入居前はどのような状況でしたか?
母はもともと一人で歩行することもでき、身の回りのことはある程度自分でこなせる状態でした。ただ、15年ほど前に心臓の手術を受けてから、術後の症状を和らげる目的で精神安定剤を処方されており、それを日常的に服用していました。
施設への入居を検討する3ヶ月ほど前、自宅に残っていた精神安定剤を一度にかなりの量飲んでしまうという出来事がありました。高齢ということもあり、適切ではない薬の飲み方をしてしまった状況を目の当たりにして、このまま自宅で一人で過ごさせるのは危ない、これ以上は無理だなと強く感じました。
その服薬の件があったため、まずは精神科病院に保護入院という形で一時的に入ることになりました。幸いにも院長先生が事情を聞き届けてくださり、3ヶ月なら病院で預かりますと言ってくださったため、一時的に身の安全を確保することはできましたが、いつまでも入院を続けられるわけではないため、今後の生活をどう支えていくべきか頭を抱えていました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
精神科の病院にお願いできた保護入院の受け入れ期間が3ヶ月間となっており、その期限が1月末に迫っていたことが、具体的に介護施設を探し始めた直接のきっかけでした。
母は認知症の症状としてお金を取られたといった妄想が少し出始めていたこともあり、退院した後に元の生活へそのまま戻すことは現実的ではありませんでした。また同じように薬を大量に誤飲してしまう危険もありましたので、病院を出る期限までに安心して暮らせる受け入れ先を早急に見つける必要がありました。
そこで、退院時期である1月末の入居を目指し、前年の12月中旬から本格的に介護施設を探し始めました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
母の施設入居を決めるにあたっては、家族の居場所との兼ね合いで葛藤がありました。私の弟が名古屋に住んでいたため、弟の住まいに近い施設を選べば、母も息子が近くにいることで喜んでくれるのではないかと考え、名古屋方面の施設に決めました。
しかし、結果として弟からは、なぜ名古屋に連れてきたんだというような言葉を投げかけられてしまいました。弟からすれば、近くに母がいれば顔を見に行かないわけにはいかなくなるといった負担感や心理的なプレッシャーがあったのかもしれません。
母のために良かれと思って決めたことだったのですが、それをきっかけに弟との関係がぎくしゃくしてしまい、それ以来3年ほど連絡を取らず疎遠になってしまいました。親の入居先をどこにするかという選択が、兄弟の関係にまで影響を与えてしまったことについては、複雑な気持ちが残る決断となりました。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学に訪れた際、施設の建物自体は白を基調とした5階か6階建てのビルで、内部の清掃も行き届いており、とても綺麗な印象を受けました。案内してくださったスタッフの方々の対応も明るく親切で、施設そのものに対するネガティブな印象はありませんでした。
ただ、母は海や山に囲まれた自然豊かな田舎でずっと暮らしてきた人でしたので、名古屋の街中にある施設では窓から山も海も見えないため、そうした環境の違いに母の気持ちが馴染めるだろうかという点だけは少し気がかりでした。