入居前はどのような状況でしたか?
母が70代で、実家で一人暮らしをしていた頃の話です。
当時、母は要介護1の認定を受けており、杖を使えば自分で歩くことはできました。ただ、長年患っている糖尿病の管理が大きな課題でした。特に、合併症で目が悪くなってからは、毎日のインスリン注射を自分自身で打つことができなくなってしまったのです。
一人暮らしの母が、毎日必要な医療ケアを自分で行えない。この状況に、息子として大きな不安を感じていました。何かあってからでは遅い、専門的なケアを受けられる環境に移った方が、母にとっても安全で安心なのではないか。そんな思いが日に日に強くなっていきました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
施設探しを本格的に始めたのは、やはり母の糖尿病のケアがきっかけです。一人暮らしでインスリン注射が打てないという状況は、命にも関わる問題です。私が毎日通って対応するのも現実的ではなく、かといってこのままにしておくわけにもいきません。専門のスタッフがいる施設で、きちんと医療的な管理をしてもらうのが最善の策だと考えました。
そこで、まずはインスリン注射に対応してくれる施設、という条件で探し始めました。それが、私たちが介護施設への入居を検討するようになった直接的な経緯です。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
施設への入居を決める際、いわゆる「親を施設に入れる罪悪感」のようなものは、正直なところ特にありませんでした。というのも、私にとっては「母を預ける」という感覚ではなく、「母の安全と健康のために、より良い環境を選ぶ」という気持ちの方が強かったからです。
自宅での一人暮らしを続けることのリスクを考えれば、専門家の方々に見守っていただける施設での生活の方が、母にとって良い選択だと信じていました。ですから、葛藤というよりは、母にとって最善の道はこれだ、という前向きな気持ちで決断したのを覚えています。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
施設を見学した時点では、特に不安を感じることはありませんでした。むしろ、案内してくださった方の説明も丁寧で、施設内も整っているように見えました。これからお世話になる場所ですから、当然ながら良い面を説明してくださいますし、こちらもそれを信じます。
まさか入居後にあのような問題が出てくるとは、この時には全く予想もしていませんでした。今思えば、見学だけではわからないことがたくさんあるのだと痛感しています。