高額介護サービス費の自己負担額は医療費控除の対象になる?

高額介護サービス費の自己負担額は医療費控除の対象になる?

介護サービスを利用している方の中には、「高額介護サービス費を利用しても、負担額が高額になる」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

また、そのような悩みを抱えた方の多くが、介護サービス費が医療費控除の対象になることを知らないのが実情です。

この記事では、高額介護サービス費の申請方法や、介護サービスを医療費控除として申告する手順、医療費控除の対象となるサービスの種類などを中心にまとめています。

自己負担額が高額で、不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

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医療ライター
専門分野:医療・介護系全般
職業: 医療ライター

大学卒業後、医療専門新聞社である株式会社薬事日報社に入社。 約13年間、新聞記者として厚生日比谷クラブを始めとする記者クラブに所属し、厚生労働省や日本医師会、日本薬剤師会、医療現場、大学、関連学会などを取材して歩く。 2013年にフリーランスの医療ライターとして独立。独立後は医療・介護現場を幅広く取材しつつ新聞や雑誌、書籍、ウェブサイトなどで執筆。 これまで取材してきた医師、看護師、薬剤師などの医療従事者は500人を超える。主な執筆媒体は「プレジデント」「ドクターズマガジン」「マイナビメディカルサポネット」「We介護」など。 共著は「在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期」(世界文化社)。現在、自分自身も2人の娘を育てながら認知症の母を介護中。詳しくはこちら

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高額な介護費用は医療費控除で軽減できる

「介護サービス費は医療費控除の対象にはならない」と思っている方が多くいらっしゃいます。しかし、実は介護サービスの種類によっては医療費控除の対象として申請ができます。また、高額介護サービス費との併用も可能です。

とはいえ、すべての介護サービスが高額サービス費や医療控除の対象となるわけではありません。介護保険や医療保険は制度が難しいため、「結局何が対象となるの?」と混乱してしまう方もいらっしゃるでしょう。

そこで、本項では「医療費控除」から順に解説していきます。家計の負担軽減のためにも、ぜひ参考にしてください。

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医療費控除とは

医療費控除とは、1年間で使用した医療費が一定金額を超えた場合に受けられる控除です。年末の確定申告にて申請を行うと、対象となった金額が所得から控除されます。控除費の計算は、以下の公式で算出できます。

(1月1日から12月31日までに支払った医療費の総額 ー 保険金などで補てんされる金額) ー 100,000円 = 医療費控除楽(上限2,000,000円)

医療控除を「年間で100,000円を超えた場合」と覚えている方が多くいらっしゃいます。しかし、100,000円以下の場合でも、年間所得が2,000,000円を下回る方は所得の5%を超えた金額が控除の対象になります。

医療費控除の対象

医療費控除の対象となるサービスは、以下の通りです。

  • 通院にかかった費用(交通費含む)
  • 入院にかかった費用
  • 歯の治療や矯正にかかった費用
  • 薬代(市販の薬・漢方・ビタミン剤も含む)
  • 妊娠・出産・不妊治療に関する費用
  • B型肝炎ワクチンの接種費用
  • オルソラケトロジーの費用(近眼などの角膜矯正治療)

対して、医療費控除の対象とならないサービスもあります。

  • 美容に関する医療費
  • 通院時のタクシー代(公共交通機関が利用できなかった際は対象となる)
  • マッサージ・はりきゅうの代金
  • 人間ドック・健康診断の費用
  • 保健指導によって通い始めたスポーツジムなどの料金

以上のように、医療・健康管理に関するすべての費用が対象にはなるわけではありません。

(出典:所得税目次一覧|国税庁)

医療費控除の申告期間

確定申告の提出期間は2月16日から3月15日の間です。医療費控除の申告も同期間ですので、期間内で「医療費控除の明細書」を作成し、提出する必要があります。その際、医療費・介護費の明細書の添付は必要ありません。

提出した明細書は、内容確認のため領収書の提示が求められる場合があります。提示依頼があった際、すぐ対応できるよう、医療費・介護費の明細書は大切に保管しておきましょう。

提示依頼はさかのぼって最大5年前まで行われます。そのため、明細書は5年間とっておくようにしましょう。反対に、申告漏れがあった場合も5年前までさかのぼれます。

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保険金などで補填される金額

医療費控除の対象となるのは、あくまでも「自身で支払った費用」のみです。つまり、通院や入院に際して民間保険・共済などを使用した場合は、差し引いた金額が控除の対象となります。

差し引かなければならない費用は、以下の通りです。

  • 生命保険で受け取る保険金など
  • 損害保険で受け取る保険金など
  • 社会保険から支給される給付金など
  • 共済から支給される給付金など
  • 医療費に対する損害賠償
  • 任意の互助組織から受け取る給付金

上記の要件に当てはまる保険金・給付金・補償を受け取った場合は、控除の対象となる金額が変わるので注意しましょう。

医療費の取り扱い

通院・入院にかかった費用のすべてが控除対象になるわけではありません。また、保険・共済・互助会などで受け取った保険金などは、医療費から差し引いて計算しなければならないなど、細々した決まりがあります。

介護保険においても同様です。利用するサービスによって、医療控除の対象になるもの、ならないものが存在します。また、利用しているのが「施設サービス」「居宅サービス」なのかによって考え方が違うのが難しいポイントです。

そこで、本項では以下のサービスに分けて医療費控除の対象となるサービスについて解説していきます。

  • 施設サービス
  • 居宅サービス

それぞれの詳細について詳しく見ていきましょう。

1.施設サービス

医療費控除の対象となる施設サービスは以下の2点です。

  • 指定介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設・指定介護療養型医療施設

また、上記2点のほかに介護医療院の費用も医療費控除の対象に含まれます。

控除の対象となるのは「介護サービス費」「食費」「居住費」です。施設で独自に設定されている料金や日常生活に必要な費用、理美容代などは対象になりません。

ほかにも、高額介護サービス費の制度を利用し、払い戻しを受けている場合は、医療費から払戻金を差し引いた金額が控除の対象となります。

指定介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設

指定介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設とは、いわゆる「特別養護老人ホーム」です。介護3以上の方が入居の対象となっており、日常生活のお手伝いや余暇活動などの提供をしてくれます。

特別養護老人ホームでは、介護サービス費・食費・居住費のうち、自己負担した額の1/2が対象となります。

あくまで自己負担額ですので、介護サービス費の10割額が対象となるわけではありません。また、食費・居住費に関しては、4段階の費用ではなく、限度額に基づいて支払った費用が控除の対象です。

介護老人保健施設・指定介護療養型医療施設

介護老人保健施設とは、自宅へ戻ることを前提として、一定期間リハビリ指導や生活上の支援を受けられる施設です。長期的に入所できる施設ではありません。

対して指定介護療養型医療施設とは、療養をメインとしつつ日常生活全般の支援をしてくれる施設です。

どちらのサービスも、介護サービス費・食費・居住費として支払った費用の全額が控除の対象となります。介護医療院に入居している方も、同じ費用を控除の対象として申告可能です。

2.居宅サービス

ここからは、以下2点の内容について説明していきます。

  • 医療費控除を受けられるサービス
  • 居宅サービスと併せて利用する場合に医療費控除が受けられるサービス

居宅サービスの中で医療費控除の対象となるのは、看護によるケアの提供が必要となるものです。また、介護で行えるサービスであっても、一定条件を満たす場合は、医療費控除の対象として申告できます。

基本的には自己負担額の全額を控除として申請可能です。ただし、条件によっては申告できる金額の割合が変動するものもあります。

また、医療費控除が対象外となるサービスについても説明していますので、参考にしてください。

医療費控除を受けられるサービス

医療費控除を受けられる居宅サービスは、以下の通りです。また、提示しているサービスは、すべて「予防(要支援1・2の方が受けるサービス)」も含まれています。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリ
  • 居宅療養管理指導
  • 通所リハビリ
  • 短期入所療養介護

予防の方が利用できないサービスで、医療費控除の対象となるのは、以下の2つです。

  • 定期巡回・随時対応型訪問看護
  • 看護・小規模多機能型居宅看護

ただし、定期巡回に関しては、訪問看護サービスを入れていた場合のみ対象となるので注意しましょう。同サービスであっても、定期巡回のみの場合は対象になりません。

(出典:医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価)

居宅サービスと併せて利用する場合に医療費控除が受けられるサービス

居宅介護サービスは基本的に医療費控除の対象ではありません。

しかし、前項で提示した、医療費控除の対象となる居宅サービスと併せて利用していた場合のみ、控除の対象となるサービスもあります。医療費控除の対象となるサービスは、以下の通りです。

  • 訪問介護(調理・洗濯・掃除などの生活援助中心型を除く)
  • 訪問入浴
  • 通所介護「デイサービス」
  • 短期入所生活介護「ショートステイ」

※すべて予防(要支援1・2の方が受けるサービス)を含む

訪問介護に関しては、生活援助がメインでないのが条件です。また、サービス提供中にオムツを消費する場合、オムツ代も医療費控除の対象となる可能性があります。

オムツ代を申告するには、かかりつけ医が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。 発行の条件や手続きについては、各自治体に確認を行いましょう。

対象外の居宅サービス

どのような状況においても、医療費控除の対象とならない居宅介護サービスもあります。対象外となるのは、大きく分けて以下の5つです。

  • 訪問介護(生活援助中心型)
  • 認知症対応型共同生活介護「グループホーム」
  • 特定施設入居生活介護「有料老人ホーム」
  • 福祉用具貸与
  • 旧複合型の看護・小規模多機能型居宅介護

※すべて予防(要支援1・2の方が受けるサービス)を含む

訪問系のサービスでは、提供されるサービスが「生活援助」中心の場合、医療費控除の対象外となってしまいます。ただし、上記のサービスであっても、「介護士による客痰吸引」は、10%が控除として申告可能です。

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高額介護サービス費の支給の申請方法

高額介護サービス費とは、月々の負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分の金額が払戻される制度です。自己負担の限度額は世帯の年収に応じて区分が決められており、4段階に分類されています。

医療控除の対象と違い、高額介護サービス費はすべての介護サービスで申告が可能です。とはいえ、利用料の全額が対象となる訳ではなく、一部対象外となる料金もあります。

制度を利用するための手順は、以下の通りです。

  • 市区町村から申請書が郵送されてくる
  • 自治体の介護保険課や高齢障害支援課へ書類提出
  • 審査の通過で払い込みされる

ここからは、それぞれの詳しい手順や方法について説明していきます。

市区町村から申請書が郵送されてくる

高額介護サービス費が支給される対象者には、各市区町村から「高額介護(介護予防)サービス費給付のお知らせ」が届きます。お知らせは自動で送られてくるため、自分で計算する必要はありません。

郵送される時期は、サービス利用月からおおよそ3ヶ月後です。ただし、介護サービス事業所と国保連合会で行う請求業務内容によっては数ヶ月送れる場合もあります。

また、申請書が届いているのに気づかなかった場合は、さかのぼって2年までであれば申請が可能です。

自治体の介護保険課や高齢障害支援課へ書類提出

市区町村から郵送されてきた申請書は、必要事項を記入後、各自治体の介護保険課や高齢者障がい支援課へ提出します。

申請に必要なものは、以下の通りです。

  • 印鑑
  • 介護保険被保険者証
  • 高額介護サービス費支給申請書
  • 振込先の通帳(サービス受給者名義の通帳)

上記の持ち物は、あくまでも一例です。介護保険に関する申請は、各地方自治体で取り扱いが異なるため、事前に役所・役場へ電話をして必要な物を確認しておくと安心です。

なお、申請書の提出が必要なのは初回のみです。以降は高額介護サービス費の対象となった際、自動的に登録した口座へ払戻金が振り込まれます。

審査の通過で払い込みされる

書類提出後、審査に通過すると、一定額を超えた分の金額が払込みされます。払込みの時期は、申請からおおむね1〜2カ月後です。振り込み予定日は「支給決定通知書」にて通達されます。

高額介護サービス費で注意して欲しいポイントは、「介護保険の点数オーバーで発生した自己負担分は高額介護サービス費の対象外」という点です。特に在宅サービスの利用者は、担当のケアマネージャーとしっかり相談し、サービスの回数を検討しましょう。

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医療費控除は「支払った金額から払い戻しを受けた金額を差し引いて申告」する

医療費控除の際に注意しなければならないのが、「支払った金額から高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額を差し引いて申告する」といった点です。

医療費控除と高額介護サービス費を併用する場合は注意しましょう。

また、医療費控除の申請を行う際、支給された高額介護サービス費は、確定申告書の「医療を補てんする保険金等」に該当します。民間の介護保険であっても同様です。

他にも、医療・介護費の軽減制度には、「高額療養費制度」「高額医療合算介護サービス費」「高額介護合算療養費」などがあります。ご自身の支払額に応じて、適切な制度を活用しましょう。

高額介護サービス費と医療控除を併用する際には注意事項を理解しよう

高額介護サービス費制度を利用していた場合、医療費控除の対象額面から高額介護サービス費の払戻金額が差し引かれた額面が対象となります。純粋な医療・介護費が対象となる訳ではないので、注意しましょう。

介護保険サービスにはさまざまな補助制度が備えられています。しかし、制度自体を把握していない方が多く、知らず知らずに損をしている場合が多いです。

日々の介護・医療費は決して安い物ではありません。少しでも制度を活用し、家系の負担軽減に繋げましょう。

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