家族が医師から「緩和ケア」や「ホスピス」をすすめられたとき、2つの言葉がどう違うのか分からず戸惑う方は少なくありません。
緩和ケアは病気と診断されたときから始まる医療全体を指し、ホスピスはそのうち終末期に行うケアと、ケアを受ける場所の両方を指します。
この記事では、ケア内容・行われる場所・入居条件・費用の4点に分けて2つの違いを整理します。
【一覧表】ホスピスと緩和ケアの違い
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」、日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケア病棟入院料の施設基準」
ホスピスとは?
ホスピスとは、終末期に苦痛を和らげるケアそのものと、ケアを受ける場所の両方を指す言葉です。
緩和ケアとの違いは、受ける段階にあります。
ホスピスケアを受けるのは、手術や薬物療法、放射線治療といった病気を治すための治療を終えた方、または治療を受けない選択をした方です。
・ケア内容:痛みや息苦しさを抑える症状のコントロール、日常生活の支援、家族への支援
・ケアの目的:最期まで希望どおりに生きること
・受ける段階:病気を治す治療を終えた段階から
・場所①:緩和ケア病棟(病院の病棟。全国476施設・9,860床)
・場所②:住宅型ホスピス(住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅)
・場所③:在宅(訪問診療と訪問看護を組み合わせて自宅で受ける)
ただし、ホスピスケアを受ける場所によっては、特定の病気でないと受け入れていません。
とくに緩和ケア病棟は対象が3区分に限られるため、住宅型ホスピスと緩和ケア病棟における入居条件の違いの章で条件を確認してください。
緩和ケアとは?
緩和ケアとは、病気による心と体のつらさを和らげ、生活の質を保つための医療です。
診断された直後から、治療と並行して受けられます。
ホスピスケアは、緩和ケアのうち終末期に行うものにあたります。
2つは対立する選択肢ではなく、緩和ケアという大きな枠のなかにホスピスケアが含まれる関係です。
違いが出るのは、ケアの中身ではなく目標の置き方です。
緩和ケアが主な目標に置くのは、つらさをコントロールしてできる限り普段どおりに生活することです。
ホスピスが主な目標に置くのは、最期まで希望どおりに生きることです。
・ケア内容:身体・精神・社会・スピリチュアルの4つの苦痛への対応
・ケアの目的:つらさを和らげ、できる限り普段どおりに生活すること
・受ける段階:診断された直後から終末期まで
・場所①:外来(通院しながら治療を続ける段階)
・場所②:一般病棟(手術や薬物療法で入院中の段階)
・場所③:緩和ケア病棟・住宅型ホスピス・在宅(治療を終えた段階=ホスピスケア)
出典:厚生労働省「緩和ケア」、国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」
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ホスピスと緩和ケアで行われるケア内容の違い
行われるケアの中身は、次の2点で異なります。
- ホスピスのケア内容:症状のコントロール、日常生活の支援、家族への支援の3つが柱になる
- 緩和ケアのケア内容:上の3つに加えて、治療の副作用への対応と、仕事・収入・医療費の相談が加わる
どちらも痛みを抑えるケアは共通しており、治療を続けているかどうかで内容の幅が変わります。
ホスピスのケア内容
ホスピスで行われるのは、病気を治すための治療ではなく、残された時間を穏やかに過ごすためのケアです。
大きく3つの柱に分かれます。
症状のコントロール、日常生活の支援、そして家族への支援です。
緩和ケアのケア内容
緩和ケアで行われるのは、治療を続けながら4つの苦痛を和らげるケアです。
身体・精神・社会・スピリチュアルの4つに分けて考えます。
仕事や収入の悩みに医療ソーシャルワーカーが対応する点も、緩和ケアが終末期ケアと異なる大きな特徴です。
ホスピスと緩和ケアが行われる場所の違い
緩和ケアは診断時から終末期までを通して受けるものなので、治療がどの段階にあるかでケアを受ける場所が変わります。
- ホスピスケアが行える施設:緩和ケア病棟、住宅型ホスピス、在宅の3つ
- 緩和ケアが行える施設:治療中は外来と一般病棟、治療を終えた段階では上の3つ
緩和ケアが受けられる場所のほうが広く、そのうち終末期に使う場所がホスピスケアの場になります。
ホスピスケアが行える施設
ホスピスケアを受けられる場所は、緩和ケア病棟・住宅型ホスピス・在宅の3つです。
緩和ケア病棟は病院の病棟で、医師と看護師が24時間常駐します。
住宅型ホスピスは住まいの扱いになるため、入居の手続きは老人ホームと同じ流れです。
在宅は、訪問診療と訪問看護を組み合わせて住み慣れた家で受けます。
住宅型ホスピスを含む老人ホームの種類は、次の記事で整理しています。

緩和ケアが行える施設
緩和ケアは、治療の段階によって受ける場所が移っていきます。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」、日本ホスピス緩和ケア協会「緩和ケア病棟入院料の施設基準」
治療を続けている間の緩和ケアは、主に一般病棟の緩和ケアチームや緩和ケア外来が担います。
通院中であれば担当の医師や看護師から受けられ、入院中であれば緩和ケアチームが治療と並行して支援します。
治療を終える段階になると、場所は緩和ケア病棟・住宅型ホスピス・在宅へ移ります。
多くの緩和ケア病棟は、薬物療法など病気そのものを治す治療を終えていること、または希望しないことを入院の目安にしています。
ただし、どこまでの治療を認めるかは病院ごとに異なります。
緩和ケア病棟は終末期の方が中心ですが、入れば最期までそこで過ごすとは限りません。
つらさが和らげば退院して自宅に帰る方もいます。
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住宅型ホスピスと緩和ケア病棟における入居条件の違い
緩和ケア病棟も住宅型ホスピスも、どちらもホスピスケアを受ける方が対象です。
同じホスピスケアの場でも、入るための条件と窓口は大きく異なります。
- 住宅型ホスピスの入居条件:施設へ直接申し込み、受け入れ可能な医療処置で可否が決まる
- 緩和ケア病棟の入院条件:主治医の紹介状と病院の面談が必要で、対象の病気が限られる
住宅型ホスピスの入居条件
住宅型ホスピスは住まいの扱いになるため、入居の可否は施設の医療体制で決まります。
病気の種類で一律に線が引かれていないため、末期がん以外の神経難病や慢性心不全の方も受け入れている施設があります。
一方で、医療用麻薬の管理や人工呼吸器への対応は施設ごとに差が出ます。
・年齢要件:原則65歳以上(特定疾病に該当すれば40歳以上で入居できる施設もある)
・介護認定:要支援・要介護の認定を求める施設が多い
・医療処置:医療用麻薬、点滴、人工呼吸器、吸引などへの対応可否
・看取り:居室で最期まで過ごせるか、提携医療機関はどこか
・申し込み:施設へ直接申し込むか、入居相談窓口を使う
・費用:入居一時金の有無と月額の内訳
緩和ケア病棟の入院条件
緩和ケア病棟は病院の病棟であるため、入院には主治医の紹介状と面談が必要です。
入院できるのは、末期がん・後天性免疫不全症候群・終末期の末期腎不全の3つの病状に当てはまる方のみです。
心不全や認知症だけを理由に入院することはできません。
多くの病院では、本人と家族が病名と病状を理解していることも条件に挙げています。
全国の病床数は9,860床にとどまるため、申し込みから入院まで待機期間が生じる地域があります。
・主治医に相談し、診療情報提供書(紹介状)を用意する
・病院の相談窓口へ連絡し、面談日を予約する
・本人と家族が面談を受け、病状と治療方針を確認する
・3つの病状に当てはまるか、病院の医師が入院の適応を判定する
・登録後、病床が空くまで待機する
・症状が落ち着けば退院し、在宅療養へ戻る場合もある
入院の条件と流れは、次の記事でさらに詳しく整理しています。

ホスピスと緩和ケア病棟における費用の違い
ホスピスケアを受ける場所によって、費用の仕組みは3つに分かれます。
- 住宅型ホスピス:家賃・管理費・食費は全額自己負担で、介護サービス費だけが介護保険の対象
- 緩和ケア病棟:医療保険で1〜3割負担となり、高額療養費制度でひと月の上限が決まる
- 在宅:医療保険と介護保険に分かれ、上限がそれぞれ別に適用される
食費と差額ベッド代は、どの場所でも高額療養費制度の対象外になります。
住宅型ホスピスにかかる費用
住宅型ホスピスは、家賃・管理費・食費が全額自己負担になります。
介護保険が使えるのは訪問介護などのサービス費だけで、住まいにかかる費用は保険の対象外です。
入居一時金を求める施設もあるため、月額だけで比べると総額を見誤ります。
月額費用は地域や居室の広さで大きく変わります。
下のシミュレーターで、住宅型有料老人ホームの費用の目安を確認できます。
費用シミュレーター
- 入居金
- ???万円
- 月額費用
- ???万円
老人ホーム全体の費用相場
- 入居金
- ???万円
- 月額費用
- ???万円
緩和ケア病棟にかかる費用
緩和ケア病棟の自己負担は、高額療養費制度の上限までに収まります。
入院料には検査や投薬の費用が含まれるため、医療費が上限を超えて膨らむ心配はありません。
住民税非課税世帯(70歳以上)の上限は25,700円、一定所得以下の70歳以上は15,700円です。
負担が読みにくいのは、上限の対象外になる食費と差額ベッド代です。
個室を選ぶと月額の負担が大きく変わるため、入院前に部屋の種類を確認してください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、厚生労働省「健康保険及び国民健康保険の食事療養標準負担額」
在宅でホスピスケアを受ける場合の費用
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 医科診療報酬点数表 C001・C002」、厚生労働省「介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料」
※医療費の点数・高額療養費の上限額・食費の負担額は、執筆時点(2026年9月)の情報です。
費用の内訳はさらに詳しく整理しています。

ホスピスと緩和ケアに適した人
どちらのケアに当てはまるかは、治療をどの段階まで進めたかで決まります。
- ホスピスケアに適した人:病気を治す治療を終えた、または受けない選択をした方
- 緩和ケアに適した人:診断された直後から終末期まで、つらさを抱えているすべての方
そのうえで、どこでケアを受けるかを体制と家族の状況から選びます。
ホスピスケアに適した人
ホスピスケアは、治療より症状の緩和を優先する段階に入った方に向いています。
そのなかで、緩和ケア病棟・住宅型ホスピス・在宅のどこを選ぶかは、症状の重さと家族が介護を担えるかで変わります。
・病気を治す治療を終えた、または受けない方針を主治医と確認している
・痛みや息苦しさを抑えることを最優先にしたい
・最期まで希望どおりに過ごすことを大事にしたい
【そのなかで緩和ケア病棟が向いている方】
・症状が強く、医師と看護師が24時間常駐する体制が必要
・末期がん、後天性免疫不全症候群、終末期の末期腎不全のいずれかに当てはまる
【そのなかで住宅型ホスピスが向いている方】
・症状は落ち着いているが、自宅での介護を続けられない事情がある
・個室で長く過ごし、看取りまで同じ場所にいたい
【そのなかで在宅が向いている方】
・住み慣れた家で過ごしたい
・家族が日中の見守りを担える、または訪問サービスで補える
緩和ケアに適した人
緩和ケアは、診断された直後の方から終末期の方まで幅広く対象になります。
痛みを我慢して治療を続けるより、早い段階で緩和ケア外来へ相談するほうが生活の質を保てます。
・治療によるつらさや診断直後の不安を抱えている
・仕事や医療費の悩みを相談する相手がほしい
・家族の負担についても一緒に考えてほしい
【そのなかで外来が向いている方】
・通院しながら治療を続けており、生活を変えたくない
・薬物療法の副作用を抑えながら仕事を続けたい
【そのなかで一般病棟が向いている方】
・手術や薬物療法で入院しており、治療と並行して症状を抑えたい
【そのなかで緩和ケア病棟が向いている方】
・治療を終える段階になり、症状の緩和に専念したい
・つらさが和らげば退院して自宅に戻る選択肢も残しておきたい
ホスピスと緩和ケアの違いに関するまとめ
ホスピスと緩和ケアの違いは、ケアの目的と受ける段階にあります。
2つは対立する選択肢ではありません。
診断時から緩和ケアを受け、治療を終える段階でホスピスケアに移るという流れで考えると整理しやすくなります。
そのうえで検討するのが、ホスピスケアをどこで受けるかです。
緩和ケア病棟は全国9,860床と限られており、住宅型ホスピスのほうが選択肢は多くなります。
ケアスル 介護では、医療体制や看取り対応の条件から入居先を探せます。
入居相談員が家族の状況を聞き取り、条件に合う施設を提案します。
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