入居前はどのような状況でしたか?
母は72歳の頃、病院に入院していました。
当時からほとんど寝たきりの状態で、自ら言葉を発することは難しく、こちらの問いかけに静かに頷いてくれるのが精一杯のコミュニケーションでした。
幸い、認知症の症状や、特別な医療処置が必要な病気はありませんでしたが、意思疎通が難しい母をこれからどう支えていけば良いのか、家族としては途方に暮れるような気持ちでいたのを覚えています。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを始めたのは、入院していた病院から「こういう施設があるよ」と紹介していただいたのが直接のきっかけです。
退院後の生活の場を、真剣に考えなければならない時期でした。
施設を探す上で何よりも重視したのは、面会ができるかどうか。当時はちょうどコロナ禍で、多くの施設が面会を厳しく制限していました。
どんな状況でも顔を見て安心したい、という思いが一番強かったですね。その上で、私たち家族がいつでも駆けつけられるように、自宅から通いやすい場所にあることも大切な条件でした。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
母自身は、施設に入ることに抵抗を示すことはありませんでした。
というより、自分の意思をはっきりと伝えられる状態ではなかったのです。「施設は嫌だ」という言葉もなければ、積極的に「行きたい」という素振りもありません。
ただ静かに、私たちの話を聞いているだけでした。
だからこそ、家族である私たちがすべてを決めてしまって本当に良いのだろうか、という迷いは常にありました。
罪悪感というよりも、「母にとっての最善の選択をしなければ」という重い責任感をずっと感じていたように思います。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
初めて施設を見学させていただいた時、すぐ近くに工場があったのが少しだけ気になりました。音はうるさくないだろうか、落ち着いて過ごせる環境なのだろうか、と少しだけ心配になったのを覚えています。