介護付き有料老人ホームへの入居を検討する際、「医療費控除を利用できるのか」は多くの方が気になる重要なポイントです。
結論から言うと、介護付き有料老人ホームの月額料金は原則として医療費控除の対象になりません。
しかし、入居中に医療機関を利用した費用や、一定の条件を満たす介護サービス費は例外的に控除の対象になります。
本記事では、介護付き有料老人ホームにおける医療費控除の対象となる費用と対象外の費用、申請方法や費用負担を軽減できるその他の制度について詳しく解説します。

そもそも医療費控除とは?
医療費控除は、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除です。
医療費控除の基本ルールを以下にまとめました。
生計を一にする配偶者や親族の医療費も合算できるため、家族の介護付き有料老人ホーム入居に伴う医療費も対象に含められる場合があります。
「生計を一にする」とは、日常の生活費を共通にしている状態です。たとえば、同居していない親族でも、仕送りなどで生活費を負担している場合は対象に含まれる可能性が高いです。
給与所得者であっても、医療費控除を受けるには確定申告が必要です。年末調整だけでは適用されないのでご注意ください。
参考:No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価 | 国税庁
介護付き有料老人ホームで医療費控除はできる?
介護付き有料老人ホームにおいてかかる費用の一部は医療費控除ができます。すべての費用を控除できるわけではありませんのでご注意ください。
本章では、介護付き有料老人ホームにおいて医療控除ができる費用と、できない人についてご紹介していきます。
医療費控除の対象となる費用
介護付き有料老人ホームに入居中でも、治療を目的とした医療費は医療費控除の対象になります。
これらの費用は、医療控除が可能です。
なお、基本的に介護付き有料老人ホームで訪問看護は利用できませんが、例外的に利用できるときには医療保険が適用されます。
実費負担の部分についても医療費控除が使えますので、訪問看護を利用する場合は申請しておきましょう。
医療費控除の対象とならない費用
介護付き有料老人ホームの月額料金である家賃・食費・介護サービス費・生活費全般は、医療費控除の対象になりません。
訪問介護などの居宅サービスについても、医療系サービスと組み合わせずに単独で利用する場合、有料老人ホームでの利用分は対象になりません。
参考:No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価 | 国税庁
医療費控除の申請方法と必要書類
次に、医療費控除を受ける際の手続きはどのようにしたらよいのか疑問を感じている方に、手続き方法や注意点について解説します。
まず、医療費控除を受けるには「確定申告」が必要です。
確定申告とは、実際の所得を税務署に申告して、予定納税額または源泉徴収額が多ければ還付金を受けられ、少なければ不足分を納税する必要があるので覚えておきましょう。
医療費控除の申請方法
医療控除の手続き方法は次の5つです。
- 医療費控除を受けられるか確認する
- 医療費控除額と還付金を計算する
- 確定申告書と医療費控除明細書を作成する
- 税務署に提出する
- 還付金の受け取り
では、それぞれの手順にそって解説します。
STEP1 医療費控除を受けられるか確認する
医療費控除の対象になる、生計を共にするご家族や自分が支払った医療費が10万円を超えているか確認しましょう。
「医療費のお知らせ」や領収書を集めて支払った医療費を合計してください。
STEP2 医療費控除額と還付金を計算する
医療費控除額と還付金をそれぞれ計算します。
【医療費控除の計算式】
医療費控除額=「実際に支払った医療費の合計額」-「1」-「2」
1.保険金などで補てんされた金額(出産育児一時金、高額療養費、民間生命保険の入院給付金や手術給付金など)
2.10万円(所得合計金額が200万円までの方は、所得合計金額×5%)
【所得税率を確認する】
所得税の税率は7つの区分に分けられます。
「給与所得控除後の金額」-「所得控除の合計」=課税所得税
| 課税所得額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1000円~1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円~6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~17,999,000まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円~39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
【参考:国税庁「所得税の税率」】
【還付金額の計算例】
「医療費控除額」-「所得控除の合計」=還付金額
(計算例)
※医療費控除額5万円、所得合計金額300万円の場合、
所得税率は10%です。
5万円×10%=5,000円
STEP3 確定申告書と医療費控除の明細書を作成する
手続きに必要な書類は全部で4つです。
- 医療費控除の明細書
- 源泉徴収票
- 確定申告AまたはB(2023年1月からAは廃止になり、Bのみに一本化されます)
- マイナンバーなどの本人確認書類
医療費控除の明細書は自分で作成する必要があり、書類を税務署で取り寄せるか、国税庁のサイトからダウンロードして作成します。
作成には、病院や薬局名、医療費の区分、支払った金額などの記入欄があり、医療費を支払った際の領収書やレシートが必要です。
確定申告AまたはBとは、申告の条件によって使い分けます。Aは、所得が給与所得や公的年金、そのほかの雑所得のみとなっており、予定納税がない場合に使用します。一方でBは、所得の制限はなく、誰でも使用できる書類です。
STEP4 税務署に提出する
医療費控除で税金の還付を受け取る手続きに必要な確定申告は、原則2月16日〜3月15日の期間中に手続きを行います。
もし期日を過ぎてしまった場合でも、過去5年間をさかのぼって手続きができます。
STEP5 還付金の受け取り
確定申告から約1ヶ月~1ヶ月半ほどで指定した預貯金口座もしくはゆうちょ銀行、郵便局の窓口で受け取りましょう。
必要書類
医療費控除の手続きに必要な「医療費控除の明細書」の作成では、病院や薬局で支払った領収書やレシートに記載されている医療費や医療機関の名称の記入が必要です。
必ず大切に保管しておきましょう。
また、領収書は提出する必要はありませんが、税務署に提出を求められる場合があります。
そのため、医療機関の領収書やレシートは5年間の保管義務が定められていますので、期間中は紛失しないように注意が必要です。
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介護付き有料老人ホームで医療費控除以外の費用を減らす方法
ここでは、医療費控除以外に介護付き有料老人ホームの費用を軽減できる方法を紹介します。
- 高額介護サービス費
- 限度額適用認定証
- 高額療養費・高額介護合算療養費
下記の通り解説します。
高額介護サービス費
高額介護サービス費は、介護保険サービス費として一定額以上の支払いがあった場合に、負担を軽減する制度です。
| 利用者負担段階区分 | 世帯の上限額 | 個人の上限額 |
|---|---|---|
| 生活保護の受給者など | 15,000円 | |
| 世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下 | 24,600円 | 15,000円 |
| 世帯全員が住民税非課税 | 24,600円 | |
| 住民税課税~課税所得380万円未満 | 44,400円 | |
| 課税所得380万円~690万円未満 | 93,000円 | |
| 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
出典:厚生労働省「kouro高サ費OL」
このように、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担が上限額を超えた場合、超えた金額が補助されます。
ただし、払い戻しになるため、先に費用負担が必要になります。
限度額適用認定証
限度額適用認定証は、入院などで高額な医療費がかかる場合に、医療機関で支払う自己負担額の上限をあらかじめ設定する方法です。
加入している健康保険の窓口に申請を行えば、多額の医療費を立て替えずに済むため、費用負担の軽減が可能です。
ただし、加入している協会けんぽや健康保険組合などの被用者保険と、国民健康保険では申請方法が異なります。
また、加入している健康保険がわからない方は、健康保険証の表面を確認すると記載されています。
健康保険の申請方法を確認して、申請手続きを行いましょう。
【参考:全国健康保険協会「限度額適用認定証をご利用ください 」】
高額医療・高額介護合算療養費
高額医療・高額介護合算療養費は、医療費と介護サービス費の両方の支払いをしている方が8月~翌年の7月の1年間に一定の金額を超えた場合に、その負担を軽減するために払い戻しを受けられる制度です。
| 所得区分 | 被用者保険または国民健康保険+介護保険加入で70歳未満の方がいる世帯 | 被用者保険または国民健康保険+介護保険加入で70歳から74歳の方がいる世帯 | 後期高齢者医療制度+介護保険加入の方 |
|---|---|---|---|
| 標準報酬月額83万円以上 年収1,160万円以上 | 212万円 | 67万円 | 67万円 |
| 標準報酬月額53~79万円 年収約770~約1,160万円 | 141万円 | 67万円 | 67万円 |
| 標準報酬月額28~50万円 年収約370~約770万円 | 67万円 | 67万円 | 67万円 |
| 標準報酬月額26万円以下 ~年収約370万円 | 60万円 | 56万円 | 56万円 |
| 住民税非課税世帯で、下記以外の方 | 34万円 | 31万円 | 31万円 |
| 住民税非課税世帯で、年金収入が80万円以下の方等 | 34万円 | 19万円 | 19万円 |
高額医療・高額介護合算療養費は、医療保険を利用する治療費や介護保険のサービスが対象です。
そのため、家賃や食費、日用品などの生活費用や差額ベッド代、福祉用具の購入費用などは対象外になります。
【参考:厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」】
【参考:厚生労働省「高額介護合算療養費制度について 」】
医療費控除や社会保険制度を活用して費用負担を減らそう
介護付き有料老人ホームの月額費用は医療費控除の対象外ですが、入居中に利用した医療機関の診察代や薬代、一部の介護サービスは医療費控除の対象です。
また、おむつ代は医師による「おむつ使用証明書」の発行があれば医療費控除の対象になります。
医療費控除の手続きには、医療機関での領収証や明細書が必要になるので大切に保管しておきましょう。なお、保管期間の定めは5年間です。
高額な費用が必要とされる介護付き有料老人ホームであっても、税金の控除や助成制度を上手に活用して、ご自身の希望する条件にあった施設を探しましょう。
介護付き有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」に該当するため対象外になります。ただし、医療費控除が受けられる費用がある場合には、請求書に「医療費控除対象」などの記載がされますので確認してみましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
はい。医療費控除の対象になりますので、領収書や明細書の保管を忘れずにしましょう。詳しくはこちらをご覧ください。