介護付き有料老人ホームの医療費控除の対象は?負担軽減の方法も解説

介護付き有料老人ホームの医療費控除の対象は?負担軽減の方法も解説

介護において、お金の不安を抱える方は多いでしょう。

介護期間が長引くことにより、必要となる介護サービスが増えるため、費用負担も増えるかもしれません。

少しでも負担を減らしたいと思った時に有効なのは、医療費控除ではないでしょうか?

特に、高額な費用がかかるとされる介護付き有料老人ホームに入居を検討されている方や入居中の方は、ぜひ利用したい制度の一つです。

この記事では、介護付き有料老人ホームで利用できる医療費控除やそのほかの制度を活用して費用を軽減する方法を紹介しますので、お金の不安解消にお役立てください。

ウーマンライフパートナー
所有資格:ファイナンシャルプランナーAFP,年金アドバイザー3級
専門分野:社会保険,税金
職業: ファイナンシャルプランナー

仕事と介護を両立しながら、親の介護を15年経験。ケアマネに相談し、介護保険制度を最大限に活用して在宅で過ごす。病気が進行して障害者になり、税制優遇制度も有効に利用。長年の介護経験から、FP勉強会でセミナー講師を務め、わかりやすいと定評がある。詳しくはこちら

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介護付き有料老人ホームの医療費控除について

介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」に該当し、入居にかかる家賃、食費、介護サービス費のすべてが医療費控除の対象外です。

ただし、介護付き有料老人ホームに入居しながら医療機関を利用した費用は、医療費控除の対象になります。

そこで、介護付き有料老人ホームの入居者でも医療費控除の対象となる条件があるか、確認してみましょう。

介護付き有料老人ホームで対象外の医療費控除

介護付き有料老人ホームは、介護保険で民間企業が運営する「住宅ならびにサービス」に該当します。したがって、月額料金である家賃、食費、介護サービス費、生活費全般が対象外です。

また、日常生活費や特別なサービス費も対象外になります。

日常生活費は、理美容代のほか、施設サービスにおいて日常生活で必要となる費用をいいます。

介護付き有料老人ホームで対象になる医療費控除

介護付き有料老人ホームに入居中の方で医療費控除の対象になる費用は下記の通りです。

  • 医師または歯科医師による診療費
  • 治療に必要な薬代
  • 医療機関への通院費、医師の送迎費、入院時の食事代、部屋代、医療用器具の購入代
  • あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師に対する治療費
  • 治療に必要な義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費

上記以外にも、厚生労働大臣が定める疾病の方、あるいは主治医から特別訪問看護指示書に基づき訪問看護を利用した場合には、支払った費用が対象になります。

また、介護福祉士等による喀痰吸引、経管栄養を受けている場合の介護サービス費のうち10/1の金額が医療費控除の対象になります。

【参考:国税庁「No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価」】
【参考:国税庁「No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」】

そもそも医療費控除とは?

医療費控除とは、該当する年の1月1日から12月31日までの1年間で実際に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合、所得にかかる税金を差し引く制度です。

なお、一定額とは、生計を共にするご家族全員の医療費の合計金額が10万円以上の場合に、10万円を超えた医療費が控除額となります。また、所得が200万円未満の場合は、所得の5%が医療費控除額となります。[mn4]

そして、医療費控除を受けるためには確定申告の手続きが必要です。原則、確定申告の手続きを翌年の2月16日~3月15日までに行わなければなりませんが、医療費控除による還付金は翌年の1月から申告できます。

では、医療費控除の対象になる「実際に支払った医療費」とはどこまでの範囲を意味するのでしょうか。下記で詳しく解説します。

医療費控除に必要な条件

医療費控除の条件は、法律で具体的に決められており、下記の通りです。

  • 申告する納税者が、自分やご家族などの生計を共にしている方のために実際に支払った医療費である
  • 該当する年の1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費である(未払いの医療費は、実際に支払いを行った年の医療費控除の対象になります)

※「生計を共にする」とは、同居や別居を問わず、日常で使用するお金を共有している状態をいいます。

また、医療保険から受け取る給付金などで医療費がまかなえた場合や、遺族年金などの非課税年金を受給している方などは医療費控除を受けられないので注意しましょう。

【参考:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

医療費控除の対象になる費用

医療費控除の対象になる費用は、治療目的で支払った医療費のみとなります。

具体的な費用は表の通りです。

種類 対象になる費用
医療関連
  • 医師または歯科医師に対する治療費
  • 治療に必要な薬代
  • 病院、診療所、介護老人保健施設などの入院費ならびに入所費
  • あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師に対する治療費
  • 保健師、看護師による療養のための世話に対する報酬
  • 助産婦による分娩介助に対する報酬
  • 医療機関への通院費、医師の送迎費、入院時の食事代、部屋代、医療用器具の購入費
  • 治療に必要な義手、義足、松葉杖、義歯、眼鏡などの購入費
介護関連
  • 介護福祉士等による喀痰吸引、経管栄養に対する報酬
  • 介護保険等制度に基づく施設・居宅サービスで提供されたサービス費
  • 身体障害者福祉法、知的障害者福祉法で定められている費用のうち、医師等の診療費用に相当するもの
  • 6ヶ月以上寝たきりで医師の治療を受けている方のおむつ代(おむつ使用証明書が必要)
上記以外
  • 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
  • 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
  • 一定の基準に該当する特定保健指導に支払う自己負担金

【参考:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」

医療費控除の対象にならない費用

医療費控除の対象にならない費用の例は下記の通りです。

  • 自己都合で利用した差額ベッド費
  • 美容整形の費用
  • 人間ドックなど健康診断の費用(治療をした場合は対象)
  • 漢方薬、サプリメント、ビタミン剤の費用
  • 里帰り出産のための交通費
  • タクシー代(電車やバスなどの公共交通機関の使用ができない場合を除く)
  • 自家用車のガソリン代や駐車料金
  • 予防接種の費用

上記の通り、直接治療に関係ない場合や自己都合による費用は対象になりませんので注意しましょう。

【参考:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」】

医療費控除の手続き方法と注意点

次に、医療費控除を受ける際の手続きはどのようにしたらよいのか疑問を感じている方に、手続き方法や注意点について解説します。

まず、医療費控除を受けるには「確定申告」が必要です。

確定申告とは、実際の所得を税務署に申告して、予定納税額または源泉徴収額が多ければ還付金を受けられ、少なければ不足分を納税する必要があるので覚えておきましょう。

医療費控除の手続き方法

医療控除の手続き方法は次の5つです。

  1. 医療費控除を受けられるか確認する
  2. 医療費控除額と還付金を計算する
  3. 確定申告書と医療費控除明細書を作成する
  4. 税務署に提出する
  5. 還付金の受け取り

では、それぞれの手順にそって解説します。

STEP1 医療費控除を受けられるか確認する

医療費控除の対象になる、生計を共にするご家族や自分が支払った医療費が10万円を超えているか確認しましょう。

「医療費のお知らせ」や領収書を集めて支払った医療費を合計してください。

STEP2 医療費控除額と還付金を計算する

医療費控除額と還付金をそれぞれ計算します。

【医療費控除の計算式】

医療費控除額=「実際に支払った医療費の合計額」-「1」-「2」

1.保険金などで補てんされた金額(出産育児一時金、高額療養費、民間生命保険の入院給付金や手術給付金など)

2.10万円(所得合計金額が200万円までの方は、所得合計金額×5%)

【所得税率を確認する】

所得税の税率は7つの区分に分けられます。

「給与所得控除後の金額」-「所得控除の合計」=課税所得税

課税所得額 所得税率 控除額
1000円~1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円~3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円~6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円~8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円~17,999,000まで 33% 1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円まで 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

【参考:国税庁「所得税の税率」

【還付金額の計算例】

「医療費控除額」-「所得控除の合計」=還付金額

(計算例)

※医療費控除額5万円、所得合計金額300万円の場合、

所得税率は10%です。

5万円×10%=5,000円

STEP3 確定申告書と医療費控除の明細書を作成する

手続きに必要な書類は全部で4つです。

  • 医療費控除の明細書
  • 源泉徴収票
  • 確定申告AまたはB(2023年1月からAは廃止になり、Bのみに一本化されます)
  • マイナンバーなどの本人確認書類

医療費控除の明細書は自分で作成する必要があり、書類を税務署で取り寄せるか、国税庁のサイトからダウンロードして作成します。

作成には、病院や薬局名、医療費の区分、支払った金額などの記入欄があり、医療費を支払った際の領収書やレシートが必要です。

確定申告AまたはBとは、申告の条件によって使い分けます。Aは、所得が給与所得や公的年金、そのほかの雑所得のみとなっており、予定納税がない場合に使用します。一方でBは、所得の制限はなく、誰でも使用できる書類です。

STEP4 税務署に提出する

医療費控除で税金の還付を受け取る手続きに必要な確定申告は、原則2月16日〜3月15日の期間中に手続きを行います

もし期日を過ぎてしまった場合でも、過去5年間をさかのぼって手続きができます。

STEP5 還付金の受け取り

確定申告から約1ヶ月~1ヶ月半ほどで指定した預貯金口座もしくはゆうちょ銀行、郵便局の窓口で受け取りましょう。

【注意点】領収書や明細書を保管しておく

医療費控除の手続きに必要な「医療費控除の明細書」の作成では、病院や薬局で支払った領収書やレシートに記載されている医療費や医療機関の名称の記入が必要です。

必ず大切に保管しておきましょう

また、領収書は提出する必要はありませんが、税務署に提出を求められる場合があります。

そのため、医療機関の領収書やレシートは5年間の保管義務が定められていますので、期間中は紛失しないように注意が必要です。

介護付き有料老人ホームで医療費控除以外の費用を減らす方法

ここでは、医療費控除以外に介護付き有料老人ホームの費用を軽減できる方法を紹介します。

  • 高額介護サービス費
  • 限度額適用認定証
  • 高額療養費・高額介護合算療養費

下記の通り解説します。

高額介護サービス費

高額介護サービス費は、介護保険サービス費として一定額以上の支払いがあった場合に、負担を軽減する制度です。

利用者負担段階区分 世帯の上限額 個人の上限額
生活保護の受給者など 15,000円
世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下 24,600円 15,000円
世帯全員が住民税非課税 24,600円
住民税課税~課税所得380万円未満 44,400円
課税所得380万円~690万円未満 93,000円
課税所得690万円以上 140,100円

出典:厚生労働省「kouro高サ費OL

このように、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担が上限額を超えた場合、超えた金額が補助されます。

ただし、払い戻しになるため、先に費用負担が必要になります。

【参考:厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額」

限度額適用認定証

限度額適用認定証は、入院などで高額な医療費がかかる場合に、医療機関で支払う自己負担額の上限をあらかじめ設定する方法です。

加入している健康保険の窓口に申請を行えば、多額の医療費を立て替えずに済むため、費用負担の軽減が可能です。

ただし、加入している協会けんぽや健康保険組合などの被用者保険と、国民健康保険では申請方法が異なります。

また、加入している健康保険がわからない方は、健康保険証の表面を確認すると記載されています。

健康保険の申請方法を確認して、申請手続きを行いましょう。

【参考:全国健康保険協会「限度額適用認定証をご利用ください 」

高額医療・高額介護合算療養費

高額医療・高額介護合算療養費は、医療費と介護サービス費の両方の支払いをしている方が8月~翌年の7月の1年間に一定の金額を超えた場合に、その負担を軽減するために払い戻しを受けられる制度です。

所得区分 被用者保険または国民健康保険+介護保険加入で70歳未満の方がいる世帯 被用者保険または国民健康保険+介護保険加入で70歳から74歳の方がいる世帯 後期高齢者医療制度+介護保険加入の方
標準報酬月額83万円以上

年収1,160万円以上

212万円 67万円 67万円
標準報酬月額53~79万円

年収約770~約1,160万円

141万円 67万円 67万円
標準報酬月額28~50万円

年収約370~約770万円

67万円 67万円 67万円
標準報酬月額26万円以下

~年収約370万円

60万円 56万円 56万円
住民税非課税世帯で、下記以外の方 34万円 31万円 31万円
住民税非課税世帯で、年金収入が80万円以下の方等 34万円 19万円 19万円

高額医療・高額介護合算療養費は、医療保険を利用する治療費や介護保険のサービスが対象です。

そのため、家賃や食費、日用品などの生活費用や差額ベッド代、福祉用具の購入費用などは対象外になります。

【参考:厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」
【参考:厚生労働省「高額介護合算療養費制度について 」

医療費控除や社会保険制度を活用して費用負担を減らそう

介護付き有料老人ホームの月額費用は医療費控除の対象外ですが、入居中に利用した医療機関の診察代や薬代、一部の介護サービスは医療費控除の対象です。

また、おむつ代は医師による「おむつ使用証明書」の発行があれば医療費控除の対象になります。

医療費控除の手続きには、医療機関での領収証や明細書が必要になるので大切に保管しておきましょう。なお、保管期間の定めは5年間です。

高額な費用が必要とされる介護付き有料老人ホームであっても、税金の控除や助成制度を上手に活用して、ご自身の希望する条件にあった施設を探しましょう。

介護付き有料老人ホームは医療費控除の対象にならないのでしょうか?

介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」に該当するため対象外になります。ただし、医療費控除が受けられる費用がある場合には、請求書に「医療費控除対象」などの記載がされますので確認してみましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

入居している介護付き有料老人ホームで受けた診察や薬代は医療費控除の対象になりますか?

はい。医療費控除の対象になりますので、領収書や明細書の保管を忘れずにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。

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