではないかと思います。

【参考・引用文献】
・共生社会の実現を推進するための認知症基本法
・厚生労働省 認知症サポーター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html(最終閲覧日2024年4月14日)
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