イリーゼ狛江・別邸
に89歳・女性・要介護2で入居中の方へのインタビュー

もともと母がいた前の施設は、お昼になると皆さんが集まって、そこでワイワイと会話できる人がいたらしいんですね。ただ、従業員の方の人の入れ替えが激しい時期があったのと、お風呂がシャワーしか浴びられないのが嫌だ、というのは結構何度も言っていました。

前の施設で人の入れ替えが激しかった時期に、母自身が「この先どうなるんだろう」と将来に不安を感じたみたいで。それで、本人から「他の場所に移りたい」というリクエストがあったんです。それが施設を探し直した直接のきっかけですね。

転居したんですけど、結局、なかなか会話する人がいないということで、母はかなりストレスを感じています。見学の時に感じた不安が、今まさにネックになって残っている、という感じですね。 最初のうちは我慢していたんだと思うんですけど、ここに来て、私への電話がすごく増えました。毎日のように「早く出たい」「もう嫌だ」というリクエストが来ます。「喋る人がいないんだよ」って。その度に「今探しているから待ってくれ」と、なんとか抑えているのが現状です。

イリーゼ狛江・別邸を見学させてもらった時、入居している方の認知症が結構進んでいらっしゃる方が多いな、という印象でした。母は高齢ですけど、頭ははっきりしていて人と喋るのが好きなので…。なんとなく見てると皆さんすごく静かで、ほとんど会話がない。「ここで母はうまくやっていけるのかな」っていう不安は、正直ありましたね。

スタッフさんのサービスというか、サポートは良いとは思います。お友達ができないという母の悩みを分かってくれていて、食事の時にはお話できる人の席にしてくれる、といった気遣いもしてくれているようです。施設の方の対応自体には、特に問題はありません。

前の施設ではシャワーしか浴びられないのが母の不満だったので、今回ちゃんとお風呂に入れるようになったのは大きな決め手でした。ここは車椅子というか、座った状態でそのまま入れるタイプの機械浴で、そちらは問題なく利用できているようです。その点は良かったですね。

施設の部屋とかは、普通に綺麗ですし、お掃除もしてくれます。まあまあ清潔感は保たれていて、生活する環境としては特に不満はない、といったところですかね。

結局、母にとっては、前の施設で不満だった「人の入れ替え」とか「シャワーしか浴びれない」といったことよりも、「お友達と会話する人がいない」ことの方が、優先度が高かったんだなと。 今ではもう、当時の不満も忘れてしまったみたいで、「前の施設の方がお友達がいて良かった。戻りたい」なんて話をよくしています。何が本人にとって一番大切なのか、その優先順位を考えることの難しさを痛感しました。

母の部屋のエアコンが夏になると「ポコポコ」うるさいんですよ。気圧の関係だと思うんですけど、ずっと音が鳴り続けていて。あれはすごいストレスだと思いますね。施設にお話はしたんですが、なかなか改善はされなくて…。 そして、やはり入居者同士の接点をもっと作っていただけたら、という点ですね。施設は3階建てなのですが、スタッフの方々は認知症が進んでいらっしゃる方のケアで忙しそうで、各フロアにあるくつろぎスペースに行っても、皆さん車椅子で集まってただぼーっとしてるだけ、という感じで…。母がいる2階も同じような状況で、見守りという意味合いなんでしょうけど、母のようにまだ元気な人が集まって話せるような機会が、なかなかないんです。 ケアプランには「会話を楽しめる場を作ります」みたいなことを書いてくれているんですけど、「それって実行されてるんだろうか」というのが、正直よく分からないですね。

「完璧な施設はない」と分かっていても、ご家族にとって何が最善の選択なのか悩みは尽きないものです。今回の息子様のお話からは、お母様を思う真摯なお気持ちと、施設選びの難しさ、そして入居後の現実がひしひしと伝わってきました。「設備」や「サービスの質」といったハード面が満たされても、ご本人の希望、特に人との繋がりというソフト面が、いかに大切かを改めて考えさせられる貴重なインタビューでした。この体験談が、今まさに施設選びの岐路に立っている方々にとって、ご自身やご家族の「譲れないものは何か」を見つめ直すきっかけとなれば幸いです。