「認知症になって怒りっぽくなった」「どう接したらいいのかわからない」そんな悩みを抱える方も多いことでしょう。実は、認知症の方と接するとき、誤った対応を行ってしまうと症状を悪化させてしまう危険性があります。
そこで本記事では、認知症の方との接し方のポイントや具体例を紹介します。接し方に悩んでいる方や上手なコミュニケーション方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
認知症の方との接し方のポイント
認知症の方は、時間や場所、そして自分自身のことですらわからなくなっていきます。そのため、常に不安や恐怖を抱え、非常に繊細な状態です。誤った対応を行ってしまうと、ネガティブな感情を助長させ、症状の悪化に繋がってしまいます。
そうならないためには、認知症の方との接し方を学ぶことが大切です。具体的な、認知症の方との接し方のポイントは次のとおりです。
- 否定しない
- 放置しない
- 無理に思い出させない
- 急かさずゆっくり会話する
- 耳元で大きめの声で話す
- 誰より不安を感じているのは本人だと理解する
- ほめる・感謝する・共感をする
- 目を見て話す
なぜ上記のポイントが重要なのか詳しく紹介します。
否定しない
認知症の方は、事実とは違った内容を話したり、まわりからは理解しにくい行動をとったりする場合があります。
しかし、認知症の方を否定しても、事態は改善しません。むしろ、さらに症状の進行を早める危険性が高くなります。そのため、本人の言動を否定せず、受け止めてあげることが大切です。
認知症の方が事実とは違う内容を話す場合、それは幻覚や記憶力の低下によるものかもしれません。そのため、本人は正しいことを言っていると思い込んでいます。
それを否定してしまうと本人にストレスがかかり、徘徊や大声などの困った症状が強くなってしまいます。悪気もなく否定してしまう場合もあるため、まずは認知症の方を否定しないように強く認識するとよいでしょう。
放置しない
認知症の方への対応に疲れてしまい、放置してしまうケースも少なくはありません。しかし無視や放置をしてしまうと、本人が不安や孤独を抱えてしまう可能性があります。
否定したときと同様に、無視や放置をすると症状が悪化する可能性があるため、放置するのは避けましょう。しかし、介護をしていると、精神的に追い詰められ、その場から離れたくなる場合もあるかもしれません。そこまで追い詰められてしまった時は、介護サービスを利用し、自分自身の休息を得ることが大切です。
症状の進行を抑えるためには、家族の協力が必要となります。認知症の方の心理的な安定を保つことは、症状の進行を抑えるうえで重要なポイントです。
無理に思い出させない
認知症になると、新しい記憶から忘れてしまう場合が多くあります。認知症の方に出来事を無理に思い出させようとしても、思い出すのは困難です。
認知症の方は「そもそもそんなことはしていない」と行動そのものを忘れているため、無理に思い出させようとすると混乱を招いてしまいます。それどころか「私を騙そうとしている」「また家族に迷惑をかけてしまった」「思い出せなくて情けない」とネガティブな感情を抱かせる原因となり、悪い結果にしかつながりません。
そのため、無理に思い出させるのは避け、認知症の方が話している内容に合わせてあげるとよいでしょう。
朝食をとったのにもかかわらず「朝ごはんはまだ食べないの?」と聞かれたときは、「何か食べたいものはある?」「わかった、もう少し待ってね。準備中だから。」などと伝えて、時間を置いてみましょう。一度その場から離れると、何か食べたいと思っていた事実を忘れている場合があります。
急かさずゆっくり会話する
認知症の方とコミュニケーションをとるときは、急かさずゆっくりと会話をするように意識しましょう。
加齢によって聴力が低下している場合もあるため、聞き取りやすい工夫が大切です。また、認知機能が低下しており、ゆっくりと話さなければうまく理解できない場合もあります。言われた内容に対し、とっさに反応して動くことも難しいため、何か急いで伝えたいときこそ、急かさずゆっくり会話するのがポイントです。さらに、早口で会話するよりもリラックスした状態で会話ができるでしょう。
認知症の方に話を合わせるのはもちろん、会話の内容を理解できるようにペースを合わせれば、コミュニケーションもスムーズになるかもしれません。
耳元で大きめの声で話す
耳元で大きめの声で話すのもポイントの1つです。
もちろん耳元で大声で話すのはいけません。本人の状態に合わせて、聴き取りやすく大きめの声で話す意識が必要です。
もし認知症の方に話しかけても反応がなかったり、無視されてしまったりしたら、聞き取れなかった可能性を考慮し、自分の話し方に問題があったのではと意識を変えてみるとよいでしょう。
また、しっかり聞こえていたとしても相手が内容を理解できているとは限りません。ゆっくり耳元で大きめの声で話したのに、相手が理解しないからといって否定的な態度につながらないようにしましょう。
誰より不安を感じているのは本人だと理解する
認知症の方を介護していると、苦労や疑問も多く、不安になる方も多いでしょう。しかし、一番不安を感じているのは本人です。今までできていた行動ができなくなったり、何かおかしいと違和感を感じたりと、恐怖を感じています。「この先どうなるのか」「家族に迷惑をかけてばかりになるのか」「もう何もできなくなるのか」と思い悩む方も少なくはありません。
そのため、家族の方は本人が一番不安に思っていると理解し、寄り添いながら対応をするように意識しましょう。寄り添う姿勢が、安心できる関係、環境を構築し、不安の解消につながります。
ほめる・感謝する・共感する
接し方のポイントの1つに「否定しない」がありましたが、「肯定する」と意識するのも重要なポイントです。具体的には、ほめる・感謝する・共感するの3点を意識しましょう。
認知症の方は表には出さなくても、大きな不安を抱えています。否定しないのはもちろん、肯定的な接し方をすれば本人の不安解消に繋がるでしょう。
また、ほめる・感謝する・共感するを意識すると、認知症の方をプラスに捉えられるため、自分自身のストレスが緩和される効果も見込めます。
目を見て話す
認知症の方と話すときは、しっかりと目を見て話しましょう。誰でもどこか違う方向を向きながら会話をしても、「話を聞いていないんだな」と悪い印象を受けます。
また、可能な限り目線を合わせる意識も重要です。例えば、ベッドで横になっている方に対して立ったまま話すと、威圧感を相手に与えてしまう場合があります。
目線を合わせて話すと、会話の充実感が増し、不安が和らぎます。本記事で紹介しているポイントの中でも比較的すぐに実践できる内容です。
また認知症の方が入居できる老人ホーム・介護施設をお探しの方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
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接し方の具体例
「接し方のポイントはわかったけど取り入れられない」「困った行動が多すぎてそれどころではない」そんな方もいるかもしれません。そんな方のために、認知症の方との接し方のポイントをふまえ、具体例を紹介していきます。
- ケース1.物を盗んだと疑われたとき
- ケース2.今日が何月何日かわからないとき
- ケース3.誰かわからない・別人と間違われたとき
- ケース4.徘徊するようになったとき
- ケース5.幻覚を見ているとき
- ケース6.失禁や便いじりがあったとき
上記のケース別に紹介するため、似たような行動がみられる際は、ぜひ意識して実践してください。
ケース1.物を盗んだと疑われたとき
認知症になると、「財布を盗んだでしょ!」などと盗難被害を訴える場合が少なくありません。
これは物盗られ妄想と呼ばれる症状です。物盗られ妄想とは、その名のとおり何かを盗まれたと強く勘違いしてしまう妄想です。どれだけ説明を尽くしても、勘違いの訂正はできません。
物盗られ妄想は身近な人が対象になる場合が多いです。、必死に介護をすればするほど疑いの目を向けられてしまうため、人間関係トラブルに発展するケースも少なくはありません。
上手な対応方法としては、誰が盗んだかどうかについては「そうかなー?」のように柔らかく否定し、「一緒に探しましょう」と物に着目して一緒に探すのがポイントです。どのような物を失くしたのか具体的に聞くと、本人に対して共感を示せます。そして実際に物が見つかった場合は、自分で見つけたと言わず本人が見つけられるよう促しましょう。物を盗られていなかったと示して安心してもらうためです。
ただし、失くしたと伝えられた物を本人が捨ててしまったり、食べてしまったりと、すでに無くなっている場合も少なくありません。
「もう一度あとで探してみましょう」と言って乗り切るのもポイントです。
ケース2.今日が何月何日かわからないとき
今日が何月何日かわからない場合、認知症で見られる見当識障害が疑われます。
見当識障害が疑われる場合には、見やすい場所に時計やカレンダーを置いておき、一緒に見るようにしましょう。カレンダーは日めくりカレンダーにして、毎日一緒にめくると、より五感を刺激できます。一緒に日付を確認したり、カレンダーをめくるなど役割を持たせたりすると、脳への刺激になり認知症の進行を抑えられるかもしれません。
上記のように日付の現実認識の機会を提供する対応は、非薬物療法における「認知刺激」や「リアリティーオリエンテーション(現実見当識訓練)」に分類されます。
ケース3.誰かわからない・別人と間違われたとき
誰かわからなかったり、別人と間違われたりするときもあります。前述した見当識障害の一部で、時間や場所の見当識障害よりも更に進行した場合に見られる症状です。
つい、「私が誰かわかる?」と聞いてしまう場合もありますが、本人にとってはストレスに繋がります。無理に思い出させないよう気をつけましょう。
自分を忘れられてしまうのは、家族としてはショックが大きいものです。気持ちを落ち着けるために、一度その場からそっと離れてみるのも一つの手です。
これは自然な経過なんだと受け入れられるよう、認知症の症状について理解を深めるのもよいでしょう。いつか、笑い飛ばせるほどの余裕を持てるようになるかもしれません。
ケース4.徘徊するようになったとき
認知症の方が、一人で外出し、道に迷ってしまうケースも少なくはありません。徘徊と呼ばれる場合が多いですが、一部の市区町村では誤解や偏見につながるおそれがあるため、「徘徊」と呼ばず「ひとり歩き」などと表現しています。
ひとり歩きに出かけた際、心配になって大人数で本人を探すケースもあります。しかし、あまり大勢で探すと認知症の方も驚いてしまうため、避けることが望ましいです。
徘徊(ひとり歩き)の対策は次のとおりです。
- GPS端末を持たせておく
- 服や持ち物に連絡先を欠いておく
- 地域の方に一人で歩いていたら連絡してもらうようにお願いしておく
- 市区町村の安全・安心メールに登録しておく
- 高齢者等地域見守りネットワークに参加しておく
家族の方がずっと見守るのは現実的に難しい場合があるため、可能な限りの対策を講じておきましょう。
ケース5.幻覚を見ているとき
認知症の方の中には、幻覚の症状が現れる場合があります。そこに何も存在しなくても、本人にはありありと見えており、動いていると訴えるケースも少なくありません。見えているものは動物や人物などが多く、人物の場合は相手が特定できる場合もあります。
幻覚が生じている場合は、否定しない、放置しない、これらのポイントが大切です。「蛇がいる」と訴える場合は、危ないからと別の部屋に誘導し、ほうきやバスタオルなどで退治する真似をしてください。本人の言っている内容を否定せず、話を合わせて対応しましょう。
また、幻覚には服用している薬が影響している場合もあります。幻覚が生じた場合には、医師に相談しましょう。
ケース6.失禁や便いじりがあったとき
失禁や便いじりがあると、周囲の方も当然ショックを受けます。しかし、前述した接し方のポイントを意識した対応を心がけましょう。寄り添って穏やかな対応をするのが理想的です。叱ったり責めたりしても状況は改善されない点は把握しておきましょう。
便いじり対策には、排便リズムを把握してトイレで排便するように誘導するのが有効です。おむつに排便したときでも、放置せずすぐにおむつを交換するとよいでしょう。
上記の対策をすると、おむつに便がある状態を避けられるため、便いじりを防ぐ効果が見込めます。
なお、失禁や便いじりがあるのは重度認知症の状態であると考えられます。もし在宅で介護をしているのであれば、入所を検討してもよいかもしれません。
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認知症の方との接し方のポイントを実践してみましょう
認知症の方は、常に不安や恐怖を抱え、非常に繊細な状態です。誤った対応を行ってしまうと、ネガティブな感情を助長させ、症状の悪化に繋がってしまいます。そうならないためには、認知症の方との接し方を学ぶことが大切です。
- 否定しない
- 放置しない
- 無理に思い出させない
- 急かさずゆっくり会話する
- 耳元で大きめの声で話す
- 誰より不安を感じているのは本人だと理解する
- ほめる・感謝する・共感をする
- 目を見て話す
上記、接し方のポイントをすべて実践するのは簡単ではありません。しかし、少しずつでも実践に移せると、精神的に安定し、認知症の症状が緩和する場合があります。
まず、最も不安に駆られているのは本人であることを理解しましょう。そのうえで、接している方が症状を理解し、寄り添って接するのがポイントです。詳しくはこちらをご覧ください。
強く責めたり叱ったりすると、かえって本人の不安や不満が強くなってしまうため逆効果です。詳しくはこちらをご覧ください。