入居前はどのような状況でしたか?
母は施設に入居した時、89歳で要介護2の認定を受けていました。父が早くに亡くなってからはずっと一人暮らしで、大きな病気や手術の経験もない健康な人でしたが、やはり年齢には勝てず、内臓が少しずつ弱ってきているようでした。杖を使って歩くことはできましたが、プライドが高いところがあり、歩行器などを使うことには抵抗を感じていたようです。
当時は認知症の症状も出始めていて、「今日は何日?」「私は今日、何をしたらいいの?」といった内容の電話が、1日に何度もかかってくるようになりました。そのたびに説明するのですが、すぐに忘れてしまうのか、しばらくするとまた同じ電話がかかってくる、という繰り返しでした。薬の管理もだんだん難しくなっていき、飲んだことを忘れて「もう飲んだわ」と怒ったり、薬を捨てたり隠したりすることもあったと後から聞きました。
私と母は一緒に暮らしていなかったため、日中の詳しい様子までは分かりませんでしたが、頻繁にかかってくる電話の内容から、一人で生活を続けるのはもう限界が近いのではないかと感じていました。私と妹は、かなり前から施設への入居を考え始めていました。
施設探しを始めたきっかけは何ですか?
本格的に施設探しを考え始めたのは、母の一人暮らしがいよいよ難しくなってきたことがきっかけです。特に、薬の自己管理ができなくなったことや、同じことを何度も電話で聞いてくる様子から、母が常に大きな不安を抱えながら暮らしていることが伝わってきました。
それまでは毎日デイサービスを利用させてもらい、食事の世話などもお願いすることで何とか生活を維持していましたが、自宅で過ごすわずかな時間ですら、精神的に落ち着かなくなっているのが分かりました。最初は「お泊り」という形でショートステイを利用していましたが、家に帰ってきてもまた不安な状態に戻るだけです。それならば、このまま施設に入居させてもらう方が母にとっても安心なのではないかと考えるようになりました。
入居決断時に葛藤や罪悪感はありましたか?
実は、私と妹はもっと早い段階から施設への入居を母に勧めていました。しかし、当時はまだ本人にしっかりとした意思があり、「絶対に入りたくない」の一点張りで、私たちの話を聞き入れてはくれませんでした。デイサービスに通い始める時でさえ、少し抵抗があったくらいです。
お世話になっていたケアマネジャーさんからも、「ご本人が自分から『入る』と言うのを待つしかありません。無理やり連れていくわけにはいきませんからね」と言われていました。そのため、本人が決心するまでは、私たち家族がそばにいられない分、ケアマネさんやデイサービス、看護師さんといった専門家の方々のお力を借りて、在宅での生活を支えてもらっていました。
最終的に、母自身が自分の状況を理解し、「私、もう無理みたい」と口にしてくれたことで、ようやく入居の話を進めることができました。本人の口からその言葉を聞けたことで、私たちの罪悪感や葛藤は少し和らぎましたが、もっと早く何かできなかったかという思いは、今でも少し残っています。
見学時、施設に対する不安はありましたか?
実は、入居前に施設の見学はしていません。というのも、母は入居前からこの施設と同じ系列のデイサービスをずっと利用しており、施設の雰囲気やスタッフの方々のことをある程度は存じ上げていたからです。
妹が施設の近くを通りかかった際に「特に変な感じではなかったよ」と教えてくれましたし、インターネットで調べても悪い評判などは見当たりませんでした。そして何よりも、長年お世話になっているケアマネジャーさんが「いろいろな施設があるけれど、『さとり』さんが一番いいと思う」と強く推薦してくださったことが大きかったです。プロの方の言葉を信頼していましたので、特に不安を感じることはありませんでした。