入居前はどのような状況でしたか?
主人を施設にお願いしたのは、75歳の時でした。当時、要介護2の認定を受けており、私と二人で自宅で暮らしていました。
もともとアルコール依存症の傾向があり、専門の病院に入院していた時期もあります。それに加えて、だんだんと認知症の症状も出始めました。言ったことをすぐに忘れてしまったり、急に口調が激しくなったりと、気分の波が見られるようになったのです。昔のことは本当によく覚えているのですが、最近の出来事が抜け落ちてしまうことが増えていきました。
幸い、体はまだ丈夫で、杖や車椅子は使っていませんでしたが、悪性リンパ腫や大動脈瘤の術後経過観察など、複数の病院に通院する必要がありました。その送迎は、すべて私の役目でした。私自身もパートの仕事を持っていましたから、一日中主人につきっきりというわけにもいきません。夜も、主人が落ち着かない様子でいると、私もなかなか気が休まらず、精神的にも体力的にも少しずつ負担が大きくなっているのを感じていました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを始めたのは、主人がアルコール依存症の治療で入院していた病院を、退院しなければならなくなったことが直接のきっかけです。
退院して自宅に戻れば、またお酒を飲んでしまうのではないかという不安が、どうしても拭えませんでした。それに、日中は仕事で家を空ける時間もありますし、認知症の症状も進んでいる中で、主人を一人にしておくことはできません。
同居していない息子や私の兄弟からも、「お母さん一人では大変だろうから、施設にお願いした方がいいんじゃないか」と心配され、背中を押される形で、主人と私の今後のために施設を探すことを決意しました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
主人を施設に預けるという決断は、本当に簡単なものではありませんでした。特に主人は、施設に入ることに強い抵抗感を示していました。施設へ向かう車の中で「どうして老人ホームへ行かなきゃいけないんだ」と言われた時のことは、今でも忘れられません。その時は、「病気の治療のためにしばらくお世話になるだけで、先生の許可が出たらまた家に帰れるから」と、なだめるように説明して、なんとか納得してもらうしかありませんでした。
当時は、日々の介護や通院、そして周りからの後押しもあり、とにかく必死で決断しました。ですが、主人が亡くなった今になって、「あの時、無理に施設に預けてしまったのは、主人にとって本当に幸せだったのだろうか」「なんだか気の毒なことをしてしまったな」という思いが、ふと胸をよぎることがあります。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学をさせていただいた時、施設に対して特に大きな不安や心配を感じることはありませんでした。スタッフの方の対応もごく普通でしたし、特に問題があるようには見えませんでした。
ただ、私たちの場合は収入も限られており、費用面で選べる施設が限られていたのも事実です。ですから、「あまり贅沢は言えないな」という気持ちで、施設を見ていたのが正直なところです。