要介護認定を受けた方の中には「要介護3の認定を受けたけれど、要介護4と利用できる介護保険サービスに違いはある?」「要介護3の認定を受けたけれど、調べてみると要介護4な気がしている」など、要介護3と4の違いが良くわからないという方も少なくないと思います。
そこで本記事では、要介護3と4の状態の違いから違いが生まれる要介護認定のポイント、さらに利用できる介護保険サービスの違いについても解説していきます。
要介護3と4の違い
まず初めに要介護3と4でどのような状態の違いがあるのかについて解説していきます。
要介護3の状態
要介護3の状態としては、自分で立ち上がったりスムーズに歩行することが難しく、食事や排せつ、入浴などの日常生活においても介護が必要な状態を指します。また、認知機能の低下も進んでくるタイミングであり、見当識障害や実行機能障害があらわれる方も増えてくるタイミングとなっています。
具体的には、
- 排せつや入浴、服の着替えなどで全面的な介助が必要な状態
- 身の回りのことや家事全般を一人で出来ない
- 立位保持や立ち上がりを自力で行うことが出来ない
- 認知機能の全般的な低下が見られることがある
などが要介護3の具体的な状態と言えるでしょう。
したがって、要介護3の状態としては全面的な介助が必要になっている状態と言えるでしょう。
要介護4の状態
要介護4の状態としては、自力で立つ・歩くなどの基本的な動作を行うことが難しく、座った状態を保ち続けるのも難しい状態と言えます。同時に認知機能の低下も現れ始めるのも特徴となっています。
具体的には、
- 昼夜問わずに常に日常生活介助が必要な状態
- 食事、入浴、排せつ、着替えなどの日常の動作で全面的な介助が必要
- 認知機能の低下が見られ、意思疎通が難しくなることもある
などが要介護4の具体的な状態と言えるでしょう。
したがって、要介護3が日常生活動作をスムーズに行うのが難しいという状態であるのに対して、要介護4は常に介助が必要な状態であるという違いがあることがわかります。
要介護3と4の介助時間の違い
内閣府の「令和元年版 高齢社会白書(全体版)」によると、同居している主な介護者の介護時間を比較すると要介護3で最も多いのは32.5%で「ほとんど終日」、要介護4で最も多いのは45.8%で「ほとんど終日」となっており要介護4の方の方が介助時間が長いことがわかります。
ほとんど終日 | 半日程度 | 2~3時間程度 | 必要な時に手を貸す程度 | その他 | 不詳 | |
---|---|---|---|---|---|---|
要介護3 | 32.50% | 17.60% | 13.10% | 27.70% | 5.90% | 3.30% |
要介護4 | 45.8% | 8.6% | 21.7% | 11.5% | 7.7% | 4.7% |
以上より、要介護4の方が終日介護が必要という人の割合が多く、上述したように日常生活動作のほとんどで介助が必要であることがわかります。
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要介護3と4の違いが生まれるポイント
要介護3と4の違いが生まれるポイントとしては、要介護認定の際の要介護認定等基準時間によって違いが生まれています。
詳しく解説していきます。
要介護認定等基準時間によって違いが生まれる
要介護3と要介護4は厚生労働省によって定められている要介護認定等基準時間に沿って決められています。
要介護認定等基準時間は、訪問調査員が訪問調査をした際に直接生活介助、間接生活介助、BPSD関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為の5つの観点で収集したデータをもとに、特養や介護医療院に入院・入所している3500人の実際の介護時間と照らしてどの程度の介護時間が必要になるのか算出したものとなります。
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
---|---|
要支援2
要介護1 |
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態 |
(出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」)
そのため、要介護3と要介護4は上述の基準時間が異なっているので、訪問調査及び主治医の意見書を参考にどの程度時間が必要と判断されるかによって違いが生まれる仕組みになっているのです。
なお、「1分間タイムスタディ・データ」と呼ばれる実際の介護施設におけるデータをもとに時間を算出しているので、実際に自宅で行われる介護時間とは異なることに注意しましょう。
違いに納得できない場合は?
要介護3と4の違いが生まれる理由について紹介しましたが、違いに納得することが出来ない場合は不服申し立てもしくは区分変更申請をすることで認定結果を変更することが出来る可能性があります。
不服申し立て(介護保険審査会への審査請求)をすると、要介護認定の再調査依頼をすることが出来るので場合によっては認定結果が変わる可能性があります。
ただし、不服申し立ては2カ月程度結果がわかるまでに時間がかかる可能性があるため、すぐに再申請をしたい場合は区分変更申請をするのも選択肢の一つです。
区分変更申請とは本来ケガや病気の進行で介護度が明らかに変わったと言える場合できる申請手続きですが、納得できない場合は本人の身体状況と介護度があっていない状態と言えるので不服申し立ての代わりに区分変更申請をするのも少なくありません。
要介護3と4の介護サービスの違い
要介護3と4で利用することが出来る介護サービスに違いはありません。というのも、要介護3と4はともにすべての介護保険サービスを利用することが出来るからです。
ただし、介護保険施設を利用する際に要介護3よりも4の方が入所しやすいという可能性はあります。というのも、特別養護老人ホームを例にとると、施設からすれば要介護3の方を受け入れるよりも要介護4の方を受け入れたときの方が介護保険給付が多くなるからです。
また、公的施設のより介護を必要としている方を先に受け入れるという状況からも要介護3よりも4の方が早く施設に入所することが出来るという可能性はあります。
とはいえ、要介護3と4の間には利用できる介護保険サービスの種類の違いはないので、空室のある老人ホームに入所する場合などはほとんど同じ条件で利用することが出来ると言えるでしょう。
要介護3と4の区分支給限度基準額の違い
要介護3と要介護4で利用することが出来る介護保険サービスの種別に大きな違いはありませんが、利用できる介護保険サービスの量には違いがあります。
具体的には、要介護度ごとに設定されている区分支給限度基準額に違いがあるので、要介護3になると今まで利用することが出来なかった介護保険サービスも現在のものに加えて利用することが出来るようになる可能性があります。
区分 | 区分支給限度基準額(単位) | 自己負担割合1割の場合(円) | 自己負担割合2割の場合(円) | 自己負担割合3割の場合(円) |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 5032 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 10531 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 16765 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 19705 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 27048 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 30938 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 36217 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
※1単位当たり10円として計算した場合
※出典;厚生労働省「区分支給限度基準額について」
以上の表のように、要介護3と4では基準となる単位数が異なりますので利用できる介護保険サービスの量が異なることを覚えておきましょう。
要介護3と4の違いについてのまとめ
ここまで要介護3と4の違いについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
要介護3は、自分で立ち上がったりスムーズに歩行することが難しく、食事や排せつ、入浴などの日常生活においても介護が必要な状態を指す一方で、要介護4は自力で立つ・歩くなどの基本的な動作を行うことが難しく、座った状態を保ち続けるのも難しい状態を指します。
利用できる介護保険サービスの種類に違いはないものの、利用できる量に違いがあることに注意しましょう。
要介護3が日常生活動作をスムーズに行うのが難しいという状態であるのに対して、要介護4は常に介助が必要な状態であるという違いがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
要介護3と要介護4は厚生労働省によって定められている要介護認定等基準時間に沿って決められています。詳しくはこちらをご覧ください。