糖尿病と上手にお付き合いするための外来看護師からのヒント

糖尿病と上手にお付き合いするための外来看護師からのヒント

今回は糖尿病上手にお付き合いするための外来看護師からのヒントについてお話しさせていただきます。

外来の看護師は、糖尿病や高血圧などの慢性疾患をお持ちの患者さんやご家族の方と長いお付き合いとなると考え、いっしょに「いい年齢」を重ねていきたいと思っています。受診と受診の間の出来事や他の医療機関でのお話しなどを聞かせてくださるとうれしいのです。

渡辺 美和 講師
日本赤十字北海道看護大学 成人看護学(慢性)領域
看護師/教員
日本NP学会/日本糖尿病学会/日本糖尿病教育・看護学会/日本慢性看護学会/日本看護科学学会/日本専門看護師協議会/日本創傷・オストミー・失禁管理学会/日本褥瘡学会/日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会
市立小樽高等看護学院卒業後、小樽市立病院に勤務。皮膚・排泄ケア認定看護師資格を習得後、ストーマ外来の立ち上げ、褥瘡管理などで組織を横断的に活動。北海道医療大学大学院 看護福祉学研究科 成人看護学、(CNS課程)、NP養成コースを修了後より、慢性疾患看護専門看護師、診療看護師として糖尿病外来、泌尿器科外来を中心に活動。2017年より糖尿病専門クリニックにて活動。2022年4月より現職。糖尿病看護、外来看護と患者の受診継続への動機づけについて研究中。
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①高齢になると糖尿病になる人が増える理由

食事によって血液中に取り込まれたブドウ糖は身体のエネルギーとして利用されます。膵臓で作られるインスリンはブドウ糖を臓器の細胞に取り込む手伝いをしています。

糖尿病は血液中の糖が高い状態をいい、高血糖状態は血管を傷つけ動脈硬化を進展し、細血管障害(神経、網膜症、腎症)や大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞など)を引き起こします。また、免疫機能の働きも障害しますので、歯周病や皮膚炎、肺炎などの感染症や骨粗鬆症による骨折、がんや認知症のリスク要因にもなります。

糖尿病は60歳代から急増し1)高齢化とともに高齢者の糖尿病患者も増加しています。70歳以上の男性の26.4%と女性19.6%が「糖尿病が強く疑われる者」になっています。

なぜ高齢になると糖尿病になりやすいのでしょうか。原因としては加齢に伴い、膵臓のインスリンを分泌する能力が落ちてくること、糖分を消費する筋肉が減ること、運動不足となることや代謝の低下により内臓脂肪が増え、インスリンの効果が悪くなること加えて、栄養バランスの偏りや過食などは糖尿病の発症リスクが高まるといわれています。

糖尿病は目にみえず、症状に現れにくいため、気づくのが遅れる場合があります。症状がなくても慢性的な高血糖状態は血管の炎症を引き起こし、血管を痛めつけているのです。動脈硬化がすすむと血圧は上昇し、インスリンの作用不足は脂質代謝の異常を生じることが多く、糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)を合併している患者さんを多くみます。症状がなくても気軽に相談できるかかりつけ医(診療所やクリニックなど)を持ち、 定期的な健康チェック健康診断を受けることをお勧めします。

年齢階級別「糖尿病が強く疑われる人」及び「糖尿病の可能性が否定できない人」の推計人数(2016年)

②糖尿病と言われたら…糖尿病の治療の3本柱と注意点

・食事療法

食事療法は適切な量、適切なバランスのよい食事を規則的に取ることで、高血糖や脂質異常症、肥満の改善に有効です。糖尿病の食事療法は、“この食材は絶対食べてはいけない”というものはなく、全体のバランスが大切です。一般的には食事のカロリーの摂取する比率は炭水化物を50~60%、タンパク質20%以下から摂取し、残りを脂質で摂取することを目安にします。極端なカロリー制限や糖質制限はエネルギー不足となり身体の機能を損ないます。また、たんぱく質摂取が少ないと筋力が落ちやすくなるため注意が必要です。食べ過ぎない、減らしすぎないことが大切です。

食物繊維は糖質吸収を穏やかにし、コレステロールの吸収を減らします。野菜として350g以上の摂取(両手1杯で100g)を目指してください。

好みや長年の食習慣をふまえながら実際にできる食事療法みつけることが続けていくための秘訣です。外来でもレシピの紹介や糖質カットの商品などを紹介していますので相談してみてください。

・運動療法

糖尿病の外来では医師や理学療法士と相談しながら、ストレッチやバランス感覚、持久力向上の運動などの種類や方法を紹介しています。加齢とともに筋肉の質や量が低下する「サルコペニア」や筋力・体力が衰えて虚弱となる「フレイル」を予防するために、週2日以上、30分以上の運動が推奨されています。運動はできないという方も、家事や買い物など日常生活の中に今より10分座る時間を長くするなど、身体活動時間を長くしていくことをはじめてみてください。2)

血糖値が高めの方は筋肉への糖の取り込みを促し、血糖値を下げる効果があるため、食後1時間後くらいに、運動や家事など身体を動かすとよいと言われています。また、脂肪を減らしたいときは、交感神経の働きが活発でエネルギー消費が高くなる午前中の運動がおすすめです。

・薬物療法

高齢の方は腎臓や肝臓の機能が低下し低血糖や副作用が起こりやすくなることがあります。また、高齢の方は症状が典型的でないことがあり、低血糖症状を見逃されることもあり、重症低血糖になり生命の危険がおよぶこともあります。インスリン治療やインスリン分泌を促すスルホニル薬やグリニド薬を飲んでいる方は特に低血糖症状や対処方法について説明し、低血糖症状の有無について確認しています。

現在は薬剤や機器の発展により、インスリンから内服薬へまたはインスリンの回数の減量などができるようになりました。インスリンやインスリン分泌を促す薬剤(GLP-1受容体作動薬)の自己注射を行っている方に対しては、治療の目安を示し、心理的な負担に配慮しながら、不安なく自己注射や治療にのぞむことができるようにしています。インスリン自己注射や血糖測定器械もそれぞれに特徴があり利便性のよいものが増えています。不便だと感じることや困ったことがある時は気軽に相談してください。

③いっしょに年齢を重ねていきましょう

みなさんは ご自身の身体や生活の状態を一番よく知っている専門家です。

看護師は、皆さんの力を引き出すために病気に対する知識と技術をもとに情報を提供し、信頼関係を大切にしながら、皆さんの意思決定の積み重ねを支持、支援していく専門家です。専門家同士で協力しながら、皆さんの身体を大切に、いっしょに「いい年齢」を重ねていきたいと思っています。

【引用・参考文献】
1)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-08.html 2024年4月6日 閲覧
図表1-2-8 糖尿病患者数の状況 一部引用

2)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
[PDF]健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023

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