入居前はどのような状況でしたか?
母は当時86歳、要介護1の認定を受けていました。認知症の症状もあり、特に被害妄想が強く、物がなくなったと夜中でも探し回り、しまいには「人が盗った」と言い出すような状況でした。私自身も治療で通院しており、母の介護と往復する日々で、時間的にも精神的にも余裕がありませんでした。
入居の直接のきっかけとなったのは、半年ほどの入院です。入院で足腰が弱ってしまい、退院時には手すりや壁に捕まって伝い歩きをするのがやっとの状態でした。心臓にペースメーカーも入れているため、常に医療的な配慮が必要な状況でもありました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
半年間の入院生活を終え、いよいよ退院という段階になった時、自宅で以前と同じように生活するのは難しいだろうということは明らかでした。そこで、退院後の生活の場として、専門的なケアを受けられる施設への入居を考え始めました。
ただ、私自身が施設探しに多くの時間を割くことが難しかったため、地域包括支援センターと市の福祉課の方に相談し、母の状態に合う施設を探していただくことになりました。いくつかの候補の中から、約1ヶ月ほどの検討期間を経て、現在の施設にお世話になることが決まりました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
もともと母は戸建ての家で暮らし、自分の部屋から庭に出ては植物の世話をするのが好きな人でした。それなのに、経済的な問題もあり、結果的に選んだのは、窓が小さく、自由に外の空気に触れることが難しい施設でした。
まるで病院のように閉じ込められた環境に母を置いてしまうこと、日向ぼっこをしたり、土いじりをしたりというささやかな楽しみさえ奪ってしまうことへの申し訳ない気持ちは、今でもずっと心の中にあります。もっと費用をかけてあげられていれば、中庭があって自由に散歩できるような施設を選んであげられたのに、と今でも後悔の念に駆られることがあります。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
見学の際に最も気になったのは、居室の窓が高く、そして小さいことでした。他の施設も見学しましたが、そこはベランダに出られるような大きな掃き出し窓で、部屋の足元まで日が差し込み、とても明るい印象でした。それに比べて、この施設は日差しが入りにくく、どうしても部屋全体が暗く感じられました。「認知症の方向けの施設は、安全上の配慮からこういった造りが多い」と説明は受けましたが、母がこれから過ごす場所だと思うと、少し息苦しいような気持ちになったのが正直なところです。
また、建物の構造上、中庭のような自由に出入りできる屋外スペースがありませんでした。「園芸もできますよ」とは言われましたが、外に出るには必ず職員の方の付き添いが必要で、鍵もかかっています。これでは、母が「外に出たい」と思った時に、気軽に出られないだろうなという不安を感じました。