入居前はどのような状況でしたか?
父と母が施設にお世話になり始めたのは、二人とも85歳くらいの頃でした。それまでは夫婦二人で、私の家の近くのアパートで暮らしていました。母は要介護2か3の認定を受けていて、家の中では歩行器を使い、外出の際は車椅子が必要な状態。一方、父は要支援1程度で身の回りのことは自分でできていましたが、入居の1年半ほど前に胃がんの手術をしてから、すっかり痩せて体力が落ちてしまっていました。
二人とも認知症はありませんでしたが、だんだんと体の自由が利かなくなっていく母の姿を見ていると、心配は尽きませんでした。特に、家の中で転倒でもしたらどうしよう、という不安は常にありましたね。私も近くに住んでいるとはいえ、四六時中様子を見ているわけにはいきませんから、何かあった時にすぐ対応できないことが一番の気がかりでした。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを考え始めたのは、父の体力の低下がきっかけです。胃がんの手術後、体力的に母の介護をすることが難しくなってきたようでした。母は少しふくよかな体型だったので、もし家の中で倒れてしまった時、父一人の力では抱き起こすことができない、と。その話を聞いた時、このままでは二人とも倒れてしまうかもしれない、と感じました。
そこで、弟とも相談し、両親の安全を第一に考えて施設への入居を検討することにしたんです。もし二人で暮らすなら私の家の近くがいいですが、施設に入るのであれば、弟の家の近くの方が何かと都合がいいだろうということで、弟に施設探しを任せることにしました。それが、入居する少し前の年の秋頃のことです。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
施設にお願いすることを決めたものの、やはり申し訳ないという気持ちはありました。特に気になったのは食事のことです。栄養バランスを考えて作られていることは分かっていても、どうしても制限があったり、薄味になったりしますよね。今まで家で好きなものを食べてきたのに、これからはそうもいかなくなるんだろうなと思うと、その点だけは本当に可哀想だな、という気持ちがありました。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学は弟が行ってくれたので、私は直接施設を見ていたわけではありません。ただ、当時は介護施設での心ないニュースが報道されることもあったので、「意地悪な職員さんがいたらどうしよう」という漠然とした不安はありました。大切な両親を預けるわけですから、やはりスタッフの方々の人柄は一番気になるところでしたね。
あとは、やはり食事の面です。きっと美味しいものは食べられないだろうな、という諦めに近い気持ちがあり、両親が食事を楽しめなくなるのではないかという点が心配でした。