「最近、親の物忘れが増えた」「日付や時間がわからない」そんな行動や言動があったら、まず初めに認知症を疑う方が多いのではないでしょうか。
不安で胸がいっぱいになるかもしれませんが、まずは病院受診をご検討ください。早期発見で、正しい治療を受けられる可能性があります。
この記事では、認知症の初期症状にはどのようなものがあるのか、認知症を疑ったときはどう対応するのかを解説しています。併せて、認知症の方との向き合い方についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
認知症の初期症状で多いのはどれ?
認知症は、本人も周囲も気づきにくい傾向があります。例え、もの忘れが増えてきたとしても「年をとったから」で終わらせているケースも少なくありません。
周囲の気づきが、認知症の早期発見、早期治療につながります。
そこで、次のような症状がないか、確認してみましょう。
- 同じことを何度も話したり尋ねたりする
- 話がかみ合わない
- 言葉が出づらくなっている
- 新しいことが覚えられないようになった
- いつも何か探し物をしている
- 慣れた手順や道にも迷うようになった
- 日付や時間があやふやになっている
- 身だしなみに気を遣わなくなった
- 趣味活動もやらなくなった
- 怒りっぽくなった
何らかの異変を感じていたり、複数当てはまったりするようであれば、なるべく早めに病院で受診してください。例え当てはまるものが一つだとしても、起こる回数があまりにも多いと認知症かもしれません。
認知症にも種類があり、それぞれ症状が異なります。そこで、三大認知症と言われる、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症に焦点を当て、それぞれの初期症状を解説します。
アルツハイマー型認知症の初期症状
アルツハイマー型認知症は、認知症疾患者の中で最も多いといわれています。
アルツハイマー型認知症の初期症状で、代表的なものがもの忘れです。
もの忘れは誰にでも起こりうるため、本人も周囲も「最近もの忘れが多い」と気づきながらも、さほど深刻に考えない場合が多くあります。
アルツハイマー型認知症は、進行には個人差があるものの、ゆっくりと症状が進みます。認知症が進行していくにつれて、物忘れの度合いや頻度が多くなり、周囲も違和感を感じ始めるでしょう。つい先ほどしていた行為も記憶の中から丸ごと抜け落ちてしまうため、日常生活が困難になっていきます。そこで初めて病院を受診するケースも珍しくありません。
認知症による「もの忘れ」と年齢による「もの忘れ」は次のような違いがあります。
認知症の「もの忘れ」 | 年齢による「もの忘れ」 | |
忘れる範囲 | 出来事を丸ごと忘れてしまう。 | 何となく記憶にあり、ヒントによって思い出せることが多い。 |
忘れる内容 | つい先ほど、自分がしたことを忘れる。 | 自分の頭にある知識が思い出せない。 |
記憶障害の進み具合 | ゆっくりと少しずつ進行していく。 | 急激に悪くなることはない。 |
本人の自覚度合い | 自覚なし。 | 自覚あり。 |
判断力 | 周囲が異変として捉えるぐらい低下する。 | 急激な低下はない。 |
高齢になってからのもの忘れは「年だから」と軽く考えずに、認知症を意識することが大切です。
脳血管性認知症の初期症状
脳血管性認知症は脳の血管が破れたり、詰まったりする脳卒中による脳神経細胞の壊死が原因といわれています。
ほかの認知症は、脳の機能全体が低下するのに比べ、脳血管性認知症は、損傷した部位の機能は低下しても、損傷していない部分は変わらず機能します。
そのため、できる行為とできない行為の差が激しいのも、特徴の1つとして挙げられるでしょう。ほかにも、次のような症状がみられます。
- 手順通りに物事を進められない
- 排尿障害
- 気分が落ち込み意欲をなくす
- 感情をうまく調節できない
ほかの認知症は初期の段階では、もの忘れが顕著です。しかし、脳血管性認知症は、計画したことの実行が困難となる実行機能障害が目立つ傾向にあります。
脳血管性認知症は、ほかの認知症と比べ判断力は低下しにくい傾向があります。そのため、自分の状態に絶望してしまい、抑うつになってしまう場合も少なくありません。
脳血管性認知症は、症状が一気に進んだかと思えば一定期間は症状が落ち着き、一時的な改善さえ見られる場合があります。脳卒中が起きるたびに進行していくため、進行速度の度合いは、個人差がとても大きいのです。脳卒中の予防により、症状の進行を抑えられます。
レビー小体型認知症の初期症状
レビー小体型認知症の初期症状では、理解力の低下が大きく目立つことはありません。
次のような症状がみられます。
- 夢をみているときに奇声をあげたり、怒ったりする
- 見えないものが見える
- 手足の震えや動きが鈍くなる
- 立ちくらみ
- 便秘
特に、見えないものが見える幻視が強く現れやすいです。手足の動きが鈍くなるのは、パーキンソン症状です。初期のうちからよくみられますが、中期になるとパーキンソン症状が強くなる傾向にあります。
また、時間帯や日によって認知機能の変動があり、進行が進むにつれて症状がでる時間帯が長くなっていきます。そのうち、歩行やコミュニケーションが難しくなっていくのです。
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認知症の初期症状だと思った時にするべき2つの対応
認知症の初期症状だと気づいたときにとるべき対応は、次の2つです。
- 認知症検査を受ける
- 認知症であれば治療を行う
どれだけ早く気づき、行動するかによって、進行度合いが変わってきます。なるべく早い段階から治療を始めることが大切です。
まずは、かかりつけの病院に相談しましょう。適切な病院の紹介を受けられ、紹介先にも正確に病状を伝えてもらえるため、スムーズな受診が可能です。
認知症検査とはどのようなものか、どのように治療を進めていくのかをお伝えします。
認知症検査を受ける
認知症の検査には、生活を共にする家族や一番身近にいる方が付き添っていきます。付き添われる方は、事前に次のような内容をメモして持っていきましょう。
- 持病や病歴、現在飲んでいる薬。
- 異変に気づいたのはいつか、またどのような症状で気づいたか
- 共に生活している家族は、どのような症状に困っているのか
- 本人が日常生活で困難となっていること
検査は次のような流れです。
まずは付き添いの方とともに「問診」を受けます。
日頃の状態や病歴など本人の記憶力や理解力なども見ながら、医師が状態を確認していきます。
そのあとに「一般検査」です。
尿検査や血液検査をしますが、血液検査は身体の変化をみるためであり、アルツハイマー型認知症を検査するMCIスクリーニング検査(実費)ではありません。
次に「身体診察」により、発語や聴力、歩行状態などの運動機能を調べます。
続いてCTやMRIなどの「画像診断」を行い、脳の血管の状態や萎縮の度合い、活動の状態を見ます。
「心理検査や知能検査」で、終了です。
心理検査や知能検査の多くは、医師がいくつか質問をしたものに回答するような形で行われます。
認知症であれば治療を行う
記憶障害や言語障害、実行機能障害などの症状やこれらから引き起こされる二次的な症状には、薬物治療が一定の効果をもたらすとわかっています。ただし、副作用が出る場合もあるため、リハビリなど薬物以外から始める場合も少なくはありません。
特に、軽度の認知症の場合、運動やコミュニケーション、創作活動などによって進行を抑える方針で治療を始めるケースは多くあります。絵や俳句など、感情を形にする芸術治療や昔のできごとに触れる回想治療などにより、心の安定や脳への刺激を与えられます。本人の好きな活動や趣味などを行うのも、認知症の進行緩和や予防に効果的です。
もし、本人の好きなものがあるのなら取り入れてみてはいかがでしょうか。医師と相談しながら、取り入れる薬やそれ以外の予防法を活用し、少しでも進行を抑えていきましょう。
検査を受けるように説得するのが難しい場合
本人も自分自身に少なからず異変を感じている場合があります。病院を意識しながらも、いざ「認知症の検査にいこう」などと言われると、抵抗を感じる場合があります。
もしも、かかりつけの病院があれば、通常の検査に加えて、簡単な認知症の検査をしてもらえるよう、事前にお願いしましょう。かかりつけの医師から説明を受け、病院を紹介してもらうと受診しやすくなります。
また、地域包括支援センターなど、外部のサポートも受けられます。認知症の症状かもしれないと思ったら、一度相談に行ってみてもよいかもしれません。地域包括支援センターでは、役立つ制度や受けられるサポートの紹介も行なっており、認知症の診断が降りてからも不安や疑問があれば気軽に相談に行きましょう。
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認知症の初期症状は生活習慣病も関係している
認知症と生活習慣病は、深く関わりがあります。
例えば、高血圧や脂質異常症は、脳血管性認知症に影響を及ぼす脳卒中を引き起こす確率が高くなります。
糖尿病はアルツハイマーの危険因子です。アルツハイマーはアミロイドβとタウたんぱく質の異常蓄積が関係しています。糖尿病による脳内のインスリン欠乏がタウたんぱく質をリン酸化させ、認知機能障害を引き起こすのです。
アルツハイマーだと思っていたら、実は前頭側頭葉変性症であったケースも少なくありません。2つとも似たような症状があるだけではなく、糖尿病の危険因子と同じ、タウたんぱく質の異常リン酸化が影響を及ぼしています。
糖尿病などの生活習慣病の予防は、認知症予防にもつながります。食生活の改善や睡眠時間の確保、適度な運動をして、生活習慣を整えましょう。
認知症の初期症状は性格の変化でも判断できる
認知症になると、感情のコントロールを担う前頭葉が萎縮してしまう場合も多く、まるで人が変わったような言動をする場合があります。一時的なものなのか、認知症によるものか、初期の段階では気づきづらいのではないでしょうか。
例えば、次のような人格の変化があります。
- 怒りっぽくなった。
- 頑固になった。
- わがままになった。
- 人のせいばかりにするようになった。
- 人付き合いをしなくなった。
普段の性格が真逆であれば、すぐに気づけますが「普段からよくある」で済まされる場合もあります。
例え、普段と変わらないようでも「いつも利用している道で迷う」「暴力や暴言が頻繁にでるようになった」「何もしないことが増えた」など、いつもと違う行動がみられるのであれば、早めに、かかりつけの病院などに相談してください。
認知症になった方は自分が認知症だとわかるか
認知症を自分で自覚できる方はあまり多くはありません。記憶障害により、行動や出来事自体を忘れてしまうため、自分の行動や変化を自覚できない方が多いです。
しかし、本人から「頭がおかしくなった」などと訴えてくる場合も少なからずあります。自覚がある場合、日常生活の中でできていた行為がうまくできず、不安を抱えています。心のケアや適切なサポートが必要です。もし訴えがあった場合は、本人の不安に寄り添い、安心できるような声かけを行いましょう。
例え、自身の変化を自覚できたとしても、認知症である可能性から目を背けたくなる方も少なくはありません。周囲がそれとなく認知症の検査を受けるように仕向けてあげることが大切です。
認知症になったとわかるタイミングとは
本人が認知症を自覚するタイミングとして、以下のようなものが挙げられます。
- 約束を覚えていられなくなった
- 毎回「その話聞いた」と言われる
- 日付や時間がわからなくなった
- 今までできていた行為ができなくなった
「頭がおかしくなった」と自ら家族に伝える方もいるでしょう。しかし、自覚している場合、家族に伝えるまでに強い葛藤と不安を抱えてしまいます。その結果、抑うつなどの精神的な不調につながる可能性も少なくありません。
また、自分の異変に気づいたとしても「ただ疲れているだけ」「年だからしょうがない」と自分を納得させ、気づいたら進行しているケースもあります。
物忘れなどの症状と同時に、何か思い悩んでいる場合は、自身の変化に気がつきショックを受けているのかもしれません。早めに受診するよう促しましょう。
「老人ホームに入居したいけど、どこまでの介護サービスや医療行為が必要になるか分からない」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
ケアスル介護では、入居相談員が施設ごとに実施するサービスや立地情報などをしっかりと把握した上で、ご本人様に最適な施設をご紹介しています。
「身体状況に最適なサービスを受けながら、安心して暮らせる施設を選びたい」という方は、まずは無料相談からご利用ください。
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認知症の初期症状だった場合どう向き合うべきか
家族が認知症になったとき、不安や疑問でいっぱいになり、思い悩む方もいるのではないでしょうか。しかし、心配する必要はありません。認知症の診断をされたとき、まずは、地域包括支援センターへ相談しにいきましょう。相談費用は無料です。さまざまな専門知識をもった職員が在中し、市町村独自の制度なども紹介してもらえます。
介護に対する情報を得たら、家族会議を行いましょう。介護で一番大切なのは、本人の意思を尊重することです。本人の意思を踏まえ、どのように対応していくのか、家族で話し合いましょう。一人に押し付けたり、孤独な介護をさせたりしないように支え合うことが大切です。
遠方に住む家族が認知症!認知症初期集中支援チームの出番!
「久しぶりに実家に帰省したら、両親の様子がおかしい。近くに親族はおらず、自分は遠方に住んでいる。どうしたらよいのか」
このようなケースは少なくありません。まず、異変に気付いた時点で、ぜひ相談してもらいたいのが市町村にある地域包括支援センターです。地域包括支援センターの中には、認知症疾患者と家族を支援する認知症初期集中チームが配置されています。
認知症初期集中支援チームとは、医療や介護の専門知識を持つメンバーで認知症が疑われる方、認知症の方、その家族をサポートするチームです。本人の既往歴や生活のようす、本人や家族の困りごとなどを確認し、住み慣れた地域で暮らしていけるように、専門医療機関やかかりつけ医と連携をとりながら6ヶ月集中的にサポートします。そのあと、介護支援の専門員などに引き継いでもらえます。
参照:厚生労働省【資料1】地域支援事業の充実と介護予防給付の見直し
家族のために正しい知識を身につけよう
認知症にはどのような症状があるのか、家族が発症した認知症はどんな症状が出やすいのか、事前に情報を得ておくことが非常に重要です。今後の展望を知ると、いざその場面に直面しても、冷静に対応できるようになります。また、家族で情報を共有しておくことも大切です。
認知症が進むと、ついさっきの出来事も忘れてしまい、できない動作も増えてきます。そうわかっていても感情が高ぶってしまう場合もあるでしょう。その気持ちを自分の中にしまい込む必要はありません。地域包括支援センターやケアマネージャーなどに相談し、自分の心を守ることも介護では重要です。
認知症初期症状だと感じたら早めの検査が大切!勇気を出して受診しよう
認知症初期症状は、よくあることと見落としてしまいがちです。本人が自覚するのは難しく、知らず知らずのうちに認知症が進行してしまうケースも少なくありません。そのような結果を防ぐためには、身近な家族の協力が不可欠です。認知症の初期症状に対する正しい知識を身につけ、いち早く異変に気付き、早めに受診を促しましょう。
認知症であるとわかったとき、本人も家族も不安や戸惑い、抵抗感を抱えるかもしれません。その気持ちを一人で抱え込むのではなく、家族全員で助け合いながら介護に向き合っていきましょう。
認知症にも種類があり、それぞれ症状の出かたが異なります。アルツハイマー型認知症は物忘れ、レビー小体型認知症は幻覚やパーキンソン症状が目立ちます。脳血管性認知症は脳がダメージを受けた部位によって症状が異なる点が特徴的です。詳しくはこちらをご覧ください。
些細な変化でも早めに検査をするよう心がけましょう。認知症だと思ったら違う病気だったケースも考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。