父は、施設に入居してから約1年後に、末期がんのため亡くなりました。それが退去の理由です。でも、その最期の時間がこの施設で本当に良かったと思える、かけがえのないものになりました。
父がだんだん弱っていく最後の1、2週間は、そばにいる家族にとっても辛い時間です。私は3、4日に一度のペースで訪問していました。そんなある日、いつもはかかってこない担当の介護士さんから、私の携帯に直接電話があったんです。「なんとも言えないのですが…。差し出がましいこととは存じますが、もし来られるのであれば、ぜひいらしてください」と。その言葉に促されて施設に駆けつけた、まさにその日の晩に、父は静かに呼吸を引き取りました。あのお電話がなければ、最期の瞬間に立ち会えなかったかもしれません。父の様子をそれだけ親身に見ていてくださったのだと、今でも胸が熱くなります。
最期は貼り薬で痛みをコントロールしていたので、眠っている時間は長くなりましたが、意識がなくなる直前まで、アイスを食べたり、音楽を聴いたりすることができました。口を湿らせる程度しかできなくなってからも、「お好きなもので湿らせてあげてください」と言っていただき、本当に穏やかな中で、ゆったりと父を見送ることができました。以前、同じがんで母を亡くした時は病院だったので、毎朝の血液検査など、本人にとって負担の大きい処置も多かったのですが、父はそういったこともなく、本当に楽に旅立てたのではないかと思っています。
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