「病院から老健への入居を勧められたけれども、なぜ病院に入院し続けられないのだろうか?」
「在宅復帰が目的ならリハビリ病院もあるけれども、老健とは何が違うのだろうか?」
老健(介護老人保健施設)とは、病院から自宅への架け橋として、高齢者の在宅復帰や在宅療養支援を目指すための介護施設です。そのため、病院からの長期入院が明けてから自宅に戻るまでの期間に利用することが多い施設です。
では、どうして病院から老健へ移らなければならないのか、疑問に思った方も多いと思われます。
本記事では、病院と老健の違いについて詳しく解説していきます。また、リハビリ病院との違いなども紹介します。

この記事のまとめ
- 病院と老健の大きな違いは目的。病院の目的は「患者の命を守ること」であり、老健は「高齢者の在宅復帰を支援すること」である。
- リハビリ病院と老健の違いは目標。リハビリ病院では「治療後の身体機能の回復」を目指し、老健では「生活するために必要な動きを訓練する」ことである。
- 病院に長期入院できない理由として、医療制度上の理由と施設ごとに役割が違うという2つが挙げられる。
病院と老健(介護老人保健施設)では目的が違う
病院と老健(介護老人保健施設)では、目的が大きく異なります。
病院の目的は「患者の命を守ること」であり、病気や事故により症状が悪化した方へ治療・看護をするためにあります。
一方で老健の目的は「高齢者の在宅復帰を支援する」ことであり、医学管理をしながらリハビリや介護を提供することで在宅復帰を促します。
それぞれの施設における目的の違いについて、詳しく解説していきます。
病院の目的
病院の目的は患者の命を守ることです。厚生労働省が公布している医療法 第一条の五にて病院を下記の通りに定義しています。
病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
医療法 第一条の五より引用
病院では、病気などの傷病に対する治療と看護を主体としています。看護とは病気や怪我などに対して療養上のサポートを行うことであり、病院に一定期間入院することで体調の回復や社会復帰を目指します。
そのため、病院では体調が悪化した患者に対して、早急に医療を提供できる体制を整える必要があります。ベッドの数にも限りがあるため、患者の命を守るためにも病室は一定数空けておくことが求められます。
今後も治療が必要ならば退院を促されることはありませんが、もう少し長く泊りたいなどの理由で病室を利用するわけにはいかず、病院の機能として回復した患者から退院を促されます。
老健(介護老人保健施設)の目的
老健(介護老人保健施設)の目的は、高齢者の在宅復帰を支援することです。厚生労働省が公布している介護保険法 第八条 第28項において、老健を下記の通りに定義しています。
「介護老人保健施設」とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設
介護保険法 第八条 第28項より部分引用
老健では、要介護の認定を受けた高齢者に看護と介護を提供しています。介護とは日常生活における食事や排せつなどを介助することにより、本人の自立を支援することを指します。
老健の目的は長期入院後など、既に体調が回復している高齢者に対して在宅復帰を支援することであり、病院における体調の回復や治療とは目的が異なります。
なお、老健では医師や看護師が常駐しているため、施設内で医療行為を受けることも可能です。しかし、介護保険法において老健は病院(診療所)ではないと明記しています。
介護老人保健施設は、医療法にいう病院又は診療所ではない。
法律上においても、病院と老健は別の施設であることを覚えておきましょう。
また、老健で提供される医療行為は、注射や点滴、応急処置などが該当します。どこまで高度な医療行為に対応しているかは施設によって異なるため、入所前に資料や面談を通じてよく確認しておきましょう。

また老健(介護老人保健施設)への入居をお考えの方は、ケアスル介護への相談がおすすめです。
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介護医療院と病院は法律上は別の施設です(介護保険法 第百十五条より)。介護医療院は長期にわたり療養が必要な要介護者に対して、施設サービス計画に基づき、療養上の世話や医学的管理下による介護や機能訓練、その他医療並びに日常生活のお世話を行います。施設をお探しの方は、ご本人の身体状況に合わせた施設から選びましょう。
リハビリ病院と老健(介護老人保健施設)では目標が違う
リハビリ病院と老健(介護老人保健施設)ではどちらも在宅復帰(社会復帰)するという大まかな目的は同じですが、最終的な目標が違います。
リハビリ病院では「治療後の身体機能を回復する」ためであり、老健では「生活するために必要な動きを訓練する」ことを目標としています。
具体例を挙げると、脳卒中により右足に麻痺が残り動けなくなった患者がいると想定します。
リハビリ病院においては再び「歩けるようになる」ことを目標と置き、医学管理のもと、歩けるようになるための集中的なリハビリを実施していきます。
一方で老健では、リハビリを通じて歩けるようになってきたが、在宅での生活に不安が残る高齢者に対して、身体機能の維持や日常生活で役立つリハビリを実施していきます。
リハビリ病院と老健では、どちらも在宅復帰を目的としているもの、目指している目標が異なることがあると認識しておきましょう。

リハビリ病院と老健(介護老人保健施設)の違い
リハビリ病院と老健は、病院と介護保険施設という点で全く異なる施設です。
リハビリ病院と老健(介護老人保健施設)との違いを、下記の一覧にまとめました。
老健(介護老人保健施設) | リハビリ病院 | |
施設の目的 | 要介護認定を受けた高齢者にリハビリや医療ケアを提供して在宅復帰を目指す | ADLの向上による寝たきり防止や在宅復帰を目的としたリハビリを集中的に行う |
入居(入院)条件 | 要介護認定を受けた65歳以上の高齢者 | 脳血管疾患の手術後など
(年齢による制限無し) |
入居(入院)期間 | 原則3か月 | 最長180日 |
入居(入院)費用 | 8~14万円 | 12~16万円 |
適用保険 | 介護保険 | 医療保険 |
リハビリの回数 | 週3回以上(20分以上) | 毎日(最大3時間) |
居室(病室)のタイプ | 個室/多床室 | 個室/多床室 |
老健は高齢者を対象とした介護保険施設であり、施設内で介護サービスやリハビリを受けながら在宅復帰を目指します。一方でリハビリ病院では社会復帰や職場復帰などの側面もあるため、高齢者のみならず40歳未満の患者もいます。
また、リハビリ病院では基本的に毎日リハビリを行うことも老健と異なります。本人の身体状況なども考慮したうえで、リハビリ病院又は老健のどちらが良いのか考えると良いでしょう。
なお「老健に入居したいけど、どこまで医療行為やリハビリが必要になるか分からない」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
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リハビリ病院から老健に移ることは可能です。全国老人保健施設協会による調査研究事業報告によると、2021年10月1日~11月30日の間に、在宅復帰を目指して急性期病院以外から入所したケースは460件あったと報告しています。
なぜ病院に長期入院できないのか?
病院に長期入院できない理由として、主に2つの理由が挙げられます。
- 医療制度上2週間以内の退院が推奨されるため
- 治療の過程で必要なリハビリが変化するため
老健(介護老人保健施設)への入居を勧められた方の中には、どうして病院に入院し続けることができないのかと疑問を感じた方もいると思われます。
本章では、病院に長期入院できない理由について、順に解説していきます。
医療制度上2週間以内の退院が推奨されるため
病院の目的でも解説しましたが、病院は患者の命を守ることを目的としているため、体調が回復した方から退院を促されます。
その理由の一つとして、医療制度上2週間以内の退院が推奨されているからです。現状医療費が国の財政を大きく圧迫していることもあり、14日を超える入院の場合1日当たりの報酬が少なくなるように定められています。
当該病棟の入院患者の入院期間に応じ、次に掲げる点数をそれぞれ1日につき所定点数に加算する。
イ 14日以内の期間 450点(特別入院基本料等については、300点)
ロ 15日以上30日以内の期間 192点(特別入院基本料等については、155点)
厚生労働省 [第2部 入院料等 通則 第1節 入院基本料]より引用
また、医療技術が発達したため、長期入院が必要ではなくなっていることも理由の一つです。医療技術が発達していなかった頃と比べて、長期にわたって治療の必要がなくなり、早期に退院できるようになったことも挙げられます。
治療の過程で必要なリハビリが変化するため
患者の治療の過程で、必要となるリハビリが異なるため、病院や老健(老人保健施設)などで役割を分担しています。
例えば、高齢者が脳梗塞で病院に搬送されたと想定します。
病院で患者の治療を行い、無事治療が完了しても当然すぐに退院できるわけではありません。この発症日から約2週間を急性期と呼び、安静にしつつ早期の離床やADL(日常生活動作)の向上のためのリハビリを行います。
急性期を終えた段階でさらにリハビリが必要な場合は、リハビリ病院などで集中的にリハビリを受けることになります。この時期のことを回復期と呼び、前述の通り在宅復帰や寝たきりを防ぐために、毎日機能訓練を行います。
病院からの退院後、体調や身体機能は回復しているものの、高齢ゆえに自宅での生活に不安がある方に対して老健などの介護施設への入所を促します。この時期を維持期と呼び、反復動作訓練やADL訓練により、日常生活を送るのに必要な身体機能を維持するためのリハビリを行います。
このように、施設によって目的や役割が異なるため、病院で長期入院するのではなく、老健への入居を促されることがあると認識しておきましょう。
参照:上月正博「すぐに使える!実践リハビリマスターガイド」中外医学社(2011)
なお、「老健に入居したいけど、どこまで医療行為やリハビリが必要になるか分からない」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。
ケアスル介護では、入居相談員が施設ごとに実施するサービスやアクセス情報などをしっかりと把握した上で、ご本人様に最適な施設をご紹介しています。
「身体状況に最適なサービスを受けながら、安心して暮らせる施設を選びたい」という方は、まずは無料相談からご利用ください。
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病院と老健(介護老人保健施設)の違いまとめ
本記事では、病院と老健の違いについて詳しく解説していきました。
病院と老健の大きな違いは目的であり、病院の目的は「患者の命を守ること」であり、老健は「高齢者の在宅復帰を支援すること」です。
リハビリ病院と老健では在宅復帰という目的は同じであるものの。目指している目標が異なります。リハビリ病院では「治療後の身体機能を回復」を目指し、老健では「生活するために必要な動きを訓練」します。
このように施設ごとに目的や役割が異なるため、施設に入所する際には本人の身体状況などを考慮して、最適の施設を選ぶことが大切です。ぜひ本記事を参考にして頂けたら幸いです。
病院と老健では目的が異なります。病院の目的は「患者の命を守ること」であり、老健は「高齢者の在宅復帰を支援すること」です。詳しくはこちらをご覧ください。
患者の治療の過程で、必要となるリハビリが異なるからです。病院や老健で看護や介護などの役割を分担しています。詳しくはこちらをご覧ください。