入居前の状況
私が施設探しを考え始めたのは、主人を在宅で介護していた頃に遡ります。
以前は一戸建てに住んでいまして、家のリビングを療養室のように改造して、お医者様に往診に来ていただいていました。ですが、だんだんと主人の状態が重くなり、お医者様から「在宅での介護も限界があります。このままだと、介護している奥さんの方が持病を悪化させてしまいますよ」と言われたんです。先生が段取りをしてくださって、主人は緩和ケア病棟のある病院へ移り、そこで最期を迎えました。もう5年になります。
施設探しを始めたきっかけ
主人が亡くなってからは、広い家に一人。自分で動けるので生活に困ることはありませんでしたが、家事や家の管理はもともと得意な方ではなく、少し持て余しているような状態でした。そんな中で、★**「元気でなんとかやっているうちに、将来のことをちゃんと考えておきたい」**★という気持ちが強くなり、本格的に施設を探し始めたんです。
一番の希望は、「自立した生活が送れること」。何から何まで管理されるのではなく、自分のペースで、自由に行動できる場所がいいなと考えていました。
入居決断時の葛藤・罪悪感
いざ探し始めると、本当に色々な施設があるのだと知りました。自分の足であちこち見学にも行きましたね。
例えば、200人以上が入居するような大きな施設。そこでは、要支援の方から要介護度の高い方まで、様々な状態の方が一緒に暮らしていらっしゃいました。とても立派な施設だったのですが、案内してくださった方に、私がスタスタと歩いているのを見て「ご入居されるのは、どなたですか?」と聞かれたんです。「私ですよ」と答えると、「ご家族が別におられるのでは?そんなにお元気な方が入られると、かえってご本人も窮屈な思いをされたりするかもしれません」と、少し心配されてしまって。その時に、ああ、元気な人間が大規模な施設に入ると、そういうこともあるのかもしれないな、と感じました。
また、建物の素晴らしさだけでなく、周りの環境がいかに大切かということも痛感しました。ある施設は、建物のすぐそばを大きな産業道路が走っていて、排気ガスがすごいんです。これでは、ちょっと散歩に出るのも危ないし、気持ちよく過ごせないな、と。こういうことは、実際に行ってみなければ分からないものですね。
たくさんの施設を見て回ったからこそ、「自分にとって何が大切か」が明確になっていきました。
見学時の施設に対する不安
今の施設は、見学に来たその日に「ここに決めます」と即決したんです。
一目見て、「普通のアパートみたいだ」と感じました。まさに私が探していた、自由で自立した生活が送れる場所。これ以上のところはないんじゃないか、と直感しました。
入居してからの毎日は、本当にその時の印象通りです。普段は特に誰かのサポートを受けるわけでもなく、普通の一人暮らしと何ら変わりません。持病の管理のために、少し遠い病院まで定期的に通っているのですが、それも全部一人で行っています。
この施設の本当のありがたさを実感したのは、今年の1月末に、コロナにかかってしまった時でした。
はじめは少し熱が出ただけだったのですが、いざコロナと分かって。そんな時、普段はアパートの住人として静かに暮らしているだけですが、近隣に別の事業所があり、そこのヘルパーさんや介護タクシーにお願いして、すぐに病院へ連れて行ってもらえたんです。療養中も、足りないものを買ってきていただくなど、本当に手厚くサポートしていただきました。
普段は干渉されない自由がある。でも、いざという時には、専門のスタッフの方々がすぐそばにいて、助けてくださる。この安心感は、何物にも代えがたいですね。自分一人で暮らしていたら、こうはいかなかったと思います。