入居前はどのような状況でしたか?
母は87歳で、要介護の認定を受けていました。以前は私と同居して暮らしていた時期もありましたが、認知症の症状から言動に変化が見られ、一度サービス付き高齢者向け住宅に入居して約2年半を穏やかに過ごしていました。しかし、その後乳がんが肺や腕の付け根、さらには頭の方にまで転移してしまい、痛みも出てきたことで病状が悪化し、高熱を出して倒れて急遽病院へ入院することになりました。
入院してからの生活は、母にとっても家族にとっても非常に辛いものでした。高齢者が数ヶ月間入院すると認知機能が落ちてしまうと言われますが、母も例外ではなく、入院生活の中で状態が大きく変わってしまいました。さらに病院では、安全管理のためとはいえ母の手足がベッドに縛り付けられて拘束されてしまったのです。
認知症の症状に加えてがんの転移による痛みを抱え、その上ベッドの上で手足を拘束されて身動きが取れなくなっている母の姿を見るのは、本当にいたたまれず、かわいそうでなりませんでした。病院に通って母の様子を見るたびに胸が締め付けられるような思いがし、精神的にも大きな負担と辛さを感じていました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
施設探しを始めた直接のきっかけは、入院先の病院で母が手足を縛り付けられて拘束されている姿を目の当たりにし、どうしてもそこから出してあげたいと強く思ったことでした。
がんが進行して痛みもある中で、何ヶ月もベッドに縛られたまま入院生活を続けさせるのはあまりにも不憫でしたし、拘束されることで母の精神状態や認知機能がさらに崩れていくのを感じていました。
このまま病院に閉じ込めておくのではなく、手足の拘束を解いて、人としての尊厳を保ちながら痛みを緩和し、少しでも穏やかな環境で残された時間を過ごさせてあげたいと考えました。そこで、手厚い看護体制があり、母を拘束せずに受け入れてくれる施設を急いで探すことに決めました。2023年の9月上旬頃から本格的に動き出し、病院からの退院と施設への転院を目指して相談を始めました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
病院から施設へ移すという決断そのものについては、迷いやためらいはありませんでした。何しろ母が手足を縛られている病院の環境が嫌で仕方がなかったので、一刻も早くそこから連れ出してあげたい、拘束のない環境に移してあげたいという一心でした。
ただ、母のこれまでの歩みを振り返ると、複雑な感情や申し訳なさが胸をよぎることもありました。自宅で同居していた頃、認知症だと頭では理解していても、母の突拍子もない言動にどうしても腹が立って喧嘩になってしまうことがありました。育ててもらった恩がある実の親に対して、夜寝る前になって、認知症の病気のせいなのにどうしてあんなに強く言ってしまったのだろう、と自分を責めて激しく落ち込んだ記憶が何度も蘇りました。
自宅から施設へ、施設から入院へ、そしてまた別の施設へと、母の暮らす環境を転々と変えさせてしまっていることに対しても、母自身の心と身体にどれほどの負担をかけてしまっているだろうかという申し訳なさは常に心の中にありました。それでも、今の過酷な病院の拘束状態から救い出すためには施設への入居が最善の道だと信じて決断しました。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学時には、道路を挟んですぐ目の前にあった別の新しい施設とも比較検討を行いました。
そちらの施設は月々の費用が10万円ほど高かったのですが、実際に見学してみると居室の広さや設備自体はほとんど変わりがなく、共有のリビングが見た目だけ豪華に作られているという印象でした。
見た目の豪華さだけで余計な費用を払う必要はないと判断し、もし実際に入居してみてどうしても合わなければその時に別の施設へ移ればいいという割り切った気持ちで見学を終えたため、施設自体に対して大きな不安を抱くことはありませんでした。